マクロスΔ 全てを斬り裂く妖刀   作:nasigorenn

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上手く書けなくて苦労中ですね(笑)。
そしてミラージュはどこに向かっているのだろうか………。


第十話 通過儀礼

 この度行われる最終試験……それはハヤテとミラージュによる一対一の模擬戦だ。機体条件は同じVF-1EX同士。そして勝敗に関してハヤテは時間内にミラージュに一撃でも当てることが勝利条件。その間は何発でも被弾しても良しという圧倒的有利。対してミラージュは時間内に一発も被弾してはならない、尚且つハヤテに必ず一撃は当てる事が勝利条件。誰が見ても明らかに不利。だがそれは素人目にしか過ぎない。なぜならば彼女は素人ではないし新人でもない。実戦を経験したプロである。実戦に於いて被弾が致命傷になりうることは当たり前。故にミラージュは自分の不利に悲観しない。当たり前の条件だとしか感じない。

 その上ではっきりと彼女はハヤテに告げる。

 

「本気で飛びなさい。みっともない姿を晒そうものなら時間内にお前を撃墜します」

 

彼女は本気で堕とすつもりでいた。この模擬戦という状況であろうとも、彼女は本気で殺すつもりでさえあった。

 何故か? 戦場を嘗めている輩が許せないからだ。自分達が飛ぶのは命のやり取りが行われる場所。命を賭ける覚悟もない者が飛ぶというのは戦士にとって侮辱に他ならない。それにこれはハヤテの為でもある。まだ戦場を知らないなら知らないままでいい。無闇矢鱈に命を賭けるような場所など知って良いものではないのだ。故にここで堕とす。そしてケイオスから追い出せば彼は戦場から遠ざかるだろう。その恐怖を刻みつける。そうすれば『戦場』で飛ぼうなどという考えはなくなるだろうから。

 最後に………彼女にだって自覚はあるのだ。アキトがよくミラージュのことを正義の味方だと言う。そのつもりはないし、寧ろアキトにはヒロインのお姫様にみてもらいたいなんていう願望もあったりするのだが、ソレとは別にアキトに格好いい姿を見てもらいたいというものあったりする。完全に私欲だったりするのだが仕方ない。そういう年頃なのである。

 そんなわけで始まった模擬戦。互いに旋回してすれ違いそこからスタート。ハヤテがすれ違ったミラージュの姿を探しながら旋回を行おうとするが、その前に既にミラージュがハヤテの後ろを取りペイント弾を発射する。放たれた銃弾は見事にハヤテの青い機体をピンク色の弾痕を刻み込んだ。実戦であれば既に致命傷であり、今回のルールによってハヤテは助かっているに過ぎない。そんなハヤテの機動を見てミラージュは嘲る。

 

「素人め」

 

 同じ機体でもこうも動きが違うのはそれこそ操縦技術の差である。ハヤテが本能的に機体を動かすのならミラージュは基本に忠実に機体を動かす。故に無駄がなく安定した機動を行えるのだ。プロと素人。その差は明確であった。

 被弾したら終わりというのはミラージュのみ、故に模擬戦は継続される。ハヤテは何とか反撃しようとミラージュの追撃を逃れようとするのだが、プロである彼女はそれを許さない。ハヤテの背後を常にキープし、そして反撃の手を緩めないのである。彼女が引き金を引く度にハヤテの機体は染まっていく。ハヤテは引き金を引くことすら許されなかった。ただミラージュの追撃をどうにかしようと躍起になる。その結果が一方的な模擬戦となっていた。

 

「覚悟のない者が戦場に出るな!ここで引導を渡してあげる」

 

容赦ないミラージュの攻撃にハヤテは追い詰められていく。どうにかしなければと考えるが良い考えは浮かばない。ルールのお陰でまだ飛んでいられるが、それはお情けとしか言いようが無い。それが更にハヤテを煽る。勝たなければ飛べなくなる、それが彼にはとても怖く感じたのだ。その脅迫観念に駆られ、強張る身体に檄を打つ。

 そこで一つ妙案が浮かんだ。このまま飛んでいても嬲られるだけ。ならばここは一か八かの賭けに出る方がマシだと。彼個人的に言えば制御AIが邪魔をして思い通りに動けない。ならばそれを取っ払えば良い。相手の予想外の動きをして度肝を抜いてやる。そして脳裏に浮かんだのはここ数日張り合った『ウミネコ』の姿。海中を飛ぶかのように泳ぐあの機動。その中でも一際目を引かれたあの動き。そいつを見せてやると、そうきめた。

 当然制御AIを切った機体は安定性を失いふらつき始める。その機動はあまりにも不安定でいつ墜落してもおかしくない。それは間近で見ているミラージュなら尚更分る。

 

「ハヤテ・インメルマン候補生、早く制御AIを入れ直しなさい! 馬鹿な真似をするな!」

「うるせぇ、ゲロ女! 見てやがれ!」

 

ミラージュの警告も聞かずにハヤテは無茶を敢行する。だが彼にはそれを成す技術が足りないのである。結果は見ての通り、墜落まっしぐらだ。

 

「早く脱出しなさい! このままでは墜落して死にますよ!」

 

殺すつもりで模擬戦を挑んだ彼女であるが、あくまでもつもりなだけだ。本当に殺すつもりはない。だからこそ、彼女は急いでこちら側からの強制脱出操作を行おうとするのだが………。

 

「嘘!? サポートだけじゃなく遠隔操作も切られてる!」

 

ハヤテが切ったのは自分の機体のサポートだけじゃなく、外部から機体を操作する機能も切ってしまっていたのだ。故に今現在、外部からハヤテのVF-1EXを操作する方法はない。 

 その事態が発覚し、正直模擬戦どころの話ではなくなった。本部にこの報告を入れると即座に模擬戦からハヤテの救助に移り変わりかけるのだっが、ここでハヤテは巻き返した。墜落寸前の状態から機体を立て直す、そこから更にミラージュに仕掛けてきたのだ。それまでの不安定な機動から安定しつつも速い機動へと。その動きにヒヤヒヤさせられていた面々はホッとし模擬戦は継続。そして本人曰く、『フレイヤの歌が聞こえた』らしいハヤテはそこからミラージュに海で魅せられたウミネコの動き、『ウミネコターン』を太陽を背にして使い、太陽によって一瞬だけ気を逸らされてしまい動きが固まったミラージュはそこから自分の機体に被弾する振動を感じた。自分は撃たれたのだと即座に感じ、そして驚く。

 

「負けた………私が………」

 

ショックを受けた。プロである自分が素人に奇策を弄されたとはいえ負けたということに。プロとしての意識があるからこそ、そのショックは大きく、そして何故だか………。

 

(あーちゃんに嫌われちゃう!!)

 

正義の味方が負けたのだ。それがアキトに嫌われてしまうと思った。正直それだけで泣きそうになるミラージュ。やっと再会できた、そして昔のように一緒にいてくれる大切な人。そんな彼に失望されるのではとミラージュは怖かったのだ。

 そんなミラージュの恐怖など知らぬとハヤテはVF-1EXをバトロイドに変形させて空中で浮かれる様を表すかのように踊っている。そのダンスを見せつけられているようでミラージュは更に気持ちが沈みそうになる。

 そんなミラージュに通信が入った。

 

「お疲れ様、みーちゃん」

「………あーちゃん」

 

通信の相手はアキトであり、怖くて声が震えるミラージュ。そんなミラージュにアキトはいつものように声をかける。

 

「よく頑張ったね。模擬戦に負けちゃったのは仕方ないけど、でもみーちゃんらしいよ」

「私らしい?」

「ハヤテが墜落しないか心配だったんでしょ。特に後半のアレは本当に墜落しかけてたしね。それで心配で気になって仕方なかったんだよね。みーちゃんは優しいから」

「でも………言い訳です。相手の状態に動揺して油断して、そして最後には撃たれてしまいました」

 

消えるような小さい声。そんな声でしか答えられないミラージュにアキトはしょうがないなぁと話しかける。

 

「確かに模擬戦では負けちゃったけど、でもそれだけ。ハヤテだって自分で進んでこの道を選んだんだよ。ならここから先は自己責任。自分の命は自分で責任を持って守るしかない」

 

ミラージュを責める気はないというアキトだが、それでもミラージュは落ち込んだままである。

 

「それに実戦ならみーちゃんの初撃で決まってた。違う?」

「でも、それはあくまでも実戦ならです。これは模擬戦、ルールありですから」

 

負けてないと言うアキトにミラージュはそんなことないと答える。これが実戦なら、何て言うのは言い訳でしかない。ルール決まったとおり、ミラージュは負けたのだから。

 そんな落ち込むミラージュにアキトは困ったような、でも嬉しいような、そんな優しい顔をする。

 

「確かに負けちゃったけど、でもみーちゃん………格好良かった。正義の味方らしく、堂々としていて格好良かったよ。やっぱりみーちゃんは格好いいって改めて思ったくらい。昔から全く変わらないくらい格好いいよ」

 

そう言われミラージュは蹲っていた顔を上げると、少し赤くなった目でアキトを睨んだ。

 

「格好いいと言われるのはそれはそれで嬉しいですが、女性にそれしか言葉がないんですか、あーちゃん」

「み、みーちゃん?」

 

慰めていたはずなのにジト目で睨まれるという変な状況に戸惑うアキト。何故睨まれているのか分らない。

 そんなアキトにミラージュは拗ねたようにこう言った。

 

「…………可愛いって言って下さい。格好いいも嬉しいですけど、私だって女の子なんです。可愛い方が嬉しいんです」

 

そこでやっと理解したアキトは少しだけ気まずそうにして、そして次に愛情を持ってミラージュに声をかけた。

 

「可愛いよ……みーちゃんは凄く可愛い。僕にとって一番可愛い女の子だよ」

「っ!? そ、そうですか………」

 

自分で言っておいて嬉しさと恥ずかしさがない交ぜになって顔を真っ赤にするミラージュ。表情が緩みそうになって仕方ない様子はまさに恋する乙女のそれであった。さっきまでの落ち込みようが嘘のようである。

 

(あ、あーちゃんが可愛いって言ってくれました! 一番可愛いって………えへへへへ)

 

本当にさっきまでの落ち込み様はどこに行ったのか、それぐらい気分が高揚しているようだ。

 そんなミラージュの様子に気付いてなのか気付いてないのか、アキトは機嫌が良くなった彼女に微笑みかける。

 

「さて、せっかくみーちゃんが頑張ったからね。今度は僕が頑張らないと」

「あーちゃん、何かするんですか?」

「ん~~~~~………通過儀礼? 歓迎会? そんな感じのかな。その後メッサーさんと模擬戦」

 

最初の意味はわからないが、後半の模擬戦にミラージュは表情が強張ってしまう。何せ相手が相手だ。前回の模擬戦のようにかなりの激戦になるだろう。それこそ先程までの自分達の模擬戦がお遊びだとしか思えない程に。

 だからこそ、ミラージュはアキトにむかってこう言葉をかけた。

 

「あーちゃん…………頑張って下さい。応援してます」

 

こう声をかけるだけでも精一杯。だがそれだけでもアキトにとっては変わる。

 

「うん、ありがとう、みーちゃん。その言葉だけで僕は………頑張れるよ。だから見てて。今度は僕の格好いい所を。まぁ、悪役の格好いい所なんてないだろうけど」

 

自嘲しているのかそういうアキトにミラージュは声を少しだけ張り上げた。

 

「そんなことないです! あーちゃんは私にとって一番、その………格好いいですから」

 

真っ赤な顔で精一杯にそう言われ、今度はアキトがポカンとしてしまう。そして意味を理解するや頬を染めつつも嬉しそうに笑った。

 

「そうなんだ。なら頑張らないとね。みーちゃんにもっと格好いい所、見て欲しいから」

 

そして切れる通信。ミラージュは自分が言ったことの恥ずかしさに悶えつつもどこか嬉しそうにしていた。アキトに少しでも自分の好意を伝えられたことが嬉しかったらしい。

 そしてアキトの言っていたことを見るべく模擬戦の行われる空域の方に目を向ける。そこにはまだ踊っているVF-1EXがいたのだが………。

 

「いつまで踊っている」

 

冷徹な声と供にその機体に真っ赤なペイントが弾けた。

突如として撃たれたことに驚きつつハヤテは撃たれた方に顔を向けると、そこには黒いVFー31が此方目掛けて飛んできていた。機体に死神のマークがされていることからメッサーの機体であることが窺える。

 

「いきなり卑怯だぞ!」

「それが戦場だ。正々堂々、一対一の戦闘など存在しない」

 

そして一方的に攻撃されるVF-1EX。性能差がありすぎる両者では勝負にすらならない。そのことでハヤテがメッサー抗議するが聞く耳など持たない。

そしてそんなハヤテの目の前に今度は見たこともない機体が飛んできた。それはメッサーと似たような黒い機体。だがVFー31とは違うフォルムをしていて一部が血のように紅い。その機体はバトロイドに変形すると背中からかなり長いブレードを引き抜きそして………。

 

「ハヤテ、おめでとうって言いたいけど………この『戦場』にそういうのは不要だ。浮かれて踊るなんてもっての他だよ。油断大敵ってことを身をもって学ばないとね」

 

一閃…………ハヤテの乗るVF-1EXのコクピット部分に綺麗に真っ赤な線が刻み込まれた。まるで斬られた血のように。その衝撃で機体をふらつかせるハヤテに更にVFー31の追撃が入り機体は真っ赤に染まっていく。

 ハヤテが機体を格納庫に戻す頃には赤一色に染まったVF-1EXが出来上がっていた。

 そのことに文句を言いたくなるものだが、ハヤテは空を見つめてそれどころではなかった。

 

「なんだよ、これ…………これがVFの戦闘なのか?」

 

目の前で繰り広げられる黒と黒の対決。ペイント弾の嵐の中をすり抜けるかのように避けて手に持ったブレードだけで斬りかかる見たこともない機体。そのレベルの高さは素人だとしても分ってしまうほどに高く、そして怖かった。

 とても同じ人とは思えない程の機動、背後を取ろうとするVFー31と真正面からぶつかろうとする機体。見たこともない戦い方に相手のブレードから放たれる攻撃が致命傷を与える程の威力を誇るのは想像し得ない。それほどにこの模擬戦場は『殺気立っていた』。

 それを見続けているハヤテにいつの間にかミラージュが来ていた。

 

「これが貴方が飛ぼうとしている空ですよ。常に危険が襲いかかる危ない空、油断が直接命に関わるデットゾーン。それでも貴方は飛びますか?」

 

その言葉にハヤテはそれでも飛ぶのだと答え、そして飛ぶために改めて教習が必要だと肌身を持って実感させられた。

 

 

「やっぱりあーちゃんは一番格好いいです…………」

 

戦闘を見ながらミラージュは頬を染めているのであった。

 

 

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