料理人と冒険者の二足鞋で征くワーカーホリックの天然ジゴロがオラリオに居るのは間違っているだろうか 「俺一応、鍛冶師なんだけど・・・・・・」   作:昼猫

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第2話 邂逅、紅髪の鍛冶神

 「此処が世界の中心地――――迷宮都市オラリオか」

 

 エミヤ・士郎は両手を天に着き上げるように体を伸ばす。漸くの想いでオラリオに到着したのだから。

 

 「此処に辿り着くまで長かった。特に、まだ五歳にも満たない子供にハーレムは男のロマンだとか情熱的に語るあの爺さんは変神だった。ベルの奴、大丈夫かな?」

 

 変な情操教育をすると言う一点のみだけで言えば宝石翁(はっちゃけ爺さん)AUO(金ぴか)といい勝負をしていた事を思い出して、二ヵ月ほど共に暮らした兎の様な特徴を持った少年に対して心配してしまうのも仕方がないだろう。

 ちなみに、その時ほぼ初対面だったベル少年の里親のお爺さんに対して思わず殴ってしまったのは完全に余談である。

 

 「まあ、根は決して悪い神じゃないし、変な風に育つ事は無いだろう・・・・・・・・・多分」

 

 そも、自分はずっとベルの事を見守ってやれるわけじゃないのだからと、だからこそ今このオラリオに来ているのだからと、気持ちを切り替えた。

 

 「さて、まずは改宗(コンバージョン)先のファミリアを探すか」

 

 そこでまず大前提から始めようとした時に悲鳴が鳴り響く。

 

 『闇派閥(イヴィルス)が出たぞーーっ!?』

 

 悲鳴が上がった先を見ると冒険者同士が剣や槍を交えて殺り合っている。

 

 「噂通り、今のオラリオは抗争が絶えないと言うのは本当だったか」

 

 どちら側が闇派閥(イヴィルス)の冒険者は表情を見ればすぐに見分けがつく。

 お節介かもしれないが参戦するかと考えた所で真逆の路地を全速力で駆けて行く眼帯をしていた女性を見た。少し遅れて複数の冒険者が先を行く女性を追いかけている所も。

 女性の方は必至そうだったのに対して、追跡していた冒険者たちは口角を吊り上げてその眼は常軌を逸していた。

 これもまた、どちらが虐げられようとしているのか分かりやすかった。

 であるならやる事は一つだけ。この正義の味方に至れなかった半端者にも出来る事はまだあるのだから――――と。

 

 

 -Interlude-

 

 

 迂闊だったと、神ヘファイストスは今更ながらに嘆いていた。

 護衛も付けずに支店周りしていた途中で、こんな真昼間から闇派閥(イヴィルス)が活動しているとは予想がつかずに見事にエンカウントしてしまった。

 故に彼女は闇派閥(イヴィルス)の構成員から逃げている。だがこのままでは直に追いつかれる。

 神の力(アルカナム)を使えない今の自分は零能。対して彼方はレベルが高かろうがが低かろうが恩恵持ち。優勢が彼方に傾きつつあるのは当然と言える。

 何度も角を曲がって行き、最後に曲がった角で物陰に伏せるように隠れる神ヘファイストスは逡巡する。

 椿は相変わらず自分の工房に引きこもり、他の子にも迷惑を掛けられない。と言うか、今この場で自分の眷属に伝える手段を神ヘファイストスは持ち合わせていなかった。

 

 「どうすれば・・・」

 「――――どうする必要もないでしょう?」

 「っ!?」

 

 周囲の警戒を怠った為に前方から来る敵に気付けなかった。

 直ぐに立ち上がって左へ逃げようとしたら別の構成員が近づいて来た。真逆である右を見ても同じだ。そして背後は壁。完全に取り囲まれてしまったのだ。

 逃げ道無し。出来る唯一の事は、自神を囲う敵を睨み付けるだけだった。

 

 「そう殺気だたなくてもよいではありませんか?神ヘファイストス」

 「我々は貴方様が率いるファミリアに協力して欲しいだけなのですから」

 「協力?あの闇派閥(イヴィルス)が?」

 「ヤレヤレ、我々も嫌われたものです」

 

 わざとらしい反応は女神のいら立ちを募らせるだけ。

 

 「ですが我々は決して一枚岩では無いですから、疑われる気持ちも解ります」

 「オラリオを混乱させてやりたい放題をするのが貴方達の共通の方針じゃないの?」

 「確かにファミリアによっては主神眷属共々暴れたいだけの下賤なファミリアもありますが、少なくとも――――」

 

 神に人の子の嘘は通じない。

 何やら高説なお題目を並べて自己弁護に走っている様子だが、この状況下で何を信じろと言うのか。

 

 「――――と言うのが我らの志なのです。ですから神ヘファイストス。貴方様の英断を以て我らにご協力をお願いできますでしょうか?」

 「答えは――――NOよ!」

 「・・・・・・・・・・・・そうですか。残念ですよ神ヘファイストス」

 「であれば、不本意ながら実力行使に訴え出るしかありませんね」

 

 リーダー格の敵冒険者が私に向けて手を伸ばして来る。だけど、その手が私に到達することはなかった。

 

 「っ!?」

 「「「は!?」」」

 「フッ!」

 「がっ!?」

 

 赤銅色の髪の少年が突如、私の眼前に現れるやいなや呆けているリーダー格の敵冒険者の顎を右足で蹴り上げて怯ませた。

 

 「グオッ!!?」

 「がふっ!!?」

 

 続けて直ぐに他の2人が現状把握する前に右の敵の喉に正拳を突き刺して無力化させて、左の敵の鳩尾に腕を回転させ捻じれるように見える突きを見舞ってこれも無力化。

 最後に敵リーダーは怯んでおぼつかない足取りだが、まだ立っている。

 

 「テメッ!」

 

 顎に衝撃を受けつつも、漸く現状を把握できたらしく殺意剥き出しにして少年に剣を振り降ろそうとしていた。

 それを少年は剣の柄を蹴り上げて無理矢理相手から武器を手放させる。更に落ちて来た剣を奪ってボディーアーマーに切り裂くように叩き付ける。

 

 「ぐっ!?」

 「(なまくら)使ってるな」

 

 指摘したのは奪った剣とボディーアーマーの両方ともだ。叩き付けるよう使った剣は見事に刀身のみが砕け散り、ボディーアーマーの方も砕け散り壊れた。

 互いにこれで無手になったかと思えばそうではなく、少年は握っていた柄を逆に持って、柄の底で敵の顔面に突き刺すように殴った。

 

 「ぎぺっ!?」ぐぎっ!

 

 殴られた敵はうめき声と共に鼻の骨が潰された音が響いた。しかし少年は容赦しなかった。

 間接部や急所ばかりを同じように柄の底で殴り続けた。当然殴られるたびに敵の悲鳴と共に嫌な音も響いて行く。

 そして最後に胸に蹴りを突き刺す。

 

 「フンッ」

 「ゴハッッ!!」

 

 あまりの衝撃に強烈な痛みと共に吹き飛ばされて行く敵は、二転ほど跳ねた所で壁に当たってボロ雑巾の倒れて気絶した。

 その光景をただ見ているしなかった神ヘファイストス。

 自分を窮地から救ってくれた背を向けていた少年が、踵を返して体ごと自分に向いて来た。そして手を差し伸べて来る。

 

 「お怪我はありませんか?名も知らぬ女神さま」

 

 これが神ヘファイトスとエミヤ・士郎との初めての邂逅であった。

 

 

 -Interlude-

 

 

 「早いモノね?貴方と出会ってからもう一年か」

 「急になんです?ヘファイストス様」

 

 あれから一年経過した現在。

 神ヘファイストスは助けて貰えた恩に報いる為、お礼できないかと相談したところで自身の事情説明をした後に当然の流れの様に彼女の眷属達が集まる鍛冶最大派閥のヘファイストス・ファミリアに招かれてそのまま眷属となった。

 ちなみに今現在は主神の側で料理中だ。

 此処は士郎の家でそれなりの広さもあり、鍛冶部屋である工房も当然備わっている。

 神ヘファイストスの恩人とは言え、最初こそは最低限の日常生活を熟せるほどの広さプラス最低限の鍛冶部屋だけだったが、鍛冶師としての腕のよさ(実力)でたった一年でファミリア内でのし上がって今の広々とした空間を手に入れるに至った。

 その空間にはどう考えても一般家庭では持て余す厨房が備わっている。

 何故そのような厨房が備わっているかと言えば、士郎の料理人としての好奇心を満たす為である。

 ちなみに言うと士郎本人が作った。

 

 「好奇心を満たすためとはいえ、そのおこぼれで美味しい料理をご馳走になっている私としては得した気分だわ」

 「お褒めに与り恐悦至極。お口に合ったのでしたら幸いです」

 「私は特にお味噌汁と納豆がお気に入りよ。椿以外の子は何故か納豆の方を忌避するのよね」

 

 士郎の家の隅には味噌や納豆を製造するために醗酵などをしておく保管室がある。極東独自の食品は、このオラリオでは滅多に手に入らないので自分で作る事にしたのだ。

 ちなみに、周囲への匂い対策は万全だ。

 

 「納豆を忌避する人は完全に嫌う傾向にある筈ですよ。同じ極東の人も嫌いな人は確かにいますから」

 「へぇ~、やっぱりこういうのは聞いてみないと判らないモノね~。あらこれ美味しい」

 

 今の自分が奉る、主神ヘファイストスの素直な感想に思わず口元が緩む。やはり自分の作った料理を人に美味しいと褒めてもらうのは嬉しいモノだ。

 

 「それにしてもこの一年で貴方の規格外ぶりには驚かされてばかりだわ」

 

 食事を終えた神ヘファイストスが最初に口にしたのはそんな言葉だった。

 

 「Lv3の上級鍛冶師(ハイ・スミス)なのに最上級鍛冶師(マスター・スミス)の仕事をこなすし、作る料理はこんなに美味しくて家事も万能。戦闘技術の駆け引きは第一級冒険者のも勝らずとも劣らない程。その上、たった一年間でダンジョンの到達階層が20階層だったかしら?」

 「いえ、28階層です」

 「あら、もう下層に食い込んでるのね・・・・・・って、ちょっと待ちなさい!二ヵ月前までは確かに20階層だったのにどうしてそこまでの変化があるのかしら。しかも未だに貴方ソロでしょう?」

 

 士郎は主神からの追及に目を泳がして視線を逸らす。

 以前から現在のLvでは上層までなら兎も角、中層からはソロでの探索は自殺行為だと注意して来たのにこれだ。

 ヘファイストスは士郎に溜息をつく。

 

 「・・・・・・・・・貴方に何かしらの考えがあるのは分かっているわよ。けどね、私も心配なのよ?そこは理解して頂戴」

 「・・・・・・はい」

 「返事だけはちゃんとしているわね」

 「うぐっ」

 

 主神ヘファイストスのジト目にただ声を詰まらせるだけだった。

 そこへ荒々しく入ってくる足音が聞こえた。誰かと思えば椿だ。

 

 「腹が減っては鍛冶は出来ぬ!注文していた品はどこぞ?手前はもうはらぺこじゃ!」

 

 何所までもマイペースで空気を読まない現団長のおかげで、主神と新入り眷属のひとときに終わりが告げられた。

 

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