「……“殺戮人形劇”開演」
あたしは亜桜に伝わる……お祖母ちゃんから仕込まれた、ドールマスターのみが操演可能な秘奥のひとつを展開する。
後ろで“断罪”と“楽園”にガードされてる咲夜が何か喚いている、でもそれはもう気にならない。と言うか、気にしている余裕はない。咲夜がユーミアと対峙すれば、間違いなく咲夜は死ぬ。
それは仕方ない、あたしには関係……ないって言いたいとこだけど……、大アリだっつーの! ぜんっぜん咲夜はわかってない! 同行しているクライアントの咲夜が死んだら……あたしと亜桜人形劇団の評判は地に堕ちるってーの!
この商売、クライアントをみすみす死なせるってのはド三流の仕事。咲夜にはよくわかってないみたいだし、これ以上説明する気もない。生きる世界が違う人間に、それを理解してもらうのは時間の無駄だわ。
それよりも……このあたし、“七罪”序列二位にある亜桜人形劇団最高のドールマスター・朝倉奏が、序列六位“死季嶌書房”13姉妹の……しかもとっくに引退した姉妹の末席風情にクライアントを殺されましたなんて……言えるわけないでしょーが!
咲夜が何と言おうと、あたしは咲夜を生かす。
それが、あたしの仕事なんだから。それに……クライアントの自殺幇助なんて依頼を受けた覚えはない。
ガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャ
いいわ……800……820……850……。
860を超えたところで、両手の指が数本、螺旋状に血を滲ませる。
ちっ……ダメか……863体……ここまでね、これが今のあたしの限界操演数、この先を考えれば、指が吹き飛ぶリスクは犯せない……、実戦で使うのは初めてだし、まだまだお祖母ちゃんには及ばず……か。
敵は……目算で1200体ちょっと、増援を想定して1500体いても、まあまあイケるっしょ。
エレベーターの外は広大なホールになっていた。そこに待っていたのは……咲夜と同じ顔をした女の子の群れ。
全部が全部、小脇に抱えるタイプの大型武装を携帯している。その形態から実弾型の重火器と予測。大きさから数百発の連射が可能として、それが1200……あたし一人ならどうとでもなるけど、咲夜を守りながらの戦いになる。要人警護ミッションは苦手なのよチクショウ……。“ヘンゼルとグレーテル”が完成してりゃもちっとラクだったのに!
それに……たぶんアレ全部自爆可能だわ。あたしがユーミアなら当然そうするし、あたしの人形だってもちろん自爆可能。ユーミアめ、1対1であたしに勝つのは不可能ってわかってるから消耗戦を狙ってるわね。腐っても“七罪”の系統か。
でもね……人形遊びであたしに挑もうとは、思い上がりも甚だしい。死季嶌ユーミア、あんたがケンカを売ってるのは、ほかでもないドールマスターなのよ。それを思い知らせてやる。咲夜には悪いけど、お前を殺すのはこのあたしよ……。
雪崩のような音響とともに、咲夜の顔をしたキルマシーンが押し寄せてきた。
その地響きのような音を聞いて、咲夜が叫んでいる。
「か、奏!? この音は……!? 説明しなさい! 何が起こってるの!?」
あたしはそれを無視して……愛しい人形たちに戦闘命令を出した。
「いけ……“殺戮人形劇エンドオブワールド”」
単に奏を書きたいだけだった。商業ではもう出せないから。
『らぶバト!』のオリジナルテキストは潰れた会社に置きっぱで失われてしまったので、奏の人形劇を思い出すのに苦労しました。公式サイトももうないからねえ。やれやれです。