本館地下に位置する副所長専用工房。
この部屋の存在は私以外は誰も知らない、私自らが構築したセキュリティシステムによって、何人たりとも侵入することが出来ない、私だけの聖域だ。
研究所の基礎設計段階の際、私が入所する条件として錬蔵様に要求したいくつかの条件の一つがこの工房…。
ああ、錬蔵様。私を桐夜様と引きあわせ、莫大な研究費を私に投資してくださった偉大なる綾小路財閥の総帥、私の大恩あるお方…! 残念です錬蔵様。私の研究は錬蔵様の寿命に追いつくことが出来ませんでした。あなたをみすみす死なせてしまいました。もう少しだけ生きながらえてくだされば、錬蔵様に恩をお返し出来たのですが…。しかし、きっとそれも運命なのでしょう。
錬蔵様の役割は、私に自由な研究をさせること、そして私と桐夜様の縁を結ぶこと、それだけだったのです。それを終えた今、ここから先の舞台に錬蔵様の出る幕はないと神が判断を下したのです、ふふふ…。
そして、出る幕がないのは…咲夜様、あなたも同じこと。至高の座を頂く者は三人も必要ない、この私と桐夜様の二人だけで充分なのです…。
でも…、でも、でもでもでもでもでもおおおおおおおおお!
ああああああああああああああああああ! 咲夜様あああああああああああぁっ!
私は…この四季島ユーミアは、咲夜様に感謝申し上げますうううううううううううううううう!
あなたは立派に…いえ、そんな言葉ではとても言い表せないほど、とてつもないくらい大きな成果を私たちにもたらしてくれましたああああああああああああああ! あはははははっはっははあっはっはっはっはははっはぎゃははっははっはっはっはっははっははっははっはっはははは!
そもそも、咲夜様が何者かに襲われ瀕死の重傷を負ってくれたこと…。これが天祐と言わずして一体なんと呼ぶべきでしょう!?
他の検体では、こうも上手くは運ばなかった、上手くいったとしてももっともっと時間がかかったはずです。
咲夜様、あなたは持って生まれたそのお立場から、死ぬことを許されなかった。
錬蔵様は仰いました、
私は一糸纏わぬ姿で鋼鉄の寝台に横たわる。
プログラミングは完了している、芸術的とも言える最高のプログラムだ。失敗などありえない。失敗などするはずがないのだ、
ああ咲夜様、お可哀そうな、お可愛いモルモット。あなたの尊い犠牲により、私は自らを進化させるのです。
用意したボディはA-2の機体を私自ら手を入れカスタマイズしている。この設計は先々のTYPE-SAKUYAシリーズに活かせるでしょう。
「施術開始」
私の音声入力に従い、プログラムがスタートする。
寝台が稼働し、私の上半身が起こされる。麻酔が身体に注入される。赤いポインターが、私の頭部の切開部を指定する。
最初の麻酔は痛覚を遮断するだけ、もちろん意図的にだ。途中から意識を失わざるを得ないが、こんな機会は滅多にない。私は傍らのモニターで、私に施される手術をワクワクしながら眺めている。
レーザーメスが私の額から上の肉を切断していく。メスが一周し、まるでカツラを脱ぐように私の頭皮と肉が、ニチャッ…という音と共に取り外された。
綺麗な頭蓋…白い骨と真っ赤な鮮血のコントラスト。こんなにも美しい人体と、16年間連れ添った身体と、今日でお別れなのね。
機械は一切の躊躇なく作業を進めていく。プログラムに従って、一流の料理人が皿に料理を盛りつけ形を整えソースをかけて仕上げるように、一切の淀みなく流れるように私の頭蓋は切断される。
ウェイターが恭しくディッシュカバーを外し客に湯気が立ち昇る上等な肉料理を披露するかのように、私の頭蓋は何の抵抗もなくスポッと取り外される。
ああ、なんて美しい私の脳…。次に目覚めたとき、私は、人間を超越した存在になる…ああ…なんという悦楽…もう…イクぅ…イっちゃうぅぅぅ!
私は恍惚に震え…意識は闇に沈む。
おー脳ー(2回目)