インフィニットオルフェンズ外伝 ~三無を束ねし、煌めきの雲海~   作:IOノベライズ 制作チーム

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#00 狡猾なる兎の魔の手(マッド・シード・プロローグ)

「……の………い…」

 

「うう……ん……」

 

今、惰眠を(むさぼ)っている僕の名前はキラ・ヤマト。

()()()()()別の世界から篠ノ之 束さん、という人に拾ってもらい、

今はこの人の研究室でお世話になっています。

 

……と言っても、束さんはとても…その…変わった人で。

 

僕がコーディネイター──遺伝子操作された人間だっていう事を初対面で見抜いたと思ったら、急に駄々をこねだして小さい子の発想のような滅茶苦茶な事を僕に頼んできたり。

あとは……まぁ、とにかく毎日色んな事をしています。

助けてもらった恩もありますし……逆らう理由も無いんですけど……。

 

昨日も遅くまでこの世界の特殊な兵器──IS(インフィニット・ストラトス)の作業をしていたので……今日はもう少し寝ていたいです。

 

このままもう少し目を閉じていたいのですが……。

 

「キラ君の……い!」

 

「んん……束、さん……?」

 

なんだか、さっきからすごく近くで束さんの声がするんです。

 

僕の寝室には、流石に束さんでも入らないように言ってるような……。

殆ど私室だから、ちょっと見られるのは恥ずかしいし……。

 

「キラ君の!ちょっ……たい!」

 

段々と大きくなる束さんの声。

どんどん距離が近くなってきて……え?

 

このままだと顔の位置は殆ど耳元くらいなんじゃ……?

何だか嫌な予感がする。

 

それになんだろう。この、敷布団の上から伝わる、柔らかい感触は。

 

とりあえず眠い身体に命令を送り、まずは重い瞼を開く。

 

束さん、一体僕の近くで何を……?

 

 

「キラ君の!ちょっといいとこ!見てみたい!

 

キラ君の!!ちょっといいとこ!!見てみたい!!

 

キ ラ 君 の !!! 」

 

「うわぁぁあああっ!!?」

 

 

目を開いてまず映ったのは、僕の顔の間近に迫る束さんの無邪気な笑顔。

次に気付いた事は束さんがベッドで寝ている僕の上で、腹ばいのような状態になって密着している事だ。

 

つまり、さっきの感触は多分束さんの……。

 

「ちょ、ちょ、ちょっと!束さん!いっ一体何のつもりなんですか?!」

 

「あっ。やっと起きたー!ずーっと言ってたけどー。キラ君の、ちょっといいとこ、見てみたいなー!ってー」

 

「え…?」

 

いや、寝起きで突然言われても。

僕の上で頬杖ついて両足ぱたぱたされても。

起きれないんですけれど……。

 

 

 

「とりあえず!朝ごはん、食べよっか!」

 

「そ…そうですね…」

 

 

ようやく僕の上から降りてくれた束さんと一緒に、研究所のホールのような部屋へ移動する。

 

そこには用意された朝食と、僕と同じように束さんに拾われた、もう一人の同居人が。

 

「……おはようございます。束様。キラ様」

 

「おっはよーっ!クーちゃん!あいっ変わらずかったいなぁ~」

 

「お、おはようございます……クロエさん……」

 

束さんが「クーちゃん」と呼んでいる女の子。名前はクロエ・クロニクル。

白いセーラー服のような恰好に、銀色の長髪、いつも閉じているような目が特徴の子だ。

 

この子もたまに、束さんのお手伝いで色々な事をしているみたいだけれど、

僕とは分野が違うみたいで、何をしているのかはよく分からない。

 

生体同期型……?っていう特殊なISを持っているみたいだけれど、今の所それも見たことはない。

 

「今日は…その…言われた通り、チャーハンを作ってみたのですが……」

 

束さん同様、この子も一見すると可愛らしい女の子、なのだけれど……。

 

「へーぇ!よーっし!いっただーきまーっす!!」

 

……少し、ちょっと困った部分があるんです。

主に……食事の時なんですが……。

 

「はぁーーむっ!あむあむ!んんぅーーっ!んーー!」

 

束さんはなぜかとても美味しそうに食べるんですが……。

 

 

僕にはどう見ても、クロエさんの料理が大概、黒い塊か変な色のスライムのように見えて仕方がないんです……。

 

 

 

「んーーーっ!おっいっしぃーーーーっ!!!グゥレイトォ!」

 

「あ…あぁ…でも…」

 

「とってもおいしいよ!クーちゃん!キラ君もほらほらー!朝ごはんは大事だよー?食べなよ~?女の子の手料理を朝から頂けるなんてイケイケな男の子だねぇ~キラ君はぁ~」

 

「いえ…僕は…その……」

 

「そ、そうです…束様……」

 

本人も料理がうまくいっていないのは自覚してるのか、束さんが食べている時は、いつもすごく申し訳なさそうな顔をしてそれをずっと眺めている。

 

……とても心苦しい光景です。

 

「駄目だよキラくぅん。ちゃんと出されたものはしっかりと……」

 

「そ、それより束さん!さっき言ってた用事って何ですか?」

 

「あ。……そういえばそうだったね!」

 

ふぅ……。とりあえずこれで何とか凌げた……!

 

 

前に食べた時は半日そのまま寝込んだしなぁ……。

あの時は虹色のお好み焼きだったっけ……。あんまり思い出したくはないけれど……。

割とシンプルな鉄板料理のはずなのに、一体どうやったらあんな風になるんだろう……?

 

とりあえず頭の隅に行っていた情報をよいしょよいしょ、と引っ張り出すようにしながら、束さんはチャーハンらしきものを口へ運びつつ僕への用事を話し始めた。

 

「えっとねー?束さんはほら、天才でしょ?でもやっぱり足らない物もあるんですよー。ホラ、アレとかコレとか作ってますから?ちょっと猫ちゃんの手が欲しいかなって」

 

「ぐ…具体的には……?」

 

「え?あーっとね。無人機!前に作ったでしょ?あれの新しいの作るのにちょーっと実働データがねー。なるべくいい奴。キラ君の世界の物とか見たいなー。出来たら一番いいのはー、キラ君自身を再現したの、くらいが欲しいかなーー?」

 

「む、無人機……。え?……まさか僕が?ISを?作るんですか?!」

 

「コア以外は大体さくっと教えたでしょー?いよいよキラくんの実力テストー!どれだけできるかなーって、ワタシ楽しみだなぁー!キラくんのプログラミングなら自分の再現くらいも、お茶の子さいさいでしょ?好きに使っていいコア幾らかあげるから、それ使って思い通りの仕上げてね!」

 

一人で喋り終えると同時に朝食をすべて平らげ、そのまま束さんは自分の研究室へ走っていってしまった。

 

「はぁ……」

 

何だか、とんでもない事を、頼まれた気がする。

 

僕が、無人ISを?しかも、自分を……再現?

……確かに、この世界で必要なISの技術は、束さんから教わったから、出来なくはないけど……。

 

去り際に手渡されたコアは全部で8つ。多分、全機同じなのは求めてない。

元の世界の物が見たいって言ってたし、ISでモビルスーツを再現すればいいのかな……。

 

……でも束さんに拾われてから、どうにも元の世界の記憶があやふやなんだよね……。

 

束さんに初めて会ったのも、アスランと戦った後だっけ……。

あるいは――

 

 

ヤキンであの人と……。

 

 

いや、今は考えても仕方がない。

 

とりあえず一部は同じ機体になりそうだけど、物自体はすぐに作れそうな気がする。

 

問題は実働データ……。

どうやって取ったものか……。

 

 

 

 

──数時間後──

 

 

工房で一人、IS製作の作業をしていた時、不意に後ろから声を掛けられた。

 

「あ、実戦データ取る方法を伝え忘れちゃってたー!えへへ」

 

「うわっ?!」

 

一切の気配や音を消して近づいたのか、真後ろから話しかけてきたのは、先ほど僕にとんでもないことを頼んだ張本人。束さんだった。

 

「その辺で悩んでると思ってねー!いちおーちゃんと手は打ってあるよ!ほら、箒ちゃんにメール!昨日くらいにキラ君の端末で送っておいたから!そっちの作る期間考えて、向こうに届くのは数日後くらいかなー」

 

「そうですか……」

 

「箒ちゃん」というのはこの束さんの妹さんで、篠ノ之 箒さんという名前だ。

普段はIS学園という場所にいて、束さんから第四世代型IS『紅椿』というのを貰っている。

それを渡した時に僕も会っているんだけど、正直あんまり似ていない姉妹だった。

 

他にもIS学園には一夏さん、オルガさん、三日月さん、セシリアさん、鈴さん。

シャルロットさん、ラウラさんといった人たちがいる。

あと、少し前まで僕たちと一緒だったマクギリスさんも2学期から先生として学園に赴任するみたい。

 

オルガさん、三日月さん、マクギリスさんは僕と同じように違う世界から来た人らしいんだけど……。

多分、僕と違う世界から来たみたいだ。どんな所なんだろう。少し気になる。

 

でも、あの人達なら確かに、そういうデータ採集には適任だとは思うけど……ん?

 

さっき束さん「メール」って……!?

 

「……って!ちょっ、何してるんですか!?僕の携帯を勝手に!……ど、どんな文面で?」

 

すぐにポケットから携帯を取り出して履歴を漁る。

……あった。確かにこれは出した覚えのないメールだ。文章は……えっと……。

 

 

『ぱっぴー☆僕です。キラ・ヤマトです。

キラ・ヤマトが、12時くらいをお知らせします。

 

ぴっ

ぴっ

ぴっ

 

それでも!守りたい世界が!あるんだあああああ!

 

 

てことで、僕です。みんなが大好きな束さんの傍でお仕え出来て光栄です。

そんな愛しの束さんが僕の告白に答えてくれた特別なデートスポットを教えます。

みんなで来てください。旅費は全て僕が持ちます。お弁当も用意してください。

バナナはおやつには入りませんが、じゃ〇りこは入ります。是非来てください。

日程と場所のデータも送付しておきます。絶対にみんなで来てください。

待ってます。

 

 

それじゃあね!

 

キラ・ヤマトでした。ぱっぴー☆』

 

 

 

「…………」

 

なに これ は?

 

どう考えても僕が打ったとは思えないメールの文面。

でもなぜだか、ほのかに、これは僕だと思われそうな気がする。なんとなく。

そして内容にとても怪しさしかない。……こんなので本当に来るんだろうか?

 

そう思いながらもう一度文面を読み直してみると、引っかかる部分がすぐに出てきた。

 

「……って!お金全部僕なんですか?!」

 

「俺のおごりだー!っていうと、大体みんな喜ぶよ?」

 

「それにこんな文面で、本当にあの人達来てくれるんですか?」

 

「なんとかなるなるー!ほら、作って作ってー!何なら、パンツロボとか作ってもいーよ?」

 

「な、何ですかそれ?!そんなの作りませんよ!」

 

 

駄目だこりゃ。こうなってしまった束さんはもう何を言っても止まる事はない。

 

……これは、僕の財布の中身が全部吹っ飛ぶだろうなぁ……。

よくよく考えてみたら、この送付データにある日付までにISを仕上げないとだし……とりあえず、今から全力で取り組まないと……。

 

 

 

えーっと……基本はゴーレムIの設計を使って……。

両腕と背部の改装で十分かな……?

あ、そうなると頭部と胴体も……。

ってこれ、全面改修だ……。

 

 

 




次回は3月21日の17時に投稿予定です
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