「いけ……“殺戮人形劇エンドオブワールド”」
あたしは眼前に展開させた863体のお人形を解放する。
本来なら1000体を展開させてこその“エンドオブワールド”だけど、今のあたしの操演術ではこれが限度。真髄に至らずとも、咲夜の身を守りながらユーミアが差し向けた1000体以上の木偶人形を蹴散らすには、これが最も効果的と言える。
咲夜の顔を持った機械人形と、あたしのお人形が激突する。
機械人形と操り人形、約1200対863の戦争が開幕した。
あたしはエレベーターホールの入口で戦況を把握しつつ敵の殲滅を図る。
“エンドオブワールド”に出演するお人形は“断罪”や“楽園”のような特級品とは言えないけど、大舞台での活躍を見込んだ役者なのだからそれなりに手を入れている。地上で見たような咲夜そっくりの鉄屑程度の戦闘力であれば、数の不利は特に問題にならない。自爆戦術による消耗戦に陥り敵が20~30体残ったとしても、その程度はあたしにとって数にならない。このままならば、この場はあたしの勝ち、それくらいユーミアは計算しているはず……。なら……これは時間稼ぎか……?
この場で大量の手駒によってあたしと咲夜を釘付けにし、自分は咲夜のお義兄ちゃんをロボットに変えちゃうってわけ?
……まさかね、いくらあの女がイカれていても、そんなに早く施術が出来るわけがない。とは言え、こんな所でぐずぐずしていたらあの女を利するだけだわ、足止めには必ず目的があるはず。
ならば、早々に敵を殲滅し先を急ぐだけ。
開戦5分を待たず、既に敵戦力の半数を破壊、こちらの損耗は200体に満たず。これなら数で押し囲んで自爆させてもこちらの相当数残る……。
そう考えた時、エレベーターホールに戦場に似つかわしくないオーケストラの調べが鳴り響いた。
あたしのお人形が数十体まとめて吹き飛び、バラバラになって宙を舞う。
そんな……バカな!?
至る所であたしのお人形がまとめて破壊されていく。敵の……機械人形は明らかにそれまでとは異なる異常な駆動を見せていた。倍以上の出力を発揮し、それまでの劣勢を覆していく。パワーもスピードも、とても同じ機体とは思えない……!
エレベーターホールに響くオーケストラの調べはますますその音量を増し、ヴァイオリンが、ヴィオラが、フルートが、トランペットが、オルガンが、ハープが、音楽的クライマックスに向けて絡み合い、溶け合い、調和していく。
ちくしょう……ユーミアぁ……!
この音が、機械人形の性能を無理やり増幅させている! “あるはずのない性能を演出して”いる!
呼んでいやがったんだ、咲夜があたしを雇ったように、ユーミアは奴らに依頼していた……!
クソが……同業者に助力を乞うだなんて……いくら引退したとはいえ、そんな恥知らずな所業をしてのけるとはね……!
ユーミアに狙いなんかない、時間稼ぎなんてとんでもないわ、アイツはこの場であたしたちを殺すつもりだった……!
「いるんでしょ? 出てきなさいよ。今夜の舞台がオーケストラ入りだったとは聞いてなかったわ。それがあんたたちの演奏だってなら、主演冥利に尽きるかしら?」
「お久りぶりね、奏ちゃん。弦月殿の後継として立派な演者さんに成長しちゃって、わたくし驚きましたわ」
あたしの問いかけに答えたのはスピーカーからの音声。しかし、この声は……こいつは……!
奏者じゃない、統率者自らお出ましとはね……。
“七罪”序列第三位“虹月幻想オーケストラ”が誇る“コンサートマスター”……虹月……アルト……。