マクロスΔ 全てを斬り裂く妖刀   作:nasigorenn

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まったくお気に入りが増えないなぁ、なんて思いつつ3話目です。


第三話 宿敵認定

 アキトとミラージュがアイテールにて再会の感動を分かち合っている(イチャついている)時、雪が地表を覆うとある星のとある城、その城にある大型の格納庫にて彼等は怒りを露わにしていた。

 周りにあるのは今まで見たことのない可変戦闘機達。その形状からVFシリーズではないことが窺える。この達アル・シャハルに襲撃をかけてきた機体に類似性が見られることから分かる通り、黒幕達である。

 そんな彼等が今にも叫びそうなほどの怒りを押し殺しているのは偏に自分達よりも上位の存在がいるからだ。この部隊の指揮官にしてエース、そして彼等にとって自分達『騎士団』の団長。そんな偉大な男が今回の作戦に中止をかけた。勿論男がそれを考えたわけではなく、男よりも上位である『総司令官』である者が中止するよう命令を出したからである。

 上官の命令が絶対というのは軍事組織における常識。だから彼等は従わざる得ない。だからといって現場がソレを納得出来るかと言えば答えはNOである。

 特に彼等は『騎士』だ。誇りを胸に持つと言えば聞こえは良いのだが、プライドが些か高すぎる。つまり柔軟性がない。

 そんな彼等が胸に宿すのは自分達が正統であるという志、そしてこれが復讐であるという怨念だ。

 この度の作戦はその為の第一歩。自分がこれから起こす『戦争』のための布石であった。最終的には『ワルキューレ』の抹殺も含まれている。そして今回の襲撃でそれを直ぐに出来るところまで来ていた。

 後一歩というところまで来たのだ。後引き金を十回ほど引けばワルキューレ達を殺せるところまで。

 そんなところまで来たというのに突如の作戦中止、撤退命令。現場としては溜まったものではない。故に彼等は怒っているのだ。

 それらの怒りを受け止めている指揮官……金髪をした美しい青年は静かに、しかし確かな意思を持ってそれらに応じる。

 

「わかっている。その真意、今すぐにでも問いに行く」

 

自分は彼等と同じ思いだと、皆がその言葉に同意する。指揮官の青年とてこの命令に納得など出来てはいないのだから。

 ただ彼等との違いがあるのだとするのなら、青年には中止にした原因が思い当たることくらいだろう。

 

 

 青年が部下達の怒りを背負いながら向かったのはその城の一室。

本やら書類やらが多くあり、実験機器などが置かれていることからすると研究室というのが近いかも知れないが、デスクなどを見ると事務室に見えなくもない。

 そんな部屋の主は一人の青年であった。此方は薄い灰色のような青色のような長髪をし、眼鏡をかけている。年齢は金髪の青年よりも少し上といったところだろうか。

 そんな男が静かにたたずむ室内に指揮官の青年は入ってきた。

 

「ロイド、何故止めた」

 

指揮官の青年にそう呼ばれた部屋の主………ロイドと呼ばれた青年はその言葉を聞き静かに返す。

 

「目的は果たした。作戦自体に変更はなかったはずでは?」

「だが叩けるときに叩くべきだ。我々には時間が無いのだからな」

 

その言葉が比喩ではなく事実であると言うことは彼等の『種族』なら当たり前のことであった。故に彼等は急がなければならない。確かに他と比べると圧倒的に『時間が無い』のだから。

 それが分かっているロイドではあるが、それでもちゃんとした理由がある。

 

「分かっている。しかしハインツ様のお体のこともある。それにだ………」

 

このハインツという人物が彼等にとってどれだけ重要なのかということはこの星全ての住民が分かっている。そう言われればすぐに納得出来るだけの理由があることをもっとも身近な存在である指揮官の青年は知っている。それに続き、もう一つも思い当たる。

 ロイドは少しばかり苦悩しつつ答えた。

 

「今回の作戦、少しではすまない犠牲が出た。まだ我らが大いなる風を吹かせる前ではない。その為に戦力を消費するのは宜しくないんだ。特に今回の犠牲は想定外だ」

 

 ロイドはそう言いながら空間に投影型のモニターを展開する。そこに映っているのは血に濡れたような紅と黒の二色をしたVFー19が東洋型の剣一つで此方の機体を斬り捨てていく映像。今現在の戦場ではあり得ない光景がそこにはあり、それがどれだけ非常識な存在であるかを見せつける。

 その映像を見せられている指揮官の青年はまるで好敵手を見つけたかのように好戦的な目を映像のVFー19に向ける。

 

「向こうの奴らにも良い風を吹かす奴がいたが……こいつは別だ。何せ奴は風すら斬り捨てていたぞ。そんな者は今まで見たことがない。何者だ」

 

自分の機体に傷を付けられた事に対し屈辱ではなく闘志を燃やしている彼は今まで自分と同格の存在がいなかったのだろう。だからこそ、自分を楽しませてくれる存在に戦意を燃やしていた。

 そんな好戦的な指揮官の青年に対し、ロイドはそのVFー19に厳しい目を向ける。

 

「まだ詳しいところまで分かっていないがPMC所属の傭兵らしい。とはいえある意味有名でもあったから容易に見つけることが出来たがね」

「それで?」

 

続きを促す指揮官の青年にロイドは忌々しいものを見ているかのように顔を顰めた。

 

「彼等は血に濡れた忌々しい存在だ。我らのような大義なき野蛮な殺戮者。依頼に対し一振りのみ回される魔の刃達。たった一機で全てを殺し尽くす狂った存在だ。もし奴等にルンがあったとしたら、ドス黒く穢れきって目も向けられない程に酷いだろう。そう仮定することこそ嫌悪する程にな」

 

だったら言うなよ、なんて突っ込みはせずに待つ指揮官の青年。そんな青年の求める答えをやっとロイドは答えた。

 

「奴の名は『村正』。地球にあった島国に遙か昔に存在した『魔剣』の名を持つ者だ。持つ者を狂わせる魔性の存在、持つ者に破滅をもたらす穢れしもの。そんな存在の名を語る者が正気なわけがない」

 

 何故そんなものがあの星にいて此方に牙を向けてきたのだと苦しむロイド。あの妖刀の参戦は想定外らしい。もしかしたらこの聖戦に仇なすかもしれないと危惧する。

 そんなロイドと違い、指揮官の青年………キースはニヤリと笑う。その笑みは騎士というよりも獰猛な猛禽のものであった。

 

「そうか………まっていろ、死神、そして村正。次こそ貴様達に俺の風を吹かしてやる」

 

 そんなことがとある惑星で話し合われていた。まさかその対象の一人がイチャついてるとも知らず。シリアスぶち壊しであったが知らなければ問題ない。

 

 

 

「うわぁ~、凄い海だね。きれいだなぁ」

 

 アイテールが本拠地である惑星ラグナの軌道衛星上にデフォールドした後に本体であるマクロス・エリシオンと合体。そこから地上に降りたアキト達は今、チャック・マスタングが経営している『裸喰娘々』という飲食店に向かっていた。

 

「チャック少尉が経営している裸喰娘々はΔ小隊男子寮も兼ねていますから、アキトの部屋もそこになりますよ」

 

 これから住む所について話すミラージュにアキトは海を見てそう感想を漏らしながら聞く。その様子に話を聞いてるのかと疑われそうなものだが、ミラージュは怒ることなくアキトを見て柔らかく笑っていた。そういえば自分も初めてこの星に来た時は海の綺麗さに感動したものだと思い出しているのだろう。自分と同じ反応をするアキトに懐かしさを感じていた。

 そんな二人に一緒いるチャックとワルキューレのリーダーであるカナメはこの雰囲気に何とも言えない気分になる。具体的に言えばチャックの嫉妬激しい視線にカナメが苦笑するといった具合だ。気苦労が絶えないというのはリーダーという仕事上仕方ないとはいえ可哀想としか言い様がない。

 

「二人とも随分仲が良いわよね」

「これでアキト曰く、デキてないって言うんだから驚きですよ」

「話してみる限りアキト君、別に鈍感って訳じゃ無いと思うんだけど。寧ろミラージュさんがあそこまでデレるの、初めて見たくらいだもの」

「確かに。俺も一緒の隊にいて今まであんな顔見たことないですからね。アレが本来のアイツって奴なんでしょうか。だとしたら今まで損してるとしか言い様ない、あの笑みなら他の野郎がほっとかないと思うんすけど」

「きっとアキト君だからよ。幼馴染みだけが持つ絆、かぁ………羨ましいわね」

「でしたら俺と一緒にそれに負けない絆、築きませんか」

「今はワルキューレで忙しいからごめんなさい」

「デスヨネー」

 

 二人の邪魔をするわけにはいかない気がしてそんな会話をするカナメとチャック。

そんな感じで話しながら歩くことしばらく、目的地である『裸喰娘々』に到着。そこでチャックの弟妹達と会い自己紹介することになるアキト。弟妹達からの受けも悪くないのは彼の人柄だろう。

 そしてアキトの入居と共に別れるミラージュとカナメ。アキトはチャックに自分の部屋へと案内してもらうことに。

 だがその前にアキトはミラージュに向かって話しかける。

 

「あぁ、そういえば」

「? どうしたんですか、アキト?」

 

振り返るミラージュにアキトは軽く笑いかける。

 

「ただいま、みーちゃん」

 

 その言葉は彼女が心の底で待っていた言葉。ずっと待っていた言葉であった。その言葉を聞いたミラージュは自分の目が潤んでいくことを自覚しつつも笑う。その笑顔はとても優しく綺麗な笑顔だった。

 

「おかえり、あーちゃん」

 

 

 

 そんなわけでアキトはこうしてラグナにて暮らすことになった。機体はマクロス・エリシオンのアイテールにて管理することになり、Δ小隊と供に活動することに。ただし、Δ小隊と違い彼は遊撃。アクロバットには参加せず敵が来たりした際に動くことに決まった。

 尚、ここまでの道中、アキトの前には一匹もウミネコが現れなかったことに誰も気付かなかった。

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