インフィニットオルフェンズ外伝 ~三無を束ねし、煌めきの雲海~   作:IOノベライズ 制作チーム

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#08 彼らのやり方

「……さて、どうすっかな。この状況」

 

一夏は、悩んでいた。

 

エールストライクに雲の中へと押し込まれ、視界の悪い中、幾度も切り結び、やがて何とか浅く一太刀浴びせたところまではよかったものの。

 

そこから始まった敵の猛攻。荒々しく繰り出される実体型の大剣『グランドスラム』の剣技。

エネルギーの消耗を抑えることを優先した一夏は、ひたすら防御と回避に専念。

 

気が付けば雲海は遥か頭上。自分は山肌に背を付け、目の前の刃を何とか受け止めていた。

いつのまにか、空高くから地面の上まで追い込まれている。

脱出しようにも、ストライクの持つ盾に押され身動きが取れない。

 

(この無人機の武装は全部実弾タイプ……。バリアも貼ってんのか?よく分からん。……多分だが、零落白夜は効果が薄い。こっちの身が削れるだけだ。だったら…)

 

「おい、無人機よぉ」

 

一夏は首を大きく左に曲げ、右手に持っていた刀剣『雪片弐型』を手放し、『グランドスラム』の刃を掴んで顔の真横の地面へと突き刺し、抑え込む。

 

そして──

 

「……この距離は、避けられないよな?」

 

突き出された盾を無理矢理押しのけ、左腕をストライクの胸へ当てる。

 

そして、白式の全エネルギーを込め、荷電粒子砲を放つ。

 

接射を受けたストライクの上半身は消し飛び、そのまま天を貫き、射線上周辺の雲は穴が空くように晴れた。

 

「これが、ミカやオルガ達から学んだ鉄華団の……いや…()()()()()だ……!」

 

 

エネルギーの尽きた白式は解除され、一夏はインナー姿で地面の上に降ろされる。

 

「ふぃー…何とかなったか……にしても…」

 

目の前にある無人機の残骸と辺り一面の風景を見た一夏は……。

 

「はぁー……山頂まで長いなぁ……。これは、戦うより疲れそうだぞ……」

 

 

 

そう呟きを漏らし、再び歩き始めた一夏が見上げた空の上では──

 

 

『バルバトスルプス』と『パーフェクトストライク』が、互角の戦いを繰り広げていた。

 

異なる世界の二機のガンダムのぶつかり合いは、ただ激しさのみが増してゆく。

 

「チッ…やっぱこいつ、一発が重い…!」

 

互いの得物を交差させていくうち、三日月は感覚的にいくつかの事に気が付いた。

顔はバルバトスをはじめとしたガンダム・フレームとはよく似ているが、その性質や特性といったものは自分たちの知っているものとはまるで違う事。

銃や砲は勿論、剣にもビームを使用している事。

 

なおIS化の影響なのか、今のバルバトスルプスには()()()()()()()()()()ようで、事実その右肩はストライクの『アグニ』が掠めた時の影響で溶け、削れ欠けている。

 

単純なパワーのみであれば三日月の方が上であるが、無人機のCPUが良いのか、遠隔操作を行うキラの入力が的確なのか、向こうは最小限のパワーで精密に狙いをつけた攻撃でルプスの姿勢を崩し、隙を突く。

 

獣のように駆け回る三日月と違い、ストライクは宙を舞うようにメイスを避け、円錐のようにぐるぐるとルプスの周囲を駆け巡り、反撃も絶妙なタイミング。荒々しさなどない、洗練された動き。

 

まさに蝶のように舞い、蜂のように刺す動き。

 

「…すごいな、あの動き……なんか、奇麗だ」

 

三日月・オーガスとは、戦い方がまるで逆。

本能に従うバルバトスと、理性を貫き通すストライク。

 

傍目には激しすぎて拮抗しているように見える戦いでも、実際の相性はかなり悪い物だった。

 

もう何十回目かにもなる交差。

大剣をメイスで受けたルプスを、視界の真下から鞭のような鋭い蹴りが襲う。

重量差か、何かの影響か。ルプスは衝撃で弾き飛ばされる。

 

よく見れば、いつの間にか灰色だったストライクには、バルバトスと似たような色がついていた。

 

「ッ!!」

 

ルプスが体勢を立て直す一瞬の間に、ストライクは大型砲を構え、直後に砲口にエネルギーが溜まってゆき──

 

 

 

 

 

ストライクの持つ『アグニ』はビームに貫かれ爆散した。

 

 

「…ッ!?」

 

 

そのビームが放たれた方向からとある男の声が聞こえる。

 

 

「…よう、ミカ。苦戦してんなぁ?」

 

 

 

「…オルガ?」

 

 

三日月が見下ろすと、そこには雲海ギリギリの場所から、ストライクの武装の筈の『アグニ』を持ったオルガの獅電の姿があった。

 

「便利そうだったからよ、地面に落ちる前にくすねてきた。それが()()()()()()……だろ?ミカ?」

 

「…そうだね…そっか…うん…!」

 

「ああ、それでいい…!」

 

 

 

そして、オルガはこう叫ぶ。

 

 

「────やっちまえ!ミカァ!!」

 

 

「あぁ、そうだね…!!」

 

 

そのオルガの叫びに答えるようにバルバトスルプスの目が瞬くように光る

 

 

「んじゃぁ、行くかぁ!!!」

 

 

先程のビーム砲で完全にエネルギーが尽き、空中で消える獅電。

三日月に向けて笑い、親指を立てながら雲の中へと落ちていくオルガ。

 

その姿を見送った後、ルプスは静観するパーフェクトストライクを睨む。

 

「…あんたのやり方がどうなのか、知らないけどさ」

 

突撃。迎撃の為ストライクは右肩からミサイルやガトリングを放つ。

しかしそんなものには全く意に介さず、なおも前進。

瞬く間に装甲は穴だらけになるが、彼は────止まらない

 

やがてストライクの間近に辿り着き、ソードメイスを降り下ろす。

瞬時にシュベルトゲベールで受けられ、また蹴りが炸裂するかに見えた。

 

だがルプスはストライクの足を左腕で受け止め、握り潰す。そして、ストライクのひしゃげた足を放し、がら空きの胴に拳を叩き込む。

 

……が、まだ浅い。

 

「チッ……これならっ!!」

 

三日月はソードメイスの向きを変えた。

 

ストライクのシュベルトゲベールは左肩であえて受け止め、今度は思い切りメイスを叩きつける。

 

そこまでやって、ようやくストライクは体勢を崩す。

 

よろめいたついでにストライクは左手にシュベルトゲベール、右手にマイダスメッサーを持ち、その両方を同時にルプスへと向けるが──

 

両腕を振り上げた瞬間、ルプスはソードメイスを投げつけ、ストライクの行動を阻害する。

 

そして、再び懐に潜り込んだルプスは腕部の砲を展開。ストライクの胴体に両手を突き刺すようにして固定し、至近距離から連射。

 

無論ストライクもそれを黙って受ける訳がない。

 

両手の大得物を手放し、腰からナイフ『アーマーシュナイダー』を取り出して、ルプスの右アンテナを裂く。

続けて肩、腕、胴を滅多刺しにして抵抗する。

 

 

密着した両者は激しく攻撃を繰り返し……。

 

お互い、瞬く間に全身に傷が増えてゆき……。

 

 

やがて内側に直接、弾丸を大量に打ち込まれたストライクは機能停止。

大きな爆発を起こして砕け散った。

 

 

「………こいつが、()()()()()()だよ」

 

 

雲の晴れた青く煌めく大空には、ボロボロとなったバルバトスルプスのみが──ただ残った。

 

 

 

 

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