IS インフィニット・ストラトス BREAKERS(旧作)   作:raludo

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第五話 救援1

 

「なぜこうなった……」

 

俺は絶賛引っ越し作業中である。模擬戦後、刀奈の爆弾発言のせいで引っ越しをしていた。

 

と言っても、荷物は片付け終え、刀奈の部屋移動中だが。

 

というか、いくらなんでも急すぎる。だけど、そう刀奈に反対しても、

 

「私との相部屋は……いや?」

 

と、モジモジしながら上目遣いで言われれば、男は黙るしかないだろう。

 

まあ、実際俺も嬉しいんだけどね。

 

そんなこんなで刀奈の部屋に荷物を運んでいる途中、携帯電話が鳴った。

 

「誰だ?こんな時間に。BREAKERSの定期報告は来週だし」

 

そう思い、着信相手を見る。――そして驚いた。

 

束さんっ!?珍しいな、束さんが電話なんて。普通なら直接会いに来るのに。

 

取りあえず、電話に出る俺。

 

「もしもし、束さん?」

 

しかし、帰ってきた声はすごく緊迫したものだった。

 

『コウ!助けてっ!』

 

「!!」

 

その声は俺でも聞いたことのないぐらいに焦っていた。

 

束さんがこんなこと言うなんて……ただ事じゃないな。

 

「どうしたんですか!」

 

『こっちの居場所がばれちゃったんだよ!今この研究所に軍事用と思われるISが四機向かって来てる。だけどこっちは〝ナンバーゼロ〟があるから移動できない』

 

状況を聞く限りかなりまずい状況だな。

 

「IS四機の到着予想時間は?」

 

『あと……一時間もないよ』

 

束さんの声が震えているのがわかった。こんなに怯えている束さんは初めてかもしれない。

 

さて、どうするか。束さんの声音を聞く限り、かなり状況が切迫している。敵機の到着予想時間が一時間もない。でも変だな。ナンバーゼロを抱える束さんが簡単に居場所がばれるようなことはしないはず。それがばれた?ということは少なくとも、並の相手じゃない。

 

どうする?どうすればいい?俺はどうすれば――。

 

そこでふと、昔、束さんが言っていた言葉を思い出す。

 

そして俺はあることを決心し、束さんに話しかける。

 

「……その研究所の座標位置を俺に送ってください」

 

『コウ?』

 

「俺が今から行きます」

 

『っ!?駄目だよ、コウ!IS四機だよ!?いくらコウでも――』

 

「何と言おうが俺が助けに行きますから、一応外に出られるようにしておいてください」

 

俺が有無を言わさぬよう早口に言う。すると、

 

『束さんを助けても、結局はコウまで大変なことになるよ?そんなの私……』

 

「俺はあなたを助けます。今、俺が生きていられるのはあなたのおかげでもあるんです。そんな人が窮地に陥っている。理由なんてそれだけで充分です。それに何も無策で突っ込むわけじゃありません」

 

『ほえ?』

 

「ここの任務に入る前に俺の言ったこと、覚えていますか?」

 

『……』

 

「〝世界に絶望しているのなら、人類を信じられないのなら、まずはそこから変わっていきましょう。俺と一緒に〟。俺は言いました。ISを宇宙開発に使うどころか兵器転用した人類に絶望し、他人不信なっていたあなたに。だから、変わりましょう。今から織斑先生にあなたの受け入れ準備を申し出ます」

 

『受け入れ準備?』

 

「そうです。ナンバーゼロがあなたの手元にある限り、束さんは大規模な移動ができない。なら、IS学園に来てください。それであなたの身の上は守られます。ここに来るシナリオも、丁度〝悪役〟がいることですし、王道で行きましょう」

 

つまりはこういうことだ。ナンバーゼロが束さんの手元にある限り、大規模な移動はできない。なら、治外法権であるIS学園に来ればいい。ここに来るシナリオも王道的に、〝敵に拉致された束博士を救出。そのまま、保護という名目で治外法権のIS学園へ。そして自分はその束博士のナイト、護衛になる〟というものだ。

 

『でも、IS学園も全くの治外法権じゃないんだよ?私が行ったら、日本が他国に潰される可能性も――』

 

「そこで、束さんの出番です」

 

『?』

 

「束さんのIS技術提供と引き換えにIS学園に匿うことを了承させます」

 

『そ、そんなの――』

 

「束さん、変わりましょう。俺も及ばずながら力になりますから」

 

『……』

 

束さんは黙ったままだ。でも、このままじゃ何も解決はしない。束さんにもちゃんと見てほしい。世界は悪意に満ちているけど、だからこそ輝く人の心を。

 

「大丈夫です。俺がいますから。あなたのナイトとして」

 

なにせ――。

 

「なにせ、俺達BREAKERSは事実上あなたの私兵部隊なんですから」

 

そう、IS委員会所属は建前だ。実際は束さんが秘密裏にバックについている私兵部隊と言ってもいい。このIS学園の護衛任務だって形式上はIS委員会からの依頼となっているが、実際は束さんの依頼だ。

 

『……わかった。信じてみるよ、私。コウの言う〝人の心〟っていうものを。――それに危なくなったらコウが助けてくれるんでしょ?』

 

「もちろんですよ」

 

『じゃあ、こっちの位置座標を送るね。そして作戦だけど――』

 

 

 

 

俺は奔走していた。

 

まずは刀奈への事情説明。俺の真意が伝わったのか、すぐさま手配をしてくれた。具体的に言うと、一夏達の護衛の肩代わりと、織斑先生への事情説明及び束さんの受け入れ準備などなど。本当に俺には勿体ない位いい女性だ。

 

そして、俺は束さんから送られてきた位置座標データを解析。――なんと、ここからそう遠くない無人島だった。

 

これなら、ISを使えば、二十分で付く。IS四機の到着予定時間はまだ三十分以上ある。

 

――これならいける。

 

俺は屋上まで走り、そのままの勢いで空中に躍り出た。

 

「零!」

 

『了解です』

 

俺が呼ぶと、すぐさま〝ミスティック・クラッド〟が展開される。

 

そしてスラスターを最大に吹かし、トップスピードに乗る。

 

すると、織斑先生から通信が入った。

 

『まったく。よくも独断でこんな真似しくれたな』

 

「でも、俺は助けたい。それはあなたも同じはずだ」

 

『……あいつを、馬鹿でアホな幼馴染を――頼むぞ。こっちのことはまあ、任せておけ』

 

「了解しました」

 

『あと帰ってきたら反省文の嵐だからな。そうだ、折角だからあのバカにも書かせるか』

 

そして通信終了。

 

『帰ったら、大変ですね』

 

「言うな。悲しくなるから。それはそうと零、戦闘でミスティック・システムとたぶんあれも使うから、準備頼む」

 

『あまり無茶はしないで下さいよ、マスター。戦闘力不明のISが四機も相手なんですから』

 

「分かっている。大丈夫だ。俺は死なない。」

 

そして、さらに俺は加速した。

 

 

 

 

「……まったく。どうしてくれるのさ、コウ。こんなにも束さんの中に入り込んできちゃって。束さんはメロメロになっちゃったよ」

 

そう言いながら、回転式の椅子に座り、ぐるぐると回るのは先ほど通信していた篠ノ之束、本人だ。

 

「これはもう名前書いてもらうしかないよね」

 

言うや否や、懐から一枚を取り出した。そこには――。

 

〝婚姻届け〟

 

と記されていた。

 

 

 

 

夜の海を駆ける四つの機影、その機体は漆黒に彩られ、時間帯が夜ということも相まって、肉眼ではスラスターの吹かす青色の炎が見えるだけである。

 

この四機は陣形をスクエアに保ちながら、並行飛行していた。

 

「おいおい、アンノウンが一機、例の無人島に向かっているぞ」

 

「まあ、いいんじゃないかしら?そのために二機を先行させたんだし」

 

「そうだな。あの二機ならそうそう落とされることもないだろう」

 

「……」

 

四機の搭乗者はプライベート・チャネルで会話する。

 

四機のISは〝ラファール・リヴァイブ〟。だが、その配色は漆黒に染められており、ところどころカスタマイズされていることから、〝ラファール・リヴァイブ・カスタム〟と言ったほうがいいか。

 

その四機こそが、篠ノ之束を狙って無人島に急行している〝襲撃者〟だった。

 

「俺ら亡国企業に失敗は許されん。まあ、イレギュラーが入ったとしても、合計六機のISならば、軽くあしらえるだろう。それから、そこの新入り。下手をしたら〝わかっているな〟?」

 

「……」

 

新入りと呼ばれた少女はバイザーで顔を隠してはいるが、まだ少女であることは体格で窺えた。

 

「ふん、だんまりか。まあいい」

 

この時、この四人組は知らなかった。

 

まさか、IS六機相手にイレギュラーが大立ち回りするとは。

 

 

 

 

「……私としたことが、なんでステルス迷彩のことを考えてなかったんだろうね。いや、いくらステルス迷彩だからってこんなにも容易く忍び込めるものなのかな」

 

そう呟いたのはまさにターゲットにされている篠ノ之束だった。

 

彼女は無人島の地下にある研究所にいた。

 

紅牙と企てた作戦、それはIS四機が来る前に篠ノ之束を回収し、研究所に設置されている自爆システムを起動させることだ。もちろん〝アレ〟の回収もちゃんと行ってからだ。

 

だが、思わぬ誤算が生じた。

 

ステルス迷彩。

 

そう、ISは四機だけではなかったのだ。先行している二機がいたのだ。

 

一体は青いIS。比較的スマートな外見だが、腕部のアーマーが異様に巨大で、何かしらの仕組みがあるのは明らかだった。

 

もう一方は赤いIS。こちらもスマートでアーマーが少なく。露出も多い。スラスターが多いことから、機動型のISと窺える。

 

この二機のISに篠ノ之束なら気付いてもおかしくはなかったのだが、この二機は束の警戒網を潜り抜けてきたのだ。いくらステルス迷彩とは言え、あまりにも不可解だった。

 

「さあ、束博士。チェックメイトです。おとなしくお縄についてもらいましょうか」

 

「よく言うね。警察でもあるまいし、お縄につくのはごめんだね」

 

地下研究所内には二機のISに囲まれている束。状況は最悪だ。

 

この二機のISはどちらもワンオフの機体であり、ラファール・リヴァイブといった量産機とは全く異なっていた。

 

「ちっ、めんどくせえ。とっとと気絶させて連れて行くぞ」

 

そういうと、青い配色の機体が腕部から鞭のようなものを展開した。それには電流が流れているのか、紫電が走っていた。異様に大きかった腕部アーマーには鞭が搭載されていたらしい。

 

「……残念だね。少し遅かったみたいだよ」

 

束はにやりと笑い何かを確信したような表情になる。

 

「はあ?何を――ッ!」

 

研究所内が大きく揺れた。

 

「待ちなさい、何かが向かってくる。それも高エネルギーが。これは……ビーム?――ッ!あなたに向かっているわ!避けなさい、オータム!」

 

赤の配色の機体の搭乗者が青の配色の機体に向かって叫ぶ。刹那――。

 

ズドオオオンッ!!

 

大きな振動とともに頭上の天井から桃色の何かをまとったISが青の配色の機体に向かって落下してきた。

 

「なっ!?うわあああっ!?」

 

そのままの勢いで青の配色の機体に向かって突撃する謎のIS。その機体は桃色の何かを纏うのをやめると、束に向かって歩き出した。

 

「やあ、待っていたよ、コウ」

 

コウ――BREAKERS所属の世界で二番目の男性IS操縦者がそこにいた。

 

 

 

 

束を救出するべく無人島付近に来ていた紅牙は地下研究所内への侵入方法を探っていた。

 

『マスター、地下研究所内にISの反応を二つ確認しました!』

 

「なっ!?先行されたのか!」

 

まずい。こうなったら多少強引だが。

 

「零、〝ミスティック・システム〟を起動させる」

 

『了解しました。出力二十%。〝ミスティック・システム〟、起動します』

 

零の音声が終わると同時に、機体が熱を帯びていく。

 

『注意してくださいね、マスター。このシステムの動力はシールドエネルギーですから』

 

「わかっている。地下研究所内まで突貫するだけだ」

 

言うや否や、〝ミスティック・クラッド〟はビームの奔流に飲まれた。否、ビームを纏ったのだ。

 

「よし、突貫する」

 

そのまま、無人島の地面に向かって突進していく。

 

「うおおおおっ!」

 

地面と激突。そして、地面に大穴を開けながら突き進んでいく。文字通り突貫だ。

 

そして、突き抜けた。

 

そこには二機のISがおり、青の方は鞭を持っていた。

 

「やらせるか!」

 

そのままの勢いでその青いISに向かって突っ込む。

 

ビームを纏った体当たり。いくらISとは言え、食らったらひとたまりもない。

 

青いISは避けることもできず、もろに食らう。

 

そして、すぐさま青いISから離れ、そばにいた束に歩み寄る。

 

「やあ、待っていたよ、コウ」

 

そんな言葉が投げかけられる。

 

「すみません。お待たせしました。……うるさいのを片付けてきますから、束さんは〝ナンバーゼロ〟の回収準備をしておいてください。」

 

「ハイハーイ。わかったよー」

 

まるで、子供の用に間延びした返事をしながら束さんは研究所の奥へと消えていく。

 

姿が見えなくなるのを確認して。

 

「さて、亡国企業さん。覚悟はいいか?」

 

俺は赤い方のISに向かって言った。

 

「あら、もうばれているのね。しょうがないわね。ほら、オータム、起きなさい。お客さんが待っているわよ」

 

すると、先ほど、体当たりを食らわした方のISがのそりと起き上がり、

 

「たくっ!やってくれたな」

 

と言った。が、機体の方は焦げ跡が幾つも付き、おそらくはシールドエネルギーも残り少ないだろう。

 

「悪いが、時間がない。一気に行かせてもらう」

 

俺は右手にミスティックセイバーを展開し、青い方の機体に迫る。

 

「やらせないわ」

 

赤い方のISが右手にブレードを展開し、青いISを庇うようにして、出る。

 

「時間がないと言った!故に手加減はできない。本気で行かせてもらう」

 

言うや否や、ミスティックセイバーの鍔に装着されているマガジンを三回リロードした。

 

――カシャン、カシャン、カシャン。

 

リロード音が三回響き、刹那、刀身が大出力のビームを纏う。

 

「なっ!?」

 

これには赤いISも予想外だったのか、ブレードを横にして、受ける体勢をとった。

 

「無駄だ!そんなブレードじゃ!」

 

俺はそのまま、ミスティックセイバーを振り下ろす。

 

大出力のビーム刀はブレードを容易く切り裂き、IS本体にも甚大なダメージを食らわせる。

 

「きゃあっ!?」

 

そのまま赤いISは吹き飛ばされ、後ろにいた青いISも巻き込んで、後ろの壁に激突する。

 

「こいつもくれてやる!」

 

俺はミスティックセイバーのビーム出力を解除し、両手に構える。切っ先は二機のISに向け、マガジンの残りの弾数すべてをリロードする。

 

そして、ミスティックセイバーの切っ先がスライドし、切っ先から砲身が姿を現す。

 

「「!!」」

 

二機のISは息を飲み、回避しようと上昇するが。

 

『マスター、エネルギー充填率九十八%!』

 

「よし、行け!!」

 

――スカーレット・ブラスター。

 

瞬間、ミスティックセイバーの切っ先の砲身から真紅の大出力ビームが放出された。

 

その真紅のビームの奔流は青と赤のISを巻き込み、天井を貫通。無人島から空に向かって、一筋の赤い線を描いた。

 

 

 

 

 

 

 





そこでふと、昔、束さんが言っていた言葉を思い出す。

――もう一度でいいから、ちーちゃんやいっくん、箒ちゃんと一緒に暮らしたいな。それからコウと氷ちゃん達も。……まあ、無理なんだけどね。


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