IS インフィニット・ストラトス BREAKERS(旧作)   作:raludo

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今回は三人称視点で書いてみました。……大丈夫かな?


第十三話 弾幕姫

「……」

 

静まり返ったピット内。だが、よく耳を澄ませば、微かに聞こえる外の喧騒。それは男性用のISスーツを纏い、静かに瞑想している織斑一夏にとっては、少々煩わしく聞こえた。

 

「まあ、こんなのガラじゃないか。今更瞑想なんてするのは」

 

そう言い、自嘲の笑みを浮かべる一夏。

 

もうすぐ行われるのであろうクラス対抗戦。クラス代表同士がクラスの誇りと個人の名誉をかけて戦う聖戦。と言えば、聞こえはいいが、戦うのはIS操縦者。つまりは女性。本当にそんな男らしい認識をしているクラス代表はどれだけいるのか?

 

もちろん、出るからには勝つというのは当たり前だ。しかし、そこに己の誇りをかけている者はどれほどいるのだろうか。

 

「まあ、俺が言えたことじゃないんだけどな」

 

またもや自嘲の笑みを浮かべ、苦笑する一夏。

 

一夏にとってこの戦いは他の者と違い、明確な目的があった。

 

凰鈴音。一夏の幼馴染の一人である。

 

あることが原因で喧嘩をしてしまい、この試合で決着をつけることになったのだ。

 

その原因というのが、昔に約束した告白を曲解して覚えていたために今回の一件が起きてしまったという、なんとも鈍感な一夏らしい原因だった。

 

そんな一夏がこの試合に賭けたのは、自分が勝利したならば、交わした約束の意味を教えてもらうことであった。つまり、鈴は一夏に負けないと昔の告白を反故にされてしまうのだ。

 

鈴が勝った場合は、一夏を好きにできるというものだが、実はこの勝負、勝っても負けても、結果を同じにすることができるということに、一夏はおろか、鈴さえも気付いていなかった。

 

「ともかく、何とかして鈴に勝たなくちゃいけない。一応、秘策があるにはあるけど、ほとんど博打みたいなものだからな」

 

ISに触れたばかりの一夏では代表候補生である鈴に勝つのはかなり厳しい。

 

つい先日行ったクラス代表を決める決闘では、イギリスの代表候補生であるセシリア・オルコット相手に善戦したが、不意打ちと強運が引き起こした結果であり、その後の紅牙との試合では成す術もなくやられている。

 

つまるところ、鈴に勝つにはそれこそセシリア戦のように、不意打ちとタイミングの良い強運が必要となる。

 

そうなると、必然的に博打的な戦法に頼ってしまうのは仕方のないことだった。

 

「ここで悲観的になっていても仕方がない。あとは出たとこ勝負だ」

 

頭を振って弱気な自分を追い出す一夏。そして、出撃のアナウンスが響く。

 

『一夏君。聞こえますか?そろそろ準備はいいでしょうか』

 

「はい、今展開します」

 

アナウンスを担当している山田先生にそう返して、一夏は白式を展開する。

 

IS展開時のお馴染みな白銀の粒子が一夏の全身を包み、刹那の後、白銀のアーマーが一夏を包み込んでいた。

 

「……よし、異常はない。大丈夫だな。……ピットを開放してください。行きます!」

 

『分かりました。ピット隔壁、開放します』

 

山田先生のアナウンスが響く。それと同時に重金属特有の鈍い金属音が響き渡り、ピット内に光が充満していく。

 

「はは、絶好の決闘日和だ。――白式、行きます!」

 

ピットの隔壁が開放され、一夏は勢いよくアリーナグラウンドへと飛翔した。

 

 

 

 

「……行ってしまいましたか」

 

そうぽつりと呟いたのは、対抗戦における一夏の護衛担当となった黒咲氷華であった。

 

元々、一夏とピット内へ来たはずだが、一夏がいきなり瞑想を始めたものだから、席を外したのだ。

 

しかし、戻って来てみればすでに一夏は戦場に身を躍らせた後であった。

 

今更ながら試合の前に一声かけるべきだった、と少し後悔する氷華。

 

仕方ないのでそのままピット内のモニターにて試合を見ることにした。ピットの隔壁は安全のため閉じられている。

 

一夏の護衛として有事の際はすぐに向かえるよう、最もアリーナグラウンドに近いこのピット内で待機することになっているため、観客席に戻るわけにはいかないのだ。

 

「……それにしても、本当によく似ていますね。姉妹機みたいなものなのでしょうか?コンセプトは正反対ですけど」

 

氷華はモニター内の両者の戦いを見てしみじみと声を漏らす。

 

白式は一言で言うのならばピーキーな機体。高燃費高火力を形にしたようなもので、武装がブレード一本という鬼畜仕様。しかし、高火力は伊達ではなく、零落白夜を発動させた雪片弐型はまさに一撃必殺の刃と呼びにふさわしいほどである。

 

その分、機体制御は恐ろしいほど難しく、また、うまく立ち回らないと遠距離からハチの巣にされてしまいかねない。故に初心者である一夏が扱うには無理がある機体なのである。

 

そして、ほぼ百%競技用のISである。これで実戦に出るというのであれば、戦死は免れないだろう。近接戦闘による一撃必殺というのは限定空間内での話であり、もし実戦となれば遠距離からの狙撃と一斉射撃による弾幕により、たちまち撃破されてしまうであろう。

 

なので、競技用。決して実戦に出すような機体ではないのだ。

 

対して、中国代表である凰鈴音が扱う第三世代IS〝甲龍〟は燃費を重視、バランスを整え、長期戦闘をコンセプトとした機体であり、白式とは相性が悪い。

 

加えて、専用装備である空間作用式衝撃砲〝龍砲〟。これが非常に厄介な装備である。

 

データ上では空間自体に圧力をかけて砲身を生成。その余剰で生じる衝撃をそのまま砲弾に転化し撃ち出す、といったものであるが、こうしてモニター越しではあるが、本物を目の当たりにすれば、どれだけ厄介なものかが窺い知れる。

 

「ふむふむ、賭けに出ましたね、織斑君」

 

モニターに映し出されているのは、丁度一夏が攻勢に転じているところであった。

 

「瞬時加速による不意打ちと同時に零落白夜を使用して仕留める算段ですか。はてさて上手くいくのでしょうか?――あら?兄様からのプライベートチャネル?何かあったの――ッ!!」

 

ドガアアアンッ!!

 

直後、アリーナ全体を揺れ動かすほどの衝撃が走る。

 

立てかけてあった機材などが倒れ落ち、大きな金属音を鳴り響かせる。

 

氷華も立ってモニターを見ていたため、バランスを崩し尻餅を付いてしまっていた。

 

「な、なんですか……あれは?」

 

そう呟く氷華の目の前にあるモニターには黒い全身装甲のISが三機、映し出されていた。

 

映像を見ていた限りでは黒い全身装甲のISの放った粒子ビームがアリーナ直上のシールドエネルギーを破ったようだ。

 

すぐさま、ピットの隔壁に向かい手動開放しようとするが、最高レベルでの自動ロックが掛けられていた。

 

この緊急時に隔壁に自動ロックが施され、手動であけることができないというのは、不可思議すぎる。

 

氷華はそのことに一瞬困惑したが、気を取り直して送られてきたプライベートチャネルをオープン、相手に向かって呼びかける。

 

「兄様!!」

 

『氷華か!すぐに一夏達の援護に向かえるか?』

 

「それが、ピットの隔壁が自動ロックされてしまっています!」

 

『自動ロック……だと?』

 

少し待て、と言って別の通信を開く様子の紅牙。どうやらプライベートチャネルを統合し、会議通話を行うようだった。

 

その間にも体は動いていた。現状、許される範囲でピットの隔壁を開けようと試みる。

 

そして、それが無理だと悟るや否や、兄である紅牙のチャネルとは別にチャネルをオープン。アリーナグラウンドにいるのであろう一夏に対して通信を試みる。

 

「織斑君、聞こえますか?」

 

『氷華さんか!今、大変な状況だ!』

 

「それは理解しています。あと少しだけ持たせてください。おそらく一分以内には救援に向かえます」

 

一分。これが氷華の出した救援までのリミット。

 

氷華の読みが正しければ、この後すぐに隔壁を破壊する許可が下りる。そして、隔壁をISで破壊。そのまま一夏達と合流。そこまでを一分としたのだった。

 

氷華自身、この事態に焦りが無いわけではなかったが、BREAKERSトップとしての矜持が取り乱すことを許さなかった。

 

『……よかろう。破壊する許可を与える。可及的速やかに三機を戦闘不能にしろ。――できるな?』

 

『もちろん。氷華ならばできます。――氷華、聞いたな!BREAKERSトップの実力を見せてやれ』

 

もちろん、会議通話の方も聞き漏らしているわけではなかった。隔壁突破の試行錯誤、一夏への通信、全てを平行しながらしっかりと耳を傾けていたのだ。

 

「了解です。兄様もお気をつけて」

 

早速、行動を開始する氷華。

 

「行きましょう。――〝黒式〟」

 

隔壁の前にて自身のIS待機形態であるブレスレットを目の前にしてそう囁く。

 

すると、ブレスレットが光りだし、氷華の全身を光の粒子が覆う。

 

そこから現れたのは〝黒〟。何よりも黒い。そのような印象を受けるISであった。

 

艶消しが施されたラバーブラックの配色。翼のウイングスラスターの一部と手の部分が赤く染められている。

 

そして何よりも目を引くのが、そっくりなのだ。〝白式〟に。

 

言い換えるのならば白式の色違い。ただ違うのは腰部に専用のバックケースが装着されていることぐらいか。

 

「アリーナシールドエネルギー強度を計測。及び、敵性ISの粒子ビーム濃度を計算。そこから隔壁突破への出力を算出します」

 

まるで機械のように作業工程を喋る氷華。次々と表示されるデータを〝ハイパーセンサーの補助なし〟で頭に入れていく氷華。その様はさながら演算装置のように瞬く間にデータを頭に入れる。

 

IS起動から七秒でそこまでの工程を行った氷華は一つの武装を展開する。

 

「突破に必要な出力を算出。粒子ビーム砲を展開。出力チャージまで四秒」

 

その武装は比較的大型の携行型のランチャーだった。それを構えるや否や、出力チャージを行う。どうやら、白式と似ているからといっても、射撃武装が使えないというわけではなさそうだ。

 

「三――二――一、発射」

 

カウントダウンの後にランチャーから、先ほどのISによる砲撃と同程度の粒子ビームが放出。隔壁を易々と貫き、アリーナのシールドバリアーもろとも突き破った。

 

それと同時に飛翔。突き破った隔壁から高速でアリーナグラウンドへと躍り出る。

 

そこで、行われていた戦闘を目撃し、改めて敵機を分析する。

 

(全身装甲にあの両腕の大きさ、そして熱源反応もおかしい。どう考えても、人が乗っているようには見えませんね)

 

分析すればするほど、敵機のおかしな部分が浮上してくる。

 

(とはいえ、まずは織斑君と合流しましょう)

 

一方、一夏の方は何とか鈴と連携しながら、逃げに徹していた。二対三の不利な状況ではそれも仕方なかった。

 

「と、いうことでそちら側は任せましたよ、楯無さん」

 

『いいでしょう。観客席の方は私に任せなさい。二人のことは頼んだわよ』

 

「承りました」

 

観客席側の方で待機していた楯無に軽く通信を行い、二人の元へスラスターを吹かす。

 

新たな敵性勢力の出現にも動揺せず、まるでプログラム通りに動く全身装甲のIS。

 

「展開――〝ブレイカー〟」

 

黒式の両手に二丁の大型リボルバーマグナムが展開される。

 

「さあ、打ち砕きましょう」

 

その二丁を構え、三機の内の一機に迫る。

 

残りの二機は一夏達の方へと注意を向けている。

 

全身装甲のISはこちらに向かって、その巨大な腕で薙ぎ払ってくる。

 

氷華はそれをスライディングの要領で避けながら懐へと滑り込む。言うだけならば簡単だが、実際、空中でスライディングを行うとなると大変難しい。それだけでも氷華の技量の高さを伺い知れる。

 

その懐に向かって両手のマグナムをワントリガー。

 

ズガンッ!!

 

装甲が軋む音が響き、紫電が奔る。

 

撃ったのは俗にいう徹甲弾。それもIS用に作られた特注品。

 

例え、シールドエネルギーに阻まれようが、その威力は凄まじく、一発で軽い装甲板ならば、アーマーブレイクすることもできる。

 

その徹甲弾を撃ちこまれた相手は大型のISだが、そんなことはお構いなしに着弾の衝撃で、軽く後方へ反動を受ける。

 

「タクティカルアームズ起動。各アームに〝ブレイカー〟を展開」

 

氷華がすばやくそう呟くと同時に腰部のバックケースから左右三本、計六本のアームが展開される。

 

そのアームは関節が備わっており、三百六十度全方向に稼働可能。アームの先にはマニピュレータが装着されており、様々なオプションを扱うことができる。

 

そのマニピュレータに先ほどの大型リボルバーマグナムが展開される。しかも、全てのアームに。

 

今の黒式の姿を前方から見たら、千手観音が腕を広げているように見える。

 

そして、マグナムの反動を最小限にするため、PIC有効範囲を拡大。それぞれのアームにかかるように設定を行う。

 

タクティカルアームズ起動からここまでを一瞬。そう一瞬でやり終えた。

 

「……ファイア」

 

反動に押されている敵ISに限界まで近付き、それぞれのマグナムの照準を一点に絞り、ワントリガー。

 

計八発の徹甲弾が敵のISの腹部をえぐるように貫く。

 

バチバチ、と電流を発しながら地面に向かって落下する大型IS。貫かれた腹部は、氷華の狙い通り人工物で、人など乗っていなかった。

 

氷華はそれを確認すると、すぐに姿勢を制御。一夏達の元へ瞬時加速。

 

連携を組んで攻めたてていた二機のうち、後方の一機を瞬時加速の勢いを利用し、踏みつけるようにして蹴り飛ばす。

 

踏まれるようにして蹴られた敵ISは重量がかなりのため、黒式の足場となり、それを踏みつけた勢いで三機目のISへと方向転換、そして加速。

 

三機目のISは状況を把握し、一度距離を取るため、上空へと飛翔する。

 

そのまま加速を続け、丁度三機目のISの真下に位置した黒式は両手のマグナムを解除。代わりにサブマシンガン二丁を展開し照準を合わせトリガー。

 

発砲中に左右一本ずつアームのマグナムを解除。アサルトライフルをそれぞれに展開させ、先ほど蹴り飛ばしたISに牽制の意味でトリガー。

 

真下からの弾幕に飛翔したISは怯み、蹴りつけられたISは牽制弾により上手く黒式に接近できずにいた。

 

「残り十七秒。――アンカーミサイルポッド展開。射出」

 

突如、黒式のすぐ背後に三角柱のポッドが光と共に現れる。

 

そのポッドはアンカーで黒式本体と繋がっており、角柱一面ごとに十六連の小型誘導ミサイルが積載されていた。

 

そしてサブマシンガンとアサルトライフルのマガジン残弾が切れるタイミングで射出。

 

アリーナ中央に射出されたミサイルポッドは三面から大量のミサイルを吐き出しながら上空へと向かう。

 

誘導ミサイルのため、あらかじめロックオンされた標的に一直線に向かう。

 

ドオオンッ!!

 

四十八発の誘導ミサイルが敵IS三機を飲み込む。

 

辺りはミサイルの爆発による煙で覆われた。

 

 

 

 

「ジャスト一分。時間度通り救援に来ました」

 

煙が晴れるとそこには六本のアームを腰に携えた〝黒い〟白式――黒式とそれを操る氷華が不敵な笑みを浮かべながら、一夏達の前に佇んでいた。

 

 

 

 

 






あとがき

はい、十三話でした。

ついにその姿を現した氷華のIS〝黒式〟。氷華の言った通り、コンセプトは白式と真逆で多撃必殺を目的とした機体で、弾幕による飽和攻撃を得意とした機体です。飽和攻撃が得意なので重火器系や粒子ビーム兵器などは大量に量子化してあります。最後に使ったアンカーミサイルポッドなんて四基同時射出とかできたりします。まさに歩く武器庫。

そして、近接装備が一切使えないという、まったく白式とは逆の機体になってしまいました。

白式との関係は……?それはそのうち明かされるのでお楽しみに。

タイトルの由来は……まあ、黒式の武装と攻撃方法から氷華が一部の人からこう呼ばれているところから来ています。ちょっとした通り名みたいなものです。

あと、まえがきでも書きましたが、今回は三人称視点で書いてみました。読み辛くないかな。一人称の方がよかったですかね?今後は三人称で書いていく予定です。

無人機弱すぎじゃない?という意見が出ると思いますが、これはあくまで実験機であり、ついでに言うと、束が制作しているわけではないということですね。(あれ、ネタバレかな?このぐらい大丈夫ですよね?)

予定では次の次ぐらいに楯無さんの出番があります。それまではお預け。

では、次回にてまた会いましょう。御拝読ありがとうございました。
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