マクロスΔ 全てを斬り裂く妖刀   作:nasigorenn

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久しぶりの更新なので感覚が………。


第十二話 戦争宣誓

 会場は満員御礼であり人が溢れ出して収まりきれないほどに凄まじいことが遙か上空からでも窺える。その皆が待つのが歌姫達の宴であるライブ。その熱気がここからでも伝わってくるような気がしてアキトは苦笑を浮かべる。

 

「皆好きだねぇ」

 

この時代、歌はかなり重要なものでありその影響は凄まじい。プロトカルチャーがもたらした文化として有名であり、誰もが歌を好む傾向がある………のだが、集団の中には必ずマイノリティというものがあり否定派というものがある。働き蟻の中に僅かではあるが働かない蟻が出るように、アキトもまたそんな少数であった。彼は今ではまず珍しい『歌否定派』なのである。

 いや、これには語弊があるだろう。別にアキト自身歌が嫌いなわけではないし、毛嫌いするものでもない。だからと言って好きでもない。答えはどっちでもないというだけ。彼からしたらこの真下でライブを今か今かと待ち望んでいる人々は大げさだ。歌が凄いというのは世間の常識だし夢中になるものがあるというのは良い事だ。でもそれだけのことでしかない。

 勿論アキトにだってそういう好きなものはある。というか丸わかりだろう。大切な幼馴染みのこと、そして…………斬ること。それだけがアキトの好きなものだ。

 でも自分が彼等のように熱狂しているのかと言えば答えはNOだろう。そんな簡単なものではない。だからこその苦笑。自分には理解出来ないなと笑うしかない。

 VFー19Σを通して見える映像にそう思いながらアキトはジッとしている。アイテールの格納庫ではデルタ小隊の面々が発進準備を進めており、ワルキューレのメンバーも降下艇で準備を進めていた。各人で打ち合わせを行っているであろうことが予想出来るだけにアキトは暇を持て余す。まぁ仕方ない話だろう。ライブでは主役であるワルキューレが歌いデルタ小隊は航空ショーをしながら彼女達を護衛する。

 当たり前だがそこにアキトはいない。アキトの役割は遊撃。『敵が仕掛けてきた』ときのみ仕事がある。襲撃がなければ待機で終わるのがアキトの仕事であった。

 故に暇なのである。そんな暇をアキトはジッとして過ごす。周りは慌ただしくライブが成功するかと不安そうにしている中、彼だけがそんなことをまったく考えていなかった。さて、暇をどう潰そうかと考え始めたところでVFー19Σに通信が入った。その配信先は彼が知る人の機体からであり、アキトはそれを見てふふっと笑った。

 

「どうしたの、みーちゃん?」

 

いつもと変わらないアキトらしい声にみーちゃん………ミラージュが緊張した表情で話しかけてきた。

 

「あーちゃん、あの、今は大丈夫でしょうか?」

「うん、大丈夫だよ。僕は暇だからね」

 

困った苦笑を浮かべながらそう答えるアキトにミラージュは少しばかり困った顔をした。

 

「そう言われると困りますが、でもあーちゃんが暇ならそれで良いんです。だってその方が平和ですから」

 

仕事がないと嘆くべきなのだが、アキトが出る状況になればそれは戦闘になっているということである。護衛がメインであるデルタ小隊からしたらしないに越したことはない。それにミラージュとしてはアキトが強いと分っていても危険を犯して欲しくはないというのもあった。そんなミラージュの気持ちを分っているからこそ、アキトは困ってしまう。

 

「まぁ、そうだよね。平和ならそれに越したことはない。僕がその分仕事がないだけで。でもそれはそれだけみーちゃんの活躍を見れるってことだからね。みーちゃん、楽しみに見てるから」

 

ニッコリと笑いかけるアキトにミラージュの頬が紅く染まる。

 

「そんなはっきりと言われると恥ずかしいです、あーちゃん」

「そういうみーちゃんも可愛い」

「っ!? もう、あーちゃんのバカ」

 

恥ずかしさに耐えかねてそっぽを向いてしまうミラージュ。そんな彼女の姿がより魅力的に見えてアキトは更に追撃をかける。正直暇な時に大好きな幼馴染みとのやりとりは魅力的らしい。さっきまでの暇が嘘のように吹き飛んだ。

 

「酷いな~みーちゃん。だってこの間は格好いいより可愛い方が良いって言ってたのに」

 

その言葉にミラージュは少しだけ気まずそうにしてから上目遣いを此方に向けてきた。

 

「あーちゃんこそ酷いです。私があーちゃんに可愛いって言われたいって事を分っててそう言うんですから。あーちゃんは意地悪です」

「あははは、ごめんごめん。だってみーちゃんが可愛いからつい」

「もう、あーちゃんは」

 

当然通信ログというものは記録されており、このやり取りも聞こうと思えば聞くことが出来る。まぁ聞いたところでまたかこのバカップルはと言って終わりそうだが。

 そんなやり取りをした後、アキトはミラージュに微笑んだ。

 

「みーちゃん、少しは緊張解れた?」

 

何故ミラージュが通信を入れてきたのか、その真意を察しているからこそのその問いかけにミラージュは紅くなった頬を掻きつつ答える。

 

「あーちゃんにはお見通しですね」

「だってみーちゃんのことだからね」

「もう、あーちゃんは」

 

ミラージュが今回の仕事で不安を感じていることはわかっていた。だからこそ、それを少しでも和らげようとこうして話している。アキトが彼女にしてあげられるのはそれだけしかないから。

 

「きっと大丈夫。僕が暇なんだもの、ライブは無事に終わるよ」

「そうですね。きっとその方が良いですね」

 

その言葉にホッとする様子を見せるミラージュ。そんなミラージュにアキトは内心苦笑を浮かべた。確かにそうならそれにこしたことはない。だがソレはあり得ないとアキトの本能が感じるのだ。妖刀たる自身の存在が告げるのだ。

 

『獲物は必ずやってくる』と。

 

その確信がアキトにはある。根拠はないが、絶対に来ると本能が告げる。故にミラージュが望むようにはならない。

 それがアキトにはもどかしい。彼女の望むような未来にしてあげたいが、同時に斬りたいという欲求がウズウズし始める。戦の香りを感じ取りこのウズウズがとまらない。絶対に戦いになるのだから、思うがままに暴れたい。

 そんな二つの思いに板挟みにされているアキトはそれを落ち着かせるようにミラージュにこう言った。

 

「みーちゃん、頑張って」

 

その言葉にミラージュは笑顔で応える。

 

「はい、頑張ります。だからあーちゃん………絶対に見ていて下さいね」

「うん、絶対に見てるから。僕がみーちゃんを見てないなんてないからね」

 

その言葉にミラージュは顔を真っ赤にして何かを言おうとするが、そこでそろそろ出動の時間となったために通信を切ることに。

 

「ではあーちゃん、いってきます」

「いってらっしゃい、みーちゃん」

 

そのやり取りを持って通信を終わりにし、アキトは発進するデルタ小隊を見送っていた。

 

 

 

 そうして始まったライブ。会場はワルキューレの降臨と共に盛り上がりを見せ、デルタ小隊のエアショーがよりダイナミックにそれを喧伝する。立体映像と生の歌声による三次元的なライブに熱狂する人々。そこでハヤテのインメルマンダンスが炸裂しより盛り上がっていく。その成果もあってヴァール発生危険率はどんどん下がっていく。

 その光景…………デルタ3のVFー31のエアショーを見て頬を緩めるアキトであったが、『その気配』を感じて笑顔のままアイテールにいるクルーに告げる。

 

「皆さん、出るからハッチを開けて下さい。そろそろ獲物がやってきます」

 

その言葉に最初は何を言っているんだと疑問符を浮かべるクルー達であったが、アキトの静かでありながら悍ましい殺気を当てられ急いでハッチを開けた。

 そして発進したアキトは嗤う。

 

「みーちゃんの晴れ舞台を邪魔したんだ。その報いは受けてもらわないと…………ねぇ」

 

そして妖刀はその刃を抜刀する。目指すは今はまだ現れていない獲物の命。だが彼のその感は間違いなく…………。

 

『アンノウン、衛星軌道より出現ッ!?』

 

当たる。

次々と現れるアンノウンはこのまま大気圏に突入し奇襲をかけるつもりなのだろう。確かに今現在ワルキューレはライブ中、デルタ小隊はエアショー中ということもあって動けない。絶好の奇襲状況と言えよう。戦術的には大正解。ただし…………。

 

「正直すぎるのは駄目だと思うよ」

 

奇襲を仕掛けようとランドールに向かう敵機の前に現れた漆黒の悪鬼が現れた。闇の中で輝るツインアイ、そしてその手に持っている大太刀を振り下ろせば、途端に機体は斬り裂かれ大気圏に突入する間もなく爆発四散する。

 HSSFからによる奇襲。まさに目の前に急に現れた脅威に対し敵側が混乱したのは言うまでも無いだろう。

 突如として現れたVFー19Σに陣形を崩される敵。勿論フォールド反応は検知したのだろうが、それではもう後の祭りだ。短時間で移動する性質状、検知してから構えたのではもう遅い。検知した瞬間には既に移動を終えており、謂わばそれは残滓に過ぎない。

 

『なぁ、敵襲だと!』

『まさか読まれてたのか!?』

 

そんな声が通信を通して聞こえてくるが、それに律儀に応える間抜けなどいない。

 

「呑気に喋ってる暇はないよ」

 

混乱していることを察せられてしまったのだろう敵の一体の目前には既に大太刀を振り下ろすVFー19Σがいた。振り下ろされた大太刀はぶれることなく真っ直ぐに振り下ろされ、敵機のパイロットは自分の見ている光景が半々にずれていることを疑問に感じながら死に、その結果を示すように機体はコクピットから綺麗に真っ二つに割られて爆発した。

 爆炎の明かりが煌めき辺りを照らす。その結果が余計に混乱をもたらし敵側の士気にも揺るぎが出てきた。だがそんなことをアキトは意識していない。ただ彼はコクピットで笑って嗤う。

 嬉しくて楽しくて悦楽しくて快感で、どうしようもなく………。

 

「さぁ、もっともっと斬らせてよ。村正は血が欲しくてたまらないからね。僕の渇きを癒やしてほしい。その命をもって斬り殺してあげるよ」

 

狂っている。でもそれが村正という妖刀だ。狂気の刀は血を、命を求めずにはいられない。だからこそ、アキトは戦う。いや、これは戦いなんてものじゃないだろう。これはただの『鏖殺』だ。

 恐怖に駆られ銃を向けて乱射する者、一刻もはやく排除すべきだとミサイルを大量に撃ち込む者、少しでも安全を取ろうとオプション兵装であるゴーストを差し向ける者、様々だ。だがその悉くが失敗する。

 迫り来る弾雨も爆炎の嵐もまるで透き通るかのように当たらずに突き進むVFー19Σ。そして急に消えたと思えば予想外の所から現れ手にした大太刀だけで斬られていく。途轍もない高度なギリギリの見切りと回避、そしてHSSFによる襲撃は最早悪夢でしかない。たった一本の大太刀しか持ってない相手に対し、敵は既に10機以上も被害を出してしまっていた。2本の強化センサーを米神から突きだし、光に揺らめくツインアイにあるのは狂気に満ちた殺意。それによってもたらされるのは絶対不可避の死。故に恐慌する。

 

『鬼神(オーガ)だ…………あれは化け物だ!』

 

そんな敵の怯えを感じてアキトは嗤う。

 

「化け物だって………そんな当たり前のことを言わないでよ。僕は村正だ。狂気に狂い殺しを悦楽しむ化け物さ」

 

そして更に相手に襲いかかり、また一機その機体を上下に分裂させていた。

 この襲撃に対し敵側も何も考えていないわけではない。確かに奇襲に驚きはしたが動揺は見せられない。部隊長である『白騎士』が襲撃者に対して戦意を見せるが彼等『親衛隊』に抜けられるのはキツイ。しかも敵の戦力が未知数なだけに失っては事に支障が来たす可能性が高い。これが『囮』であっても、ここで失って良い戦士ではないのだ。故に彼等は先行させ他の部隊による物量戦へと切り替えた。

 だがそれでも足りなかったのだろう。『親衛隊』以外の部隊は全滅した。此方の戦略を嘲笑うかのように黒に一部が血のように赤いVFー19によって全て斬り殺されてしまったのだから。そして血に餓えた悪鬼はその目をランドールへと向ける。まるで獲物が其方にいることを分っているかのように。それを追いかけるように大気圏に突入していった。

 そしてアキトの戦場は衛星軌道上からランドールの上空へと変わる。

すでに戦場と化したランドールの会場では彼方此方から被弾に於ける炎が燃えさかっていた。そんな中で敵を探すアキトであったが奇妙なものを見つけた。

 それは統合軍のVF-171+。それが編隊を組んで飛行してるのはいい。ただしそれがどういうわけかデルタ小隊に攻撃を仕掛けているのだ。その疑問を感じつつ進んで行くと、そこで見覚えのあるVFー31がVF-171+に攻撃を仕掛けようとしているのが見えた。ただし狙いが合わないのかやけにその動作はぶれが激しい。その後ろに敵が現れたのを見てアキトは嗤う。

 

「何みーちゃんの邪魔をしようとしてるの………死ね」

 

そして急接近からの大太刀の奇襲を仕掛ける。しかし相手はただの雑魚ではないらしい。咄嗟に反応し本体だけは無事にしようと回避した。その結果装備されていたゴーストが真っ二つに切れて爆発する。

 

「あーちゃん!」

「みーちゃん、これはどういう状況かな?」

 

敵はその追撃を恐れて急いで離脱しその後メッサーが乗るVFー31に攻撃を仕掛けられていた。それを見つつアキトはミラージュにこの変な状況を聞くことに。

 その結果ヴァールによって操られていることが判明。アキトはそれまで嗤っていた顔がなくなり嘲笑う。

 

「見苦しい。自分の意思すらなくした木偶に斬る悦楽しみはない。今すぐその無様な姿を見れないように残殺してあげる」

 

 そして攻撃しようとするアキトにミラージュは大きな声で叫んだ。

 

「殺しちゃ駄目です、あーちゃん! 正義の味方として告げます! 絶対に殺しちゃ駄目です。あーちゃんなら出来ますから!! 私の知ってるあーちゃんなら『悪役にすらならない人』に手は出しません」

 

その言葉にアキトは少し止まり、そしてミラージュに向けて笑顔を浮かべる。

 

「みーちゃんだってズルいね。みーちゃんにそう言われたら僕はそれに答えたくなっちゃうじゃないか」

「あーちゃん………」

「みーちゃん、これが終わったらデートしよう。それまで少し待ってて」

 

そしてアキトはVF-171+に向かって大太刀を抜くと告げる。

 

「みーちゃんにそう言われたから命は取らないであげる。でもその首はいただくよ」

 

HSSFして襲撃し、コクピット(首)を綺麗に斬り飛ばすと片手で掴み海がある方へと投げ飛ばす。コクピットを綺麗に斬り飛ばされた機体は制御を失い墜落して燃え上がる。それを皮切りにVFー19ΣはVF-171+へと仕掛けてはコクピットを斬り飛ばしていった。そして最後の一機を斬り落とした後にそれは来た。

 

『やられた!?』

 

アイテールからの通信に何事かと警戒するデルタ小隊一同。そこで判明したのが今回の此方の襲撃は囮だということ。本当の目的は惑星ヴォルドールの首都の陥落らしく見事に制圧されたらしい。

 そして此方の動揺を見透かすかのように敵がそれまで纏っていた偽装を解除しその正体を晒す。

 敵の正体、それは惑星ウィンダミアの空中騎士団。そして彼等による戦争であると宣言した。

 こうして今まであったヴァールの発生なども彼等の仕業であると判明し、改めて戦争が開始したのであった。

 

 

 

「みーちゃん、あそこで格好付けてるの、斬ってもいい?」

「あーちゃん、空気読んで下さい!」

 

宣誓している時にアキトは整列している一団に斬っても良いかとミラージュに聞き、ミラージュはそれを必死に止める姿がそこにはあったという。

 

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