ムース1/2   作:残月

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水泳の特訓

 

 

 

先日の約束もあり、本日はシャンプー、リンス、あかねと共にプールへ。目的は勿論、リンスとあかねに水泳を教える為だ。しかし、最初から躓いていた。

 

 

「や、やだ……溺れる……がぼ、がーぼがぼぼ!?」

「そうじゃなくて……足は着くだろ。ほら、立って」

 

 

俺は慌てている、あかねを立たせる。最初にあかねがどれくらい泳げるかをチェックしたかったのだが、あかねはプールに入る前から様子が変で、水に入った瞬間から溺れ始めた。あかねの身長でも胸の高さくらいのプールだから落ち着けば溺れない所なのだが、重りでも付いているのか頭から沈んでいった。

 

 

「けほ……そ、そっか……立てば良かったんだわ……」

「そう、まずは冷静にな」

 

 

あかねは俺の指摘に今更、気付いたのか少々顔を赤らめて立つ。

 

 

「それと水に怯えてる……いや、身構えてる様にも見えるけど力を入れすぎだ。まずは落ち着こうか」

「え、あ……うん」

 

 

俺の言葉に落ち着きを取り戻した、あかね。因みにだが、リンスとシャンプーはプールサイドで、あかねの指導を見学中。リンスは僅かにだが泳げるのに対して、あかねはスタートラインにすら立っていないので、まずは基礎から教えなければならない。

 

 

「深く息を吸って、肺に空気を溜めて……体の力は抜く。その状態で水に身を任せてみな」

「う、うん……スゥ……」

 

 

俺の言葉通りに行動に移した、あかねはプカッと水に体を浮かせる。カナヅチの人が陥る失敗パターンにあかねも見事に該当していた。溺れない様に体に力を入れると人は沈みやすくなる。寧ろ、落ち着いて肺に空気を入れた状態で力を抜けば水の中なら体は浮くものなのだ。

それと体質の問題なんだろうな。あかねは格闘技をしているから体が引き締まっていて、体脂肪は確実に低い方だろう。だが、水に浮く為には体に脂肪がないと水の中では沈みやすくなる。それに加えて水泳への苦手意識と知識の無さが浮き彫りになったのだろう。だから、今までのあかねは水に浮かばず、沈んで泳ぐ事も叶わなかった。

 

本来なら教師やインストラクターが教えるべきなんだがな……誰も言わなかったんだろうか?

 

 

「す、凄い……私、今まで沈んでばかりだったから、こんな風に浮いたのも始めてよ」

「その動きを覚えつつ、練習をしようか。先ずはバタ足からだな。プールサイドに手を着いて体を浮かせながらバタ足をしような。シャンプーは、あかねの補助を頼む」

「わかったネ。リンスはムースに教わるヨロシ」

「お願いします、ムース兄様!」

 

 

プールサイドで見学していたシャンプーとリンスも本格的に参加。リンスとあかねは並んでプールサイドに手を着いてバタ足の練習を始めた。二人ともまだ不慣れなので俺がリンス、シャンプーがあかねの補助に付き、万が一、手を離してしまい溺れそうになったら助ける役割をしている。

俺もシャンプーも体質改善抗水香鹸を使用しているので、ある程度ならば元の姿で居られるから、こうして水に浸かっていても元の姿のままだ。

 

視線をふと、隣に移すと仲良くしているシャンプーとあかねが目に入る。原作の軋轢を知っている身としては嬉しい限りだ。それに加えて美女二人の水着を見れるから眼福である。俺はリンスの補助も忘れずにしていたが視線はチラチラとシャンプーの方に向いていた。

 

ある程度の時間、バタ足をした後には水の中に慣れる訓練やビート板や他者から補助を受けながら水平に水に浮く練習。クロールの型を教える等をした。

本で読んだりして調べた甲斐があったな……リンスもあかねも真面目に練習して当初、あった水泳への苦手意識が僅かに和らいだ様だ。

あまり根を詰めても疲労するだけなので本日はここまでにした。体質改善抗水香鹸の効果も限界だったし。

 

 

「あー、疲れたけど充実したわ。今までは水に浮くのも出来なかったのに、ムースに教えて貰って、シャンプーに補助して貰ったら少し泳げたんだもの」

「あかねは苦手意識が強過ぎただけネ。コツを覚えれば大丈夫ヨ」

「私もムース兄様に教えて貰って、少しだけ泳げました!」

 

 

プールから上がった後は水分補給などを忘れずに、と言う事で着替えを済ませてから喫茶店でお茶をしていた。あかねとシャンプーは仲良くお喋りをしていてリンスもニコニコしながら二人の会話に参加している。

 

今日の練習で改めて思ったのは、あかねは基本的に体が水に浮かないタイプのカナヅチである事だ。筋肉を付け過ぎたり、体脂肪が低いと水に浮かない上に泳ぐ際には普通の人よりも体力の消耗が激しくなり、力尽きて溺れる。その事がトラウマになり、水の中に入ると身体が強ばり、パニックになり溺れると悪循環しかない。

だから今日の練習は『泳ぐ』を主体にせずに『水に慣れる/苦手意識を薄める』を目的とした。

 

と言うか、あかねって格闘技で鍛えてるからスリムだしプロポーションは良い部類なんだよな。原作では寸胴とか短足とか言われてたけど、そんな風には見えないし。そもそも乱馬の照れ隠しの発言が原因だと思うが。ま、それはそうとして……俺は立ち上がり、トイレに行くフリをして離れた席に座っている女の子に話し掛ける。

 

 

「そんなに、あかねが心配なら素直に来れば良かったのにな。次回は参加する事を祈るぞ」

「っ!」

 

 

その女の子はビクッと肩を震わせた。もうお気づきだろうが、この女の子は変装した女乱馬だ。大方、あかねが俺達と出かけるのを聞いて後を付けていたのだろう。プールに居た時から気付いていたが、まさか名乗り出ずに此処まで来るとは思わなかった。まったく……素直じゃないのも此処まで来ると見事と言う他あるまい。ま、次回以降の練習に参加してくれ。リンスとあかねの水泳の練習は今回だけじゃないんだから。

 

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