女乱馬改め乱華は乱馬、玄馬さん同様に天道家の居候となった。
乱馬の分身である乱華は乱馬の記憶を持ち合わせてはいるものの一個の人間として現れた以上はコミュニケーションは必要だからである。
戸籍やら今までの経歴に関しては俺と婆さんでカバーストーリーを考える事となった。まあ、ある程度の大筋は考えて、乱馬達に伝えてある。後は少しずつ煮詰めていくとしよう。
そして乱華だが現状では学校に通わせる訳にもいかないので現在は天道家の家事を手伝っていた。かすみさんの話では、とても良い子で料理も掃除も洗濯も完璧との事。考えてみれば基本的に要領の良い乱馬が良い性格になったのだから、ある意味では当然とも言えた。がさつで大雑把な部分が真面目で繊細な性格の乱華は乱馬と違って意欲的にかすみさんの手伝いをしている。
玄馬さんは早雲さんと将棋をしながらも乱華の事を気にかけている様だ。まあ、今まで男手一つで息子しか育てていなかったのだから、優しい乱華には距離を測りきれてないのかも知れないが……それと乱華が今後も一緒に生活するとなった場合、奥さんへの言い訳をどうするのか悩んでるってのもあるのだろう。存分に悩んで欲しいものだ。
「ムースよ、乱華の様子はどうじゃった?」
「現状は問題なく暮らしてるみたいだな。爺さんも乱華には手出しはしてないみたいだし」
何故、俺が乱華の事情を詳しく知っているのかと言えば、ほぼ毎日様子を見に行っているからだ。出前で外出した際に天道家に立ち寄っては早雲さんやかすみさんから話を聞いてから猫飯店に帰るのが俺の日課となっている。乱華が今後も生活する為の経過観察と言う事もあり、二人とも快く快諾して報告してくれるのだ。乱馬やあかねにも話は聞くし、流石のなびきも今は金儲けは考えていない様だ。下手をすれば乱華を再び鏡の中に戻して孤独に追いやる可能性がある為になびきも迂闊な事はしない様にしている。
これは爺さんも同様らしく、天道家全員から厳しいお説教の下、乱華には決して手を出すなと念を押されたらしい。当初は反発しようとした爺さんだが、乱華が泣きそうになった段階で素直に諦めた様だ。流石に前回の別れが響いている様だ。
「ふむ……邪悪な面が一切無いと……やはり乱華は異質と言うべき存在かも知れんな。肉体分離香の時もそうおもったが今までの知識がまるで役に立たんわ」
「せめて特別って言ってやれよ。確かに前例の無い状態だし、気が抜けないのも事実だけど」
俺は出前のおかもちを降ろしてから手を洗い、厨房に入る。俺は天道家での話を婆さんにした後に乱華の事を考えていた。
原作通りにはいかなかった肉体分離効香の女乱馬。それが巡り巡って早乙女乱華として存在するとはな……やっぱこの世界は『らんま1/2』に良く似た世界なんだろうな。まあ、子供の頃から考えていた事だったけどさ。
「ムースよ。ワシは玄馬から聞いた鏡屋敷へと行ってくる。シャンプーとリンスと共に留守番を頼むぞ。乱華の監視も含めてな」
「ああ……そりゃわかったが……やっぱり俺は行かない方が良いんだろうな」
旅支度を終えた婆さんが俺に今後の予定を確認する。今後の方針として婆さんが呪いの鏡の調査。俺とシャンプーが乱華の監視役となった。
それと言うのも俺が鏡の調査に同伴すると最悪の場合、俺の分身を生み出しかねないからだ。そんな事もあり、俺とシャンプーは猫飯店の経営をしながら乱華の監視役と残り、婆さんが呪いの鏡の調査として鏡屋敷に赴くと決まったのだ。
まあ……監視役とは言っても殆どやる事がない。乱華は超が付くほどに良い子だし、このまま何事も無ければ乱馬の妹として生きて行くだろう。寧ろ問題になるとしたら乱馬の母である『のどか』さんの事だ。玄馬さんとのどかさんの間で交わされた『乱馬を男の中の男にする』と言う誓い。それは呪泉郷の呪いで叶わない願いとなってしまった上に更に息子が分裂した挙句、妹が出来ましたなんて話……最悪、玄馬さんが浮気をしたと取られかねない。その時が来たら血を見る事になりそうだ……まあ、今は目下の問題解決に勤しむとしよう。
さて、学校も終わる頃だし、そろそろ乱馬とあかねが乱華を連れて猫飯店に来る頃か。
「会いたかったぞ、おさげの女ー!」
「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「やめんかーっ!」
「乱華に触るんじゃねーっ!」
お茶の準備でもしようかと思ったら外から悲鳴と怒号が聞こえて来た。何してんだか、まったく……