IS インフィニット・ストラトス BREAKERS(旧作) 作:raludo
時は四月末まで遡る。
先の日本海沖における篠ノ之束強襲事件により、束自身がIS学園に身柄保護という形で匿われるようになった。当然、各国はこれを良しとしなかった。
一応の治外法権が守られているIS学園とは言え、その領土は日本。当然この場合、日本の立場が一気に上になったのは言うまでもない。それに加え、その束を護衛しているのもまた日本の組織であるため、各国は束の保護に反対した。やれ、うちの国の研究所に、我が国の技術開発に協力を、など私欲にまみれた要求をしていた。
束はこれを第三世代ISの技術を各国に送ることで黙らせた。無論、技術と言っても、イメージインターフェースの効率活用法や特殊兵器の応用例をさらに分解した小さい規模の模範例といったものである。
その効果は抜群だった。元々、自国に引き込むのが困難だと最初から分かっていた部分が多々あったので、はっきり言って、諸外国にとっては棚からぼたもちな話だった。これにより、IS保有国の第三世代化は大いに進むことになった。
デュノア社もその一つである。
フランスのIS企業シェアトップのデュノア社は今や各国の標準配備と言っていい〝ラファール・リヴァイブ〟の開発元であり、とても莫大な利益を得ていた企業である。
だが、第三世代ISの開発がうまくいかず、経営不振に、あと一歩で倒産というところまで追い込まれていた。
そんな時、フランス本国から束による第三世代ISの技術データがもたらされる。フランスは本国所属の企業に技術公開を行ったのである。
そのおかげで、デュノア社は本企業のテストパイロット兼フランス代表候補生であるシャルロット・デュノアと技術者が主導の第三世代装備の考案に成功。それを元に新型機の設計を図る。
その最中――。
「はあ、はあ」
階段を勢いよく駆け上がる。普段はそんなに長くない階段のはずだが、今回はとても長く感じられた。
とにかく、早く上って確かめないと。そんな思いが心を占領し、余計にこの少女――シャルロット・デュノアを焦らせる。
何度か躓いたが、何とか階段を駆け上り、シャルロットは目的の部屋の扉に到達する。そして、それをノックもせず、乱暴に開け放つ。
「父さん!!例の話、本当!?」
そこは厳かな内装が施された重圧な雰囲気満点の部屋だった。そして中央にはいかにもな社長机が配置されており、そこに佇んでいたのはがたいがよく、荘厳な顔立ちの男性は突然のシャルロットの来訪に驚いた様子もなく、冷静にその行動を諌めた。
「シャルロット、なんだそれは。ここはデュノア社の代表取締役である私の部屋だぞ」
「し、失礼しました。代表」
その厳格さを思わせる諫言にシャルロットはすぐさま、頭を下げ謝罪をする。
シャルロットに父と呼ばれた男性は、そんな彼女の態度を、ふん、とまるで出来損ないを見るかのような視線で一瞥した後、来訪の理由を尋ねる。
「それで、何の用だ、シャルロット」
「は、はい!!私のIS学園入学の件ですが、本当に〝男装〟しなくてよいのですね!!」
「なんだ、そのことか。それは通達通りだ」
「よろしければ、理由を窺ってもよろしいでしょうか」
シャルロットはさらに質問を重ねる。それだけ彼女にとって、この問題は重大だった。
デュノア社がまだ経営不振の時、苦肉の策としてシャルロットのIS学園入学に彼女を〝男〟として入学させる案件があったのだ。
突如として現れた男性操縦者に接近し、いわゆるスパイ活動を行うといったものだった。当然、彼女はこの案件に難色を示していた。
いくら自分が所属している企業のためとは言え、それを行うには彼女は純粋すぎた。そもそも、シャルロット自身、そんな穢れた生活とは無縁だった。幼少期は母親と父親の愛情を目一杯受けて育ってきた。彼女が十四の時までは。
十四の時、事故により両親を失った。飛行機の墜落事故だという。その辺はシャルロットも詳しいことは知ることはできなかった。そのことに当時のシャルロットは荒れに荒れた。
そして、落ち着きが見られた頃、父親の友人であるシェイク・デュノアがシャルロットを養子として引き取ったのである。
そう、シャルロットの本当のファミリーネームはデュノアではないのである。
話は逸れたが、スパイを行うのに抵抗があった彼女は結局、現父親の独断によりこの案件が会議で可決されてしまい、男装入学が決まってしまっていた。
ところが、今朝になって通達があった。
その内容とは、急遽、男装入学を取りやめ、新造新型機を受領してから転入といった形でいく、というシャルロットにしてみれば驚きの内容だった。
それもそうだろう。すでにシャルロットは女性としての入学を諦めていたが、突然、女性として学園に入学できるとは思ってもいなかったのだ。
そして、次に気になったのは、なぜそんなことになったのか。それが気になりだし、こうして大急ぎで父親であり、デュノア社の代表取締役であるシェイク・デュノアの元に駆け付けた次第である。
「……簡単なことだ。それを行うメリットがなくなった。それだけだ」
話は戻り、シェイクはその問いに淡々と答える。そこに温度というものは存在しなかった。
「メリットがなくなった……ですか?」
「ああ、そうだ。もはや、新型の第三世代ISの建造に着手し、大体の過程を終えた今となっては、スパイ活動より、開発に専念した方が効率的だ。それに……あそこにいる化け物――篠ノ之束の目を誤魔化せるとは到底思えん」
シェイクの最後の一言に、それはそうかも、とシャルロットは自分のことながら納得してしまっていた。確かにあの有名な篠ノ之束の前でスパイ活動などできるかと言われれば、二つ返事で無理と言うだろう。
「つまりそういうことだ。わかったらすぐに開発に戻れ。テストパイロットであるお前がいなかったら、開発が遅れてしまうだろう」
「分かりました。失礼します」
シャルロットは恭しく室内を後にする。そして、先程上った階段で彼女は立ち止まる。
(やった、やったよ!ちゃんと僕は僕として空を飛べるようになったんだ!こんなに嬉しいことはないよ)
その表情は満面の笑みが浮かべられており、上機嫌で新型機の開発に戻った。
――エヴェイユ。待っていてね。もうすぐ、君と空が飛べるから
あとがき
raludoです。
まずは謝罪を。投稿が遅れてしまい申し訳ありません。さらに全話のあとがきの予告とは違う内容になってしまっています。その点につきましても、申し訳ありませんでした。
そして、今回はようやくの登場であるシャルロットです。
正直、この作品のシャルロットの設定は原作とはかなりの乖離がございます。その点につきましてはご了承ください。
そして、こちらも急ですが諸事情により投稿を一時延期させてもらいます。
投稿再開は四月を予定しています。四月の中旬ごろ?を目途に再開するので、よろしくお願いします。そして申し訳ございません。
なお、投稿はしないだけで、他作品の感想等は行っていこうと思っていますので、その点につきましてもよろしくお願いします。
それでは。