「ったく……咲夜が死んだ場合、あたしへのギャラの支払い方法は?」
奏が諦めたように私に言った。
「綾小路財閥の現総帥・綾小路凍夜が了承済みよ。私の死亡時には、凍夜がその名において全ての支払いの責を全うする、綾小路としても亜桜人形劇団に余計な負い目は作りたくないのはわかるでしょ? そんな度胸のある人じゃないわアイツは。そもそも、私が死んだら私の個人資産は綾小路家の管理下に移動するの、だから誰の財布も困らない」
「あっそ。それならまあ咲夜が死のうがどうしようがあたしには関係ないんだけど……。ちょっと仲良くなれたと思ったからさ。残念と言えば残念かなーってね」
奏は私の顔を見ずにそう言った。えーと、ちょっと待ってよ。
「ねえ、それ私が死ぬ前提で話してない?」
「当たり前じゃん」
間髪入れずに答える奏。まあ……仕方ないと言えば仕方ない……か。さっきの話を考えれば、そういう結論になっちゃうわよね。私は軽い溜息をつく。
「私の目的は四季島ユーミアを殺してお義兄様を取り戻すことよ。自殺しに行くわけじゃない。それだけは間違えない……で……っ!?」
私が言い終わる前に、さっき見た奏の……人形? 確か“断罪”って呼んでた……ソイツが持っていた歪な曲がり方をした大鎌の切っ先が、私の喉元に突き付けられていた。
そ……んな……!? ここは下降を続けるエレベーターの中、そして奏は全く動いてないし、人形を出すようなそぶりも全く見せてない。いつ……いつ人形が出てきたの……? 一体これはどこから来たの!?
「か、奏!? これってどういう……!?」
奏はやはり私の顔を見ずに答える。
「……これで咲夜は一回死んだよ。見えなかった? まあ見えないように工夫してるんだけどさ、ユーミアなら見えただろうしもちろん回避してるよ。あたしより弱いったって、元“13姉妹”として、それくらいの芸当はやってのける」
「……っ」
切っ先が下げられた。
解放された私は情けないことに奏を睨みつけることしか出来なかった。
「咲夜。あたしたち“七罪”が生きているのはこういう世界なの。一瞬の油断で命を殺られるんだよ。見えなかった、回避出来なかった、なんてスイーツな後悔したい時には既に死んじゃってる。死んだら次の機会はないの、さっきの咲夜のようにね。それだけは忘れないで」
私は……何も言い返せなかった。しかし悔しいと思ってるわけじゃない。奏は……今の私とユーミアの実力の差を、奏の力を見せつけることによって証明しただけだ……。私を思いとどまらせるために。
「奏……思ったよりいいヤツなんだね」
「ぶつわよ」
相変わらず私の顔は見てくれないけど……でも、首筋がうっすら赤くなってる。心配してくれるなんてね。思ったより人間味あるじゃない、“七罪”も。
「それでもユーミアに単騎で挑むって言うなら……まさか勝算はあるんでしょうね?」
「ええ……。私だって何の持ち駒もなしにユーミアと戦うほど馬鹿じゃない。私の機体性能に関しては、既に検索を終えて把握済みよ」
そう……私の機体は、いえ、私自身か……。お義兄様は随分と凝った機能を搭載してくれたものね。でもこれなら……なんとかなると……信じたい。
そして、エレベーターは下降を止めた。いよいよ地獄の扉が開く。
同人で『ヤンデレCD Re:Turn』を出します。よろしくです。
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