インフィニットオルフェンズ外伝 ~三無を束ねし、煌めきの雲海~ 作:IOノベライズ 制作チーム
各々、自らの対峙すべきストライクと交戦を始める鉄華団。
その中で最初に勝敗が決したのは、セシリアのブルー・ティアーズとライトニングストライクの戦いだった。
「…どこ…?どこですの…?」
ブルー・ティアーズの主力装備であるレーザーライフル『スターライトMk-Ⅲ』のスコープを覗き、ひたすら遠方を見渡し、己の敵を探すセシリア。
その一見無防備な姿は、ライトニングストライクに丸見えだった。
「ッ!そこっ!」
無人機の二射目。セシリアが覗くスコープに雲海に浮かぶ小さな影が映った瞬間の事。
タッチの差でセシリアも最大出力のレーザーを発射した。
「ぐうっ!」
先に弾速・射程で勝るライトニングストライクのレールガンが届く。
それはほぼ直撃に等しかったが、射撃直後にとっさに放ったセシリアのISの名前の由来でもあるビット兵器『ブルー・ティアーズ』を盾代わりにし、そのレールガンの砲撃を防御する事に成功。
レールガンの直撃を受けたビットは至近距離で爆発したが、セシリアのIS自体は大事には至らなかった。
一方、スターライトMk-Ⅲから発射された最大出力のレーザーは、見事ライトニングストライクのコアを撃ち抜く。
「チェックメイト……ですわ」
そして、コアを撃ち抜かれたライトニングストライクはその機能を停止させ、静かに空の底へと墜ちて行った。
「……え?ええっ?!まずライトニングが墜とされるなんて……。アレだけは束さんに手伝ってもらった特別製だったのに……。セシリアさん、凄いですね……。これで残るは七機。まぁ、僕の負担も減るんですけど……」
山の頂上、バルコニー付近に隠れ潜むキラは、そう呟きながら
立体映像のようなコンソールに両手で忙しく入力してはいるが、無人機特有の『粗』を消す為の簡単な命令を細かく送る程度で、この状態のキラを狙った所で無人ストライク達の強さはさほど上下しない。
むしろ、問題はセシリアのブルー・ティアーズのエネルギー切れの方である。
「セシリア!大丈夫!?」
「返事をしろぉ!セシリア!!ヴヴッ!」
端から見ればレールガンの直撃を受けたようにも見えるセシリアを心配して、シャルロットとオルガが戦闘を継続しつつ、声を掛ける。
「ワタクシは問題ありません!…ですが、スターライトMk-Ⅲを最大出力で放ってしまったので、エネルギー切れを起こしています。もう戦えそうにありませんわ……。申し訳ございません……」
「うん、大丈夫!セシリアはキラさんを探して!多分、山の頂上にいると思うから!」
「わかりましたわ!シャルロットさんはオルガさんを!」
そう言って、セシリアがオルガの方を見ると……
「ヴヴヴヴヴァアアア!!!!」
キボウノハナー キボウノハナー キボウノハナー
オルガは相変わらずランチャーストライクの砲撃を浴びて、希望の花を咲かし続けている。
「任せて!オルガは必ず僕が助けるから!!」
(先ほど、庇ってもらった借りは必ず返しに参りますわ。どうかそれまでご武運を。オルガさん、シャルロットさん……)
____________________________________
そして、次に勝敗の決した戦いはラウラのシュヴァルツェア・レーゲンとランチャーストライクだ。
お互いに主武装である大型砲『ブリッツ』『アグニ』を撃ち合い続けているが、両者決定打にはならずにいた。
(やはり、普通の戦い方では埒が明かない。ならば、残る手は唯一つ…!)
そう判断したラウラは動きを止める。
好機と見たランチャーストライクはアグニの砲口をレーゲン本体へ向けチャージを始めた。
直撃を受ければ撃墜は免れない威力。
しかしラウラはそんな事は意に介さず、眼帯に手をかける。
≪…え?ま、まさか…≫
「ふっ……」
含み笑いをしながら、眼帯を外したラウラは、レーゲンに搭載されたあるシステムからの問いに答える。
『汝、力を求めるか?』
(ああ、よこせ。いいからよこせ!私の仲間を…友を、守る為の力を!)
システムの機械音声に答えた途端、レーゲンは光に包まれ、その姿を大きく変える。
「―――行くぞ、アインッ!!!!」
≪ええ、行きましょう!ボーデヴィッヒ特務三佐!!≫
「私はそんな階級ではないっ!…ん、三佐とは少佐の意だと?…あってはいるな」
シュヴァルツェア・レーゲンに搭載された『VTシステム』を発動させ、無機質な機械音声は活力溢れる男性の物へと変わり、その姿はオルガ達の知るモビルスーツ『グレイズ・アイン』の物へと変貌する。
かつてはその力に飲まれ、暴走していたこの形態。
福音戦にて制御下に置くことに成功したラウラは、以降滅多に使用しない奥の手として未だシステムを取り外さずに残していたのだ。
「この禁忌の力を以て、私は、お前をッ!」
≪あれは……!ガンダム・フレーム!忌まわしき悪魔の機体!あの野蛮な獣を討てばよろしいのですね!私の!正義の鉄槌にて裁かれろぉお!!≫
VTシステムの声は頭部の赤く大きな単眼をギョロギョロと脈動させ、敵対するガンダムを見つめる。どうやら機嫌がいいらしく、全面的に協力してくれそうだ。
≪ちょ、ちょっと待っ!しまった、VTシステムがあったのか!ランチャー2!回避に専念!絶対に接近を許さないで!≫
キラは戦闘方式が大きく変わるこの形態を失念していたらしく、一瞬、全機同時遠隔簡易操作から、ラウラの相手をしているランチャーへの集中的な指示出しに切り替える。
「…ッッ!?何よ、今の!」
その一瞬、その時の一撃のみ、ラウラのランチャー以外の全機の攻撃が異様に重くなったが、その事に気付いたのはわずかであった。
「ええい!この姿を見るなり逃げ回って!」
攻撃から回避に重点を置くようになった無人機の機動性は凄まじく、肩のバルカン等も併せて近寄る事は困難となった。
(この両手の斧さえ決まれば……。奴の動きを封じる手段は無いのか?……そうだ!今の状態で、レーゲンの武装が使えれば……!
とっさに幾つかの操作を試すラウラ。敵の弾幕をかいくぐりつつ、何とかすんなりとシステムを繋げることに成功。
空をアクロバティックに舞うグレイズアインの背から、本来はレーゲンの武装である6つのワイヤーブレードが伸びる。
≪え?ええ?!そんなの、聞いてないですよぉっ!?≫
「当たり前だ!私も出来るとは思っていなかった!だが出来たのだ!ならば…よし!捕らえたっ!」
VTシステムの補助により速度と威力を増したワイヤーブレードは、逃げ惑うランチャーストライクを追尾、拘束。
その巻き付けたワイヤーを手繰り、馬乗りのような形で密着する。
「…これでもう、逃げられまい…!」
≪お迎えに上がりました。今その罪穢れを祓いますので、どうか動かぬようにぃッ!!≫
そこから始まったのは、一方的な解体だった。
先ず手に持っている砲と肩のランチャー類を使えぬよう破壊。
次に左右の手にそれぞれ持った大斧を、まるで巨大な太鼓でも叩くかのように、
何度も大きな動作で降り下ろし、ストライクの全身に幾つもの深い切れ込みを入れていく。
(ふふっ……。まるでミカの戦い方が移ったかのようだ…!破壊の感触が直に手に伝わる…。我が嫁はいつもこのように武器を振るっていたのだな…)
≪あぁ…!分かる、私の純潔なる真理の刃によって、彼が清められていく様が!もっと…もっと叩きつけなければ…!正しさを!道徳をッ!!!粛清!粛清ィィ!!≫
打ち込まれる刃の速度は回を増すごとに速く、暴力的となり、あっという間にストライクの装甲はくまなくズタズタとなった。それでもまだ重要部分は耐えれているのか、苦し紛れに頭部から小型機関砲『イーゲルシュテルン』をグレイズアインに浴びせ、ささやかな抵抗を行う。
「…む。少し雑にしすぎたか。引っかかったな」
やがて大斧の1本が無人機の身体に食い込み取れなくなる。
「…ならば、これを試すしかあるまいな!」
仕方なく斧を手放したグレイズアインは、その手を高速で回転させ、既に甚大な破損を受けているストライクの装甲へスクリューパンチをねじ込む。
けたたましく金属の削れる音が立ち、衝撃で跳ねているのか、あるいは苦しみ悶えているのか、敵無人機はしばらく活きのいい魚のようにうねり、その後ようやく沈黙した。
≪やりました…やりましたよ!!ボーデヴィッヒ特務三佐!貴女の機体として活躍しました!ボーデヴィッヒ!!特務三佐!!!!私は、私の正しっ……!!≫
「ええい、うるさいっ!」
ランチャーストライクの撃破と同時に、
とにかく叫ぶVTシステムに耐えかね、ラウラは変身を解除。
元のレーゲンへとISを戻す。
「よし。他の皆の加勢に……。いや、流石に荒々しく戦い過ぎたか。エネルギーが底をついた。すまない、下がらせてもらう」
消耗の激しい形態の使用により、エネルギーを切らしつつあったラウラはバルコニーの付近へと引き下がる。
その道中──
「あっ」
「えっ?」
山の上に設けられた足場。その真下の骨組付近に、キラ・ヤマトは潜んでいた。