ほか、日本語がおかしい部分ありましたら教えてくださいませ。
ユーミアがげらげらと笑い続けている。
私は…唯一残った脳すら、この身体の中に存在しない…。私の頭の中に詰まっているのは、単なる電波の受信装置…、この身体に、生身の部分なんて何一つとして残っていない。
ならば…私は…本当に人間じゃない…、これは…バケモノだ…人ではない…正真正銘のバケモノなのだ…。
絶望に打ちひしがれる私を見て、ユーミアは不思議そうに言う。
「わかりませんねー、何をそんなに嘆くことがあるのですかー??? よろしいですか咲夜様ー? あなたは今、ほぼ不死身の存在となっているのですよ? 脳みそが身体の中にない? 結構なことではないですか。脳を破壊されれば人間はそこでアウト、一貫の終わりですが、咲夜様とユーミアの脳は身体の中にはないのです。弱点を持って歩いていないのです。このボディをいくら破壊されようが、スペアのボディと交換を続ける限り何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも、それこそ半永久的に蘇ることが出来るのですよ? わかりますか、我々は不死なのです、誰も成しえなかった不死に到達したのです! もう死ぬことはないのです! 人間を超えたのです! 神! そう、ユーミアは神の座に至った! こんなに素晴らしいことがあるでしょうかあああああああああああああ!? あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!」
ユーミアは私の周りを踊りながら笑い狂っている。
違う…命に限りあるのが人間よ…、あたたかい血が通って、愛する人の温もりを求め合って…、有限という時間の中で辛いことがあっても、悲しいことがあっても精一杯生きる…、それが人間の価値…! 無限の命なんか…そんな気色の悪いもの、私は欲しくなんかなかった…!
「それでも…私は…人間であると信じたい…私は…少しずつ記憶が戻りつつあるわ…。もう一人の咲夜が言ったように…記憶にも人の魂が宿るのだとしたら…私の魂は記憶の中に…」
ほとんどこじつけだ、無茶苦茶なことを言っているのは私にもわかってる、でも、今の私にはすがれるものが必要だった。
ここでユーミアに心を折られるわけにはいかないんだ! 全てが終わった後なら、私の心が砕け散ろうが消え去ろうがどうでもいい!
今、この瞬間だけは…この女に負けたくない…!
しかしユーミアは、次の言葉で私の最後の希望すら打ち砕く。
「あのー、咲夜様ー? 死んだ記憶は蘇りませんよ? 死んだ人間が生き返らないのと同じで、それはユーミアにだって無理なんです。その戻りつつある記憶とやらは、
「やめろユーミア…、頼む、もうやめてくれ…」
お義兄様が嗚咽と共にユーミアに嘆願する。
脳への流入…?
「咲夜様の脳は、衛星軌道上の
ユーミアが何を言ってるのかわからない…、でも、この戻りつつある記憶が、私が思い出したものではないことはわかった。
これすら…機械によって集められた情報…私には…魂すらない…ただの人形…。
「あらあら、どうしちゃいました咲夜ちゃま? いきなり静かになってしまって…。ユーミアには理解出来ません。同じ身体になっても、こうも認識に差が出来るものなのですねー。人間てふっしぎー。なーんて、もうユーミアも咲夜様も人間じゃないですけどねー、ぷぷぷ」
この女には…勝てない…心の在り様が…あまりにも違い過ぎる…、異形すぎる…。
私は、神になんてなりたくなかった、そんなものクソくらえだと思っていた。
ユーミアは進んで神になった。人間の身体を捨てて狂喜している。
天に唾する者は我が身に返る…それが、私…なのか…。
「さて…お話はここまでですね。咲夜様、ユーミアはとても忙しいのです。あなたの身体はここで破壊させていただきますね。もっとも、先ほど申し上げました通りそれくらいで咲夜様は死にません。本体は
お義兄様が落とした銃を拾い上げ、ユーミアが銃口を私の頭に向ける。
「やめろユーミア! やめるんだ! 頼む…咲夜をこれ以上傷つけないでくれ…」
お義兄様の叫びが木霊する。
お義兄様、ごめんなさい…咲夜は…お義兄様を守れませんでした…本当に…ごめんなさい…
「今までの貴重なデータ感謝いたします。さよならですよ、咲夜様ぁ♪」
私が瞳を閉じた、その時だった――
突如響き渡る銃撃音と同時に、中庭に面した所長室の窓ガラスが粉々に砕け散った。
そこに現れたのは、可憐な黒き死神――。
「ごっめーん遅くなっちゃったー! 依頼主、まだ死んでないわよねー?」
* * *
飛び散るガラスと共に、所長室に飛び込んできた人影。
この聞き覚えのある声は――私をこの研究所で拉致しようとした、あの女の子――。彼女を見たユーミアは驚きの表情を隠せず叫んだ。
「
「どうしてって…仕事に決まってんでしょうが。あんたバカなの? そんなわかりきったこと聞くなんてユーミア、この業界引退してから平和ボケしてんじゃない? さて…」
私はここに至ってようやく侵入者の…朝倉奏の姿を確認出来た。
以前攫われそうになった時は声しか聴くことが出来なかったが…その姿は本当に幼さの残る声の通り…中学生1年生くらいの少女だった。身体にピッタリしたフィットした、ヒラヒラの飾りが施された真っ黒な装束をその身にまとった奏は、私を見つけて嬉しそうに言った。
「良かったー、生きてるみたいね。またタダ働きなんてことになったら目も当てられないっての」
「007! 戻りなさい! 008、桐夜様をこちらへ!」
私を組み伏せていたA-2が私の身体を開放し、ユーミアの傍らに一足飛びに移動した。もう1機のA-2はお義兄様の身体を軽々と抱え上げる。
ユーミアは奏を睨みつけて忌々しそうに言った。
「奏さん…念のため確認しますが、このユーミアと戦うおつもりですか?」
「ふふふ…今回はこないだみたいな不意の遭遇とはわけが違うわよ
「っ…! 人形遣い風情が…大きな口を…」
ユーミアから、さっきまでの人を馬鹿にしたような軽口が消えている。
対して奏は笑みを浮かべた余裕の表情でユーミアと対峙していた。
「008…いけ」
ユーミアの短い命令を即座に認識し、008と呼ばれたA-2が私たちに襲い掛かってきた。
「そんなデク人形があたしの相手になるかっての!」
奏が008に向けて腕を振り上げたその時、部屋中が真っ白な光に包まれた。
* * *
何が起こったのか、私には全くわからなかった。
「目を閉じて! “楽園”っ、閃光防御」
私は目を閉じてその場にうずくまる。奏が私の身体の上に覆いかぶさり、かばってくれていた。大きな衝撃音が響き、身体がビリビリと震える。
衝撃音が止まり室内に静寂が戻ると、私を身体の下にかばったままの奏が私に言った。
「大丈夫? ただの音響閃光弾よ、殺傷力は低いけどあの光を直接見たら失明してるわ」
「あなたは…奏は平気なの?」
「大丈夫、“楽園”をガードに出してたからね。あ、まだ目を開けないで。一応、私の戦闘人形を見たヤツは死んでもらうってのがルールなの。仕事上の箔も付くしね。ちょっと待って」
ガシャガシャカチャカチャと乾いた音が聞こえる。これは…何の音だろう?
「目を開けていいわよ?」
私が立ち上がって目を開けると、リビングはメチャクチャの状態だった。テーブルもソファーも吹き飛んで、壁も焼け焦げている。窓ガラスは…これは奏がこの部屋に侵入した時に壊したものだ。
「ユーミアのヤツ…デクを囮にして逃げやがったわね。メガネの優男も連れてかれちゃったみたい…、ちょっと、どしたの?」
私は立ち上がったものの、再びその場にへたり込んでしまった。
「あんた…大丈夫!?」
奏が心配そうに私に声をかける。
私はそれに返事をしなかった。それどころではなかった。
なんてことだろう。
私は…諦めかけてしまった。
お義兄様の命を諦めようとしてしまったのだ。
ユーミアに真実を告げられ、心を砕かれ、私は、ユーミアに殺されることを甘受しようとしてしまった!
私は正しく行動していたのだ、間違っていなかった。
ユーミアとの対峙に万全を期すため凍夜お義兄様に頼み、朝倉奏に私個人としての依頼を出しておいた。
事前準備は正しかった、だからこそ私はいま、こうして生きている!
なのに…私は諦めようとしてしまった。
一度は心が砕かれた。
よりにもよって、あの女に…!
屈辱だ…こんな屈辱があるだろうか…この私が…綾小路の直系であるこの綾小路咲夜が…あんな下賤な女の後塵を拝するなど…そんなふざけたこと…認められるか…! 認めてたまるものか!
殺す、もう殺す、必ず殺す。あの女だけは、私がこの手で、直接殺してやる。そうでなければ、この屈辱を雪ぐことなど決して出来ない…!
私のお義兄様を掻っ攫おうとする、意地汚い泥棒猫…。その身体をバラバラに引き裂いて、本体の脳みそを見つけ出し引きずり出して、グチャグチャに踏みつぶしてやるわ…。
待っていなさい、ユーミア。
この私を虚仮にしたことを地獄の底で後悔させてやる…!
またまた登場の朝倉奏ちゃん。
ドラマCD『らぶバト!』『らぶバト!2nd Attack』、そしてライトノベル『らぶバト!』では元気いっぱいの恋する女子高生(でもヤンデレ)でしたが、この時はまだ中学生1年生、祖母である朝倉弦月からドールマスターの称号を継承したばかりのバリバリの現役、標的必ずぶっ殺すマンです。でも性格はあんま変わんないかな、口調も。
あと、朝倉の七罪としての裏名は『らぶバト!』『ヤンデレ惨』公開時の漢字を今さら設定変更して修正してます。まあ奏がヒロインの『らぶバト!』公式サイトは会社の倒産により消滅したので、原作者のボクがちょっといじくってもいいよね。誰も困らない。