~出てくる人たち~
綾小路 咲夜(あやのこうじ さくや):夢見にフルボッコにされちゃった、かわいそう
小鳥遊 夢見(たかなし ゆめみ):逃走、出てきません
綾小路 桐夜(あやのこうじ きりや):日の目を見なかった「ヤンデレCD5」で主人公になる予定だった人。お医者さん
綾小路 錬蔵(あやのこうじ れんぞう):咲夜のおじいちゃん、イメージ的にはうみねこのあの人
四季島(しきじま) ユーミア:猫耳ミニスカ白衣メガネメイド、完全なキチガイ。四季島は“死季嶌書房”の表名。廃刊済。
「咲夜! おお咲夜! なんということだ……、天使の如き可愛らしい幼子が、まだこれから、我が綾小路財閥の令嬢として幸せな人生を送れたはずの我が孫が……! おおおおおおおおおおお神よ!」
日本有数の巨大コングロマリットである綾小路財閥の研究施設のひとつ、綾小路人工知能研究所。そこでは綾小路財閥総帥・綾小路 錬蔵が果ての無い悲嘆に暮れていた。
凶報が届いたのは2時間前、錬蔵の孫娘である綾小路 咲夜が瀕死の重傷で発見された。綾小路の令嬢ともなれば、単独で行動することはあり得ない。常に複数のSPによって警護されているはずであり、錬蔵自身、目に入れても痛くないほどの可愛がりようから、咲夜の警護には水も漏らさない体制を敷いていた。
咲夜に傷を付ける、ましてやその身を拐かすなど不可能な状況であるにも関わらず、下校中の咲夜は忽然と姿を消してしまったのだ。
学園を出て、VIP用の専用駐車場に控えている迎えの車に乗るまでのわずかな時間、突如学園中央にそびえる時計塔の頭頂部が爆発し、SP達の意識がほんの一瞬咲夜から外れたその瞬間に、もう咲夜はその場から消えてしまっていた。
知らせを聞いた錬蔵が激怒したのは言うまでもない。すぐに綾小路家が所有する複数の特殊部隊が出動し、学園を中心とした徹底的な捜索が成された。
……が、必死の捜索にもかかわらず結果は前述の通り、咲夜の身体は街外れの廃工場で発見された。その惨状は筆舌に尽くしがたいものだった。首から上には一切の傷はない、しかし首から下の彼女の身体は、ずたずたに斬り裂かれていた。恐ろしいことに死ににくい場所だけを選んで斬り裂かれたようで、ご丁寧に斬り裂く毎に応急の止血を施していたらしい。そのため彼女の発見時、奇跡的に息があったのだ。
咲夜はすぐに綾小路人工知能研究所に搬送された。これは綾小路財閥が所有する研究施設のひとつで、その名の通り人工知能およびそれを搭載する機体の研究開発のために機関であった。
咲夜の搬送先として人工知能研究所が選ばれた理由は、この施設がその名称からはおよそ考えられないほどの医療設備を整えており、さらに所長である綾小路 桐夜は天才的外科医として世間に知られていた。彼は錬蔵の義理の孫であり、咲夜の義兄にあたる。
咲夜の搬送から数時間後。
憔悴しきった表情で手術室から出てきた桐夜に、錬蔵が詰め寄った。
「桐夜! 咲夜は……咲夜はどうなのだ? まさか手術は成功したのだろうな? お前の腕は儂が一番よく知っておる! お前に治せない患者などおらんはずだ! ましてや……咲夜はお前の義妹なのだ、まさか、まさか助けてくれたのだろうな?」
「おじいさま……、手は尽くしました。しかし、残念ですが……」
桐夜が言い終わる前に錬蔵は絶叫した。
「そんなバカな話など聞きたくないわ! 儂は助けろと言ったのだ! 治せと言ったのだ! 誰が殺せと言った! 貴様は一体儂の言葉の何を聞いておったのだ! それでも綾小路の直系か!」
桐夜を壁に押さえつけ悪鬼の如き表情で迫る錬蔵に、桐夜は必死で答えた。
「おじいさま、落ち着いてください! 咲夜を助けることは出来ませんでしたが……、まだ完全に死んでしまったわけではありません。お言いつけの通り、例の処置は施しました……!」
桐夜の答えに、錬蔵は憑きものが外れたかのように片膝をついた。
「そ、そうか……、そうだった、儂はそこまでお前に頼んでおったな……。すまぬ、お前は良くやってくれたというのに、儂が無様に取り乱しては……」
「いえ、申し訳ございませんおじいさま。僕の技術が至らないばかりに、咲夜を眠らせるしかありませんでした……。しかし、問題は脳への影響です。こればかりは現代の医療ではどうにも……」
「構わぬ、それに関しては、たった今から綾小路財閥の全ての力を結集して事態の打開にあたるのだ。この綾小路人工知能研究所が良い下地になろう、備えあれば憂いなし、とはまさにこの事か……!」
気力を取り戻した錬蔵は、既に過去を見ていない。例え何があろうとも咲夜を元の身体に戻すという絶対の目的、そしてその結果しか見ていなかった。
錬蔵は桐夜の後ろに控えていた女性に声をかけた。
「そういうわけだ、四季島君。本来の目的とは少々外れるが、そちらは一旦置いて咲夜の蘇生に全力を尽くして欲しい。桐夜と君の力を合わせれば不可能などあるまいよ……、手段は問わん、意味は……わかるな?」
錬蔵が声をかけたその女性は、いささか大きめの丸眼鏡の位置を直しながら頷いた。
「お任せください。錬蔵様と、そして桐夜様の望みはこのユーミアの望み。必ずやご期待に応えてご覧に入れます。ユーミアの頭脳は、そのために存在するのです」
その女性の外見は、明らかにその場所の空気にそぐわないものだった。年齢は十代半ば、透き通るように白い肌に、セミロングの美しい金髪。そして……、白衣の着用は理解できるが、その下に纏うのはミニスカートのメイド服、さらに猫耳カチューシャに大きな丸眼鏡と、常人には理解しがたいファッションセンスであった。
「頼むぞ、桐夜。何としても咲夜を救うのだ。そして……、桐夜を助けてやってくれ四季島君、いや、四季島 ユーミア博士」
この夜こそ、その後の系譜に繋がる出発点。
誰も彼もが狂気を孕み、その狂気が一人の少女を狂わせる終焉の始まり。
ここから数年の時を経て咲夜が目覚めたとき、破滅へと通じる第一の扉が開く。
昔のテキストとはいえ、読み直すと恥ずかしいですね。アインズ様みたいな抑制欲しい。