「今、何て言ったユーミア…!?」
ユーミアの報告を聞いて、僕は愕然とする。咲夜が…この敷地内で襲われただって!?
「それで、咲夜は!? 無事なんだろうな!?」
「はい、警備部を動員し賊は撃退しました。咲夜様にも大事はございません。賊は残念ながら取り逃してしまいましたが」
何てことだ、よりによって幾重にも警備が敷かれた研究所内に賊の侵入を許し、咲夜の身を危険に晒してしまうなんて…! 咲夜の身の安全はもちろん、TYPE SAKUYAシリーズの機密漏れは絶対に避けなくてはならない。
A-2の起動にも成功しそれを下敷きにした
「凍夜様には綾小路本家から特殊警備部及び咲夜様はじめ我々プロジェクト中枢スタッフ警備の増員を要請しました。本日中に配備が完了いたします」
「ありがとう、さすがユーミアだ。手抜かりはないね」
僕は安心して椅子に身を沈める。
咲夜の身体も問題はないようだ、機密だらけで危険地帯となってしまった研究所よりも、そろそろ兄さんのいる本家に移ってもらったほうがいいかもしれない。
「ところで桐夜様、お願いがあるのですが」
お願い…? ユーミアのお願いといえば…言いにくいが性的なことばかりだ。こんな真っ昼間からはちょっと抵抗が…。
いや、僕だって男だしまんざらでもないんだけど、でも、みんなまだ一生懸命働いてるのに、僕たちだけそういうことをするのは…ねえ?
身構える僕に対し、ユーミアは意外なことを告げた。
「ユーミアは明日から1週間ほど有休をいただきたく思います」
は?…このクッソ忙しい時にですか…?
「お義兄様、今日はユーミアさんはご一緒じゃないんですか?」
「ああ、ちょっと用事があるらしくてね…」
僕は午前の健診を終えた咲夜と、研究所内の食堂でランチを摂っている。健診自体は女性スタッフにお願いした、咲夜も女の子だ、その辺は兄として考えてあげないといけない。
「いつもお義兄様にべったり…いえ、ご一緒のユーミアさんが…珍しいですね」
「ああ、そう言えばそうだね」
「でも私、お義兄様と二人きりは…ちょっと嬉しいです…」
義妹は、少し頬を赤らめてそう言った。
「そうか、僕も久しぶりに…いや、咲夜はまだ思い出せないよね。うん、兄妹水入らずは嬉しいよ」
「あ…ありがとうございます、お義兄様…」
少しはにかんで上目遣いで僕を見る義妹の眼差しに、僕は不覚にもドキッとしてしまう。待て待て、咲夜は義理とはいえ妹なんだぞ…、というか、咲夜ってこんなに可愛かったっけ…?
実は一度目の健診の時、咲夜の未成熟でありながらも僅かな膨らみが特殊な自己主張をしてやまない胸を目のあたりにした時も、鼓動の高鳴りを感じてしまった。
前の咲夜であれば、恐らくこんな気持ちは感じなかっただろう。今の咲夜は…記憶を無くしているためか、全くの別人だ。
僕の知っている咲夜は…決して悪い子ではない。ないが…綾小路の直系として、兄さん同様の良くない血が顕著に出ていた。つまり、金で買えないものはないという拝金主義だ。兄さんのように権謀術数が働ない分ストレートに拝金主義を前面に出してしまうため、兄さんよりも始末に負えないところがあった。
おじい様はそんな咲夜の、綾小路の血が強く出たことを喜んで目に入れても痛くないほどの可愛がりようだったが、僕は正直そんな咲夜が苦手だった。
しかし…今の咲夜は家のことなど何も覚えていない。年相応の…それこそ一般庶民だからこその正しい感性を持つ、ごく普通の、本来あるべき女の子だ。
そんな咲夜を僕はとても愛しく思う。
こんな歪んだ血に生まれなければ、本当はこういう女の子になるはずだったんだ。なるべきだったんだ。
あの痛ましい事件は悲しかったが…咲夜…今のお前は…
「お義兄様? どうしたんですか? 具合が悪いんですか?」
咲夜が心配そうに僕を見つめる。
しまった、また自分の考えに没入してしまった、僕の悪い癖だ。
「何でもないよ咲夜。ほら、口元にケチャップがついてる」
僕はナフキンを手に取り、義妹の口を拭ってやる。
「やだ、お義兄様ったら…。私、そんなに子供じゃありませんよ」
「僕にとっては、まだまだ子供だよ」
僕の言葉に頬を膨らませる咲夜。そんな姿がとても愛しくて、そして…心が引き裂かれるほど辛い。
許しておくれ咲夜…僕はお前を…可愛い義妹を…命を助けるためとはいえ…そんなバケモノのような姿にしてしまった…それも…ただ自分の理論を実証する、それだけのために…!
桐夜ちん、ロリコンじゃね?って書いてて思った。