IS インフィニット・ストラトス BREAKERS(旧作)   作:raludo

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第一話 再開




第一章 ファーストコンタクト/亡国の影
第一話 再開


周りは焼け野原だった。

 

所々火が出ているが、それ以外は何もなかった。

 

――爆撃。

 

まさにそう物語っていた。

 

その中心に倒れている少年と座り込み佇んでいる少女。

 

透き通るような水色の髪をショートヘアにしており、見た目はまだ幼さが残るが、成長すれば間違いなく美人になるであろう。そんな少女だった。

 

それに対して倒れている少年は全身が真っ赤に染まり、体中から血が流れ出ていた。

 

「……こ、うが?」

 

私――更識刀奈は倒れている少年――黒咲紅牙に恐る恐る話しかける。

 

しかし、返事はない。

 

「い、いや……目を覚ましてよ……」

 

私の瞳から涙が零れる。

 

目の前の少年の惨状と返事をしないことを目の当たりにして私は泣き出す。

 

だって、最愛の人なのだ。心から愛していた。そんな少年が今、目の前で……死んだ。

 

「そばに……そばにいてよ……。私を一人にしないでよっ!!」

 

私は彼に抱き付く。彼の体は大分冷たくなっていた。

 

「うう、ぐすっ……紅牙(こうが)……!!」

 

感情が抑えられない。どうしても涙を止められない。

 

なぜ、なぜ自分だけが助かったのか。そんな自責の念が私の中で渦巻く。

 

「か、刀奈(かたな)……」

 

「!!紅牙、しっかりして!!」

 

彼が微かに口を動かす。

 

良かった……!!まだ、助かるかもしれない。

 

私はそんな甘いことを思っていた。

 

結果的にそれはありえないことも理解しながら。

 

「か、刀奈……。最後に君へ伝えたい……ことが……ある」

 

彼は途切れ途切れの言葉を紡ぎだし、言うことを聞かない手を必死に動かして私の頬に触れる。

 

そして――。

 

「刀奈……愛しているよ。世界中……の……誰より……も」

 

そこで彼の息は絶えた。

 

 

 

 

あの事件から五年後――。

 

私は十七代目楯無に襲名され、ここIS学園の生徒会長を務めている。

 

この五年間は私にとって苦痛だった。

 

あの後私も気を失い、気が付いたら病院だった。

 

そこに彼の姿はなく、爆撃事件の報道も生存者は私だけと報道されていた。

 

更識家は対暗部用暗部だ。世界の裏側に通じている。

 

私はこう見えても更識家の長女。故に外敵から狙われる可能性があった。

 

それで、更識家は私に守り刀――ボディーガードを付けることにした。それが彼――黒咲紅牙。

 

弱冠十三歳にして、SPと張り合えるほどの身体能力を有している少年。

 

当時は男ってことでかなりの弾圧を受けたようだった。それでも彼は私のためにいろいろしてくれていた。

 

そんな彼に私は惹かれていった。

 

それが、あんな襲撃のせいで……。いや、今は置いておこう。

 

それから一年は立ち直れなかった。

 

何をするにもやる気が起きず、ただのうのうと生きていた。そして父から十七代目楯無に襲名されるという話を聞き、このままじゃいけないと思った。

 

それからの私はただがむしゃらに過ごしていた。

 

努力のおかげか、自由国籍やロシアの代表操縦者になるなど様々な快挙を成してきた。

 

しかし、やはりどこか物足りない。理由はわかっている。

 

そんな悶々とした思いをこの五年間持ち続けていた。

 

「はあ、そろそろ仕事しないと」

 

過去を振り返るのはやめよう。気が滅入るだけだ。

 

そう思い、山のように積もった書類に手を伸ばす。

 

今年は世界初の男性操縦者が入学してくる。それについての案件が山のように来ている。

 

「織斑……一夏君……ねえ。織斑先生の弟ということだけれど」

 

確かに興味はある。だが、私はもう一つのことが気になっていた。

 

今日届いたばかりの案件。それに目を通す。

 

そこには――。

 

『二人目の男性操縦者――黒咲(くろさき)紅牙(こうが)のIS学園入学について』

 

と、書かれていた。

 

「え……!?」

 

 

 

 

「兄様。もうすぐ時間ですよ。起きてください。」

 

声が聞こえる。が、俺、黒咲紅牙はそれを無視した。

 

「兄様?兄様ってば~」

 

困ったような声を上げる女性。だが、それも無視。

 

今はこの惰眠を貪るのが最優先事項だ!!

 

「そんなわけないじゃないですか!?」

 

……心を読まれた?いや、気のせいだな。たぶん。

 

「起きないなら、もう兄様のことなんか知りませんからね。これからは一人で何とかしてくださいね」

 

……それは不味い。

 

「……おはよう」

 

俺はむくりと起き上がる。

 

「はい、おはようございます。兄様♪」

 

そこには満面の笑顔を浮かべる俺の妹――黒咲氷華がいた。妹と言っても義妹だが。

 

「朝ごはんはできていますよ。急がないと入学式に送れてしまいますよ」

 

「ああ、分かった。すぐに行くよ」

 

返事をすると、氷華はリビングに戻っていった。

 

そして、俺は大きく背伸びをし、窓の外を見る。

 

「……やっとだ。ようやく君に会えるよ。刀奈……」

 

 

 

 

「それじゃあ、行ってくるな」

 

玄関で俺は氷華に告げる。

 

「行ってらっしゃい。BREAKERSの任務も忘れないでね」

 

BREAKERS――その名の通り破壊者達。

 

しかし、その対象は世界の裏組織といった、世界の暗部である。

 

俺もその一員だ。そしてトップにいるのが信じられないかもしれないが氷華だ。

 

そもそも、俺はあの爆撃で心臓が止まった後、氷華達BREAKERSに救出され必死の治療により事なきを得た。

 

その時に刀奈も救出したが、BREAKERSは非公式の秘密組織。名を明かさずに病院に引き渡した。

 

そこから、いろいろあり、あの天災のせいで大変な思いもした。

 

そして、世界で二番目のIS男性操縦者となった。

 

BREAKERSの任務というのは、世界初の男性操縦者、織斑一夏および代表候補生を外敵から守ること。

 

最近亡国企業が暗躍し始め、護衛とともに亡国企業をあぶりだすという任務だった。

 

「ああ、大丈夫だ。じゃあ、行ってくるよ」

 

そして俺は歩き出した。

 

確かに任務のためにIS学園に行くのだが、もう一つ、目的があった。

 

「刀奈……待っていろよ。今、会いに行くからな」

 

 

 

 

入学式が終わり、教室に案内された俺。

 

クラスは一年一組。例の織斑一夏と同じクラスだ。まあ、そうじゃないと意味がないんだけどな。

 

じーーーーー。

 

視線を感じるが、そんなのは無視だ、無視。

 

自分の中に存在する気まずさや羞恥などの感情をカットする。

 

BREAKERSならこのぐらいはできないとな。

 

ちなみに俺がBREAKERSの任務でここにいるということは伏せてある。

 

まあ、あの織斑千冬にはばれているみたいだったが、何も言ってこないということは黙認しているのだろう。

 

ふっ、ともう一人の男――織斑一夏のほうへ視線を向ける。

 

彼の席は真ん中の一番前だ。故に女子からの視線を集中砲火で浴びている。

 

それに対し俺は右列の一番後ろだ。まあ、ここなら様子も見やすいし、護衛もしやすい。

 

ガラガラ

 

前のドアが開き、そこから教師と思しき人物が姿を現した。

 

「えー、みなさん揃っていますねー。私は山田真耶。一年一組の副担任を任されました。よろしくお願いします。それじゃあSHRを始めますよー」

 

緑色の髪をショートヘアにした女性――山田真耶先生がのほほんとした感じで言う。が、

 

シーン。

 

「……」

 

「……」

 

しかし、教室は変な緊張感に包まれており、反応する生徒はいなかった。

 

「え、えーと。そ、それじゃあ自己紹介から始めましょう。えっと、出席番号順で」

 

そう言うと、さすがに反応しないわけにはいかないのか、出席番号順で自己紹介を始める。

 

そして、例の織斑一夏の番が来た。

 

「えー、えっと、織斑一夏です。よろしくお願いします」

 

じーーーーー。

 

女子たちからの視線がさらに増す。

 

まるで『これで終わりじゃないよね?』という眼差しで。

 

まあ、確かに今の自己紹介じゃあ物足りない感はあるな。

 

「……以上です」

 

ズザアアアッ!!

 

思わずそんな効果音が聞こえてくるほどだった。

 

無理もないか。実際にこけている奴もいるし。

 

パアンッ!

 

すると、織斑一夏が叩かれた。

 

……出席簿で。

 

織斑一夏を叩いたのは例の織村千冬。彼女の姉だった。

 

「げぇっ、関羽!?」

 

パアンッ!

 

「誰が三国志の英雄か、馬鹿者」

 

流石に今の反応はあれだな。いや、ネタ的なものも入っているのか?

 

「あ、織斑先生。もう会議は終わられたんですか?」

 

「ああ、山田君。クラスへの挨拶を押し付けてすまなかったな」

 

「い、いぇっ。副担任ですから、これくらいはしないと……」

 

「諸君、私が織斑千冬だ。君達新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ないものには出来るまで指導してやる。私の仕事は弱冠十五歳を十六歳までに鍛えぬくことだ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」

 

はは、高校生に対しては随分な鬼軍曹だな。

 

それと、耳を塞ぐ用意。この人の人気は知っているからな。

 

「キャーーー! 千冬様、本物の千冬様よ!」

 

「ずっとファンでした!」

 

「私、お姉様にあこがれてこの学園に来たんです! 北九州から!」

 

「あの千冬様にご指導いただけるなんて、嬉しいです!」

 

「私、お姉様のためなら死ねます!」

 

ぐ、は……。バリアー無効化攻撃……だと?

 

まさか俺のバリアー(手)を貫通させるとは。

 

「……毎年、よくもこれだけの馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か? 私のクラスにだけ馬鹿者を集中させてるのか?」

 

「きゃああああっ! お姉様! もっと叱って! 罵って!」

 

「でも時には優しくして!」

 

「そしてつけあがらないように躾をして~!」

 

俺、ここではやっていけないかも。本気でそんなことを考え出す俺。

 

「で? 満足に挨拶もできんのか、お前は」

 

「いや、千冬姉俺は―――」

 

パアンッ!

 

「織斑先生と呼べ」

 

「……はい、織斑先生」

 

なんか、あいつが可愛そうに思えてきた。

 

「え……? 織斑くんって、あの千冬様の弟……?」

 

「それじゃあ世界で二人だけISを使えるって言うのも何か関係が?」

 

「でも、それならもう一人のほうは何で?」

 

そして一斉に俺に注目が集まる。

 

「まあちょうどいいだろう。黒咲。ついでにお前も自己紹介しろ」

 

「……わかりました」

 

言われて俺は席を立つ。

 

「黒咲紅牙だ。できれば普通にみんなと仲良くしたい。それと、俺は訳ありで高校一年生だけど、歳は十七歳だ。だけど、さっきも言った通り普通にため口で構わない。みんなよろしく」

 

そう締めくくり、最後にみんなに笑いかける。

 

「き」

 

「き?」

 

「「「「キャーーーー!!」」」」

 

!!耳が……!!

 

「イケメン来たーーーー!!」

 

「あのスマイル。破壊力がすごい!!」

 

「地球に生まれてよかったー!!」

 

そ、そんなことでいちいち叫ぶんじゃない!!耳鳴りが……ひどい。

 

「えーい、うるさいっ!静まらんかっ!!」

 

ピタッ!!

 

そんな効果音が当てはまるほどいきなり静かになった。

 

「まったく。手間をかけさせるな、ガキども」

 

それについては同感だ。というか、助かった……。

 

それからは織斑先生がいるからか、比較的順調に自己紹介が進んでいった。

 

「よし、いいだろう。これでSHRは終了だ。諸君らにはこれからISの基本動作を半月で覚えてもらう。その後実習だが、基本動作は半月で体に染みこませろ。いいか、いいなら返事をしろ。よくなくても返事をしろ、私の言葉には返事をしろ」

 

おかしいな。これは脅迫じゃないのか?と、しみじみと思う俺だった。

 

 

 

 

そしてSHRが終わり、俺は織斑一夏の席へと向かう。

 

「よっ。大丈夫か?えーと、一夏って呼ばせてもらうな?俺のことも紅牙でいいから」

 

「おう。それでいいぜ。よろしくな紅牙」

 

そして軽く握手をする。

 

「それにしても、助かったぜ。俺一人じゃ耐えられなかった」

 

「まあ、確かにきついな。まあ、それもお互い協力していこうぜ」

 

護衛対象と仲良くなるのは良くないのだが、この場合は別。仲良くなっていたほうが、護衛がしやすいからな。

 

「……ちょっといいか?」

 

すると、ポニーテールの黒髪少女が間に入ってきた。

 

「一夏を借りてもいいか?」

 

「ああ、一夏に用か。俺は別にかまわないよ。一夏、知り合いか?」

 

「おう、幼馴染だ」

 

「そうなのか。えっと篠ノ之箒さんだよな?よろしく」

 

「ああ。それでは借りていくぞ」

 

「レンタル料はいらないからゆっくりなー」

 

「おいっ!俺は物かよ!!」

 

「ほら行くぞ、一夏」

 

そうして引きずられていく一夏。

 

なんか、からかい甲斐があるな、あいつは。

 

そして、一時間目の始まりを告げるチャイムが鳴り響いた。

 

 

 

 

一時限目はIS基礎理論授業。なんか一夏の頭から湯気が出ている気がするが、まあ、それは自業自得だな。教科書を捨てるのが悪い。

 

ちなみに俺はこんな理論は朝飯前だ。BREAKERSは基礎を知らないでやれるほど甘くないし、十四歳からIS訓練しているからな。はっきり言って復習にもならない。(年齢を考えれば俺が初めてISを起動した男性操縦者だが、そこは隠してある)

 

そして、一時限目の授業が終わり、俺は机に突っ伏している一夏に声をかけた。

 

「随分と苦戦しているみたいだな。大丈夫か?」

 

「あー、無理かも。そういう紅牙はわかるのか?このパッシブなんたらとか」

 

「パッシブ・イナーシャル・キャンセラーな。まあ、少しは勉強してきたからな。最初のうちは大丈夫だ」

 

もちろん嘘だ。だけど、ここで真実を明かす必要はない。

 

「そ、そうなのかー」

 

俺の返答を聞いて落ち込む一夏。

 

「まあ、俺で良ければいろいろ教えてやるから、そう落ち込むな」

 

「ほ、本当か!?マジで助かるよ!!紅牙!!」

 

「気にするな」

 

そんな風に俺たちが話していると

 

「ちょっとよろしくて?」

 

金髪ロールの子が話しかけてきた。

 

「へ?」

 

「うん?何か用?」

 

「まあ! なんですの、そのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」

 

あー、この手合いか。正直苦手だが……。

 

「悪いな。俺、君が誰だか知らないし」

 

「あ、俺はちゃんと知っているからな?イギリス代表候補生さん」

 

「あなた……わたくしを知らない? このセシリア・オルコットを? イギリスの代表候補生にして、入試主席のこのわたくしを!?」

 

少女――セシリアは一夏に向けて言っていた。

 

「あ、質問いいか?」

 

「ふん。下々のものの要求に応えるのも貴族の務めですわ。よろしくてよ」

 

「代表候補生って、なに?」

 

がたたっ。聞き耳を立てていた女子がずっこけた。

 

「あなたっ、本気でおっしゃってますの!?」

 

「おう、知らん」

 

「一夏、代表候補生だ。イギリス代表の候補生だ。 分解して考えればなんてことはないぞ」

 

「なるほど」

 

「そう!つまりはエリートなのですわ!」

 

まあ、威張って言っているけど所詮候補生だからな。俺にとっては子供が何を吠えている、って感じだな。

 

「本来ならわたくしのような選ばれた人間とは、クラスを同じくすることだけでも奇跡…幸運なのよ。その現実をもう少し理解していただける?」

 

「そうか、それはラッキーだ」

 

「あなた……馬鹿にしてますの?」

 

俺からしたらそっちのほうが馬鹿にしているのか?って感じだけどな

 

「大体、あなた方はISについてなにも知らないくせに、よくこの学園に入れましたわね。あなた達二人だけが唯一男でISを操縦できると聞いていましたから、少しくらい知的さを感じさせるかと思っていましたけど、期待はずれですわね」

 

「俺に何かを期待されても困るんだが…」

 

「……」

 

「あら?そちらの方は図星なのですか?本当に期待はずれですわ」

 

明らかな落胆と侮蔑の目でセシリアは俺を見る。

 

流石の俺もイラつきを覚えたが、ここで変に目立てば護衛がし辛くなるからな。ここは我慢しよう。

 

「ふん。まあでも?わたくしは優秀ですから、あなた達のような人間にも優しく接してあげますわよ」

 

……。心頭滅却すれば火もまた涼し。こんな言葉に一々腹を立てる必要はないぞ、俺。それに一夏だって黙っているんだ。ここで俺が怒り出すのも場違いというものだ。

 

「まあ、わたくしは入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから?ISについて分からないところがあれば、泣いて頼まれたら教えてあげてもよくってよ?」

 

……ん?

 

「入試ってあれか?IS動かして戦うやつ?」

 

一夏が問う。

 

「それ以外に入試などありませんわ」

 

そうか。それなら……。

 

「「俺も倒したぞ、教官」」

 

綺麗にハモった。

 

「一夏、お前もか」

 

「そういう紅牙も?」

 

「ああ、なんとかな」

 

「わ、わたくしだけと聞きましたが?」

 

「女子ではってオチじゃないのか?」

 

「つ、つまり、わたくしだけではないと…?」

 

「まあ、そうだろうな。俺と一夏は倒しているし」

 

「あなた!あなたも教官を倒したっていうの!?」

 

「うん、まあ、たぶん」

 

「多分!?多分ってどういう意味かしら!?」

 

「えーと、落ち着けよ。な?」

 

「こ、これが落ち着いていられ―――」

 

キーンコーンカーンコーン……。

 

「おっと、チャイムだな。じゃあまたな一夏」

 

「おう」

 

「っ……!またあとで来ますわ!逃げないことね!よくって!?」

 

そう言って、セシリアも自分の席に戻っていく。

 

 

 

 

「それではこの時間は実戦で使用する各種装備の特性について説明する―――ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」

 

一夏が、また頭に疑問符を浮かべている。……またあとで入れ知恵しとくか。

 

「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけでなく、生徒会の開く会議や委員会への出席……まあ、クラス長だな。ちなみにクラス対抗戦では、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点でたいした差は無いが、競争は向上心を生む。一度決まると一年間は変更が無いからそのつもりで」

 

うーん、代表者になると護衛がしづらいな。ってことで何としても回避しないとな。

 

「はい!私は織斑君を推薦します」

 

「私は黒咲君を推薦しまーす」

 

……まずい。

 

「他にはいないのか?ならこの二人で――」

 

バンッ!

 

「待ってください!納得がいきませんわ!」

 

セシリアが猛然として立ち上がった。

 

「そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

ん?この流れはもしかして変わってくれるのか?

 

「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります! わたくしはこのような島国までISの修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」

 

……代表を変わってくれるのはありがたいんだが、一々気に障るなあ。この性格何とかしてほしいもんだ。

 

「いいですか!?クラス代表とは実力トップがなるべき。そしてそれはわたくしですわ!」

 

「大体、文化としても後進的な国で暮らさなければいけないこと自体、わたくしにとっては耐えがたい苦痛で―――」

 

俺はふっ、と一夏を見てみると、ああ、爆発するな。

 

「イギリスだって大したお国自慢無いだろ。世界一不味い料理で何年覇者だよ」

 

あらら。一夏ももう少し我慢ってものを学んだほうがいいな。

 

「なっ……!?」

 

セシリアの顔が真っ赤になる。相当今のが頭に来たみたいだ。

 

「あ、あなたねえ!わたくしの祖国を侮辱しますの!?」

 

再び机を叩き――。

 

「決闘ですわ!」

 

「おう、いいぜ四の五の言うよりわかりやすい」

 

まさに売り言葉に買い文句だな。

 

俺はちらっと先生方のほうを見る。

 

二人とも表情を崩してはいないが、内心呆れているのか、子供の茶番だとでも思っているのかはわからないがとにかくそんな気配が感じられた。

 

しょうがない。ここは……。

 

「二人とも落ち着くんだ。一夏まるで子供のやり取りだぞ。もう少し冷静になれ。相手の言うことに一々反応してたらそれこそ子供だぞ」

 

「そうは言うけど。なら紅牙は何も思わないのか?」

 

「そんなわけあるか。俺も内心では快く思っていないよ」

 

俺は一夏を諭すように言い聞かせる。

 

「ちょっとあなた!勝手に割り込んでこないでくださいまし!!」

 

セシリアが抗議の声を上げる。

 

「セシリアもいい加減大人しくしようぜ。あと言わせてもらうけど、日本が後進的な国なら、ISを開発できなかった他の国々はそれ以下ってことになるんだがそのあたり理解しているか?」

 

遠くでは織斑先生と山田先生が『よく言った』と言わんばかりに不敵に笑っていた。

 

「うっ……そ、それは……」

 

予想通り、セシリアは言葉に詰まった。

 

すると、

 

「そこまでだ。後日三人で勝負をし勝った者が代表者だ。異論はないな?」

 

「「はい」」

 

「……はい」

 

実に避けたい事態だが、この先生に反論するのはやるだけ無駄だろうな。そう思い、とりあえず返事をした。

 

「言っておきますけど、わざと負けたりしたら私の小間使い――いえ、奴隷にしますわよ」

 

「侮るなよ。真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいない」

 

「そう?何にせよちょうどいいですわ。イギリスの代表候補生のこのわたくし、セシリア・オルコットの実力を示すまたとない機会ですわね!」

 

「んじゃ、ハンデはどのくらい付けるか?」

 

「あら、早速お願いかしら?」

 

「いや、俺がどのくらいハンデを付けたらいいのかなーと」

 

い、一夏。熟練者ならともかく素人のお前は逆にハンデをもらう立場だよ。

 

「お、織斑くん、それ本気で言ってるの?」

 

「男が女より強かったのって、大昔の話だよ?」

 

「二人は確かにISを使えるかも知れないけど、それは言いすぎよ」

 

ほら、言わんこっちゃないだろ、一夏。

 

「……じゃあ、ハンデはいい」

 

「ねー。織村君、黒咲君。今からでも遅くないよ?セシリアに言ってハンデを付けてもらったら?」

 

「これは真剣勝負だ。だから、一夏も俺もセシリアも対等な条件でやるっていうのが筋だ」

 

「えー。二人とも代表候補生を舐めすぎだよー」

 

女子はまだ食い下がってきたが、大丈夫だから。と言って無理やり会話を終わらせた。

 

「さて、話はまとまったな。それでは勝負は一週間後の月曜。放課後、第三アリーナで行う。織斑と玖蘭、オルコットは各自準備をしておくように。それでは授業を始める」

 

そう言い、織斑先生が教壇に立ったため、この話題は終了となった。

 

 

 

 

昼休み。

 

教科書などを片づけていると、放送が入った。

 

「生徒会より連絡です。一年一組黒咲紅牙君。大至急生徒会室まで来てください」

 

――とうとう来たか。

 

俺は教科書を片付け終え、一夏に話しかける。

 

「そういうわけだから、飯は先に行って食べていてくれ」

 

「お、おう。いいけど、紅牙何やらかしたんだ?」

 

「まあ、察しは付く」

 

「そうなのか?」

 

「ああ。じゃあ行ってくる」

 

そう言うと俺は生徒会室に向かった。

 

 

 

 

――生徒会室前。

 

俺はドアの前に立っていた。

 

これから会うであろう人物を思い浮かべると心臓の鼓動が早くなる。

 

体中が熱くなる。

 

「――よし」

 

俺は意を決してドアを開ける。

 

「失礼します」

 

そう言い、部屋の中に入る。

 

そこにいた人物は――まさに俺が恋焦がれていた女性だった。

 

「……」

 

その女性は無言でこちらに歩み寄ってくる。

 

流麗で透き通るような水色の髪をショートヘアにし、均整がとれた顔立ちをしており、プロポーションも抜群な女性だった。

 

その女性が俺の前で立ち止まると、ペタペタと俺の頭や頬、腕など確かめるように触っていく。

 

そして――。

 

「……紅牙?……本当に紅牙なの……?」

 

「ああ、俺だよ。やっと君のもとに帰って来られたよ。……刀奈」

 

俺は優しく目の前の女性――更識刀奈に語り掛けた。

 

「……紅牙っ!!」

 

刀奈は我慢していたのか瞳に涙を浮かべながら俺に抱き付き、泣きじゃくる。

 

「ほ、本当に心配したのよっ!?ずっと、ずっと私は一人で……バカッ……バカッ!!」

 

刀奈は子供の様に俺の胸に顔を埋めて泣きじゃくる。

 

そんな刀奈を優しく抱きしめる。

 

「ごめん。ごめんな、一人にして。でも、これからは一緒にいるから。今までそばにいられなかった分、君の傍にいるから。何があっても――守るから」

 

「ほ、本当に……?今度いなくなったら本当に許さないわよ?」

 

涙を浮かべた瞳で上目づかいで俺を見る刀奈。

 

その姿があまりにも愛しく、俺は我慢できずに彼女にキスをした。

 

「はむっ……ん……ちゅ……あむ……」

 

舌と舌が絡まり合い、淫靡な水音を立てる。

 

「ん……れろ……も、もっと……ちゅ……はむ」

 

甘く濃密な時間が二人を支配した。

 

 

 

 

「さて、詳しく聞かせてもらいましょうか?」

 

ようやく甘い時間から解放された俺たち。というかキスだけで二十分近くしていた。さすがに恥ずかしいな。

 

俺たちは生徒会室のソファに並んで座っており、俺が刀奈の肩を抱き寄せている形だ。刀奈も嬉しそうに頬を染めながら、頭を俺の肩に預けている。

 

「うーん、たくさんあって何から話そうかな。――まずは今の俺の状況から話そうか」

 

「ええ、お願いするわ。なんであなたがISを扱えるのか聞いておきたいしね」

 

「わかった。最初に言っとくけど、厳密にいうと俺は男性IS操縦者じゃないよ」

 

「え?」

 

刀奈が呆けた声を出す。

 

「俺が扱えるのはたった一機のISだけだよ。ほかのISは全然反応してくれない」

 

「それって、どういうこと」

 

「つまりは俺の専用機以外は他の男性と同じで反応もしてくれないってことだよ」

 

そうなのだ。俺は自分のIS以外は全く使えない。しかもこのISがまた特殊で、そのISは適性がある女性でも全く反応しなかったのである。もちろん男性も。そのISコアは結局束さんが回収したみたいだけど、どういうわけか俺は束さんに気に入られ、そのコアに触れさせられたところ、反応したというわけだ。そこから、束さんが一気に専用機を組み上げたって言ったところである。

 

それを刀奈に説明すると。

 

「……篠ノ之博士と仲がいいのね」

 

と、不機嫌になってしまわれた。

 

話題を変えるためにも俺は次の話をした。

 

「それで、俺は今BREAKERSに所属している」

 

その言葉には刀奈も驚いていたようで。

 

「え!?BREAKERS!?紅牙、あなたそんな危険なことをしているの!?」

 

と、軽く説教されてしまった。

 

まあ、俺のここまで生活の話はまたの機会に話そうと思う。

 

「……私も大変だったけど、あなたも大変だったのね。でも、これからは一緒にいてくれるんでしょ?」

 

「ああ、もちろんだ。そのためにここに来たんだからな。はっきり言って、任務よりも刀奈の優先順位のほうが高い」

 

「ふふ、嬉しいことを言ってくれるわね♪あと、二人きり以外の時は楯無と呼んで頂戴?」

 

「そういえば襲名されたんだったな。おめでとう。でも、二人きりの時は刀奈って呼ぶからな」

 

これは譲れない。

 

「……ええ。お願いね♪」

 

それから、昼休みが終わるまで俺たちはずっと抱き合っていた。

 

そのせいで昼飯を食い損ねたが、刀奈とイチャイチャしたおかげで 十分にお腹一杯だった。

 

 

 

 

時間は変わって、放課後。

 

「うー。まったくわからん。紅牙これはどういうことなんだ?」

 

「だから、これは――」

 

教室にいるのは俺と一夏の二人。休み時間に言っていたIS基礎理論を教えているところだ。

 

――IS実践は篠ノ之さんが担当することになったらしいけど。

 

そんなこんなしていると山田先生が入ってきて寮のカギを渡された

 

俺は個室らしい。

 

「じゃあな、紅牙。またな」

 

「ああ、またな」

 

俺達は寮で別れる。

 

そして、指定された部屋の前に到着。

 

「さて」

 

俺は扉に手をかけ開ける――。

 

「お帰りなさい♪私にします?私にします?それともわ・た・し?」

 

最愛の彼女が待っていた。裸エプロンで。

 

輝くような白い肌。そしてぎりぎり見えないこのチラリズム。俺の理性を崩壊させるには十分だった。

 

「……じゃあ、遠慮なく」

 

俺はあられもない姿の刀奈を抱きしめるとそのままベッドに連行。

 

「ふえっ!?ちょ、ちょっと、紅牙?///」

 

刀奈は予想していなかったのか頬を染めながらあたふたと慌て始めた。

 

昔から刀奈は不意を突いた押しには弱いからな。おかげで可愛い顔を見ることができた。

 

「据え膳食わぬは男の恥ってな♪」

 

「え!?その、あの、えっと、や、優しくね?///」

 

そこから何があったかは想像するに容易いだろう。

 

 

 

 

「ねえ、紅牙。BREAKERSの任務でこの学園に来たのよね?その、私達更識家もサポートするわ。BREAKERSと対暗部用暗部の更識家とは目的が似ているし」

 

次の日の朝、朝食を食べるために食堂に向かっている最中に刀奈が小声で話しかけてきた。

 

昨夜はあの後、お楽しみだったわけだが、そのまま刀奈が眠ってしまい、一晩刀奈を泊めた形となった。

 

「いいのか?助かるよ」

 

確かに俺一人では限度があるからな。やっぱり人数は必要だよな。

 

「それで、イギリスの代表候補生の子。セシリアちゃんだっけ?あの子には鉄拳制裁してあげてね?私の代わりに♪」

 

噂を聞いたのか、あの一悶着の内容を刀奈に知られてしまい、その時は大変だった。

 

『社会的に殺してくる!!』とか言い出す始末だったからな。さすがに止めたが。

 

「まあ、負けるつもりは無いよ」

 

と言っても護衛対象だからな、手荒な真似は遠慮したいところだが。……模擬戦くらいなら大丈夫か。

 

「それなら紅牙、私と模擬戦しましょう?紅牙の実力が知りたいもの」

 

刀奈がそう言うと扇子がパサッと広がり、そこには〝勝負〟とい書かれていた。

 

「ああ、受けて立つよ。学園最強殿」

 

「ふふ。手加減はしないわよ?」

 

 

 

 

刀奈との朝食を終え(女子たちが何やら騒がしかったが)教室へと入る。

 

「おはよう一夏。昨日はよく眠れたか?」

 

「おう、紅牙。ばっちりだぜ」

 

一夏の元気な声が返ってくる。

 

二人で他愛もない話をしているとチャイムが鳴り席に着くことにした。

 

 

 

 

 




あとがき

こんにちは。raludoです。

IS インフィニット・ストラトス BREAKERS。始まりました。

大丈夫かな。一応TINAMI様に掲載している話を少し改変していますが大筋は同じです。

とりあえず、頑張って続けていこうと思いますのでよろしくお願いします。

ちなみにタイトルの「再開」は誤字ではあらず。「再び始まる」の意味です。

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