料理人と冒険者の二足鞋で征くワーカーホリックの天然ジゴロがオラリオに居るのは間違っているだろうか 「俺一応、鍛冶師なんだけど・・・・・・」   作:昼猫

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 原作開始11年前からです。
 肉体年齢は全盛期から14歳にまで戻っています。使える能力はそのままで。


第一章 どんな天然ジゴロにも下地は必要である
第1話 神時代へ


 天界に存在する神々は暇を持て余していた。

 役割がある神はまだ良かった。毎日毎年延々と同じ作業はしても暇すぎると言う事は無かった。神によっては暇と言う概念すら湧かずに自神(じしん)の役目に誇りを持ち続ける柱さえいたぐらいだ。

 だがしかし、それ以外の神々にとっては退屈な日々でしかなかった。

 強弱など関係ない。変化のない永遠の恒久的楽園世界に神々は飽き飽きしていたのだ。

 そんな永遠の中で誰かが呟いたのだ。

 

 『いつまでも天界(此処)にいるよりも下界の方が楽しいんじゃないか?』

 

 その意見に多くの神々が反応した。

 今の自分達の在り方に疑問を呈し、話し合った結果、多くの神々が下界に下った。

 少なくとも今よりは良い変化になるだろうと言う希望的観測に従って。

 そこから先は本来交わらない筈の人と神が同居する世界()――――眷属の物語(ファミリア・ミィス)の始まりだった。

 

 

 -Interlude-

 

 

 多くの神々(同胞・同族)が下界に降りてから気の遠くなるほどの日々を、一切変わらずに過ごしていた“ある神”がいた。

 彼の柱は生真面目で下界に興味関心すら抱かなかったが、ある原因により最近では暇になってきた。それこそ自分でなくとも自神の役目を果たせるほどに。

 ある時の事、不本意ながら天界に強制送還された知己の神が自分に提案してきた。

 

 『貴方の役目を暫く私に預けて、下界に降りてみては?』

 

 その提案に確かに気晴らしに良いかと、軽い調子で役目を知己に預けて降りてみた。

 だがしかし運が悪かった。

 “ある神”は下界の降下地点を適当に決めた結果、ダンジョンではないにしても地上のモンスターのある縄張りの中心地降りてしまったのだ。

 いきなり現れた存在にモンスターたちは一瞬驚くも、無粋な縄張りの侵入者に容赦するはずもなく襲い掛かった。

 けれども“ある神”は零能になったにもかかわらず、自分に迫りくるモンスターたちに他人事のようにしか感じていなかった。

 

 『あぁ、一瞬で気晴らしが終わったな』と。

 

 だがしかし、その結末はもう1人の侵入者の手によって変えられた。

 

 「ッオオオオオオオオオオ!!」

 

 突如としてモンスターたちと“ある神”の間に入るように現れた赤銅色の髪の少年が、両手に持っていた白と黒の剣をモンスターたちにめがけて振りぬくように切り裂いていった。

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 それは強者が弱者を圧倒する一方的な蹂躙だ。

 だが“ある神”にとっては舞い散る様な美しい光景に見えた。

 少年の刀剣によって切り裂かれて行くモンスターたちの血はさながら多くの咲き乱れる花びらの様。

 致命傷に至ると灰となって消える様は花びらをより際立たせる風の様。

 意外と見れる演武だったが、それもモンスターたちが全滅した事で終わりを迎える。

 全滅させた少年は初めて私に向き直り怪我をしていないかなどの心配して来た。

 私は大丈夫だと答えると本当に安心した様に笑顔を浮かべる。

 

 「間に合って良かったです。本当に・・・」

 

 初対面の見ず知らずの私に、嘘偽りのなく言ってくる少年に対して興味深くなり、つい聞いてしまう。

 

 「名前を・・・君の名前を教えてくれないか」

 

 少年は私の質問に対して一瞬きょとんとしてから直ぐに元の表情に戻してから、

 

 「士郎・・・・・・衛宮士郎といいます」

 「衛宮士郎・・・・・・エミヤ・士郎・・・」

 

 なぞる様に名乗られた言葉を口にする。何度も何度も紡いでいくように。

 

 「名乗ったから・・・・・・と言う訳ではありませんが。差し支えなければ貴方の名前も教えてはくれませんか?」

 「・・・・・・」

 

 確かに名前を先に尋ねたのは自分だ。ならば名乗り返す事に異論は無かった。

 

 「我・・・・・・」

 

 名乗ろうとしたが一旦止める。

 確かにこの身は神なれど、今のこの身は零能。

 そして此処は天界に非ず下界である。

 郷に入っては郷に従え。

 ならば相応の言葉で返そう。

 

 「名は・・・私の名は――――」

 

 

 -Interlude-

 

 

 時は、あれから一年後。

 あの後士郎達は近くの町に行き、一息ついてから町の現状を知った。

 そこから先は短くも長かった。町の廃れて行く原因の近辺のモンスターを悉く根絶やしにし、復興に協力して交易にも力を貸して廃れた以前以上の活気をこの町に齎した。

 それほどの多くをこの町に齎した1人と1柱は、町の出入り口の一つに近い小高い丘に来ていた。

 

 「――――こうして2人きりになるのも久しぶりだな」

 

 士郎達は多くをこの町に齎した結果、常日頃から身の回りに慕って来る人々が絶える日は無かった。

 迷惑だと思った事は無かったが、のんびりできない一年間だった事は確かだ。

 

 「そうですね。最後と言う事でみんな気を使ってくれたんでしょうけど」

 

 最後――――と言うのは、士郎がこの町を出ると言う事だ。

 この町に多大に貢献した士郎だが、周囲近辺には一匹残らずモンスターはおらず、街の活気も士郎がもはや手を放そうとも劣る事は無い。廃れる事は無いのだ。

 つまりこの町にもう、士郎の力は特に必要とされてはいない。

 誤解されるかもしれないが、この町に士郎の居場所がないと言う事は無い。寧ろ町を少しでも歩けば士郎を慕う人々から元気よく声をかけられ、過剰な者であれば黄色い悲鳴を上げてくる事もしばしばあるくらいだ。

 だが士郎を眷属にした主神はよく知っていた。

 士郎がこの町の人々から慕われる態度や言葉に笑顔になれても、疼きを無理矢理押さえ込んで我慢していることを。

 主神は士郎を理解していた。

 正義の味方に至れなかった半端者と時折自嘲するが、今でも多くを助けたがっている。具体的には世界の悲願と言われているらしい五大冒険者依頼の内、未だに達成されていない三つを達成して世界の破滅の要因を取り除いたりだろう。

 多くを救うには相応の強さが必要とされる。だがこの町にとどまっているようでは士郎は高みに至れない。

 ならばどうするか。決まっている。更なる飛躍できる場所を求めて、町を出るしかない。

 その方針で本人を含めた話し合いの場を設けて、町の各代表者に相談した。

 勿論最初は即座に反対された。全員に反対された。当然だ。この町にとってエミヤ・士郎は英雄だ。町民にとってかけがえのない縋り頼ってきた精神的支柱だ。

 それでも諦めず、根気よく幾度も話し合いを重ねて行った結果、なんとか理解を得られたわけだ。子離れ親離れと同じだ。自分達も英雄離れしなければと。

 そうしてこの別れの日、町民全員と涙の別れを繰り返して行き、今此処に辿り着いたのだ。

 

 「神にとって十年や百年なぞ一瞬だ。一年など言うまでもない――――のだが、お前と共に過ごしてきたこの一年は今までの幾星霜にも勝った心地よい時間だった」

 「それなら良かったです。俺も貴方と過ごした時間は忘れられません」

 「そうか・・・」

 

 士郎の言葉に何か思う所があるのか、神は何とも微妙に呟いた。

 

 「こうして最後に2人きりになったのだからもっと語り合うべきなのだろうが・・・」

 「そうですね。俺達はもう話し合う事が無いくらい見識を交換し合いましたからね」

 

 だからこれ以上に語り合うことなぞ特にないと、揃ってこの事実を認めあう。

 そうして士郎はバッグを背負い、神から少し離れた所で立ち止まってから向き合う。

 

 「貴方と会えてよかったです。如何かいつまでもお元気で」

 「ああ、お前の方こそ達者でな」

 

 お互いの目と目を合わせての言葉にそれ以上は必要なかった。

 まるで儀式を終える様に背を向けて歩きだす士郎。

 それに対して最後にと、背を向いたままの士郎に言葉を贈る。

 

 「お前が世界の何所に居ようと、何者になろうと私はお前を何時までも愛している」

 「――――」

 

 背中越しに投げかけられた言葉を噛みしめて、振り返らずに歩みを止めなかった。

 少しづつ小さくなって完全に士郎の後ろ姿が見えなくなってから独白のように呟く。

 

 「お前を何所までも愛している。――――たとえ私が何者になろうとも」

 

 

 -Interlude-

 

 

 此処は迷宮都市オラリオ。

 ダンジョン探索の恩恵により、世界の中心とも呼ばれる地。

 そのオラリオで鍛冶最大派閥のヘファイストス・ファミリアのホームの執務室で、書類仕事をする時に使う椅子に腰かけてテーブルの上に置いた刀剣を興味深そうに時々楽しそうに触れている主神ヘファイストスの姿が在った。

 

 「フフ・・・・・・」

 

 そこへ雑なノックの音が響く。しかも主神ヘファイストスがいいと返事する前に扉を開ける無遠慮さがその女性には有った。

 

 「主神様よ~。例の件で話したい事があるのだが・・・・・・って、何をしておられるか」

 

 無遠慮に入室して来た女性は、極東出身のヒューマンとドワーフの間に生まれたハーフドワーフで単眼の鍛冶師(キュクロプス)の二つ名を持つ椿・コルブランドだ。

 ちなみに本人は自身の二つ名を気に入っていない。

 

 「ん?んー、そうね。椿はこの刀剣類をどう見るかしら」

 「むむ?刀剣?では失礼して」

 

 主神ヘファイストスに促され、机の上に置かれている刀剣類を適当に掴み取る。

 

 「むぅ~?ほぉ~?これはこれは中々どうしていい仕事をする!だが主神様が作ったモノではあるまい?神ゴブニュの方でも無い。拵え方が違う。製法が違う。手前の知らない創りをしている。独特ではあるが合理的でありながら美しさも兼ね備えている。こんな奴オラリオに居ったのか?主神様よ」

 「いいえ。恐らくは都市外の鍛冶師よ。刀剣類(これら)が売り出されていたのが昨日来たばかりの外の業者の店だったから」

 「外の?ほぉ~~~~!?」

 

 心底楽しそうに両手で掴んでいる刀剣をいろんな角度から見やっている。

 

 「それで貴方の目からして、これらをいくらぐらいの値段をつける?」

 「むむ?ん~?そうさな~・・・・・・・・・一番低くて6000万ヴァリス~高くて9000万ヴァリスといったところか」

 

 椿の鑑識眼は確かである。鍛冶を司る神々を除けば、人の子では椿の鑑識眼は刀剣類に限り、間違いなくオラリオで随一だろう。

 だが彼女の主神は否と言う。

 

 「貴方の目は正しい。私も同意見よ。けれどこれらを買った値段は違ったわ。それもあなたの想定の上を行くわ」

 「なに?これを売っていた者の鑑識眼()は未熟なのか?」

 

 眷属の疑問に答える事も無くありのまま見てきた現実を言う。

 

 「なんとたったの3万~5万ヴァリスよ?」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 さしもの椿も度肝を抜かれたのか、何を言われたのか反応を返せなかった。だがそれも直に済んだ。

 

 「は、はぁああ!?なんぞそれは!適当にも程がある!これの値打ちをつけた鍛冶師は、どんなうつけ者なのだ!?」

 「フフフ、本当にね」

 

 一体どんな子が鍛ったのか、予想出来ない未知を楽しんでしまう辺り私もやっぱり神なのねと感じてしまう。

 

 「会える機会が在るのなら、いずれ話をしてみたいものね」

 

 触れるだけでも伝わってくる、この刀剣類を鍛った際に込められた魂と情熱を。

 そのいずれ来る日に備えるためにと、通常モードに頭を切り替えるのだった。




 三大クエストから五大クエストにしました。
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