町に戻ってきた乱馬は速攻で爺さんに戦いを挑みに行ったが、爺さんは女傑族の秘奥義の飛竜昇天破を知っていた。不発に終わった飛竜昇天破に驚く婆さんや乱馬。爺さんが飛竜昇天破を知っていたのは、若い頃の爺さんは婆さんにデートのお誘いを断られた事を逆恨みして襲いかかった。その時、婆さんは爺さんを飛竜昇天破で撃退した。その事が切っ掛けで爺さんは飛竜昇天破の事を知っていたのだ。
飛竜昇天破の本質を知っていれば対応策は存在する。飛竜昇天破は相手の闘気の強さに比例して破壊力を増す技である。ならば闘気を出さなければ飛竜昇天破は不発に終わるのだ。しかし、一度食らっただけで技の本質を理解するとか人格は兎も角、武術の腕だけは確かなんだよな。
乱馬は爺さんを怒らせて闘わせようと悪戯を仕掛けたが、爺さんはそれらを耐えきって飛竜昇天破を意地でも撃たせなかった。
「ま、負けた……」
「気にするでない、乱馬。お主は確かに未熟じゃがワシの精神力が数百倍優れていた。それだけの事じゃよ」
打ちひしがれる乱馬に爺さんは慰めるような言葉を掛ける。いや、それは間違っているだろう。
「無差別格闘流の開祖は弱い者苛めをした挙げ句、なぶると……つまり無差別格闘流は弱い者苛めと虐待が得意な流派って事か」
「ムース!」
「ちょっと、ムース大丈夫なの!?」
物陰から隠れて事態を見ていた俺は乱馬達の前に出る。正直黙ってようと思ってたけど我慢出来なくて出てきちゃった。乱馬やあかねが俺の心配をしてくれる。
「大丈夫だよ……とは言い難いな。服の中に暗器は仕込んでないよ。重い物はまだキツいんでな」
今の俺は普段の服装ではあるが、暗器は仕込んでない。今の体の状態で暗器を仕込んだ服を着るのはキツすぎる。
「うむ、中国三千年の薬草が効いたようじゃな」
「一部、薬草じゃなさそうなのが混じっていたから不安だったけど恐いくらいに効いたよ。それはそうと、爺さん。乱馬が弱いままだと無差別格闘流は受け継がれないがそれで良いのか?」
「そうじゃな……乱馬がワシに土下座でもすれば考えんでもないのぅ」
婆さんは俺に処方した薬草の効き目に満足していた。材料と作る行程を見ていた身としては若干抗議したかったが、効果があったので文句も言い辛い。俺の言葉を受けて爺さんは煙管を吸った後に立ち去っていってしまった。
「俺が挑発しても効果無し……か。乱馬、どうする?」
「く、くそ……」
「やはり、猛虎落地勢しかないか……」
俺の問いかけに乱馬は悔しそうにしていて、玄馬さんは悩む素振りを見せながら半ば諦めた様な発言だった。あかねと玄馬さんは失意の底に沈む乱馬を連れて天道道場へと帰っていった。
「やれやれ……どうするんだ、婆さん?」
「不覚じゃった……あの時にハッピーが飛竜昇天破を覚えておったとは……」
俺の発言に婆さんはポリポリと頭を掻いていた。まあ、俺はこの後の展開は一応覚えている。乱馬は闘気とスケベ熱は同義だと自身が女に変身した状態での下着姿を撮影した写真を爺さんに突き付ける。その写真に反応した爺さんは乱馬に襲い掛かり……飛竜昇天破を放つ事が出来る。
「今回はなんの手伝いも出来なかったし……乱馬を手伝ってやるか」
そう思いながら天道道場へと向かった。写真撮るにも一人じゃ大変だろうし。