料理人と冒険者の二足鞋で征くワーカーホリックの天然ジゴロがオラリオに居るのは間違っているだろうか 「俺一応、鍛冶師なんだけど・・・・・・」   作:昼猫

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 お待ちしてくれていた方々がいらっしゃるか怪しいですが、かなり遅れまして更新しました。遅れた理由は今はFgo第二部第五章ですが、モンハンワールドアイスボーンを楽しんでいました。いや、今も飽きちゃいないんですけどね?兎に角更新しましたので何卒宜しくお願い致しますm(__)m


第16話 来るべき日に近づいて

 「――――これが調査結果か」

 

 此処はロキ・ファミリアのホーム、黄昏の館。館というより構造的にも見た目にしても城である。そのホーム内の執務室で、調査の報告書をガレスとリヴェリアが団長のフィンに渡し終えた所だった。ちなみに主神のロキもいる。

 

 「見事に収穫ゼロやな~」

 「ゼロと言うことはないだろう。エミヤ・士郎とアストレア・ファミリアからの情報と、それを裏打ちするであろう怪人の出現は十分な成果と言えるさ」

 

 ガレス達が本来調査すべき事情から外れているが、本質的には必ずしも見当はずれでは無いとフィンは気付く。

 

 

 「アストレア・ファミリアの副団長のゴジョウノ・輝夜の故郷を荒らしに荒らした謎の怪人の出現。その怪人の作成中の謎のマジックアイテムに、エミヤ・士郎との刹那の内の戦闘で使用されたとされる、聞いたこともないマジックアイテムの数々。これはつまり――――」

 「その怪人が近頃の闇派閥(イヴィルス)の戦力増強を支えている重要人物(キーマン)の可能性が高い訳やな」

 

 可能性が高いとロキは口にしたが、この部屋に集まっているロキ含めた全員が確実だと考えている。

 

 「これからはアストレア・ファミリアと情報の共有を視野に入れてキーマンの怪人の捜索に当たろう。それが一番闇派閥(イヴィルス)壊滅の近道だろうからね」

 

 フィンの決定にガレスとリヴェリアも異論は挟まない。その代わり。

 

 「あの少年、エミヤ・士郎が敵の狙撃主の1人から情報を聞き出したのだが、そこでロキに聞きたい」

 「なんや?」

 「例の怪人は邪神と自称しているそうだが、神トライヘキサの神名()に聞き覚えはあるか?」

 

 

 -Interlude-

 

 

 「――――邪神トライヘキサ・・・・・・ねぇ?」

 

 ここはアストレア・ファミリアのホーム内。そこには主神アストレアは勿論、彼女の麗しき使徒全員にヘ男装の麗神のファイストスと士郎もいた。かく言う、士郎の口から二柱の女神への問いかけでもあった。

 

 「トライヘキサと言う神は天界でどんな神様だったのですか?アストレア様」

 

 アリーゼからの質問に二柱の女神は顔を見合わせてから数秒後、ため息を吐くように答える。

 

 「まず最初に言っておくけれど、トライヘキサと言う神は天界に存在しません」

 「では、エミヤさんは嘘の情報を掴まされたという事ですか?」

 「最後まで私達の話をちゃんと聞いてね?リュー・リオン。今さら言うまでもなく私達神は全知だけど、私達にも知らなかったことが地上にはある。それが未知よ」

 「ですから私達にとって知らない事と知っていることの二択でしかないのです。貴方達、人の子と違って、基本的にはまず曖昧な記憶というのは存在しません」

 「ですが今回の貴方達が口にしたトライヘキサと言う情報は私達に取って初めての曖昧な情報なのよ」

 「聞き覚えが有る様な、無い様な・・・。どうしても思い出せないのです」

 

 どうやら本当の様で眉間に手をあてて唸っている二柱の女神。

 

 「ともあれ、怪人の神名(名前)は置いておくとして、リヴェリアさん達の話を合わせて分析するにそのトライヘキサはどうやら最近の闇派閥(イヴィルス)の戦力増強を支えるキーマンになっている様だな」

 「もうトライヘキサ本人だけを追って行くだけでは駄目なのかしら?」

 「駄目とは言わないが、トライヘキサが闇派閥(イヴィルス)内で重要な位置に就いているなら、今回出て来たマスティマ・ファミリアの《始末犬》クラスが出張って来てもおかしくはない。調査を続けるにしても、これからはより慎重に事に当たらないとな」

 

 士郎の注意諫言にアリーゼ達全員が強く頷いた。

 

 「しかし話に聞けば、始末犬はずいぶんと稚拙な作戦に出たのだな」

 「いや、確かにごり押し戦法だっだが、士郎がいなきゃ今頃アタシ達はどうなってたか」

 「ええ、士郎サマサマだったわ」

 「ライラもマリューも褒めすぎだ」

 

 2人からの称賛に士郎は謙遜するが、他のアストレア・ファミリアの仲間達がさらに士郎の称賛で盛り上がる。まるで今後の戦いに向けての恐れや不安をかき消すように。

 

 

 ―Interlude―

 

 

 「もっとだっっ、もっろっ、もっじょぉおおおおお■■■■■!!!』

 

 人語を語るケダモノがダンジョン内を駆け巡っていた。

 

 ゴキュガギュッッ。

 

 彼は元々人間で闇派閥(イヴィルス)の冒険者だったが、オッタルから受けた敗北と言う名の屈辱から復讐だけに取り憑かれたケダモノと成り果てた。

 

 「まだじゃぁあああっっっ■■■!!』

 

 今やその姿には人間だった頃の面影はなく、下半身は象の様に強靭で両腕はサーベルタイガーの様に鋭く上半身から顔にかけては年老いた蝦蟇の様に醜悪である。

 

 ガリッゴリッ!

 

 先程からの擬音はダンジョン内のモンスターを喰らい尽くしている音だ。ダンジョン内には人間でも食べても害の無い肉を始めとする食材もあるにはあるが、モンスターを食らうなど常軌を逸していると言うレベルではない。モンスターをそのままの喰らえば、毒素などでたちまち死に至る。

 しかしそこは邪神トライヘキサから注入された特殊な試作のマジックアイテムのお陰で死なずにすんでいる。と言うか。

 

 「■ッタル…!足じゃなりぃ…!もっと■ぁあああああっっっ!!』

 

 これ以上に最短で強くなるためにと教えたのは邪神トライヘキサ自神だが。正確にはモンスターの核である魔石を取り込むことによって強くなれると教えたのだが、面倒と考えたか、モンスターごと魔石を取り込むことにしたようだ。

 

 「悍ましい光景ね」

 

 彼の様子を窺い見る者がいた。某所の室内にてデカイ水晶に近い鉱石で形作られた塊巨大な板ごしから今の映像を見ている。

 今の感想にもまるで他人事である。

 

 『そりゃ元人間の化物がモンスターを貪り食い付いている光景を見れば誰もが同じような感想を抱くだろうな』

 

 巨大な板――――スクリーンに写し出された別の映像から告げてきたのは邪神トライヘキサ。どうやら此処にはおらず、別の場所からの映像通話の様だ。

 

 「まるで他人事ね。試作品を渡したのも、方法と手段を教えたのも主神様(貴方)じゃなかったかしら?」

 

 興味無さげなのに、まるで責めるような口調でトライヘキサを突く。だが当の本(にん)は嗤う。

 

 『他人事?その言葉そっくりそのまま、お前に返そう。あの試作品を作ったのもデータが欲しいと言ったのも、どちらもお前じゃないか』

 

 その通り。何を隠そう、この、紹介が遅れたがこの小人(パルゥム)の女性こそが邪神トライヘキサの眷属の一人であり、輝夜の故郷を荒らした元凶のマジックアイテム(クスリ)を作り、完成を目指すためのデータを欲したその人である。勿論データをとるためにも此処から現場の映像を見ていたが、今までの一度も理不尽や悲劇的な光景にも眉一つ動かさずにあくまでも観察に徹し続けた冷酷非道なマッドサイエンティストでもある。

 

 「そうね、認めるわ。でも仕方ないじゃない?死にそうなくらいに好奇心で溢れそうなんだもの。――――誰も見たこともない物をこの手で創造したい。世界の構造を弄り回したい。神々の構成物質を解き明かしたい。何を犠牲にしてでも真理に辿り着きたい。これだけ聞けば私は確かに冷酷非道な科学者なのかもしれないけれど、野心や悲願と言う願望を持って実現させたい為にオラリオで冒険者をしている者達と私の何処に違いがあるかしら?」

 『過程に似かよる部分はあれど、本質的には相当違うと思うがな』

 

 邪神トライヘキサは我が眷属()を説教してるわけでもしたいわけでもない。それは小人(パルゥム)の科学者も同じ。彼らの会話は何時も皮肉や含みのある雑談から始まる。

 

 「それで今日はなんの用があって連絡してきたの?貴方と違って私、暇じゃないのだけれど?」

 『暇なのはお互い様だろ?お前は忙しそうに見えて、研究のほとんどは娯楽の延長線上でしかあるまい』

 「嫌味だけならもう切るわよ?」

 『切って良いのか?お前が探していた資料の一部を見つけてきたと言うのに』

 「ッッ!?」

 

 本日初めての動揺を見せたマッドの女性パルゥム。まあ、彼女が動揺する事そのものが極めて珍しいのだが。

 

 「……相変わらず(ひと)がわるいわね。それで、譲渡の条件は?」

 

 自分から交渉のテーブルに座る辺り、どうやら彼女にとっては垂涎の代物らしいことが窺える。

 

 『いや、タダでやる』

 「………は?」

 

 我が耳を疑うように間抜けな声を漏らした。またも彼女にしては極めて珍しい反応。

 

 『そら、送ったぞ』

 

 だが彼女の復帰を待たずして、トライヘキサはサタンアイズの転送で書類を彼女の研究室の近くのテーブルに届けた。

 

 ササァ……。

 

 「……………」

 

 醜態を取り戻そうとすぐに我にかえった彼女はそのまま書類取って中身をざっと確認、本物であろうと認めてからトライヘキサを見る。

 

 「どういうつもり?」

 『どうもこうも先に告げた通りだが?』

 

 その言葉を鵜呑みにするほど彼女は暢気ではない。邪神とマッドの女性パルゥムは言うまでもなく神と眷属(親子)の関係だが、何処まで行こうと共犯者と言うのが適切で、互いに何かを求めるときは善意の無償の譲渡などあり得ない。ギブアンドテイクが基本だ。だからこそ。

 

 「馬鹿にしているの?」

 『いいから受けておけよ。無論貸しにするつもりはない』

 「今さら情けでもかけてるの?」

 『お前の方こそ馬鹿にしているのか?同情で気を引けるとは到底思えんが』

 

 何が可笑しいのか、如何にも愉快そうに語る邪神。そこに彼女は珍しいと気づく。

 

 「……表面上は愉快そうに振る舞いながら心は平静が常な貴方が、心底から愉しそうにしているなんて何かあったのかしら?」

 『フフ、ちょっとな』

 

 これで邪神の無償の譲渡の理由が解った。機嫌の良さから来る振る舞いの一種なのだと。だがそれにしても。

 

 「気持ちが悪いわね」

 『やれやれ、我が子ながら酷い言い草だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ところで邪神トライヘキサと騙ったそうね」

 『ああ。アレ(・・)から引き出した知識の中であった概念の一つを利用した。フィーリングで付けた偽名にしては気に入ってい』

 「昔から貴方にはセンスが無かったわね。古い上にダサい。その感性だけは今も現在進行形で失望しているわ」

 『なん…だ、と…!?』




 

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