インフィニットオルフェンズ外伝 ~三無を束ねし、煌めきの雲海~ 作:IOノベライズ 制作チーム
砲撃型の無人ISをVTシステムを使って倒した後、私──ラウラ・ボーデヴィッヒは山の上のバルコニー付近に設けられた足場の真下の骨組で、その無人ISを操っていた張本人──キラ・ヤマトを見つけた。
「さて、どういうつもりなのか、吐いてもらおうか?」
「うぅ……」
とりあえずひっ捕らえたはいいが、やけにカチャカチャやっているコンソールの操作は何故か止めさせようとしたら涙目で懇願してきたので特別に見逃してやった。
実際、こうして私が拳銃を頭に押し付けている今もその作業は続いている。
「ワタクシたちを罠にはめようなんて、いい度胸ですわね!」
キラを捕らえた後、山頂にやって来たセシリアも私の横でキラを睨みつける。
「分かっています。元々は束さんの命令で、新型用のデータ採りなんです。それで僕も貴方達なら大丈夫だと思ったので……」
やはり、篠ノ之 束が絡んでいたか……。
ミカの勘の鋭さは流石だな。うむ、自慢の嫁だ。
「……成程な。よくもそんな勝手な事を、と言いたい所だが……。私達の実力を高く評価しての行い……という訳か」
「はい」
そう短く返事をしながらも、やはりコンソールを動かす手は止めない。
私はそんなキラにこう質問した。
「それで、銃を向けられてもなお、忙しなく続けているそれは一体何なんだ?」
「無人機へ命令を送っているんです。八機……いや、今は六機ですね。とにかく全機を簡易的ながら操作してる。……とでも思っていてください」
その説明を聞いたセシリアが驚嘆の声を上げる。
「はい?!そ、そんな事できるんですの……?!自律である程度動いてるのを加味しても……ISを?一人で?同時に?!」
「えぇ。それに、今僕を撃っても構いませんが、もし僕が死んでもあれらは止まりません」
…まあ、流石の私も殺すつもりはなかったんだがな……。この銃も中身も実はゴム弾だ。まぁ、言うつもりはもちろんないが……。
「それどころか、何が起きるか…保証できませんよ?最低でも終わるまで待ってください。お詫びならその時にいくらでも致しますから」
「操作しているのだろう?今すぐ電源を落とせ」
「無理ですよ……。アレを作ったのは僕ですが、与えられた権限が違うんです。僕にできるのはここから指示を送る程度。あのストライクは壊さない限り動き続けます」
「くっ……いいだろう。では私達はここでお前と共にミカたちの観戦をさせてもらうとしよう。もちろん見張りもさせてもらうから、逃げられるとは思わぬことだ」
「逃げませんよ…。確かに皆さんならよっぽど大丈夫とは思いましたが……」
キラは小さな声でこう呟く。
「僕だって、傷つけたくなんか…無いのに…」
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「はぁ…はぁ…まったく、どこまでもしつこいなぁ…!」
なるべく長く、なるべく速く。
シャルロットのラファール・リヴァイヴ・カスタムIIは、無人機の内の一機、灰色のエールストライクとの熾烈な高機動戦闘を続けていた。
距離を離そうとすれば相手も速度を上げ、接近戦を試みても強烈な蹴りが待つ。
現状で出来る対策は、自らの得意な中距離を保っての撃ち合いに徹するのみであった。
「こっちもそうだけど…向こうも全距離対応って、やりづらいなぁ……。でもこのまま続けても終わる気配ないし、オルガが…!」
シャルロットの視線の先。
そこには開始から十数分経っても、未だ機銃で撃たれては蘇りを無限に繰り返すオルガの姿。
自力での脱出は様子から見て困難を極めるだろう。
「それにっ!結構弾丸を撒いてるのにっ!向こうは最小限で確実に撃ってくるっ!被弾もこっちばっかり…!だったらっ!」
既にかなりの弾薬を消費しているリヴァイヴ。一方のエールは一発一発を確実に狙い撃ち、エネルギーや武装はまだまだ余裕があるような気配を見せる。
なおかつ機体に幾つも掠り傷が重なっているシャルロットは、反撃の賭けに出た。
常に背後に張り付く敵の動きを逆手に取り、被弾を承知でシールドを構え転進。
エールストライクはシャルロットの想像通りビームライフルとバズーカを連射する。
全弾直撃。大きな爆発と共に呆気なくリヴァイヴの装備していたシールドは弾け飛ぶ。
だが、その盾の下にあるものを近づけるには十分な間だった。
「これでっ!僕もっ!……チェックメイトッ!!」
第二世代型ISの中でも最大クラスの火力を持つ武装。『
爆煙の中から姿を現したリヴァイヴは盾の裏に隠していたパイルバンカーを、追撃の蹴りを避けつつエールの胴へと叩き込む。
両者共に決め手に欠ける武装であった事から長期化は恐らく敵の術中。
ならば多少の被弾を覚悟で己の土俵から降り、奥の手で強制的に終わらせる。
リヴァイヴも爆散した盾を中心とした左半身に小さくない損傷を受けたが、結果、見事にエールストライクの胴体には大穴が空き、一回だけの小さな爆発と黒煙を残して無人機はその機能を停止した。
「はぁ…はぁ…つ、強かった。……っ!そうだ!オルガ…!」
エールを撃破して数呼吸。中破した機体を引きずるように飛び、シャルロットは想い人のもとへと向かう。
シャルロットとエールストライクの決着がついた頃、キラがコンソールを操作している後ろで、ラウラがキラに銃を向けたまま、レーゲンの残りのエネルギーをセシリアのブルー・ティアーズに供給していた。
「ありがとうございます、ラウラさん。これでISを起動して一発撃つくらいには回復いたしましたわ……」
「えっ?……あ、あの、二人とも……。一応聞きますけど、何をするつもりですか……?」
そのキラの問いにセシリアはこう答える。
「フフッ……先ほど、オルガさんに庇ってもらった借りを返しに行くんですのよ」
「それって、オルガさんの獅電とランチャー1の戦闘に介入するってことですか!?……ちょっ、ちょっと!?待って下さい!?そんな事されたら……」
1on1にこだわってる今回の催しでそのような邪魔をされてしまったら束からどんなお仕置きを受けるかわからない……。そう思考したキラは何とかセシリアを止めようとするが、そんなキラをラウラが邪魔する。
ラウラは右手に持つ銃をキラの頭の上でぐりぐりと押し付けながら、左手で肩を掴み、全身を揺さぶった。
「貴様に自由があるとでも思っているのか!?……操作の手が停まるとマズいのだろう?やり様は幾らかあるんだぞ?」
「やっ……やめて下さいっ!ラウラさん!」
「やめて欲しければ、こちらの要求を飲んで貰おう!……そうだな、無人機の動きを鈍らせて貰おうか!それくらいならば貴様にも出来るんだろう?」
「やっ、やめて下さい!!……あっ、勝手にコンソール触らないでっ!!」
そんなキラとラウラの様子を片目にセシリアはブルー・ティアーズの強襲用高機動パッケージ『ストライク・ガンナー』を装備し、六基のビットをスカート状のスラスターとして使用して、一気に山を降り、オルガの獅電とランチャーストライクの戦闘空域へと全速力で向かう。
(オルガさん、今参りますわ……!)
セシリアが向かっているその戦闘空域にシャルロットが先に辿り着く。
「ええっと……いた!」
よろよろと空をただよい辿り着いた先で、シャルロットが見たものは……
「ヴヴッ!(♪希望の)シャルッ、俺に構わヴッ!(♪はな)止まるんじゃ(♪繋いだ)
ねえっ(♪絆を)ぞヴヴッ!(♪力にして) だからよ…止まるんじゃねえぞ…」
ただひたすら希望の花を咲かし続けるオルガの姿。
そしてオルガを的確に蘇生した直後のタイミングで打ち抜くランチャーストライク。
(大丈夫だよ、オルガ…今、助けるから!)
「はああああっ!!」
オルガを作業的に撃ち続けるストライクに憤慨し、シャルロットは
弾丸は当たるものの、ダメージは薄い……。
「くっ!……待ってて、オルガ!何とかする!必ずオルガは僕が護るから!!」
そう言って無用心に接近するシャルロット。彼女は想い人の窮地の前、冷静な判断が出来ていなかった……。
ランチャーストライクはそれまでオルガに対しては一切使用しなかった大型砲『アグニ』を接近してくるシャルロットのリヴァイヴへと向け──
「…えっ?嘘…」
────発射。
「おる……が………」
リヴァイヴは、大きな爆発の中へと消えた。
「……シャル?……シャルゥゥゥゥゥゥゥ!!!」