結果、長くダラダラな感じになったのでシンプルに仕上げる形になりました。
温泉で、のぼせたと言うかシャンプーにのぼせさせられた……あのボディを無遠慮に押し付けるのは反則だよ。いや、マジで。
「さて……俺が気絶してからどうなった?」
「うん、結局お爺ちゃんの秘伝書が解読できなくて、お爺ちゃんを捕まえて解読させようって乱馬やお父さん達は言ってるんだけど……」
野宿をして、宿には泊まらなかったのでテントで目覚めた俺は、テントから出た所であかねに会ったので話を聞いていた。確か漫画だと爺さんに秘伝書を解読させようとするんだけど、秘伝書を書いた爺さん自体が読めず思わず、破いてしまう。そして流れるままに、らんまにセクハラをした爺さんはぶっ飛ばされるのだが、そこで頭に火花が散り、奥義の『八宝大華輪』を思い出す。
と、まあ……こんな流れだったな。
「爺さん捕まえて解読させようとするのは良いが……どうやってだ?仮に解読方法があったとしても、それを解読させる為には爺さんが秘伝書見ないとだろ?」
「そうなんだけど、乱馬もお父さん達もその事を考えてないみたいで……」
俺があかねに問うと、あかねもため息混じりに答える。やっぱり、そうなったか。いや……ちょっと待て、このパターンだと俺が囮に使われるんじゃ……
「あ、起きたかムース。ジジイを捕まえるのを手伝ってくれ!」
「俺、貧血気味だから遠慮するわ」
乱馬がテニスウェアを手にしながら来たので、俺は回れ右をしてテントに戻ろうとしたがガシッと肩を掴まれる。
「頼む、ムース君!」
「ワシ等の平和の為にもだ!」
「また、このパターンですか!?」
逃げようとしたら玄馬さんと早雲さんに捕まれる。めっちゃデジャブ。猫飯店の時と同じパターンじゃねぇか!
「ジジイを誘き寄せるには美少女しかない!あかねやシャンプーを囮に使いたくないから俺達でするしかない!」
「シャンプーやあかねを巻き込まないように配慮出来るようになったのは嬉しいが、もうちっとマシな作戦は無かったのか?」
力説する乱馬に俺は呆れつつも、女の子に気遣いが多少なり出来るようになった事が少し嬉しかったりする。
「だが、ムース君。お師匠様を捕まえるにはこれが一番効果的なんだ!」
「そうかもしれませんが……冷たっ!?」
早雲さんの説得の最中に水を掛けられる。振り返るとシャンプーがバケツを持っていた。
「あ、あのシャンプー……?」
「ムースの可愛い姿を見させてもらうネ。あかねも着替えるヨロシ」
「準備万端ですよ」
「え、囮は乱馬とムースがやるんじゃ?」
ニコニコとしているシャンプー。隣にはテニスウェアとラケットを持つリンス。あかねも囮は俺と乱馬がやると思ってたから首を傾げている。
「囮もやるけど、テニスやった事がないから楽しみネ!」
「楽しそうですね!」
「そっか……女傑族の村に居た頃はテニスなんかした事は無かったな」
何処か浮かれた様子のシャンプーとリンスに村での娯楽は少なく、テニスなんかした事が無かったと思い出す。やれやれ、仕方ないな。
「乱馬、囮役は引き受けてやる。あかねも協力してくれ」
「お、おう……」
「ムースってシャンプーとリンスちゃんが絡むと甘くなるわよね」
嫌がっていた囮役を受けると乱馬は戸惑い気味に返事をして、あかねは微笑ましい物を見る目で俺を見ていた。シャンプーとリンスに甘い自覚はあるから、ほっとけ。
この後の展開はほぼ原作通りだった。
囮役の女になった乱馬に爺さんが釣られ、捕まえた爺さんに秘伝書を解読させようとしたが、やはり秘伝書を書いた爺さん自体が読めず思わず、破いてしまう。そして流れるままに、乱馬にセクハラをした爺さんはぶっ飛ばされるのだが、そこで頭に火花が散り、奥義の『八宝大華輪』を思い出す。と言っても様は威力高めな花火な訳だが。
そしてテニスを楽しんでいた俺達の所に爺さんが乗り込んでくるが、投げてくる八宝大華輪をラケットで打ち返したり、受け止めて投げ返したりと種が割れれば対処は容易い。
この後、怒った爺さんが人よりも大きな八宝大華輪の上に乗った状態で転がり迫る。早雲さんが咄嗟に女性の下着を投げ込み、それに釣られた爺さんは自ら八宝大華輪の前に飛び込んだ。
そのまま押し潰されるかと思われたが腐っても達人。なんと爺さんは指一本で巨大な八宝大華輪を止めたのだ。まあ、それも乱馬に蹴り押され、崖下へと落とされ、そのまま爆破した八宝大華輪に巻き込まれて大輪の花火を夜空に打ち上げた。
「たーまやー」
「これで世の中、平和になるな」
その花火を見て、乱馬と玄馬さんが呟く。作ったのと打ち上げたのは邪悪の権化だが花火は綺麗なもんだ。
この後、俺達は夜営したテントを回収し、あかね、シャンプー、リンス達と一緒に帰った。途中でリンスが寝てしまったので俺がおんぶして帰ったが。やれやれ、爺さん絡みの話でもわりと平和に終わったな今回は……と思ってたんだけどな。
「ムースよ、今日から夜の乱馬を見張るのじゃ」
「……………はい?」
この数週間後、猫飯店で仕込みをしていたら婆さんから、そんな事を言われた。