あらゆる難病奇病に効果があり、武道の上達にすら効果があるとされている温泉。設定盛り過ぎだとは思うが確かに良い湯だわ。
「なぁ、乱馬……ムースよ。この哀れな老人を思ってサービスしてくれんかのぅ……」
「……」
「……」
「爺さん、諦めなって……また覗きに行こうとしないのは良いけどさ」
先程シャンプーとあかねにぶっ飛ばされた爺さんだが即座に復活して戻ってきたが今は大人しく俺や乱馬に絡んでる。水を被って女になってくれってせがんでる。
乱馬も良牙も無視して体を洗ってるし、俺は湯に浸かっているから水を掛けても意味はない。
因みに爺さんが女湯を覗きに行こうとしないのは「女湯にはリンスや乱華も居るんだぞ?覗きに行ったら泣くと思うが実行するか?」と言った所、流石に大人しくなった。
「ならば……実力行使じゃー!」
「うわあっ!」
「危なっ!」
「やれやれやっぱりこうなったか」
爺さんは桶に水を溜め、勢いよく乱馬に浴びせようと飛び掛かった。乱馬と良牙は咄嗟に避けたがギリギリである。
良牙は早々と俺と同じ様に湯に浸かりに来たが反対側に避けた乱馬はそうはいかない。
「ちょっと、くらい、女に、なっても、よいじゃろ!」
「この、クソ、ジジイが!」
「少し援護してやるか……」
「お湯を掛けた程度じゃあの爺さんは怯まないだろ」
爺さんが桶を投げ続け乱馬は巧みに避けていた。俺はため息をこぼしながら湯を掌に溜める。そして振りかぶり勢いよく投げ付けたお湯は爺さんのコメカミに命中し爺さんのは痛みに耐えながら俺を睨み付けたが乱馬からの一撃を浴びて、そのまま湯に沈んで行った。
「単なる水掛けかと思ったがなんて威力だ……」
「忍者で言う所の水遁の術って所だな。水遁の術って聞くと水に潜る術と思われがちだけど実際には水音を利用して隠れたり逃げたりする術の事を指す。俺のはそれから更に発展させて水粒で攻撃まで出来るようにしたがな」
「風呂で暗器を持ち込めないだろうと思ってたけど、やっぱおっかねーなオメーは」
唖然とする良牙に先程の攻撃術を説明。更に乱馬も少し引き気味に湯に浸かって来た。
「暗器だからって何かを持ってるとは限らねーよ。こんな風にな」
「痛でっ!?」
「水で湿った髪で!?」
俺は勢いよく首を振り自身の長い髪をムチの様に振り良牙の顔面を打ち据えた。湯船に長い髪を入れるのはマナー違反だから髪が湯船に入らない様にタオルで軽く纏める。
「ま、こんな風にその身、周囲にある物全てが武器って訳だ。環境戦法はいくらでもあるぞ」
「少しは俺達に有利な状態かと思ったけど甘い考えだったか……」
「ふん、それ以上に強くなれば良いだけだ」
武器を持たない俺に少し強気に出ようとしていた乱馬と良牙だったが考えが甘いと思い知らされたみたいだ。まあ、暗器以外にも奥の手があるけど明かさないぞ。
「ひよっこ共が言いよるわい。ワシくらいになれば小細工なぞせんでも……」
「アンタの強さの場合は盗んだ秘伝書とかだろうが。それと二度目の覗きを敢行しようとするな」
俺は爺さんが再び女湯へ行こうと仕切りを登ろうとしていたので桶を投げつけて叩き落とした。さっきも言ったが幼子を泣かせようとすんな。
しかし、アニメだと男湯と女湯は繋がってたけど今見る限り、風呂場に仕切りもあるから違ったらしい。
さっきから風呂場の端に人の気配はするが男湯側に居るならまだ害は無さそうだから放っておいても大丈夫かな?
「ん……なんだ?」
「どうした乱馬?」
爺さんを連れて風呂から出ようとした俺達だが乱馬が何かに気付いて振り返る。その先は先程俺が人の気配を感じた方向だ。
「誰か……居た気がするんだけど……気の所為か?」
へぇ……乱馬も人の気配を感じ取れる様になって来たか。爺さんの普段の覗きや奇襲が乱馬の修行になってるかと思うと泣けるな。
「誰も居ない様だが……」
「他の客も居たのかもな。のぼせる前に上がろう。この爺さんも放っておくとまた覗きに行きそうだし」
「くそー!老い先短い年寄りになんたる仕打ちじゃ!」
これで女湯覗きでもしてれば此処で叩きのめすつもりだったけど風呂に引きこもってるだけなら放置で良いか。仕切りもあるから物理的に覗きも不可能だろうし。
逃げ出そうとする爺さんの首根っこを捕まえて俺達は大浴場を後にした。
しかし、俺はこの時の判断を後悔する事となった。気付かなかったんだ。
まさか男湯と女湯は仕切りで区切られていたと思っていたが湯船の底は仕切りが無く、男湯と女湯は底の方で繋がっていて湯船に潜れば男湯と女湯を自由に行き来が出来るようになっていた事を。