ムース1/2   作:残月

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南蛮ミラーの使い道②

 

 

 

話は午前中まで遡る。店の準備をしていた俺はムース(原)と話をしていた。

 

 

「そっちのオラは乱馬に勝っただか!?」

「戦いに至るまで色々とあったがな。戦い方の相性ってのもある」

 

 

こっちのムース(原)は乱馬に勝った事が無いから凄い驚いていた。でも、原作のムースって婆さんの特訓無しで乱馬と互角に渡り合っていた強者なんだよな。原作で乱馬は『弱くて情けないムース』なんて馬鹿にしてたけど、婆さんに特訓される前の乱馬だったらムースに勝てなかったと言われている。

 

 

「そんなの答えは簡単ネ。そっちのムースが強いんじゃなくて、そっちの乱馬が弱いだけ。私の乱馬はもっと強いアル」

「それは聞き捨てならないネ!私のムースは強いアル!」

 

 

話を聞いていたシャンプー(原)は俺とこっちの乱馬を馬鹿にして、シャンプーはそんなシャンプー(原)に怒りを露にする。

 

 

「何アルか!私の乱馬はそっちのムースよりも強いネ!」

「そんな事無いネ!私のムースの方が強いネ!」

 

 

なんかシャンプー同士で惚れた男対決となっていた。こっちのムース(原)はへこんでいるが……

 

 

「だったら戦えばハッキリするネ!」

「わかったアル。だったら今日の夕方、乱馬(原)が学校が終わったら私のムースと乱馬(原)と決闘するネ」

「いや、当人の意思を無視して決闘の話を進めないで欲しいんだが……」

 

 

俺の意見を無視したシャンプーとシャンプー(原)は決闘のお膳立てを進めて行く。こうして当人が口を挟んでも意思を無視された決闘が成立してしまった。

 

シャンプー(原)が俺の代わりに乱馬(原)に果たし状を出し、俺はムース(原)の格好をしていた。いくらなんでもムースが二人居るって状況にしない為に、決闘するグラウンドにはムース(原)の格好をした俺とシャンプー(原)で行く事に。シャンプーとリンスとムース(原)は近くで隠れて観戦となった。因みにムース(原)は先程まで俺が着ていたパーカーとジーンズを着ている。シャンプーも先程までの服装で……なーんかポジション奪われたみたいでモヤッとする。

そんな訳でグラウンドにはムース(原)の姿をした俺と乱馬(原)と対峙していた。久々に掛けたよ瓶底眼鏡。

 

 

「果たし状は受けてやる……勝負だ、ムース!」

「やれやれ、何度目だろうな……お前と戦うのは!」

 

 

そして俺の正体に気付かない乱馬(原)は俺をムース(原)だと思ったまま戦う事に疑問を抱いていない様だった。

恐らくシャンプー(原)は俺の事を知らせずに、いつものムース(原)との戦いだと思わせる為に何も言わなかったのだろう。

 

 

「ちょっと乱馬!」

「心配すんなよ、あかね。ムースが相手なんだ、あっという間に終わらせてやるよ」

 

 

決闘する事に、あかね(原)が抗議の声を上げたが乱馬(原)は余裕綽々としていて、よそ見までしていた。そういや原作の乱馬って自信過剰だったな。だったら、その自信過剰な部分を矯正してやるか。

 

 

「よそ見か……乱馬!」

「って、うわっ!?」

 

 

俺は乱馬(原)に手裏剣を投擲する。当てる気がない投げ方だったが乱馬は驚いて飛び退いた。

 

 

「へ、不意討ちとは卑怯だなムース!」

「決闘を受けたと言っておきながら、よそ見をして油断をしていたのは……お前だろう乱馬(原)」

 

 

不適に笑った乱馬(原)に俺は睨む(瓶底眼鏡だから相手からは見えないとは思うが)

 

 

「笑わせるなよ、乱馬(原)それとも試合開始のヨーイドンが無ければ戦えないのが無差別格闘流か?」

「こんの……野郎!!」

 

 

俺の挑発にアッサリと乗った乱馬(原)は俺に襲いかかってくるが……やっぱり遅い。俺の知る乱馬ならもっと速い拳が来るが、こっちの乱馬(原)は僅かに遅い。俺なら十分に見切れる速度だ。

 

 

「な、なんだ……ムースの動きが違う!?」

「いつの間にこんなに強くなったのムース!?」

「ま、まさか……本当に強かったアルか……?」

 

 

乱馬(原)、あかね(原)、シャンプー(原)は驚いているがシャンプーとリンスはにこやかに俺を見ていた。ムース(原)は顎が外れるんじゃないかと思うほどに口を開いていた。そして俺は乱馬(原)のラッシュを潜り抜けて乱馬(原)の鼻を摘まみあげる。

 

 

「どうした乱馬(原)?まさかとは思うが油断していたなんて事はないよな。鼻を摘まめるって事は目を潰せるって事だ……油断をしている場合か?」

「くっ……この野郎!」

 

 

俺の指摘と馬鹿にされた事で顔を真っ赤にした乱馬(原)は俺の手を振り払うと、ローキックで俺の足を払おうとしたが、俺は距離を放して両袖から鉤縄の付いた暗器を飛ばす。乱馬(原)はそれを避けると『待ってました』と言わんばかりに俺の懐に飛び込んできた。成る程、暗器を敢えて使わせて両手の自由が効かない隙に攻撃するつもりだった訳だ。

 

 

「だが、甘い!」

「な、ぐわっ!?」

 

 

俺は鉤縄の暗器を木に括り付け、それを腕の力で引きながら足下の力を抜く。そうする事で俺はあお向けになりながら地面を滑る様に移動し、乱馬(原)の拳をすり抜ける様に避けた。対する乱馬(原)は決まると思った拳を避けられた事で動揺し、隙を見せたので俺は回し蹴りで乱馬(原)の背を蹴り上げた。

 

 

「ま、まだだ!火中天津甘栗拳!」

「火中天津甘栗拳は高速の拳だが……技を広範囲に広げれば疲れやすい。反して範囲を狭めれば威力は上がるが避けやすい」

 

 

俺は乱馬(原)の火中天津甘栗拳を避ける。技の仕組みを理解していれば素早く背後に回る事をするだろう。

火中天津甘栗拳を避けられた乱馬(原)は焦った様子で攻撃してくるが、俺は避けながら地味に暗器でカウンターを入れていた。

 

まるで今の乱馬(原)を指導する様な戦い方をしている俺だが実際は隠れて決闘を見ているムース(原)に見せ付けているのだ。俺も元々はムース(原)と同じ才能の筈……つまりはムース(原)も同じ様に強くなれる事を教えたいと思っていた。

 

 

俺は原作世界に来てからムース(原)が不憫に思えていた。俺は原作知識があったから色々と行動してシャンプーと恋仲となったが、実際にムース(原)を見ると、その気持ちが殊更に強くなった。

あまり原作世界を変えるのは良くないと思っていた俺だけど……少し助言や鍛えるのは良いよな?

そんな事を思いながら乱馬(原)の攻撃を捌きながら、それをムース(原)に見せるように動いていた。

 

 

 

 


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