M@gica デレマス×魔法少女   作:心技休

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入隊? 328プロダクション

 ボロボロになったライブステージ。

 ゴーストの撒き散らしていた稲妻が各所を焦がし、遊具や乗り物からも煙が上がっている。

 火事になるような大きなものは見当たらないが、この状況が無事とは到底言い難い。

 

 しかし幸いにも人的被害は無く、こちらはまゆの的確な処理と光の活躍の賜物と言えよう。

 

 戦いを終えた2人は出口で待っている恭二と有香の元へ走る。

 光の勝利を見納めた有香は、一安心して緊張が解けたのかぐったりとしていて、倒れそうになる体を恭二に支えられていた。

 

 

 

「有香さん! 大丈夫ですか!?」

 

 

「私、は……大丈夫……光ちゃん………頑張った、ね……」

 

 

「光ちゃんを誉めるよりも自分の心配をしてください!」

 

 

「……やっぱり。結構な熱ある。昨日のリハーサルの時にでも、ヒーロー役の人から風邪もらってたんだろうな。」

 

 

 

 有香の額に手を当て熱がある事を確認した恭二、ある程度は推測していたようで慌てる2人よりも冷静な態度を見せている。

 

 

 

「ヒーローでも……風邪、ひくのか?」

 

 

「そりゃひくだろ、ヒーローだって人間だし」

 

 

「ショーやライブの時はそんな風には見えませんでしたけど……」

 

 

「プロ根性、それか自分でも気付いてなかったのかもな。そんな状態で戦ってたんだ、無理もない。」

 

 

「なら早く有香さんを病院へ!」

 

 

 

 光がそう言いかけるとベルトに刺さっていた変身アイテムが自らの意志で外れ、ゆっくりと光の手の中に収まった。

 それと同時に、光もベルト付きの私服姿に戻った。

 

 

 

「返し忘れるところだった……有香さんの力、お返しします。ありがとうございました」

 

 

 

 そう言って変身アイテムを有香に差し出すと、変身アイテムはピンク色の光球に形を変え、有香の胸の中に吸い込まれていった。

 

 

 

「光ちゃんの、力ですよ」

 

 

「え……?」

 

 

「光ちゃんが、ヒーローになりたいって、強く願ったから……変身できたんですよ」

 

 

 

 変身アイテムが有香の中に戻ってから、少しだけ元気を取り戻したようで笑顔で光に答える。

 肩を大きく上下するほどキツそうだった呼吸も、今は深く落ち着き始めている様子。

 

 

 

「風邪も心配だが、あの黒い狼みたいなやつに一発もらってるからな、ぱっと見わかんねえだけでどっか怪我してるかもしれない。救急車呼ぶか?」

 

 

「私のプロデューサーを呼びます。これ以上余所の事務所の方にご迷惑はお掛けする訳にはいきませんから」

 

 

「そうか。でもまゆさんもガス欠状態だし、またさっきの黒いのが襲ってこないとも限らないからな。そっちのプロデューサーが来るまで俺たちもついてるよ。光、いいよな?」

 

 

「ああ、もちろん! 何度だってアタシがやっつけてやるさ!」

 

 

 

 救急車を呼ぶ為スマホを取り出そうとするが、まゆの一言で手は止まりもう一度有香を支えに戻る。

 状況を見て残った方がいいと判断した恭二は、光にも同意を求め言葉を投げかける。

 ノリノリな光は頼りがいのある笑顔で元気に答えた。

 

 

 

「光ちゃん、新人さん、ありがとうございます」

 

 

「芦原 恭二。好きに呼んでくれて構わないよ」

 

 

「芦原……どうりでよく似ている訳ですねぇ」

 

 

 

 小声で呟きながらクスッとまゆは含み笑いを零した。

 

 

 

 

 

 

 

「急いては来ましたが、どうやらわたくしの出る幕では無かったようですね。この姿での出番が少ないのは良い事です」

 

 

 

 一方、大きな道を挟んだ向かいのビルの屋上から、光たちの様子を窺っている1人の少女の姿があった。

 フェンスの上に立ち和装テイストの衣服が風に煽られているにも関わらず、微動だにしない様は凄腕エージェントの風格すら感じさせる。

 

 

 

「さて、報告を終えたら皆と合流しましょうか」

 

 

 

 トンッとフェンスを蹴る金属音、大通りに落下するのかと思いきや、その姿は風が吹くと同時に消え去っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 十数分経ったところで有香とまゆのプロデューサーがやってきた。

 幸いゴーストの追撃は無く、無事に有香を引き渡す事ができた。

 ほぼ同時に救急隊員も駆けつけ、現場の処理にあたっている。

 

 

 

「頑張りすぎるのはお前の悪い癖だぞ?」

 

 

「……すみません」

 

 

「有香がご迷惑をおかけしました」

 

 

「あぁいえ、とんでもないです」

 

 

「有香さんかっこよかったぞ! 悪い犬っころに食べられそうになった子供を助けたんだ!」

 

 

 

 有香を軽々とおんぶし、そのまま有香に衝撃がいかないようゆっくりとお辞儀をして謝罪、隣に移動したまゆも合わせるように頭を下げた。

 恭二は困惑気味だったが、光は怒られている有香を見て少々不服だったのか、弁明を図ろうと有香の活躍を語ろうとした。

 

 

 

「確かにかっこいいな。でも、今のこの弱り切った状態はどうだ? お世辞にもかっこいいとは言い難いだろう?」

 

 

「そ、それは……」

 

 

「別に怒ってる訳じゃない、心配してるだけだ。担当アイドルを思いやるのは、プロデューサーとして当たり前の事だからな」

 

 

 

 徐々に声色を柔らかくしていき、光を安心させるように語りかけるプロデューサー。

 それを聞いて反応したのは隣にいたまゆだった。

 

 

 

「まゆも風邪、ひこうかな……」

 

 

「そしたらまゆの看病で他のアイドルをプロデュースできなくなる。俺の給料が減るからやめてくれ」

 

 

「プロデューサーさん……」

 

 

 

 ボソッと零れた心の声をプロデューサーは逃さずすくい上げ、淡々とそれに答えた。

 感情がほとんど籠もっていないように聞こえる言葉だったが、それを聞いたまゆは頬を赤らめ、嬉しそうにプロデューサーに寄り添った。

 おぶられたままの有香は小さく溜め息をつく。

 

 

 

「なんて今度ないちゃつきなんだ……」

 

 

「え、あれいちゃついてるの?」

 

 

「まぁ、わかんなくても大丈夫だ」

 

 

 

 2人の言動が理解出来ず恭二に疑問を投げかける光。

 この年頃の少女に理解させるものではないと思った恭二は、苦笑いしながらはぐらかした。

 

 

 

「それでは私たちはこれで失礼します。マギカやゴーストの詳しいお話は、お姉さんがしてくれると思いますよ」

 

 

「はい、また……え、姉さん?」

 

 

 

 去り際にクスッと含み笑いを落としていったまゆは、有香をおぶったプロデューサーと共に非常階段を降りていった。

 手を振って見送る光、恭二はまゆの言葉で何かを察した様子。

 そこにまるでタイミングを見計らったかのように恭二のスマホが鳴った。

 ポケットから取り出したスマホの画面には 姉 の文字が表示されている。

 

 

 

『ハーイ恭二、プロデューサーになった感想はどう?』

 

 

「一周まわって冷静だわ」

 

 

 

 スマホ越しでも三葉のウキウキ気分が伝わってくるのに対し、恭二の声には怒りがこもっているように聞こえる。

 

 

 

 

『あら、もっと混乱してテンパってるものだと思ってたわ』

 

 

「最初はビビったし訳わかんなかったよ。今は自分でも驚くくらい現実を受け入れてる……ちゃんと説明してくれるんだよな?」

 

 

『もちろん、事務所に帰ってきたらまきのんがね』

 

 

「人任せかよ」

 

 

『まぁでもちょうどお昼時だし、昼食代経費で落としてあげるから、2人で好きなとこで食べてきてちょうだい』

 

 

「回らない寿司でも?」

 

 

『高級フランス料理でも可。ちゃんと光ちゃんを連れてくるのが条件よ。あと領収書忘れたら経費出ないからね』

 

 

「了解。じゃあまたあとで」

 

 

 

 通話を切ったところで光が話し掛けてくる。

 

 

 

「相手の人、誰? 女の人の声が聞こえたけど……彼女さんとか?」

 

 

「姉さんだよ、うちの事務所の社長。彼女とか生まれてこの方できた事ねぇわ」

 

 

「そっか……何かごめん」

 

 

「別に今のは謝らなくていいんじゃね? 恋人同士の会話には聞こえないけど、だいぶ砕けた話し方だったと思うし、勘違いしてもしょうがないって」

 

 

 

 スマホをポケットにしまい、気まずそうにしている光を安心させるべく頭をポフポフと撫でる。

 すると光はキューッと縮こまっていき顔を伏せていく。

 あっ、と小さく声を漏らすと恭二はすぐさま撫でていた手をどける。

 

 

 

「嫌、だったか?」

 

 

 

 光は俯き加減のままゆっくり首を横に振った。

 

 

 

「その……頭撫でられるの、すごい久しぶりだったから……ちょっと反応に困っただけ。だから……大丈夫」

 

 

 

 撫でられた頭に両手を添え、髪型を直すような素振りを見せる光。

 さほど乱れていない髪を直す仕草は、年頃の女子がよくする照れ隠しの1つ。

 それは恭二もよく知っている。

 

 大丈夫 の言葉と共にニカッと笑って見せた光は、電話の内容を聞き出すべく話を切り出す。

 

 

 

「それで、お姉さんは何て?」

 

 

「ああ、昼飯代出すからテキトーに飯食って、光と一緒に事務所に帰ってこいって。午後から何か予定あるか?」

 

 

「人助けする予定だった!」

 

 

「さすがはヒーロー志望、感動したからお昼を奢ってあげよう。何食べたい?」

 

 

「ハンバーガー! 今キッズセット頼むとシャイニンガーの限定変身アイテムが貰えるんだ!」

 

 

「ブレねえなぁ。よし、じゃあ行くか」

 

 

「うん!」

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

「う~ん……やっぱ高級フランス料理は言い過ぎだったかなぁ……光ちゃんも一緒だろうしファミレスでハンバーグとかにしておけば……」

 

 

「今更何言ってるんですか、社長」

 

 

 

 所変わって328プロダクションの事務室、時計の針はもう直ぐ1時を指そうというところ。

 社内食堂でお昼を済ませた三葉とマキノは、戻ってくる2人にマギカ関連の説明をすべく資料をまとめている。

 と言っても、マギカ関連の資料はマキノがほぼ全てノートパソコンで入力しており、三葉は光が事務所のアイドルとして所属するための書類を作成(マキノが打ち込んだ書類データを印刷)している。

 そんな中、三葉がブツブツと先程の電話の内容を後悔するような事を言い出し、マキノからは辛辣な返答が飛んでくる。

 

 当の恭二と光はハンバーガーにポテトにジュースと、2人で1000円弱の領収書を持って事務所に向かっている。

 高級フランスに回らない寿司とは何だったのか。

 

 

 

「必要書類、全部書き終わりました」

 

 

「お疲れ様ー。うんうん、印鑑もちゃんと押してあるし、これで今日からあなたも我が社の一員です!」

 

 

 

 事務室にはもう1人少女がいた。

 正確には少女ではなく立派な大人の女性なのだが、外見的にはマキノと同年代に見え、10代と言われれば信じてしまうような童顔と小柄な背丈。

 150㎝にも満たない身長に似合わず出るところはしっかり出ている為、身に着けているスーツの張りからボディラインがクッキリ見えてしまう。同じスーツ姿のマキノや三葉とはまた違ったセクシーさを醸し出している。

 ポニーテールを括る大きな白いリボンが特徴的なその少女、否女性は入社用の書類に印鑑を押し三葉に手渡す。

 速読術でも習得しているのか、三葉は書類を見るや否や指をピシッと立てて女性を指差し歓迎の笑みを見せる。

 

 

 

「あの……私も何かお手伝いしたほうが……」

 

 

「お仕事は恭二たちが戻ってきてからで大丈夫よ。事務員って形とは言え、うちに来てくれただけでも十分だもの。それに……私より恭二の方が喜ぶと思うわ」

 

 

 

 実の弟へのサプライズ、半ば強引にプロデューサーにしてしまった事への償いの気持ちもあるのかもしれない。

 しかし恭二の喜ぶ顔を想像すると自分も嬉しくなっている、三葉はそんな自分を姉バカだと思いながらも楽しげに微笑んでいた。

 

 片やリボンの女性は何のことなのかさっぱりといった感じで首を傾げている。

 

 

 

「噂をすれば……2人、戻ってきたみたいですよ」

 

 

 

 マキノはキーボードをカタカタッと2、3度操作してディスプレイを2人の方へ向ける。

 そこには受付を通り過ぎ、談笑しながら廊下を歩く恭二と光の姿が映っていた。

 角度的におそらく監視カメラの映像だろう。

 

 

 

「それじゃあ、私たちも移動しましょうか」

 

 

 

 三葉はプリンターから出てきた書類を持ち、リボンの女性の手を引いて面談室に繋がる扉へ向かう。

 ノートパソコンを閉じてスリープ状態にし、脇に抱えて持ったマキノはその後を追った。

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

 

 

 まるで自宅のようなノリで面談室の扉を開け、光と連なって入ってくる恭二。

 ハンバーガーを食べながらヒーロー談義で盛り上がったのだろう、2人とも子供のように話に花を咲かせている。

 目に余る光景に三葉はすかさず喝を入れる。

 

 

 

「部屋に入ってくる時はただいまじゃなくて失礼します! あとノックしてから入ってきなさい! それから担当との楽しいコミュニケーションは時と場合を弁えて! わかった!?」

 

 

「は、はい……」

 

 

 

 家にいる時の疲れきった姉の姿しか基本見たことがなかった恭二は、親に叱られる子供の気分を十数年ぶりに味わいながら、途端に豹変した三葉の叱責を受け畏縮した。

 隣にいた光も同じく縮こまっていた。あの時の電話の声の人物だということを認識した様子。

 第一印象はとても大事、それは芸能界をそれなりに生き抜いてきた三葉なら当然理解しているはずなのだが、これからアイドルになろうという少女を前に、身内とは言えいきなり怒鳴ったりして大丈夫なのだろうか。

 それを心配してかマキノが宥めに入った。

 

 

 

「社長、弟さんが大人としてのマナーがなっていないのは私にもわかります。ですがここは抑えてください」

 

 

「……大人気なかったわね、ごめんなさい。それじゃあ気を取り直して、新しい子を紹介します!」

 

 

 

 荒げた息を整えて、三葉は自分の後ろに隠れていたリボンの女性に前に出るよう促した。

 マギカの説明は? とツッコミたかった恭二だったが、強く叱られた後ではそんなことを言う勇気は出なかった。

 少し遠慮がちに皆の前に出てきた女性は、ゆっくりと顔を上げ口を開いた。

 

 

 

「今日からお二人をサポートします、安部 菜々です。よろしくお願いします」

 

 

 

 リボンの女性は持ち前の明るく元気な声で挨拶し、深々とお辞儀をした後ニコッと愛らしく恭二と光に笑顔を見せた。

 

 

 

「アタシは南条 光だ。こちらこそよろしく!」

 

 

 

 負けじと元気に挨拶を返す光、こちらの笑顔はイキイキとした活力が感じられる笑顔である。

 片や恭二はと言うと、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして固まっていた。

 しかし数秒後にその硬直は解かれ、瞳から一滴の涙が頬を伝っていた。

 

 

 

「菜々……さん……」

 

 

「社長の弟さんで、恭二さん、ですよね? ほんの少しですがお話を伺いました、これからよろしくお願いしますね。……?」

 

 

 

 2人の元に歩み寄りまずは光と握手を交わす菜々、すぐ隣に立つ恭二にも同じように握手しようと手を差し伸べる。

 光とはさほど身長差は無いが、恭二は175㎝と一般男性よりやや高い。

 見上げる形で恭二の表情を見ると、頬を伝う雫が蛍光灯の明かりを反射し、菜々の目にくっきりと映った。

 何事かと首を小さく傾ける菜々、彼女が差し伸べた手を握った恭二の両手は小刻みに震えていた。

 

 

 

「去年事務所から電撃引退の発表があって、それ以降テレビでもネットでも菜々さんの姿見なくなって、声も聞けなくて、ブログも更新無くて……俺、めちゃくちゃ心配してたんですよ………でも……元気そうで、良かったです。こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 

 

 引退した後も追っかけ続ける熱烈ないちファン、憧れのアイドルを前にして思わず泣き出してしまう人は少なくない。

 最初は菜々の目にも、恭二の姿はそんなファンの1人としてしか映っていなかった。

 しかし、零れた涙は自分を本気で心配して、そして今この瞬間に安堵して溢れてしまったものなのだと、菜々は悟った。

 一度流れてしまってはいるが、それでも涙を堪え笑顔を取り繕おうとしている恭二の姿を見て、その考えはより確信を得たものになっていた。

 

 恭二は深々と頭を下げる。

 

 

 

「大袈裟ですよ、プロデューサーさん。少し表舞台に立つのを控えていただけですから。ナナは大丈夫です」

 

 

 

 恭二の真っ直ぐで暖かい誠意に答えるべく、菜々も子供をあやすように言葉を紡ぎ、優しげな笑みを浮かべた。

 元アイドルとしてではなく、1人の女性として。

 

 

 

「ところで光ちゃん、その変身ベルトずっと付けていたんですか?」

 

 

「うん! いつまた黒い奴が襲ってくるかわからないからな。いつでも戦えるようにしておかないと」

 

 

「あぁ、それえらく気に入っちゃってて、周りの視線はイタいししまい方もわからないしで……」

 

 

「ん? ベルトなら簡単に外せるぞ。解除」

 

 

 

 菜々の何気ない質問に意気揚々と答える光。お気に入りのベルトに関心が向けられて嬉しくなったようで、ドヤッと見せ付けるようにポーズをとる。

 恭二の疑問の声を聞いて、今度はまるで当たり前だと言わんばかりにキョトンとし、解除の発声と共にベルトは外れ黄色い粒子となって光の中に溶け込んでいった。

 光は無邪気に笑っている。

 

 

 

「……もう少し早く言えば良かった」

 

 

「あはは……」

 

 

 

 うなだれる恭二に苦笑いを浮かべる菜々であった。

 

 

 

「菜々ちゃんともある程度打ち解けたみたいだし、私たちも改めて自己紹介しましょうか、まきのん♪」

 

 

「……そうですね」

 

 

 

 感慨無量の恭二を見てご満悦の三葉。ここからが本番と話を持ちかける。

 マキノは相変わらず落ち着いた返事をするが、どこか気だるそうにも聞こえる。

 

 

 

「恭二も、今朝のデータを上書きする準備をしておくように!」

 

 

 

 人差し指をピシッと立てて決めポーズをとり、ドヤ顔に近い表情を見せる三葉。菜々を紹介してからずっとテンションが上がりっ放しである。

 

 指差された恭二は驚愕と困惑の入り混じった複雑な顔をしていた。

 

 

 

「私、芦原 三葉は、芸能事務所328プロダクションCEOであり、328プロゴースト対策室室長でもあるのです!」

 

 

「八神 マキノです。328プロ経理総轄兼同ゴースト対策室マギカ技術顧問をしております。改めて、以後お見知り置きを」

 

 

「そしてナナが、2人が新しく立ち上げるプロジェクトの専属事務員で、ゴースト対策室では2人の専属オペレーターになります。こっちでもよろしくお願いしますね♪」

 

 

 

 三葉のテンションはそのままに三者三様の自己紹介。光に負けず劣らずの元気いっぱいなもの、本当に10代かと疑うような丁寧なもの、安心感をもたらす優しく愛らしいもの。

 いよいよ夢見ていた事が現実味を帯びてきて、光は目をキラキラと輝かせていた。

 隣の恭二は今日、驚いてばかりである。

 

 

 

「ではまず、隊員の証としてこれを授けよう」

 

 

 

 ここまで来ると特撮俳優顔負け、いや顔でも遅れはとらないであろう。ヒーロー物でよくある博士風の物言いで、三葉は2人に三つ葉のクローバーの形をしたブローチを手渡した。

 

 

 

「おお! 何か、何かそれっぽい! ヒーローの秘密結社みたいだ! かっこいい!」

 

 

「えっと……つまり、これを付けてる人間はマギカやゴーストの事を知ってる、と?」

 

 

「そゆこと。ま、うちの事務所のなかでは、だけどね」

 

 

 

 受け取ったブローチを両手で持ち天に仰げば最早有頂天、純粋に輝く目は切れ込みの入った椎茸と言って差し支えない。

 歓喜の声を上げながらワクワクが止まらない様子の光。ベッドの上ならスプリングは壊れているだろう。

 恭二の方はというと、純粋な疑問を、しかし少し考えればすぐわかる事を三葉に訪ねる。

 肯定の言葉を投げ返すと、首から掛けていた同じ形の装飾品が付いたネックレスを指で摘まんで見せた。

 その行動を見てマキノは左手中指にはめられた指輪を、菜々は胸元に付けられた恭二たちが受け取った物と同じブローチを、それぞれアピールするように見せる。

 

 

 

「これでアタシたちもヒーローの仲間入りだな!」

 

 

「そうだな」

 

 

 

 お揃いのブローチ。

 通信機能が付いているとか、みんなで(かざ)せば黄金に輝いてすごいパワーが出るとか、決してそんな夢のある物ではない。

 それでも、光にとってはそれと同じくらいの夢が詰まったアイテムなのである。

 そんな夢いっぱいのアイテムを受け取った13歳の少女が見せる笑顔に、恭二も自然と頬が緩んでいた。

 

 

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