ムース1/2   作:残月

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飛竜昇天破②

 

 

 

 

 

重く沈んだ体が浮上する感覚に意識がぼんやりと戻る。見覚えのある天井に思考がゆっくりとだが正常になっていく

 

 

 

「……此処は……」

「あら、目が覚めたムース君?」

 

 

 

視線を移せば、かすみさんが布団で寝ている俺の傍に寄り添うように座っていた。見覚えのある天井だが、かすみさんが居るって事は此処は天道家か?

 

 

「かすみさん、俺は……」

「まだ起きちゃ駄目よ。大火傷に打ち身で絶対安静なんだから」

 

 

痛む体に鞭を打ち、起き上がろうとするが、かすみさんに止められる。強い力で抑えられてる訳じゃないが拒む事は許さない力強さを感じた。意識が覚醒して冷静に見渡すと俺の部屋だった。あれ、だったら何でかすみさんが……

 

 

「ムース君は乱馬君を庇って大怪我したのよ。本当ならウチで預かるつもりだったんだけどお爺さんが居るから猫飯店で寝かせたの。お婆さんは乱馬君の修行で山に行ってしまったから私が後を任されたの」

 

 

そっか……乱馬を助けるつもりが俺もやられちまったんだった。それはそうと婆さんが乱馬に修行を付けてるのか……原作だと乱馬をシャンプーの婿にする為には弱いままだと困るって事で、修行を付けていたが今回は何で修行に至ったんだろう?

 

 

「乱馬君がね、ムース君の怪我は自分に責任があるってお婆さんにお願いして修行を付けてもらう事になったの。お婆さんもムース君の敵討ちに燃える乱馬君の熱意に折れたの。凄い技を伝授するって言ってたわ」

「そっか……乱馬が」

 

 

あのプライドの高い乱馬が婆さんに頼んで修行を受けるとは。それも弱い自分を治したいからよりも俺の敵討ちや怪我の詫びの方に責任を感じるか。

 

 

「じゃあ、ちゃんと寝ててね。間違っても無理しちゃ駄目よ。後でご飯作りに来るからね。リンスちゃんは今、天道家に居るわ。お夕飯の時に連れてくるからね」

「はい……お手数お掛けします」

 

 

かすみさんは再度、俺に釘を刺した後に天道家へ帰っていった。婆さんはかすみさんに俺の世話を頼んだらしい。シャンプーは里帰りで婆さんが乱馬を鍛えるなら俺の世話役がいないって事か。リンス一人に家の事や俺の世話を任せるのは無理があるし。

 

しかし、婆さんが教えるこの時期の技って言ったら飛竜昇天破だろう。

あの技の概要は原作でも知ってたし、実は村に居る段階で教えてもらっていた。まあ、俺には使えない技だったのだが。しかし、まあ……怪我でリタイアってのも情けないな。漫画とかアニメならこんな火傷、次の話になってれば治るのに……漫画やアニメと現実の違いだよな。せめて修行の手伝いくらいはしたかった。まあ、俺が手伝わなくても玄馬さん、あかね、右京、良牙が手伝うか。早ければ三日で会得する筈だし。

 

 

 

自分で自分の事が出来ないとは情けないって言うか……何もする事がないと色々と考えちまうな。そしてマイナス思考になっていく。こんな時、一人は寂しいな。だから……こんな時だから尚更……

 

 

 

 

 

 

シャンプーに会いたい

 


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