ムース1/2   作:残月

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飛竜昇天波⑤

 

 

乱馬が爺さんに果たし状を叩き付け、放課後にタイマン勝負となった。弱くなったままの乱馬では本来の力が出ず、爺さんを怒らせなければ飛竜昇天破が使えない。ならば、爺さんを怒らせず熱くさせるにはどうするか……原作で乱馬が選んだ方法を知っていた俺は、一人じゃシャッター押したりタイマーセットするのが大変だろうからと手伝いに行ったのだが、まさかあんな事になるなんてな……

 

 

「どうしたんですか、ムース兄様?」

「目が死んでるわね。何があったの?」

 

 

リンスとあかねがグラウンドの土手に座る俺を覗き込む様に聞いてくる。フフフ……気にしないで。俺の黒歴史が増えただけだから。

 

 

「俺が勝ったら、その邪灸人体図をもらうからな!いいな!」

「やれやれ、しつこい奴じゃのう。どっからでも掛かってくるが良い」

 

 

乱馬と爺さんがタイマンとして対峙する。乱馬はやる気十分だが、爺さんは闘気の欠片も出さずに盗んだ下着のアイロン掛けをしていた。アレはアレで退治する理由になると思うが、対決の後で絞めるとしよう。

 

 

「これが俺の秘策……見ろ、ジジィ!」

 

 

乱馬は自身の葛藤を経て懐から、ある物を取り出す。

 

 

「俺の……恥ずかしい写真だー!」

「「「おおおおおおっー!!」」」

「………」

 

 

乱馬が取り出した物に周囲が騒つく。遠目で見えないのだろうが、写真には乱馬が女性物の下着を纏ったり脱いでいるシーンを収めた写真が数枚握られている。対する爺さんは震えているだけで動きがない……

 

 

「な、なんだ……いつもの仮装じゃないのか?」

「違うわ……乱馬は今まで女の子の体になっても下着だけは断固として男性物を選んでいた……その乱馬が女性物を履くなんて……今の乱馬は捨て身の戦法なんだわ!」

 

 

良牙の呟きに、あかねは乱馬の決意を語った。そう、乱馬はそれだけの覚悟と決意を示したのだ。しかし、爺さんの動きはまだ無い……やはり、アレを出さねばならないか……

 

 

「どうした、ジジィ!いらないのか!?ならば……すまない、ムース」

「いいよ、不本意だが手伝うと言ったのは俺なんだ……」

 

 

動きが無い爺さんに乱馬は俺に縋る様な視線を送る。最終兵器を使う気なのだろう……もう、やっちまえよチクショウ。

 

 

「これならどうだ!俺だけじゃなく……ムースの半脱ぎ写真!」

「「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!?」」」

「なっ……ムース兄様、何をしたんですか!?」

「ちょっとムース!?」

「協力すると言った手前断りきれなくてな。最終手段としてなら使う許可を出した」

 

 

そう、乱馬が取り出したのは女性物の下着姿の乱馬が背後から俺の服を脱がし、更に胸を揉んでいるワンカットが納められた写真。

これは写真撮影を手伝っていた際に乱馬が俺に水を浴びせ、更に俺の背後に回って服を脱がせ、胸を揉んだ瞬間の一枚だった。カメラをタイマーにしていた為に乱馬の悪ふざけと偶然が重なった瞬間の写真だ。

乱馬は力はなくてもスピードが落ちていない。更に水を掛けられて動揺した俺の隙を突くのは造作もなかったのだろう。

何も知らない人が見ればこの一枚は女の子同士が戯れあって服を脱がせ合っている一枚に見えるだろう。更に服を脱がされた俺の胸は乱馬の指がギリギリ見えない位で隠している。所謂、手ブラって奴だ。

 

乱馬は「ジジィの闘気の代わりにスケベで発せられる熱を利用する。俺の写真だけで高まらなかったらムースの写真も使わせてくれ!」と土下座してまで頼み込んで来たのだ。俺は最後の手段としてなら使う事を許可した。今回の話が終わったら写真もフィルムも灰にするけどな。

 

 

「欲しいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!寄越せ、早乙女乱馬!」

「だぁぁぁぁぁっ!テメェはお呼びじゃねぇ!」

「校長の許可無くグラウンドで騒いではいけまセーン!」

 

 

木刀を振りかざし、九能兄が乱馬に迫る。更に校長までもが乱馬を襲う。その時だった。グラウンドに凄まじい闘気が吹き荒れた。

 

 

「わ〜し〜のじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「おお、凄まじい闘気!」

「あの爺さんのスケベ熱として現れた!」

 

 

スケベ妖怪と化した爺さんが乱馬に迫る。婆さんや良牙の叫び通り凄まじい闘気を発していた。乱馬は爺さんと九能兄と校長の闘気を螺旋のステップで熱の渦を作り始め、飛龍昇天波の準備に取り掛かる。

 

 

「ん……なんか、変じゃ無いか?飛龍昇天波は闘気の熱を利用するんだろ?なんか熱の渦の範囲が広い様な……」

 

 

そう、原作では爺さん、九能兄、校長、ムースの闘気を利用した飛龍昇天波となるのだが、俺が居ないから威力が小さくなるかと思っていたのだが原作よりも熱の渦が広範囲だ。

 

 

「ほっほっほっスケベ熱を利用したからじゃな。ほれ、周りで見ていた男子達がお主や乱馬のイヤらしい写真と聞いてスケベ熱が出たんじゃろ。そのスケベ熱すら飛龍昇天波に巻き込まれておるわ」

「……ああ」

 

 

婆さんが笑いながら答える。俺はなんと無く納得してしまった。そりゃ健全な高校生なんだからスケベな写真があったら興奮するわな。思い掛けない効果で破壊力増したなぁ。俺も男だから否定は出来んが……そう思っていたら渦は更に強大になり、乱馬は螺旋のステップの中心に辿り着いていた。

 

 


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