静かに暮らさせてください(願望)   作:ピチョンプスッ!

1 / 3
前々からあったら面白そうだな、と思っていたネタを投入。続くかは反響と興が乗ったら書きます。
取り敢えず1/2目をどうぞ。

修正入れました(11/7現在)


この世界の異常性

 

『ゴメンねゴメンね、ちょっとした不具合で寿命前に君を殺しちゃった♪ お詫びにちょっとした能力をあげて転生させるから許してチョンマゲ♪ あ、転生する世界はランダムだから頑張ってね〜!』

 

『…………は? いや、ちょっと待あぁぁぁぁぁぁ––––––ッ!!? (没シュ-ト』

 

 

 

 

 

 ▼

 

 ––––––ヒソヒソ、ヒソヒソ

 

 俺を除いた教室の全員が、加えて廊下の者までが俺を見てヒソヒソ話を始める。

 当たり前だが耐え難い。この世界に生まれ落ちて早18年、もはや日常茶判事で行われるコレにはもう飽き飽きだ。それに何故こんな時に限って席が教室のど真ん中なんだよ、悪意あんだろ。

 と、内心グチグチ言うが、いちいち反応するのも逆効果なので手元のラノベに目を向ける。

 

『ん〜、相変わらずモテモテだね、ますたぁは』

 

(止めてくれ)

 

 ふんわり口調で手の甲から俺の脳内に話しかけるはドラゴンのクリューヌ。淡い碧の滑らかな籠手状の【神器(セイドリック・ギア)】で俺に取り憑いており、こういう公共の場ではクリューヌの幻術で普通の手に誤認させているのだとか。

 その口調と名前から連想するように、所謂ゆるふわ系の彼はこういう耐え難い空間を耐えきるのに実に有難い。どれくらいかというと、彼が居なければ何か精神疾患を抱えていたのでは無いかと思うほどに。

 

『でもでもぉ、実際()()()()()で見られているわけじゃん? お姉様系からロリ系まで、選り取り見取りじゃん?』

 

(分かってる、分かっているんだよ、いくら恋沙汰無しの俺でもこれは好意の目線だってことが…………。それでも実感湧かねえし、むしろ裏があるんじゃないかって恐ろしいわ!)

 

 そう、俺の見た目は神様の好意かアニメ仕様なのかは知らないが、前世よりだいぶマシなイケメンになっていた。けれどいきなりイケメンになっても実感が湧かないしむしろ戸惑うのが普通である。

 そしてこの世界でイケメンは致命的に厄介ごとに巻き込まれるのでギャルゲー主人公よろしく前髪を目元隠すほどの長さにしている。その結果、普段は陰キャだが目元の髪を退かせばあらイケメン…………という夢仕様となったのだ。無論誰にも明かしていないが…………。

 

 

 

 だがそんな見た目でも何故クリューヌからそういう事を言われるか––––––––それは()()()()だからだ。

 

 まさか夢にも思わないだろう、男が希少な『ハイスクールD×D』に転生するなんて。

 そりゃあね、俺だって男だから最初は喜んだよ、ハーレムヤッホイって感じで。でもよくよく考えるとパワーインフレ激しいこの世界でどうやってハーレム築けと? 下手したら即アボンなこの世界に安寧を求めるならハーレムはダメだ。

 

 じゃあ原作に関わらず慎ましく暮らそうとするが、そうは行かなかった。外に出ればハァハァ言われ、暑いと半袖になれば痴女ならぬ痴漢と間違われる。原作の舞台である駒王町から離れようとしたが、神の悪戯なのか事あるごとに修正力が働き離れられていない。

 具体的には外部へ発つ目的で乗ろうとする交通機関が謎の事故で長期の運転見合わせになるとか。事あるごとに他人に被害を被らせるのは気が引けた。

 

 この駒王学園に入学したのだって俺の意思では無い。

 男女共学化のテストケースとして学園に通うだけでお金が振り込まれるという画期的な説明に前世の考えの俺は有無を言わさず契約書にサインした。後ほど確認すれば、それは駒王学園ではないか。

 ちゃんと確認すれば避けれた原作舞台、きっとあの時は修正力で思考低下していたに違いない! (責任転嫁)

 

 そのお陰で後輩にほんの数人男性がいる。…………一部からは「お兄様」と図太い声で尊敬されているようだがな! 

 

 ––––––キ-ンコ-ンカ-ンコ-ン。

 

 始業ベルを聞き流しながら、再度この世界について瞑目する。

 男尊女卑、激しいパワーインフレ、この強い個性がある世界で生き残るためには、やはり慎ましく山奥などの閉鎖的な生活が好ましいのだろうか。

 痴漢ならぬ痴女、レディファーストならぬメンズファースト、グラビアの表紙がムキムキの男性が飾るこの世界。

 加えて本来男の羨望であるハーレムを題材にした『ハイスクールD×D』の男女の価値観の逆転。

 

(ほんっと、意味分からんなぁ…………)

 

 田中太郎、駒王学園高等部3年生。未だにこの世界に慣れることはない。

 

 

 

 ▼

 

 SAN値ゴリゴリ削れた俺にとって、昼休みは唯一の癒しとも言えるだろう。

 食べ物に罪はない、美味いは正義。疲弊した心身に活力を与える美味しい昼食。更に希少な男性の保護ということでこの時ばかりは邪魔されない。

 1時間弱という短い時間だが、癒しは癒し。俺はこの瞬間を全力で堪能するのだ。

 

 と言うわけで俺の唯一の癒しの場である屋上にて、俺は弁当箱を広げる。

 

『それにしても本当に信じられないよ、ますたぁが言う男女公平の前世なんて』

 

「社会が悪いなんてほざいてたけど、この世界体感したらいかに生易しいか理解したわ」

 

 クリューヌは俺に取り付いていると言うこともあり、当然記憶も筒抜け、その結果俺が前世持ちというのは既に露呈している。

 

 因みに何故この世界に男性が少ないか、という解答は未だ無い。

 俺も貞操の危機を感じできるだけ調べた。戦争の影響や遺伝子の影響など様々な仮説が挙げられるが、これと言ったものはなく、むしろ年々と男性の出生率が減少しているとのこと。

 過去の偉人も殆ど女性というギャルゲー仕様。それが原因なのか、男は女に護られるべきという風潮が現在も引き継がれており、もはや男性は家の堀から外界を知らないという箱入り息子状態。

 前世を持っている俺から言わせてもらうと、もうこれわけわかんねぇな? 

 

 ただ人間どんな過酷な環境にいようと長い年月をかけて適応すれば、やがて慣れる。俺も例外では無い。むしろ一度死んだ身なので色々と吹っ切れた。

 というか普通に暮らしているだけだというのにお金が入ってくる生活だぜ、楽しまなきゃ損だろ! 

 

 と、楽観的な事をほざいているが、その過程ではかなり苦労した。

 何が一番つらいかって、生身の男性との交流が無さすぎる。

 この学園だってそうだ。2年の松田と元浜は「お兄様を腐女子の的にするなんて恐れ多い事出来ません!」と一蹴。お前らもっと欲に従えよ、地味×地味で妄想捗る奴なんていないだろ…………多分。因みに俺をお兄様と呼ぶ一部が彼らだ。お兄様同じく2年の木場、イケメン死すべし(ブーメラン)。匙、生徒会長からの求愛にゲンナリしている模様。

 以上、この学園高等部に在籍する男性全員でした。

 

 

 

 

 …………分かってる、明らかに1人足りないって。

 この世界の主人公とも呼べる存在が抜けてるってことは重々承知している。でも仕方ないのだ。

 俺は虚ろな目でフェンス越しに校庭を見下ろした。するとほら、すぐ見つけることができた。

 

「––––––––ウェヒヒヒヒ!」

 

「きゃっ⁉︎ ちょっとぉ、止めなさいってば、()()!」

 

 ほらやってた、無防備な二代お姉様の片割れであるリアス・グレモリーの背中からその豊満な胸を鷲掴みする1人の女子が。

 お分かりいただけただろうか。()()()()()()にて呼ばれた『兵藤』という名前が。特筆するべき点は、男性なら一瞬で社会的信用を失う行動を当たり前のようにやり、被害者であるはずの女性も友達のイタズラ感覚で流しているのだ。

 始めに言っておくが、この学園高等部に兵藤という名字は1人しかいない。

 

 

 

 

 そう、この世界の我らが主人公様は見た目だけTS化した『兵藤一美』という変態女子なのだ。

 

 

 




良かったら感想下さい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。