新しい仲間の着任に、日常にまだ戻れていないこの基地も今夜くらいはと歓迎会を開く。
「とりあえず、SPASちゃんにカズト君のことを質問しようかな」
「ボス?踏み込みすぎはダメだぞ?」
「アッハイ」
※今回、途中で視点が変わりますのでご注意ください※
僕はカズト・ナカムラ。この補給基地に今日付けで配属されました。部下は戦術人形の100式機関短銃、62式機関銃、64式自動小銃、そしてSPAS-12の4人です。今まではメインの4人だけでしたが2~3日すると彼女達のダミーがI.O.Pから届くそうです。
簡単に自己紹介いたしますと、祖父母が生粋の日本人です。さらにこの時代ではとても珍しいのですが両親も日本人です。純度100%の日本人です。ええ、このご時世でそんなことあるのかとおっしゃりたいのは分かります。私自身が言いたいですから。でも本当なんです。
え?この服装ですか?……祖父母の暴走です。昔からグリフィンと関係があった祖父母が、どうしても私に日本風の服装をさせたかったので直談判をしたらしいです。どうして通ったのか私も分かりません。式典等では普通の制服ですのでご安心ください。
実績等に関しましては、お恥ずかしながらそれほどありません。本部管轄地域での犯罪取締及び市街警備を行っておりました。……ええ、トンプソンさんの後輩と言えるかもしれません。噂ではかねがね。え、どんな噂だったか、ですか?そのー、言ってもいいんでしょうか?そうですか。では失礼して。
「惚れた主計官が異動して補給基地の指揮官になったので、理由をこじつけ自分もついていった乙女な戦術人形」と。……だから言ったじゃないですか、「言ってもいいですか」って。こんな内容だとは思わなかった?あれ?いや、ほとんどの方がおっしゃっていましたよ。「トンプソン」の中でも間違いなくトップクラスの乙女な個体だった、と。……あのー司令、後でフォローしてあげてください。はい、なんでしたら今からでもどうぞ。
「いやー、見事にトンプソンがダウンしたね!」
「司令、笑ってていいのですか?彼女スゴく落ち込んでますよ?」
「普段カッコイイ娘が落ち込む姿って可愛いと思わないかい?……まあ、ウチのトンプソンはカッコイイというよりも可愛らしい面が目立つけどさ」
最近、トンプソンへの好意がダダ漏れとなっている指揮官改め司令官。「間違いなくトンプソンから影響を受けている」とは古株の人形達の談。閑話休題。
司令がトンプソンに絆されているのは間違いないと着任早々の僕でも分かる。……本部での噂は本当だったのかと驚きが隠せない。周りにバレバレな好意に自分では気づいておらず、「自分は護衛でついて行くんだ」と無自覚のままで動いてしまう程に人を好いている人形がいたなんて。人形を好きになる人がいることは知っているし、まぁ、その、気持ちも分からなくはない。でも、人形の方がここまでするとは思わなかった。いくら自律的な思考ができるとはいえこれではほとんど人と同じじゃないか。そんな人形がそうそういるものだろうか。
「カズくんお料理美味しいよ!本部よりも美味しいんじゃないかな!あれ、カズくん食べないのー?」
訂正、とても身近に居たね。人よりも人らしいと言える人形が。
「SPAS、確かに今日は僕達の歓迎会だけど、無礼講にも限度はあるんだぞ?」
「あ、隊長、そこのジュース取ってください。ついでに料理も」
「62式お前もか!?」
くっ、ここぞとばかりにはしゃいでるな!
「隊長も食べないともったいないですよ?美味しいし。……怒るのにもカロリーを使いますしね」
「シキ、お前もか。で、何か見たな?」
64式自動小銃、名前が長いのと先にロールアウトした64式タイプとの区別も兼ねて僕はこの娘に「シキ」と名付けている。本人曰く、「ちょっと嬉しい」との事なのでちょっとホッとしたのはよく覚えている。
「あー!シキがカズくんとイチャついてる!?ダメだよ、カズくんは私のだよ!」
「誰がお前のだ、この馬鹿サクラ!」
「馬鹿って言った!?カズくんがそんなこと言うなんて……。おばあちゃんに言いつけるんだからぁ!」
「それはやめて!ばあちゃん、サクラのこと気に入ってるからガチの説教とアームロックが飛んでくる!」
くっ、シキが見たのはコレか!?やっぱシキが笑っているし!
シキ、いや、戦術人形64式自動小銃はとある特殊な能力を持っている。個体差があるが数秒から数十秒先の未来を「見る」ことができる……「見える」と言った方がいいかもしれないけれど。通称「未来予知」と呼ばれている。「予測」ではなく「予知」である。その精度はかなり高く感じる。個人的な感覚だと9割近くは当たっていると思う。この能力はI.O.P社も驚いて研究を進めているらしいが進捗は芳しくないらしい。と、それは置いておいて。
シキ、分かっていたなら教えてくれ!僕、ばあちゃんには絶対勝てないんだから!じいちゃん仕込みのアームロックを容赦なく孫に仕掛けてくるんだぞあの人!?
「いえ、痴話喧嘩ですので止めない方が楽しいかなぁって」
「……シキって何気に結構ひどいよね」
「愉悦ですわぁ」
この娘は結構こういう所がある。他の基地だと声帯を破損していたり、予知の能力に振り回されて苦労している娘が多いと聞くけど、ウチのシキはとかく愉快犯なことが多い。
「あの、隊長。他の皆さんが『SPASをなんでサクラ呼び?』って顔してます」
「「あ」」
唯一にして最大の良心100式におずおずとだがはっきりと言われ、周囲の状況を理解した僕はサクラと同時に声を上げてしまった。そう、僕の副官を務めるこの娘は普通なら
そういえば彼女達の格好を言っていなかった。歓迎会の前に着替えた彼女達は
「カズト君、良ければでいいんだがSPASちゃんとの関係を教えてほしいな。いや、言いたくないことならいいんだ。それならそれで皆納得するだろうし」
「あー、いや、そのー」
「やっぱり言いたくないことなのか?」
司令とようやく復活したらしいトンプソンさんが聞いてくる。いや、言えないワケでは無くてですね?ちょっと恥ずかしいと言いますか。
「あーもーじれったいよ、カズくん!私はカズくんがグリフィンに入る前から一緒に居たんです。民間モデルから転身したのでここに居るんですけど、元々はカズくんの家のお手伝いをしていました!『サクラ
「だぁぁあああああ!恥ずかしいからやめてくれぇ!いやもういっそころしてくれぇ!」
「ちなみに『サクラ』って名前は、私の髪が元々薄いピンク色、今着ている袴みたいな色をしていたのでおばあちゃんが名付けてくれました。今は『SPAS』モデルとして水色ですけどね」
20歳にもなってそういう話を職場で暴露された時、僕のダメージがどれだけか分かるかなサクラさんよぉ!?さらっと名前の由縁を説明してるんじゃないよ!
「あー、すまないカズト君。君へのダメージが大きいのは分かった。……だがあえて言わせてもらうよ!もういっそこの場でスッキリしておこう!」
「司令も愉快犯ですか?それとも僕が何か悪いことしましたか?死体蹴りは勘弁してください」
物凄く恨めしいという視線を司令に向ける。上官に対してすることではないけど今回ばかりは許してほしい。以前の職場はなんだかんだで横の繋がりが薄かったし、こんな歓迎会も無かったから油断していたよ。まさか自分達の歓迎会で、余興という形の公開処刑をされる日が来ようとは。
「そうだよカズくん。一回言ったら十回言っても変わらないよ!」
「内容次第でトドメ確定なんだよ!何を言うつもりだ!」
「え?『自立してお金を貯めたらサクラをお嫁にもらう』って何年か前に言ってたこととか?あの時のこと私絶対にメモリーから消さないからね!嬉しかったし……」
「…………」
SPA……もういいや。サクラが話の続きを皆に話している中、僕は両手で顔を隠しながら部屋の隅へそっと向かった。鏡なんて必要無い、間違いなく僕は今真っ赤な顔をしていると思う。ヤバいあっつい。誰か飲み物ください。あ、ありがとうございます。いつも思うのだけど、G36ってなんでメイドさんなんだろうか。設計者のこだわり?
「20歳とおっしゃられましたので軽めのカクテルをどうぞ」
「いただきます。あ、美味しい。ンぐンぐ。あのもう一杯貰えます……か?」
「いい飲みっぷりですね。はい、どうぞ。でも薄めとはいえアルコールには間違いないのでご注意を」
「あれ、フワフワって、あハ?」
「……すでに手遅れでしたか。失敗しましたね。先に確認するべきでした。爆薬の事前確認は得意なのですが、こういうことは苦手なので困ります」
あれー?G36さんがいつの間にか二人になってるぅ?そっかダミーかぁ。めっちゃフワフワするー。あれ、サクラ姉はどこいったー?ねーどこ行ったのー?
「これはスプリングフィールドから聞いた酔ったトンプソンみたいな感じですね。っといけません。メイン聞こえますか?失敗しました。フォローお願いします」
『どうしたの?』
「ナカムラ指揮官が酔ってしまいました。SPASさんを呼んでもらえませんか?どう対応するのが正しいかわかりません」
『了解。すぐに連れて行くわ』
「あちゃー、カズくんもしかしてウォッカ飲んだ?」
「サクラ姉だー。ここに居たのー?」
あらま、えらく子供っぽくなったなカズト君。SPASちゃんの暴露祭りの前までは凛々しい感じだったんだけど。お酒の種類で酔うタイプか。G36のダミーが出したのはかなり薄めに作られたスクリュードライバーと言っていたからウォッカでダウンすることは間違いない。
「SPAS、カズト君は大丈夫かい?この酔い方はあまりよくないと思うけど」
「あー、よくはないですけどそれほど危ないワケでもないんですよ。カズくんは酔いが覚めたら記憶が飛んでるハズです。ウォッカの時だけですけど。他のお酒なら普通の人と同じ酔い方です。次の日も記憶はしっかりしていますよ」
なんてさっきまでとは別人のように真面目にそして冷静に対応しているSPASちゃん。酔って甘えたがりに変貌してしまったカズト君を膝に乗せながら抱き寄せている。ぐずった子供をあやすお母さんみたいな包容力が凄いな。ああボディ的な意味はないから。そういうワケじゃないから、トンプソンよ私の脚を見るのはやめてくれ。417ちゃんの時のヤツは勘弁してください。あれは真剣に痛かった。
「なんかボスが一瞬変なことを考えた気がするんだけど。……ま、いいか」
「あれ?勘が鋭くなってない?」
「何か言ったかボス?」
「言ってません!」
いけない、ついボケてしまったがカズト君はホントに大丈夫なのかな?
「はい。カズくんはこの酔い方の時、10年くらい前の記憶に戻っているんです。具体的にはご両親が健在の頃なのですが」
「ご両親が健在だった。つまり、今は……」
「はい、お察しの通りです。私、これでも結構長い間カズくんのお家にお勤めしていたので色々と知っていますが、一人きりで寂しい思いをしたことも多かったそうです」
あれ、なんだろうこのSPASちゃん。ホントにさっきと別人じゃない?溢れるお姉さん感が半端ないぞ。具体的にはお姉さんモードのスプリングフィールドに勝るとも劣らない。いやお姉さんよりもお母さんの方が合っている気がするけど。これはあれか?SPASちゃんよりもSPASさん呼びの方がいいのか?
「司令が何を考えているかはわからないですけど、私は『SPASちゃん』でいいですよ。それと皆さんにお願いがあります。ご両親の件は聞かなかったことにして欲しいのです。カズくんが自分で言うまでは」
「「「私達からもお願いします」」」
ふむ、そこまで頼まれたら無視はできないな。ただ私はSPASちゃんに聞きたいことが出来てしまったのだけどね。まぁ、それは明日以降に聞かせてもらおうかな。
「よし、じゃあこの話は聞かなかったことにする。皆もそれでいいな?」
「「「「「異議なーし」」」」」
さて、後はどうするかな。
「あ、カズくんがこんなに甘えてくるの久しぶりなんで記念写真撮ってくださーい」
「写真撮るのか!……あーあ、かわいそうに」
「いやー、いいネタができたなシキ」
「ホントねー62。愉悦だわぁ」
「ちょっと皆、やめた方が……。あ、隊長かわいい」
その写真は悪用しないようにね。なんかSPASちゃんがよからぬ事に使いそうなんだけど、大丈夫?
「大丈夫です!ちょっと『そろそろ左手薬指に指輪欲しいなー』ってカズくんに言うだけですから!」
「それが一番重いと思うぞ!?」
トンプソンの鋭いツッコミが炸裂した。そんなこんなで夜が更けていく。さあ、明日も頑張ろー!
なお、翌日の早朝にカズト君の部屋から痴話喧嘩の声が響いてうるさい、と苦情が来るのは別の話である。
えー書いてる途中でドルフロ世界の時系列を調べてたら、この作品が結構おかしいことに気づいた今日この頃。
このまま突っ走った方がいいレベルのような……。
気にしたら負けですかね?
あと、リアルの忙しさに負けて内容が極めてツッコミ所満載になって参りました。笑ってスルーしてもらえればホッとします。
とりあえず、SPASのイメージ(腹ぺこ、太る、演劇)とは違うキャラにしたかったのでそこはいい感じ。でも、本家がいい人には受け付けないかと思います。
さーて、SPASちゃん達のダミーはどんな感じなのかなー。
……ヤバいネタがない( ̄▽ ̄;)
誤字、脱字が増えている自信がございます。申し訳ありませんが見つけたら報告をお願いします