「ボス、居るかい?」
数回のノックの後、この基地の副官トンプソンの声がドア越しに執務室に響く。
「居るぞ。どうしたトンプソン」
「ああボス居てくれたか。すまないが第8倉庫まで来れるか?」
「第8倉庫?あそこは他の基地への届け物が入っている倉庫じゃなかったか?」
第8倉庫とは別名「宅配センター」と呼ばれるこの基地きっての混沌とした倉庫である。
ここに届けられる荷物に関しては、基本的にどの地区へ運ぶか仕分けしたらあとはほぼノータッチで運搬する。
他の基地所属の指揮官や人形達の私物が多く、プライバシーの保護を配慮したためである。
「その通りだ。で、来れるかい?」
「少し待て。この書類だけ処理する」
「わかった。先に行っているから後で来てくれ」
そう言うとトンプソンは執務室から足早に去っていった。
(なにかあったのか?奇妙奇天烈な物は時々あるようだが、今まで私が呼ばれたことはないしな……)
指揮官は疑問を頭に浮かべつつ、とにかく行けばわかると手元にあった書類の処理をし始めた。
第8倉庫
「待ってたぞボス」
「待たせた。で、何があったんだ?」
「とりあえず、これを見てくれ」
トンプソンはそう言うと自分のダミー2体に合図をして、
「大きい箱だな。……これは?」
「まずはこれの宛先なんだが、
「ふむ。その話自体はよくあることと言えるな。で、結局その大きい郵便物の中身は?」
鉄血の襲撃で基地を放棄すること自体は時々ある。だが、そこに宛てて送られてきたこの箱が何なのかという方が大事だ。
「ああ。戦術人形だ」
「は?郵送される戦術人形なんて聞いたことないぞ。普通はI.O.Pの運搬車両が直接運び込むハズだろ?」
「そのハズだ。なにせそれで運搬車両が襲撃されることもあるくらいだしな。だが、こいつは間違いなく戦術人形だ」
「……開けたのか?」
「すまないが先に開けさせてもらった。ダミーが確認した中身は『スプリングフィールド』だ」
メインがそう言った直後にダミーが箱を開けると、中にはスプリングフィールドが確かに入っていた。
一糸纏わぬ姿で
「おい!服を着てないことは先に言え!?」
「いや、私も知らなかった!お前たち、なんで教えなかったんだ!」
「「面白いことになると思って黙ってた」」
なんて恐ろしいダミー達だと戦慄している指揮官と、まさか自分のダミーが
ちなみに2人とも顔が真っ赤である。……初心だなー
「……で、このスプリングフィールドは件の指揮官が発注していた人形じゃないのか?」
「いや、それが違うらしいんだ。というか発送元がわからない」
「それは……。なんてテロだ?」
指揮官のその一言は箱を開けた途端に目に入るスプリングフィールドのことを言っているのだろう。
この荷物が届いた指揮官が何も知らずに荷を開けたら、スプリングフィールドの裸体が……。
もしその時に指揮官の部下たる人形達がいた時には、もしかすると血の雨が降るかもしれない。
「……基地によっては最悪死人が出るんじゃないか?」
「宛先の指揮官なら少なくとも血の雨は降るな。部下の人形達に慕われているらしいからなー」
「やっぱりテロじゃないか」
送り主不明の荷物をほいほいと開けるとは思わないが、だがもし指揮官の代わりに人形達が開けたとしたら……さらに大変なことになるだろう。
「この荷物の元を辿りつつ現状を本部へ連絡。それからこのスプリングフィールドの処遇をどうするか指示を仰ぐぞ」
「わかった。……そういえば指揮官?少し鼻の下が長くなっていないか?」
「ん!?……まあ、アレをもろに見ればなぁ。正直、人形と誓約するヤツの気持ちなぞわからんと思っていたが。ちょっと理解できてしまったな……」
「ボス?人形と誓約することは結婚とはちと違うんだぞ?あとしみじみ言ってるけど、つまるところ女の裸を見たのとほぼ同じだからな?」
「しょうがないだろう!?私を好いてくれる女性なんていたと思うか!?その……直に見たのだって初めてなんだ!」
「そんなカミングアウトされても反応に困るぞボス!」
G&Kの戦術人形達は総じて美しい女性の容姿のものが多い。
特定の人形に好意を抱き、その人形からも好意を抱かれそのまま結婚した指揮官の事例がいくつもある。
この補給基地の指揮官は、それに反対こそしていないが懐疑的であった。今までは。
「よく考えれば、見た目も綺麗で、よく尽くしてくれて、でもちゃんと自分の意見も言ってくれて、『あなたは真面目すぎる』と敬遠されることもなく、『お仕事お疲れ様』とか励ましてもくれる。……あれ?私の理想の女性って戦術人形達じゃないか」
「落ち着けボス!なんか色々ダダ漏れだぞ!ちょっと聞いてて恥ずかしいからな!?……いや、いっそこのまま吹っ切れてくれた方がいいのか?」
「指揮官もトンプソンもいい加減にしないと殴るわよ?」
暴走具合が凄いことになってきた現状を1人の戦術人形が打破する。
それはこの補給基地所属警備部隊の1人、FALであった。
「あなた達ねぇ、昼間っから何を色ボケしているのよ。まだ業務時間なんだから終わってからしてくれないかしら?」
「ハッ!……すまんFAL、迷惑をかけた」
「あと少しだったのになー」
「トンプソン?」
「ゴメン」
FALはこの基地きっての常識人枠である。服装は常識的とは
なお、彼女のダミーも例外なく暴走する。それはまた別の話で。
「指揮官、この倉庫の荷物、宛先がS09地区のある基地へ向けた品物が多いのだけど何かあったの?」
「ん?……あーあー、そういえば風の噂で聞いたが大規模作戦の立役者が自分の所の人形と結婚するらしい。その関係じゃないか?」
「そういうことね納得だわ。輸送車両の編成がちょっとすごいことになってるのよ。これは間違いなく追加の護衛部隊がいるわね」
「わかった、人選は任せる。相手方に失礼のないようにな。それにしても、自分達で準備しているのか。支給物資は使わない気か?」
「いや、支給物資に結婚に使えるものなんてないだろうボス。基地の運営に使えるものだし」
そういえばそうだなと指揮官は納得する。
納得しつつ一つ思いついたことがあった。
「結婚の先輩として聞きたいことができたな……。我々からも何か送るか」
「花でも送るのかい?」
「いや、それほど関係ない基地からいきなり花を送られても困惑するだけだろう。少々建材や何やらを増やしておけばいい。理由は後付けでいいさ」
「わかった。少し水増ししておくよ。別基地に輸送予定の物が多かったからとかなんとか理由は付けておく」
「ああ、頼む」
その後、しばらくしてから指揮官は第8倉庫を後にした。
だから指揮官は知らない。
第8倉庫の中で指揮官を巡った小競り合いが起こったこと。
指揮官が人形との関係を深くへ興味を示し始めたことが人形達の間で瞬く間に広まったことを。
ここの指揮官とトンプソンはどこへ向かうのか作者にもわからない。
スプリングフィールドのくだりは完全に暴走です。
ダミー達も安定の暴走です。たぶん愉悦部に入ってると思う。
FALのダミーはどうさせよう(ゲス顔
さて、今回はユノちゃんの結婚式に間に合わなかったからって、式前に資材を水増しして送ったことにするという歴史改変をしてみました。
一応許可は得ておりますが、コラボという訳ではなく一方的なものですのであしからず。変な所あったら言ってください、修正します。
そろそろS666の方も進めないとなー。
誤字脱字ありましたら、お手数ですがお教えください。よろしくお願いします。