あとFSS。
酔っぱらって書いたので、あとで改稿します。
戦闘芸術の極みたる「地蔵菩薩発心因縁十王経」!
既に300体近くまで数を減らされた“殺戮人形劇”の人形はその全てが制御を失い、ただのガラクタと化す。代わりに、たった4体の閻魔王が舞台に立った。
両手の五指に……操糸が螺旋状に食い込み血を滲ませる。5体だったら指の1本くらいちぎれてるわね。たかが4体の操演ですらこのザマとは……。あのバ……いえ、お祖母ちゃん。まったく……“ドールマスター”の称号を継承されたとはいえ、あたしはまだまだあの人には及ばず、か……。
それでも……ここまでだ虹月アルト。
“亜桜人形劇団”が誇る最大最強の十王人形、ユーミアにぶつけるつもりだったし、どこかで見ているであろう機械人形になったあの女にこちらの奥の手を見せるのは愚策でしかないけれど、虹月の“コンサートマスター”相手ならば他に手段はない!
「眼前の有象無象を裁き殺せ……十王人形!」
閻魔たちがあたしの操演に従って動き出す……。
“秦広王”が司るは「地」、マグマ層を活性化させ超局地的な地震を誘発する区画殲滅人形。
“初江王”が司るは「風」、その速度は神速、突風の如く敵の眼前に出現し暴風の如く破壊する対人戦闘人形。
“宋帝王”が司るは「月」、チャージに時間を要するがひとたび月の光を放てばその眼前は荒野と化す対軍鏖殺人形。
“五官王”が司るは「雷」、十王の中でも「天」「冥」に次ぐ攻撃力を誇る。彼の放つ原子核破砕砲は防御不能、ゆえにあらゆる戦場に対応可能な万能人形。
“秦広王”が足場を崩し、“宋帝王”が前衛を薙ぎ払う。
“初江王”と“五官王”は散らばった木偶を確固に撃破…。
あたしの意図通りに、鉄屑の軍団は壊滅していく。
当然の結果だ。
亜桜の秘奥、十体で国すら亡ぼす十王人形を展開した以上、地獄に誘われるのは虹月……の……はず……なんだ……あれ……指が……いや、身体が……ちがう……これは……
身体の動きが……鈍い……いえ……動きが……バカな、そんなはずない……
聴覚は防御していた!
奴らの武器は音だ! そんなことはわかりきってる、だからこそのオーケストラ……。
ユーミアの木偶どもは全てが破壊された……。
しかし、十王もあたしの制御を失い停止する。
そして……彼女は、虹月幻想オーケストラの統率者“コンサートマスター”はようやくあたしの前に姿を現した。
なんでこいつ女子高生の恰好してるのかしら……。そういやあたしの3つくらい上だったっけか……。ユーミアみたいなコスプレじゃないってことね。
「まさかここまで効きが遅いとは……。お見事です奏さん。ピアノ、カノン? これが、ここまでわたくしたちを追い詰めるのが“ドールマスター”です、七罪序列第二位の最高峰! 奏さんこそわたしたちが目指す至高の到達点“マエストロ”の一歩手前、死にゆくその高潔な姿を忘れないように」
アルトはあたしの左右の空間に向かって話しかけた。
ははは……なるほど……ね。あたしもアルトが一人で出向いてきたとは思っていない、……油断したわけじゃないけど……やるわねちくしょう……。
あたしの左後方から、アルトと同じ制服を着た少女が姿を現す。
「マジでビビったわー、あたいらのコンサートを聴いてここまで戦闘行動を取れるなんて……。アル姉、こいつ恐竜並の鈍覚なの?」
あたしの右後方から、やはりアルトと同じ制服を着た幼い少女が姿を現す。
「すごいねすごいねアルトお姉ちゃん! カノンたちの三重奏を前に物理防御は無意味なはずなのにー! 奏お姉ちゃんだっけ? このひと脳みそに神経が通ってないんじゃないかなー?」
えれえ失礼な物言いね……、
ああ……そういやこんな連中だったわ。
姉妹が多いのは“七罪”の特徴だけど……、虹月最強の三重奏を構成するアルト、ピアノ、カノン、揃ってお出ましとは……。
しかし……!
あたしはその場で膝をつく。
だめだ、身体の自由が利かない……神経に直接作用する音響攻撃……? カノンはさっき「物理防御は無意味」だと言っていた……。魔術……ではないと思う、あたしは魔術関係はさっぱりだが、“七罪”で魔術に長けた血統なんて聞いたことがない。魔術に近い血統なら“迦陵”だが、あれは霊力だ。
お祖母ちゃんに聞いたことがある……これは……超能力に近い、いや、多分そうだ。超希少と言われる、人間の精神に直接作用を及ぼす音声、高次元の霊体“天使”の主武装“ダイレクトヴォイス”や、精霊が人間を惑わす“フェアリーコード”……!
あたしの操演装束の防御を突き破り作用するならば、この攻撃は演奏と超能力の混合だったのか……! “七罪”にありながら“三神九曜十二宗家”に近い能力だったとはね……。
姿を見せたアルトにあたしは問いかける。
「三重奏とはお見事だったけど……ねえアルト? あんたたちの家系に超能力者の血なんて入ってたっけ? あたしの虹月の認識は実直な演奏屋さんなんだけど?」
「あらあらまあまあ、わたくしたちの演奏が“ダイレクトヴォイス”だと看破したのね、さすが奏ちゃんですわ。数年後の奏ちゃんであれば、わたくしたちは勝てなかったかもしれませんわね」
虹月アルトは微笑みながらあたしに言った。しかしアルトのそれはあたしの疑問の回答になっていない。
「方針変更したんでしょアルト? 三人がかりとは言えあたしを無力化するほどのオーケストラを展開するなんて……。“九曜”ではない、もちろん“天聖院”や“紅御門”でもないなら……よりによって“御鏡宮”と……御鏡宮大神宮と結んだのね!」
アルトに代わってピアノが答える。
「あはははははは! ドールマスターさんよお? 伝統もいいけど今どき能力のハイブリッドなんて当たり前だぜ? あたいらは今でこそ序列第三位って言われてっけど、“御鏡宮”の連中から貰えるモノは貰ってもっと上を目指すんだよ。当然“マエストロ”の座もいただく、あんたのババアをぶっ殺してなあ」
カノンがそれに続く。
「カノンたち三人でね、“マエストロ”になって邪魔な人にはみーんな死んでもらいたいの! だってお仕事が七分割にされるなんておかしいもん! まあ“千里塚”だけは違うけど、他の血統はいらなーい、カノンたちの楽団だけでよくない?」
カノンの言葉をアルトが引き取る。
「そういうわけです、いずれもっと別の大舞台で、とは思っていましたが、ここに奏ちゃんが来るのは予想外でした。でも、機会は活かさないと……もったいないですよね? さようなら、“ドールマスター”」
……ふざけるな虹月の演奏屋ども。
あんたたちにむざむざと殺されるくらいならば……あたしも“亜桜”としての矜持がある、このままでは終わらない!
アルトがタクトを振り上げ、あたしが覚悟を決めた時、完全に忘れられた外野から……声がかかった。
「虹月……たしか“虹月幻想オーケストラ”だったっけ? わたしの話も聞いてくださらないかしら?」
“断罪”と“楽園”のガードと言うか、拘束は解いていないままの咲夜の声が、あたしたちの修羅場に割って入った……。
ウソでしょ……あんた……一体何のつもり……?