インフィニットオルフェンズ外伝 ~三無を束ねし、煌めきの雲海~ 作:IOノベライズ 制作チーム
「「よかった……」」
ランチャー1が暴走し、アグニの直撃を受けて雲の海の中へと落ちてしまったシャルロットさんをオルガさんが助けた様子をコンソールから眺めていた僕とラウラさんは安堵の息を漏らした。
「ラウラさんが勝手にコンソールを触ったりするからこんなことになったんですよ」
「そ、それは…貴様が……!い、いや…すまなかった」
ラウラさんは何かを言いかけようとしたが、自分の軽率な行動のせいで友を危険に晒したのを自覚したのか、素直に謝罪を述べた。
「オルガさんが助けてくれたから良かったですけど……」
ラウラさんは言葉を失くして、俯いてしまう。……ちょっと言い過ぎたかな?
「まぁ、とにかく。ストライクたちが僕の操作から離れるとどうなるかは良くわかりましたよね。全空域の戦闘が終了するまでは大人しくしていて下さい。ラウラさんのISはエネルギーもないんですし……」
そう言いながら、コンソールを操作していると、とあることに気が付いた。
箒さんの紅椿とソード1の戦闘空域と鈴さんの甲龍とソード2の戦闘空域がお互いに接近しすぎていたのだ。
これでは1on1に持ち込めなくなる危険がある。もし箒さんと鈴さんが協力でもしたら、束さんに何を言われるか……
「…っ!ソード1、ソード2!距離を取って下さい!!」
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「逃がすかっ!」
箒の紅椿が右手に持つ刀『空裂』を振るい、距離を取り始めたソードストライクへエネルギー刃を飛ばすが、それはソードストライクの大剣──シュベルトゲベールで容易く防がれてしまう。
「…ダメか…はぁ…はぁ……」
既にかなり疲労している箒は、距離が離れたこのタイミングですぐさま呼吸を整える。
それを見たストライクはその一瞬の隙をついて攻撃…することはあえてせずに、シュベルトゲベールを背中のラックに格納した。
(…?剣をしまった?こちらを見逃す訳ではあるまい。……何のつもりだ?)
不審な行動に警戒を緩めずその様子を注意深く観察する箒。
一方、ストライクはその状態で左肩へ手を伸ばし、次の瞬間──
肩の先端についていた
「っ!…んむ?外れた?」
投げられた
「…手裏剣かなにかか。だがそのような物!当たる訳が無いだろう!」
大剣を格納し、肩の装備も失くした今を好機と定めた箒は二本の刀『空裂』と『雨月』を構え、突進の勢いを乗せて、斬りかかる。
だが、その勢いは一瞬にして消し去られた。
ストライクの左腕の小盾先端部から射出されたワイヤー付きのクローを見て箒は驚きの声を上げる。
「な、なにいっ?!」
そのワイヤー付きクロー『パンツァーアイゼン』により右腕を拘束され、封じられた箒は背後に接近していた物に気付かず……
「ぐあぁぁっ!」
ストライクが先程投げたビーム刃付きブーメラン『マイダスメッサー』の直撃を受けてしまった。
さらに追い打ちか、ストライクはマウントしたシュベルトゲベールを取り出し、大きく構える。
(流石にこの剣の大振りくらいは簡単に読めるぞ…)
そう思った箒は刀で受け流す用意をする。しかし敵はそれすらも想定内だったようで──
(……ん?)
構えた大剣は振るわれず──
代わりに柄頭からビームが発射された。
「なっ…!ごがっ!?」
まさかの仕込み砲をもろに受けた箒は、咆哮を上げる。
「お、おのれ…先程から小癪な手を!許すと、思うなぁあああっ!!」
手始めに、左に持つ刀『雨月』で刺突攻撃の型を取り、レーザーを連続で放射。
そのレーザーは全て回避されてしまうが、それは箒の予測の範囲内。
レーザー攻撃を放った後、すぐに右腕についたワイヤーを切り落とし、ストライクへと急接近した箒の紅椿は両手に持つ二本の刀『空裂』と『雨月』を同時に降り下ろして、防御の為にストライクが突き出したシュベルトゲベールを叩き斬る。
そして、最後は腕を交差させてストライクの胴を貫いた。
さらについでで一太刀浴びせようとするも、ストライクは刺した刀を抜かれた途端、音も立てずに落下してゆき、雲の中へと沈んだ。
「……はぁ…はぁ……勝ったぞ……一夏…」
「箒も頑張ってるし、アタシも頑張らないと!」
箒がストライクを落としたのを横目で確認した鈴はそう言いながら、展開している甲龍の肩アーマーから『龍咆』を掃射し続ける。
それはストライクに難なく避けられてしまっていたが、鈴の甲龍とソードストライクの戦闘はどちらかというと鈴側に戦局が偏りつつあった。
鈴と対峙するソードストライクの肩には本来あるはずの『マイダスメッサー』がなくなっている。
先ほど鈴に対して投擲したそれは『龍咆』で撃ち落とされたからだ。
中距離武器を一つを無駄に失ったソードストライクは警戒して『パンツァーアイゼン』の使用を渋り、回避に専念していた。
ストライクが距離を取ったまま、回避に専念したため、鈴の甲龍とストライクの戦闘は膠着状態のまま続いていたのだ。
「さっきから、逃げてばっかで!アタシをおちょくってるわけぇ!!舐めんじゃないわよぉ!!」
(このまま鈴さんのエネルギー切れを狙ってもいいけど……まぁ、ソードストライクのデータは箒さんとの戦闘で十分取れたし、これくらいにしとこうかな)
そう感じたキラはこの膠着状態を脱するため、箒にも使用した『パンツァーアイゼン』を放つ。
「そのワイヤーは!さっきの箒の戦闘で、見てんのよぉ!!」
肩アーマーの武装展開を解除し、伸びてきたワイヤーを手に持つ双天牙月で斬りながら、鈴の甲龍はストライクへと急接近。途中放たれたシュベルトゲベールの柄頭からのビームも回避し、鍔迫り合いの状況にもつれ込ませる。
その鍔迫り合いの最中、鈴は再び甲龍の肩アーマーを展開。
「ゼロ距離ならっ!」
そして、至近距離でストライクへ向け『龍咆』を発射。砲身のないこの衝撃砲は、密着した状態でも自分に当てることなく射撃を行う事が可能である。
大量の衝撃波をゼロ距離で、瞬間的に叩き込まれたストライクは大きくひるむ。
鈴はこのタイミングを待っていた。
「アンタには一本しかないけど!!アタシのは、二本あんの、よぉっ!!!」
右手はそのまま、左手を一度放し、もう一本の双天牙月を出力。
がら空きの横腹に向け、思い切り刃をぶつけた。
「よし、入ったぁっ!このままっ!はあああああっ!!」
左の青龍刀の刃は見事ストライクの胴へとめり込み、さらに力を加える事で刃は進んで行く。
やがて鈴の刃は敵の装甲を引き裂き……
このストライクは胴と腰、それぞれが上下に分かれ、機能を停止し落下していった。
「いっ、よっしゃぁぁ!!」
そう言って握り拳を作る鈴をコンソールから眺めながら、キラはこう思考する。
(やっぱり、負けか……。でも、なんか、既視感ある光景というか。……胴と脚で真っ二つ、かぁ…。…………まるで、ブリッツの時みたいに……。いや、思い出すのはよそう。……えっと、残りは……一夏さんとのエール1と、三日月さんと戦うパーフェクトだけ……)
広がる雲の海。その空を裂き、幾度も交わる二つの流星──
二機のガンダムは数え切れぬほどの重い金属の衝突音をその空へと響き渡らせるが、未だ決着はつかず……。
「……チッ!」
三日月はその状態に苛つきを隠せずにいた。
そして──
「……さて、どうすっかな。この状況」
一夏は…………悩んでいた。