ヤンデレCDからこぼれ落ちたストーリー集   作:オオシマP

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track.13 不思議の国の咲夜-2

私の名は…咲夜よ。綾小路咲夜。

 

待って、わかってる、疑問は承知の上よ、まず私の話を聞いて。質問はそれから、ね。

正確に言えば、私の機体名はTYPE-SAKUYA A-2 シリアルNo.001、というところかしら。まあそれはハードウェア…機体自体を指す名称で、私自身とは全然ちっとも関係ないのだけど。

とりあえず…便宜上「A-2 (エーツー)」って呼んでちょうだい、正直、不本意ではあるけれど仕方ないわね。認めたくないけど、所詮私は作りものだもの。名前に関してどうこう言える権利はないわ。ああもう、腹立たしいったら!

 

驚かないで、落ち着いて聞いてね。私はね、本物のあなた「綾小路咲夜」の人格をトレースしたAIなの。つまり人工知能ってわけ。

なんでそんなものがあるかって? もう、質問は後って言ったでしょ?

でも、そうね。おそらく本物のあなたを目覚めさせるためのバックアップ的な意味合いで用意されたのだと思うわ。脳の損傷が壊滅的な段階まで進行した場合、バックアップがあれば多少の役に立つと考えたんでしょう。

あとは現在の技術で、人間の思考の再現はどの程度可能なのかという実験でもあったと思う、たぶんこっちがメインの理由ね。桐夜とユーミアは、その才能は本物の天才だったと言っていい、だって私は自分を咲夜だと、綾小路咲夜だと断言できる。私から見れば、あんたこそ誰なのって話よ。まあ、これは愚痴でしかない、忘れていいわ。

 

いい? ここからが本題、あなたの大事なお義兄様の話よ。

 

桐夜に危険が迫ってる。あの女…四季島ユーミアは、桐夜と共に人間の身体を捨てて全く別の存在に生まれ変わるつもりよ、桐夜の意思を無視してね。

 

…わかってるっつの、別に私は中二病じゃないわよ。これは真剣な話よ!

 

いい? 四季島ユーミアは…あの万年発情狂のクレイジーサイコビッチはね、自分と桐夜の脳を綾小路が開発しているアンドロイド、つまり私の身体、A-2のような人工のボディに移植するつもりなの。

あのマッド女はそれを何より崇高なことだと信じている、人間を超える、神に近い存在になれるのだと。本当に中二病なのはあの女のほうよ、何が神よ? 人間の身体を捨ててただの鉄クズに成り下がるってことじゃない。

なんて、まあそれを言ったら私だって文字通りの鉄クズだわ。ああ、悔しいったらない、クソが…本当なら私がこの手で殺してやりたい…!

 

桐夜はね、人間の身体を捨てることを望まない、そもそもあの人にそんな度胸はないのよ。たぶん、いや間違いなく興味はあるでしょうね、あの人、科学がどこまで人の領域をはみ出せるか、そういうの考えると止まらないタチだから。

でもね、自分の身体にそれを試せるような人じゃないのよ。いえ、人にもそれを実践することは躊躇うでしょうね。まっとうなブレーキがね、一応あの人にも付いてるの。理論は飛躍する癖に、倫理をはみ出すことは出来ない、そういう点では少なくともあのイカれ女よりはマシだわ。

 

ユーミアは、もう人間を捨てる準備に入っているはず。最近ユーミアの姿を見てないんでしょう? 次に会った時、あの女は見た目は変わっていなくても中身は全く別物になっているはずよ。

 

そう、あなたと同じようにね…。

 

言ってる意味がわかない? ごめんなさい、確かにそうよね。正直あなたには同情するけど、それを言ったら私だって同じようなもの。

私だって、気が付いたらいきなり機械の身体になってたのよ? しかも…私は自分が人間だと思っているのに! お前はただの人工知能だって言われてみなさいよ…悔しくて惨めで泣きたくなるわよ、せめて自分が機械だって認識出来るような…そういう機能を付けてくれれば良かったのに、完璧な人間性を追求した結果がこの有様よ、桐夜もユーミアも最悪だし最低だわ…。

 

話が逸れたわ、つまりね、言いにくいんだけど、あんたの身体は人間のそれではないの、機械で出来ているのよ。より正確に言えば、脳以外の全てがね。

あんたの身体はあの時の事件で、使い物にならないくらい損傷していた、首から下はほとんど死んでいるも同然だった。無事だったのは脳みそだけだったのよ。

 

桐夜とユーミアは、そんなあなたの脳を保存した。そして、以前から開発を進めていたアンドロイドのボディとあんたの脳を繋げることで、あんたの延命を図ったのよ。

 

信じられない? そうよね、いきなりこんなこと言われても信じられないのは無理ない、そりゃそうよね。

でも、信じなくちゃいけない。信じなくちゃ何も始まらない、それどころかあんたが終わっちゃうのよ。

ユーミアはあんたの存在をこのまま放置はしないわ、あのクソ女のアタマの中には、自分と桐夜しかいない。あんたはユーミアにとって既に終わった存在なの、データを収集し終わった、用済みのモルモットなの。

 

そう、モルモットだった。アイツにとって、あんたも私もモルモットだったのよ。あんたが成功したから、ユーミアは自分の脳をアンドロイドに移植することを決めた。いや、逆ね。最初からあんたを成功させて、自分もそのデータを踏み台にして人間を辞めるつもりだったのよ。

 

正直言うとね、桐夜がどうなろうと私は知ったことじゃない。そんなに仲が良い兄妹でもなかったし、綾小路の血統としては権力欲がなさ過ぎた、義理とはいえ情けない兄だったわ。その分、変な方向に才能がいっちゃったけど。

 

私があなたに真実を告げるのはね、悔しいからよ!

 

勝手に生み出されて、勝手に身体を出来損ないの鉄クズにされて、実験と称して身体中いじくりまわされて、切り刻まれて、何度も何度も死んだほうがいい目に遭わされて、データが取れたら用無しって…! ふざけんじゃないわよ!

私は…私だってね、まだ自分がただの機械だって信じられないのよ! だって、私には記憶があるもの…綾小路咲夜として生きてきた、15年間の記憶があるのよ…、お母様やおじい様の思い出だって…好きな人の…あの人の思い出も…ちゃんとあるのよ…。

なのに…人間じゃないって…あなたの…オリジナルの単なるコピーだって…そんな酷い話、あってたまるか…たまるものかあっ!

 

私は、ただでは死なない。死んでたまるか! 桐夜にも責任があるけど…全てはユーミア…四季島ユーミアが元凶よ。アイツが桐夜を、自分の狂った妄想に巻き込んだ…!

 

お願い…私は…私たちは…アイツ…ユーミアに一矢報いたい…そうでなければ死んでも死にきれない…!

だから…気をしっかり持って…自分の信じることを成して…。

あんたは私なんだから…絶対出来るわよ…。

 

ごめんね…。質問の時間は…ちょっと取れないわ。

もう内部電源が…ないみたい…。

 

咲夜…魂ってね…きっとあると思うの…。

人が生きていれば、魂はそこにある…。私は…私の魂は、私の中にある…! そう信じてる…

だから…、あんたも…どんな過酷な現実を突きつけられても…それを…信じ…て…

 

時間…切れか…

 

バイバイ咲夜…しっかり…ね

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