静かに暮らさせてください(願望)   作:ピチョンプスッ!

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2/2話目をどうぞ

修正入れました(11/7)


希少だからって、調子には乗らない。

 

 さてさて、原作主人公がTSしているのはこれ如何に?

 下校の路地で「ハァ」と溜息をつく。

 

 そもそも『兵藤一誠』の純粋な変態性が物語を進めてきたのだ。

 始まりは天野夕麻––––––––もといレイナーレという堕天使とのデートだ。

 当然デートというのは異性同士が行う行為であり、同性同士が行う行為では無い。いや、愛し方は人それぞれだから明言できないが。

 

 それとも違うアプローチで兵藤一美を殺しにかかるのだろうか?

 

 ………やめやめ、殺されるのが前提なんて話は物騒だ。

そもそも自分から深く踏み込まなければ良いんだ。この体質上どうせ向こう側から来るだろうが、その時はその時。それまでは平穏に暮らせば良いんだ(願望)。

 

『そうそう、何事も平和が一番だよね〜』

 

 同情の声を上げるクリューヌも、何かしら大変な過去を持つらしい。ドラゴンであっても性別は男性、だから色んな厄介ごとに巻き込まれたのだとか。

 やっぱり持つべきものは友だ、そうしみじみしていると、向こうの商店街から何やら喧騒な声が聞こえてきた。

 出店のたい焼きや、あそこは夕方5時から焼き上げるから評判が良いんだ。ほんの1時間ほどで売り切れるんだよ、持ち手の紙の上からでもホカホカしているんだよな。中のクリームやあんこもとても濃厚なんだよ。

 ってそうじゃない、あそこから聞こえてくるんだよ。

 

『うへぁ、あれだね、男性だからってワガママ働いているようだね』

 

 ………。

 

「………あの、私が並んでいたのですけれども」

 

「君、メンズファーストって言葉知ってる? 知らないならこれを機に調べれば良いよ」

 

 どうやら割り込みのようだ、しかもこの世界の特徴を突いた嫌なタイプの。いるよね、そうやって権力を傘にする人種。もちろん俺はそんな事しない。

 まぁいくら俺が嘆いたって無くなるはずもない。関わるだけ無駄だ。

 

「………いや、だからそこは」

 

「あぁもうめんどくさいな。もういいよ、警察呼ぶから」

 

 ………関わるだけ無駄だ。

 

「男性である私に楯突くのが悪いんだよ? その制服と背丈を見るに駒王学園の中等部かな? まぁせいぜい男性に逆らったっていうレッテルを貼られて社会の波に呑まれれば良いよ」

 

 ………ダメだ、やっぱりムカつく。

 そっぽを向いた足を直し、その男性の元に向かう。今まさに携帯を操作しているその手を()()()()()()()()優しく握りしめた。

 

「イデデデデデッ⁉︎ な、なんだね貴様は!」

 

「お前と同じ男性様ですが何か?」

 

「き、貴様! こんな事をしてタダで済むと––––––」

 

「お前のその男性と女性の価値を突いたやり口、なるほど確かにおまえの悪事は男性の希少価値という盾に守られるんだろう。

 ––––––じゃあ男性同士ならどうなると思う?」

 

 そこで男はようやく気づいたのだろうか、周りから向けられる様々な侮蔑の視線に。

 この状況を作り出せたのなら後は容易い、相手が振り解けるよう力を弱めれば––––––。

 

「お、覚えていろ!」

 

 うわぁ、見事に小物臭いセリフを吐きながら去って行ったなぁ。

 

『ますたぁ………』

 

 分かってる、何で突っ込んだのかって。けれど許せないんだ、同じ男性としてああいうのは。

 純粋にこの世界に生まれ落ちていればこういう正義感も湧いてこないのだろう。やっぱり前世持ちだから、周りの男性と比べて浮くんだろうな。

 

 私は逃げるようにその場から歩き去った。

 

 

 

 

 

 

「………先輩」

 

 

 

 ▼

 

 結局、帰り道の公園で静かに盛大に項垂れる事になった。

 恥ずかしい、ただただ恥ずかしい。

 何だよあの臭いセリフ。あの男性を小物臭いとか言ったが、俺だってそうじゃん。

 

『まぁまぁ、ますたぁは良い事をしたんだし、別に落ち込む必要は–––––––』

 

「お前は分かっていない。あくまで前世基準だが、こんな事をした翌日には学園中に広まるんだぞ! 臭いセリフを吐いた奴ってな!」

 

 善悪問わず、目立った行動をすればそれだけ周りは噂する。前世では有ったぞ、女子と会話しただけなのに付き合っているなんて噂が流れたのは。

 タダでさえ周りからヒソヒソ話をされているのだ、これ以上ネタを提供してどうする⁉︎

 

「最近、ストレスなのか知らないが、白髪ならぬ青髪が生えたきたんだ。はは、奇遇だな、お前の色と同じだよ………」

 

『…………へぇ、もうその段階まで来ちゃったんだ

 

 何やらボソッと呟いたようだが、きっと慰めてくれたんだろう。やっぱり生涯の友はお前しかいない。

 この世の恨み言を呟くかのように呪怨をブツブツと呟く。そんな私に声を掛けるものが居た。

 

「………あの、田中先輩」

 

「大体何でだよ、たかが一言会話したぐらいで–––––––ってん?」

 

 声を掛ける方に顔を向ける。するとどうだろうか、出た感想は何故貴方が? である。

 

「………確か君は––––––搭城小猫、だよね?」

 

「はい。嬉しいです、私の名前を先輩が覚えてくれていて」

 

 搭城小猫、リアス・グレモリーの眷属であり“戦車”の階級を持つ彼女は、その華奢で小柄な外見からはそぐわぬ怪力で場を荒らしていくパワータイプ。

 容姿も猫と付くだけ有って、無口で感情を表に出さないが、一度デレればそれはそれは可愛すぎる少女である。

 

 そんな原作キャラが、一体どうして?

 

「先程は私を助けてくれてありがとうございました」

 

 そう言ってペコリと可愛らしいお辞儀をする小猫。

 はて、先程は助けてくれて? ………背丈、中学生–––––あ。

 

「そうか、怒りで周りが見えてなかったが、君だったんだ」

 

 そう言うと、肯定の頷きが為された。

 

「………それで、一体どうしたんだい?」

 

「そ、そのですね、お礼と言ってはアレなのですが………これ、あげます」

 

 そう言って差し出してくれたのはたい焼き。持ち手の紙のロゴを見るに、先程のたい焼き屋ので間違いない。

 ちょうど良かった、色々あったからお腹が空いていたんだよ。

 

「ありがとう、搭城さん」

 

「––––––ッ! わ、私はこれで」

 

 グウゥゥゥゥゥゥゥゥッ!

 

「「………………」」

 

 今の音、発生源は私ではない。そしてこの公園には私と彼女の2人しかいない。もう分かるだろう、この音の発生源と正体が。

 

「一緒に、食べるかい?」

 

「………ひゃい///」

 

 赤面しちゃって、かーわいー!

 

 

 

 

 

 ▼

 

 田中太郎

 

 駒王学園にてその名を知らない者は居ない。

 希少な男性でありながら女性に寛容。それだけでも珍しいと言うのに、成績も良く運動神経も抜群。まさにラノベの世界から出てきたヒロインと言うのが駒王学園に在籍する女性全員の評価だ。

 

 悪魔である搭城小猫もその1人である。

 壮絶な過去を持つ彼女はとにかく愛情に飢えていた。両親はすぐに死去し、唯一の肉親である姉も失踪、そんな最中に出会った慈愛のリアス・グレモリーには感謝しかない。

 だが、それでも満たせない愛情と言うものはある。

 彼女も1人の女性、いずれ結婚して子供を為し、生涯仲睦まじく暮らしたいという願望が少なからずあった。

 

 そんな最中に現れた白馬の王子。

 彼女の所属しているオカルト研究部にも1人居るが、彼は事情がありカウントしていない。

 とにかく、夢を見るのも仕方がなかった。来るはずもない未来を思い描き、1人思い慰めた夜も少なからずある。

 

 そんな先輩が、今まさに自分と2人きりである。

 

「「………………」」

 

 会話もなく一心不乱にたい焼きに食らいついているように見えるが、小猫の内心はかなりヒヤヒヤしていた。

 

(先輩は、私のことをどう思っているのでしょうか………?)

 

 控えめに言っても、自身のこの容姿はかなりよろしくないと評価していた。

 この世で「ボンッキュッボンッ!」という評価の仕方が有るが、それに倣って自身を表現すると「キュッキュッキュッ!」である。

 主人のリアス、女王である姫島、そして姉である黒歌。身近に魅力的な身体を持つ者がいる彼女はそれはそれはコンプレックスに感じていた。

 

 だから内心諦めていた。この機会があっただけでも幸運、でももう少しだけ踏み込んでみたいな、と思うぐらいには。

 

「………先輩は、どうしてそんなに寛容なのでしょうか」

 

 ふと、そう呟いた。

 この世は男尊女卑、その様な環境で生まれた男性は当然傲慢になるし、その結果が先程の出来事だ。

 にも関わらず先輩は勇敢に、それも私を助けてくれた。

 まるで夢物語の英雄譚、そのお姫様の様な絶頂であった。

 

(どうして先輩は………)

 

 

 

 

「そうだな、確かに私は女性に対し嫌悪感は抱いていない」

 

 ふと、先輩の口からそんな言葉が出てきた。

 

 まさか、聞こえて––––––⁉︎

 

「ご、ごめんなさい先ぱ」

「というかむしろ、君みたいに可愛い後輩に話しかけられて嬉しいよ、俺は」

 

 刹那、この世の時が止まった錯覚を受けた。

 ………え? 先輩は今何と言った? 可愛い、私を?

 

「可愛い、ですか?」

「あぁ、少なくとも今までで君ほど愛らしい存在は見たことがないな」

 

 聞き間違いではない、嘘でもない。長年生きてきた勘が、そう言っている。

 瞬間、極限まで頬が緩む。けれど白馬の王子様である先輩に見せまいと我慢する。

 ずるい、憧れの存在にそんな事を言われたらもう我慢できなくなっちゃう。

 不意に下腹部が熱くなる感覚を感じてしまう。

 猫ショウという種族上、発情という生理的現象が存在する。周期的に現れるはずのそれだが、似たような感覚が今まさに自身を襲っている。

 詰まる所、今まで抑制されてきた欲望が、甘い言葉で氾濫を起こそうとしているのだ。

 

(ダメ、ダメ! 我慢できないっ⁉︎)

 

「ほら、今まさに君の口の横にクリームが付いているところだって実に可愛らしい」

 

 クリームが付いてる?

 食べるのに夢中で犯した小さな失敗、しかし今の彼女はそれを利用してこの疼きを解消せねばと頭をフルに働かせた。

 

「………先輩、そのクリームを取ってくれませんか?」

 

 彼女が出した答えがそれだった。

 かなり無理矢理ではあるが、先輩が私の顔を触る口実を作らせる事でこの疼きを少しでも解消しようという考えである。憧れの存在から触れられれば、それだけで満足できるはず。

 分かっている、余りにも浅ましい考えだし失望されても文句が言えないのは。でもさっき発言で少なからず期待して––––––––。

 

「––––––ッッ!!?」

 

 刹那、口元に指で触れられた感覚がした。

 そう、紛れも無い先輩の指だ。他の男性なら失望してサッサと去ってしまうだろうその行為を先輩は何の躊躇いもなく行ったのだ。

 何という剛胆………違う、やっぱり先輩が言った通りなのだ。先輩は私のことを可愛いと本気で思って………。

 

 結果から言うと、逆効果だった。沈静化するどころか余計に酷くなる。少しでも気を抜くと、今にでも子種を求めてしまうほどに………。

 そんな堪え難い欲望と戦う中、不意に先輩の指を凝視した。今まさに私の口元に付いていたクリームを拭ったその指、クリームは未だ付着して––––––。

 

「………………ん」

 

 私は()()()()()()()()()()()()()

 

 甘い、けれど先程まで感じていた甘さより遥かに甘い。

 その甘さを逃さない(溜めた欲望を発散する)ように、先輩の指を舐め回す。猫ショウ特有のザラザラとした舌が先輩の指に絡ませる。

 発情により思考が定まらない彼女はクリームを全て舐めとっても尚離さない。

 クリームが目的では無く、その手垢を舐めとる奉仕こそが目的のように、丹念に丹念に先輩の指をただ味合う。

 

 やがて味わい終えた彼女はその指を口から離す。唾液による糸が引くのが実に官能的であり––––––不意に目が醒めた。

 

(あれ、一体私は何をして––––––ッッッ!!!?)

 

 今までの行為が全てフラッシュバックした。

 自身の痴態、それを先輩に巻き込ませた後悔。全てがもう遅かった。

 

(いや……いやぁっ!?)

「––––––し、失礼しましゅ!!」

 

 結局、私は逃げるように去ることしか出来なかった。

 まさに泡沫の夢、きっと私は2度と先輩から気にかけられる事は無いだろう。それどころか、先輩が私に対する印象が最悪に………。

 

「にゃ、にゃあ………っ!」

 

 恥ずかしい、死にたい。けれども背徳的だった思い出、それらが再び私の下腹部を熱くさせるのであった。

 

 

 

 

 

 ▼

 

 ありのまま起こった事を話すぜ。

 

 俺が小猫に言われるがままにクリームを拭ったら、その指を小猫が舐め回してくれた。

 な………何を言っているかわからねーと思うが俺も分からない。催眠術だとかそんなチャチなものじゃ断じてねえ、むしろAVも驚きのテクを味わったぜ………。

 

『………ますたぁ、それ表現として最悪––––––』

 

 分かってんだよ全部!

 だけど一生に一度有るか無いかのこの経験、思い出の中に保存せざるを得ないだろぉぉぉっ!?

 

「んほぉ………尊い、尊すぎるよ小猫ちゃん」

 

 陰キャもビックリのこのセリフ。だけど今の状態じゃあ何でもキモくなってしまうのだ。

 

 

 

「………ねぇクリューヌ、この指お前の力でどうにか『出来ません』デスヨネー」

 




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