IS インフィニット・ストラトス BREAKERS(旧作)   作:raludo

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第十一話 クラス対抗戦開始前

時間帯は夜。外は暗闇に染められており、空には星々が自らを照らす月の光を反射し、ここからでもわかるほど、自身を輝かせていた。

 

IS学園特別区画。

 

そう呼ばれる場所に俺――黒咲紅牙は来ていた。

 

そこにはISの試験運用を目的とした小さなアリーナが一つと、研究所が一つあった。

 

IS学園には二つの一般生徒立ち入り禁止区域がある。一つはIS学園地下区画。そしてもう一つがここ、特別区画というわけだ。

 

IS学園特別区画は本校舎と寮の間にひっそりと存在している。

 

一般生徒立ち入り禁止空域に指定されているのは単純。ここにかの有名な篠ノ之束がいるからだ。

 

セキュリティの意味、そしてむやみなアプローチを断つために立ち入り禁止区域に指定されているのだ。

 

ちなみに、俺は生徒だが、一般生徒じゃない。故にここに立ち入ることができる。

 

他に生徒で入れるのは氷華ぐらいか?

 

それに、もしも一般生徒が入ろうとしたら、束さんが仕掛けた識別トラップに引っかかり、大変なことになる。

 

まあ、前置きはここまでにしてそろそろ本題に入ろうと思う。

 

簡単に言うと、束さんに呼び出されたのだ。なんでも見せたいものがあるらしい。

 

「変なものじゃなければいいんだけどな」

 

束さんが見せたいもの。十中八九普通なものではないだろう。

 

俺は期待半分、不安半分で研究所の扉を開けた。俺が来るのがわかっていたから、ロックをしていなかったのか?

 

 

 

 

――そういえば、刀奈に束さんのところに行くって言ったら、ものすごい勢いで止められたな。挙句の果てには私もついていくと言い出すし。まあ、なんとか宥めて、落ち着いてもらったが。もう少し仲良くできないのか?

 

 

 

 

「やー、コウ。待ってたよー」

 

研究室に入る。すると、部屋の奥のディスプレイの前に座っている束さんが振り向く。

 

束さんはいつも通りゴシック風なドレスを着ており、不思議の国アリスを連想させられる。

 

「束さん、見せたいものって何ですか?」

 

俺は早々に本題に移る。一応織斑先生に外出許可を貰っているが。あまり遅くなると、刀奈が何をし出すかわからないからな。

 

「正確には〝渡したい物〟なんだけどね」

 

「渡したい物?」

 

渡したい物ときたか。これは本格的に不安になってきたぞ。

 

すると、俺の考えが顔に出ていたのか、束さんが不機嫌そうに頬を膨らませる。

 

「ぶーぶー。別に変なものじゃないもーん。コウの役に立つと思って用意したのに」

 

「はは、ごめんなさい。いや、でも今までの経験上……ね?」

 

過去、この人には幾度も振り回されているため、身構えてしまうのは仕方ない。

 

「むー。釈然としないけど、いいや。それで今回コウに渡そうと思うのはこれだよ!」

 

じゃじゃーん。と効果音が出てきそうな勢いで目の前に投影ディスプレイが現れた。

 

――そこには刀型特殊ブレード〝白狼〟と名付けられたIS用近接ブレードの詳細データが表示されていた。

 

「〝白狼〟……?」

 

「そうそう。今回用意したのは、コウの新しいIS用武器だよ」

 

確かに、データを見る限りIS用のブレードだが、いったいなぜ?自分にはミスティックセイバーという対艦刀があるし、併用しようにも、二刀流はあまりやったことがないから、効率は悪いと思うんだが。

 

「これはね、私が開発した素材〝ABM〟を採用しているんだよ!」

 

「〝ABM〟?」

 

聞きなれない単語について聞き返す。

 

「そう。正式名称は〝Anti-Beam-Material〟。超高熱に耐えうる素材に強力な粒子ラミネートを施した対粒子兵器用の素材だよ。あまりに大出力なものはさすがに無理だけど、現存している収束型のビーム兵器ならこれで打ち払うことも、霧散させることもできる。まあ、基礎概念は私が考えたんじゃないんだけど、凡人にしては面白い概念だったから私が完成させた。もちろんオリジナルになんか劣らない強度を保証するよ」

 

要するに、対ビーム兵器用の刀ってことか?でもそれならなんで刀にしたんだ?盾や装甲にすればいいと思う。確かに盾は俺のスタンスには合わないけど。

 

俺が疑問に思っていると、束さんが察してくれたのか、

 

「完全に趣味だね。あえて言うなら、ビームを切り裂くってかっこいいかなーって」

 

正直に白状した。

 

「趣味……ですか」

 

しかし、データを見る限りでは悪くはない。趣味と言っても束さんの手にかかれば、実用レベルってことか?

 

映像資料も見せてもらったけど、意匠も悪くない。白く細身の刀身に少し反りが入っており、白い日本刀といったところだ。

 

「それでね?コウにしてもらいたいことがあるんだけどね」

 

「はい?なんですか?」

 

束さんはもじもじと指をいじりながら、一枚の紙を取り出す。

 

「白狼をあげるから、その代わりにこれに名前を――」

 

「さようなら」

 

取り出された紙を一瞥し、すぐに背を向け部屋から出る。

 

「あ、ちょ、待ってえええ!!」

 

束さんの叫び声を無視し、俺は研究を後にする。

 

 

 

 

――そして時はクラス対抗戦前日まで進む。

 

 

 

 

「……」

 

夜、静まり返った室内。もう、五月だというのに妙な冷気が俺を包む。

 

いや、温度自体は適温だ。しかし、異様に空気が冷たい。

 

……これは物理的な冷気ではなく、感情的な冷気だ。

 

具体的に言えば、俺の隣で寝ているであろう女性から威圧的に発せられていた。

 

「……なあ、箒。そろそろ話してくれないか?何をそんなに怒っているんだよ?」

 

「怒ってなどいない。愛想を尽かしているだけだ」

 

怒気をはらんだ口調で返す剣道少女。もとい篠ノ之箒。

 

彼女は普段、凛とした態度を取る刀のような少女だ。鞘に収まっている時は何ともないが、一度抜き放たれると触れるだけで大けがをする、危険極まりない女性。

 

もちろん、そんなことを面と向かって言えば、俺の命が危ない。

 

それはともかく、彼女がこのような状態になっている理由が見当たらない。

 

……もしかしてあれか?やはり、俺のことが嫌いというサインなのだろうか?

 

何にしてもこのままでは精神衛生上、とてもよろしくない。何とか打開せねば。

 

……この際、思い切って聞いてみるか?

 

「なあ、箒。箒は俺のことどう思ってるんだ?」

 

「ッ!!」

 

少しは効果があったか?動揺したみたいだが……。まさか、図星?

 

「ど、どうって、そ、それはそ、そのどういう意味だ!?」

 

「どういう意味ってそりゃ好きとか嫌いとかだよ」(友達として)

 

「好きとか嫌い!?」(男女として)

 

さて、箒。どうなんだ?

 

「そ、そ、そんなの言えるわけがないだろう!!何を考えているのだ貴様は!!」

 

「言えないのか?ってことはやっぱり……」

 

箒は俺のこと良くは思ってないんだな。

 

「やっぱり?やっぱりとはなんだ!」

 

「いや、いいんだ箒。俺には分かっているから。そうだよな面と向かって言いづらいこともあるよな」(箒は俺のこと嫌いなんだな)

 

「わ、分かっているだと!!」(自分の恋心をわかってくれている)

 

納得した。箒が暴力的になるのも全ては俺が気に食わなかったから。なら、やることは一つ。

 

「俺、これからも頑張るから。頑張ってお前に認められるようになるから。だからその時はもう一度、俺のことをどう思っているのか聞かせてくれ」

 

「~~~!?」

 

箒は布団を頭から被り、黙り込んでしまった。

 

まあ、これで少しはマシになったか?

 

しかし、この男。織斑一夏は重大な勘違いをしていることには気づいていなかった。

 

 

 

 

クラス対抗戦当日。静けさが漂う早朝から、アリーナで動き出す者たちがいた。

 

「兄様。では予定通り私が織斑君を担当すればいいのですね?」

 

「ああ。もし何かあってもアリーナという限定空間なら氷華のISのほうが都合がいい」

 

「紅牙、私は氷華ちゃんの補助でいいのね?」

 

流麗な青髪を活発的に外側にはねさせている少女――更識刀奈が確認を行う。

 

「ああ、俺は念のためアリーナ外で待機している。束さんの研究所のこともあるからな。アリーナだけに戦力を集中させるわけにもいかない」

 

今は今日行われるクラス対抗戦についての警備確認を行っていた。

 

学年行事だが、観客も学内の生徒以外はおらず、学校の身内でやるような行事だ。特に警戒する必要もないかもしれないが、可能性がないわけではない。

 

それゆえに、こうして警備の分担確認も念入りに行っているのだ。

 

「この話は織斑先生にも通してあるのよね?なら、確認は以上じゃない?有事にはあの兎も動くのでしょう?」

 

「そうですね。束さんもそのあたりのことは了承しておられます」

 

束さんはもしもの手段だ。できれば手を煩わせたくはない。

 

「そうだな。大丈夫だとは思うけど、油断はしないように。何かあったら指揮は氷華と刀奈に任せる。何かあるとすればアリーナ内だからな」

 

「了解しました」「了解よ」

 

二人の返事を最後に確認作業は終了となった。

 

 

 

 

「……おいエム。お前は今回、手を出すなよ。あの青白いのは私がやるんだからな」

 

「ふん、心配はいらん。今回はただの様子見だ。眺めるだけにしておく」

 

エムと呼ばれた少女はその女性の言葉には興味がないのか、無難な返事をする。

 

いや、正確には女性の警告に興味がないだけであって、とあるワードにはとてつもない関心を持っていた。

 

「いい?オータム。今回は無人機たちのテスト兼彼らの威力調査よ。くれぐれも無茶はしないようにね」

 

そこに響く第三者の声。凛と透き通るその音色に、オータムと呼ばれた女性は恍惚とした表情を浮かべる。

 

ふん、くだらない。とエムはその場を後にする。

 

そして、そのまま自室へと向かい着替えを済ませる。

 

その服装はぴちっとしたライダースーツ。Mがもう少しメリハリがある体ならばその姿はさも妖艶に映ったことだろう。

 

「ふふ、ようやく会えるよ、姉さん。そして〝兄さん〟」

 

エムはその顔に邪悪な、そして妖艶にも見える笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

この後、紅牙は知ることになる。

 

――最強戦士計画は終わってなどいなかったということに。

 

 

 




あとがき

どうもこんにちは。raludoです。

今回はいつもより文章が少なめですね。すみません。

さてはて、次はついに一夏と鈴の対決ですね。原作上は。

ここら辺から本格的にオリジナル展開に入っていきます。クラス対抗戦は一体どうなるのか?

ちなみに箒が怒っていた内容は、本編には書きませんでしたが、鈴とのいざこざのせいです。一夏が鈴に対抗戦で勝利したら、約束の内容を話せと持ち掛けたために箒は不機嫌に。

まあ、そのあたりのエピソードも気が向けばサイドエピソードとして書こうかなと思っていたりします。

それにしても一夏君。ものすごく勘違いさせていますね。この先どうなるのやら。

それでは次回でまた会いましょう。


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