ムース1/2   作:残月

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飛竜昇天破①

 

 

急いで風林館高校へ到着すると授業中で校庭に生徒はいなかったが、体育館の方で誰かが言い争ってる声が聞こえた。しまった、遅かったか!俺は苛立つ気持ちを抑えながら体育館の方へ急いだ。

体育館の裏へ行くと乱馬が五寸釘、校長、九能兄にリンチを受けていた。やっぱりあのチラシを見て、乱馬を殴りに来たんだな。

 

 

「ふ、早乙女乱馬よ……この様な怪文書を撒き散らすとは……何故、実力で僕に負けたと素直に言わんのだ!」

「お前のは実力じゃないからだろ!」

 

 

九能兄が弱くなった乱馬に勝った事で、調子に乗っていた。乱馬に木刀を振り下ろそうとしていたので背後から延髄に飛び蹴りを叩き込んだ。

 

 

「おのれ、ムース!邪魔をするか!」

「ム、ムース……お前、なんで……」

「このチラシ見てな。嫌な予感がしたから来たんだが予想は的中したみたいだな」

 

 

くそ、完璧に決まったと思ったのに火傷の痛みで本気で蹴れなかった。九能兄は即座に立ち上がり、俺を睨む。乱馬は俺が来た事に驚いていた。

 

 

 

「ふっふっふっ……今や貴様らなぞ僕の敵ではない。山中でスフレ殿に鍛えていただいた技の冴え……見せてやろう」

「そのスフレさんも鍛えた技がくだらない仕返しに使われていると知ったらがっかりだろうな」

 

 

九能兄は俺に向けて木刀を構えた。こんな事なら山で完膚ないほど叩きのめしてから埋めてやるんだった。

襲い掛かってきた九能兄を返り討ちにしようと袖から暗器を取り出そうとしたが服の中で暗器が擦れ、火傷の痛みが走る。

 

 

「ぐ……痛……」

「隙有り!ふはははははっ!」

 

 

俺の動きが鈍った隙を突き、九能兄が木刀を振り抜くが避ける。走ってる時は我慢出来たけど戦うとなると駄目だ。痛みが凄まじい。

 

 

「よせ、九能!ムース、シャンプーから話は聞いてる!その怪我で無茶すんな、俺の事は俺が、痛っ!」

「今のお前よりはマシだと言いたいが五十歩百歩だな、この状態じゃ……」

 

 

乱馬が俺を気づかって叫ぶが台詞の途中で五寸釘に木槌で殴られて悶絶してる。俺も九能兄の斬撃を避けていたけど、だんだん痛みが増してきた。こりゃヤバいかも……俺は身体中の火傷に叫びを上げたくなる程、痛い。乱馬はされるがままにリンチを受けていた。

 

 

「ふはははははっ!早乙女乱馬よ、覚悟!」

「丸刈りデース!」

「ぼ、僕も!」

「く、くそっ……」

「こうなったら……」

「何をしてる、貴様等!」

 

 

九能兄、校長、五寸釘が襲い掛かり、乱馬は満身創痍。原作なら、とっくに良牙が助けに来る所だが、姿が見えない。仕方ない、俺が……って思っていたが突如、良牙が俺と乱馬を庇うように立ち、九能兄、校長、五寸釘をブッ飛ばす。やたら遅い、登場だな。

 

 

「良牙……お前も俺を殴りに来た口か?」

「ふざけるな!俺は弱い者イジメが一番嫌いなんだ!」

 

 

乱馬がボロボロになりながら良牙に問うが良牙は弱い者イジメは大っ嫌いだと叫ぶ。その割には助けに来るのが遅かったが……ああ、成る程。

 

 

「その割には遅かったな、良牙……道に迷っていたか?」

「う、うるさい……」

 

 

やっぱり道に迷っていたんだな……良牙は基本的には良い奴で硬派だし、すぐに助けに来ないのは変だと思ってたんだよな。

 

 

「兎に角……乱馬を……」

「お、おい!」

「ムース、しっかりしろムース!」

 

 

良牙に乱馬を頼もうかと思ったのに火傷の痛みから俺の意識は其処で途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇side乱馬◆◇

 

 

 

 

 

爺の貧力虚脱灸で弱くなった俺は今までの恨みとばかりに九能や校長、五寸釘に襲われた。力が出ない俺はボコボコにされ、ボロボロになった。

これまでかと思ったがムースが助けに来てくれた。でも、その動きはいつものムースではなかった。明らかに精細を欠いていた。そこで俺はシャンプーからムースが全身大火傷を負ったと……だったら今のムースは……立つのもツラいんじゃ。

 

この後、俺とムースは九能達にボコボコにされた。いや、俺よりもムースの方が重傷になってる筈だ!早く助けないと、と思ったら良牙が九能達をブッ飛ばし、助太刀に来た。

良牙が俺を助けるなんて、と思っていたが良牙は弱い者イジメが嫌いだと叫ぶ。俺が弱い者だってのか!そう叫ぼうとしたがムースの一言にハッとさせられる。

 

 

「兎に角……乱馬を……」

「お、おい!」

「ムース、しっかりしろムース!」

 

 

ムースは大怪我を負いながらも俺を助けに来てくれた。ボロボロになりながらも俺を一番に気づかってくれた。俺と良牙の叫びにも反応しなくなったムースの姿に俺は一気に頭が冷えるのを感じた。

 

 

「待ってろ、ムース!今、猫飯店に連れて行……重……」

「はぁ……俺が担ぐから、乱馬は道案内をしてくれ」

 

 

 

ムースを早く、猫飯店に運ばなきゃ!婆さんならムースの怪我もなんとかしてくれる筈だと俺はムースを担ぎ上げようとしたが……ムースの体が重くて持ち上がらない。こんなに俺は弱くなっちまったのか!友達一人、救えなくなったのか!

俺が自分の弱さを嘆いていると良牙が乱暴にだがムースを担ぎ上げる。緊急事態なのを理解してるのか良牙は『自分が運ぶ』とは言いきらず俺に道案内を頼んでいた。

 

 

俺と良牙は無言のまま猫飯店へと急いだ。

互いに無言だったのは口を開けば弱気な台詞と後悔しか出なさそうだったから……

 


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