「取引だぁ?」「取引ですか?」
2人の声が重なって、洞穴中に響く。
「そう。取引さ」
ジャックは自信がありそうな声で2人に問う。
「2人にやってもらいたい事があるんだ。
それをやってくれたら幾つか願いを聞こう」
そうすると魔理沙が、
「ん? 今なんでもするって言って」
「ないから。ついでに名前と姿を明かす以外でよろしく頼むよ」
と呆れた様に返答すると
「でもお前さっき何でもするって言って」
「なかったからね?」
魔理沙とジャックの2人は漫才のようなやり取りを繰り返す。
それに対して成華は思わずクスッと笑ってしまう。
「で、ジャックさん、やってもらいたい事とは?」
落ち着いた成華が問う。
「ああ、すまんすまん。つい熱くなってしまったよ」
彼女は「コホン」と一息置くと、こう続けた。
「えー、君達にやってもらいたい事というのはこの先にやたらと整備された道があるんだ」
と洞穴の奥を指さしてそう言った。
……が、彼女らには見えない。
魔理沙と成華は首を傾げ、「やたらと整備された道?」「やたらと整備された道ですか?」と同時に言う。
「そう、やたらと整備された道があるんだ。そのその道をちょっと進むと、そのどこかに下りの階段があると思う。
そこの調査をして欲しいんだ」
そして彼女はこう続けた。
「私達の方でも調べようとしたんだが、その時君らが来たんだ。
じゃあやってもらおうかなってことさ。
私は私でやることがあるんだ」
すると魔理沙は俯き、何か考える様に黙り込み、そうかと思えば顔を上げた。
「魔理沙さん? どうかしましたか?」
「いや、なんでもない。
おいジャック、行ってやるよ」
と言って、魔理沙は彼女が指さした方向へと歩き出した。
「おや? 気が変わったのかい?
まあ、ともかくこの奥だよ。そこに何かが居るハズだから危険かどうかは君たちで判断してくれ」
魔理沙は「おうよ」と右手を上げてさっさと奥へと歩いき、成華は「では」と一礼し、足早に魔理沙を追いかけて行った。
歩くこと数分、ジャックに言われた通りにやたらと整備された道にたどり着き、魔理沙が
「ここか……やたらと整備された道ってのは。
ほんとにここに何か居るのかよ」
と言うと、何かを思い付いた成華は、そこに落ちていた石を5つ拾った。
「どうかしたのか?」
その中の1つを右手に持って、
「いえ、大したことでは無いですが……
魔理沙さん、私の能力について試したい事があります。ちょっと右に寄って貰えませんか?」
魔理沙は前に進みたい気持ちもあったが、彼女の「程度の能力」についても興味があったので素直に右に寄った。
そして成華は軽くその石ころを握り、道の奥へと放り投げる。
魔理沙の目には、その石ころが変形して黒い何かになった様に見えたが、奥は薄暗い為、はっきりとは見えなかった。
「石なんか投げてどうしたんだ?」
魔理沙は右に避ける程の事ではなかったのではないかと思った。
……が、一向に石が落ちる音がしない。
魔理沙から見ても成華はそれほど強く投げた様には見えなかった。
なら、日が昇り日が沈む位に当たり前な、物を投げて落ちるという動作が感じられない。
魔理沙は少し動揺したが、すぐにある事を思い出した。
「まさか……今の……」
すぐに成華は彼女の動揺に気付き、こう言った。
「はい。今、試したのは生命を操る程度の能力です」
そして壁に手を添え、「よし」と呟き、また歩き出し、魔理沙もそれについて行った。
「で、生命を操る程度の能力って結局どう言う能力だったんだ?」
と成華に問うた。
すると成華は、
「昨日、帰ってから程度の能力について考えてみました。
すると、ある事を思い出したんです。
私を拾ってくれた育ての母に花をプレゼントした日がありました。
その花は私が取ってきた訳では無いのですが、いつの間にかそこに"あった"んです」
と少し悲しそうな表情を浮かべた様に見えたものの魔理沙から見てそんなことは無かった。
成華は続けて、
「もしかしたらその事かと思ったんです」
と言い、1つ持っていた石を右手に乗せ、それを軽く握った。
「昨日試してみると……」
拳を開くと、そこには1匹のてんとう虫が居た。
「は?」
魔理沙はさっき以上に動揺していた。
「これが恐らく、生命力を操る事だと思います」
と成華が指を鳴らすと、飛んで言ったてんとう虫が石に戻って地面に落下した。
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