十六夜一族   作:‪α‬ラッブ

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異変の気配

 成華が言った。

「二つ、貴方は私と血縁関係にある!」

「そうだ。お前は私の娘だ」

 成華と、どこかに居る人が驚くべき事を2つ言った。

 1つ、成華の苗字。その苗字はつい最近も紅魔の城で聞き覚えがあった。ついでに声にも聞き覚えがある。

 2つ、この女と成華の血縁関係。

 そのどちらも成華が探していると言っていたものの答えだった。

「だがお前は私の娘では無い」

 誰がどう聞いても矛盾していた。

「矛盾してるぜ、それ。お前の娘が成華で成華はお前の娘では無い、なんて下手な小説でも見ないぜ。そのセリフ」

 反射的に言ってしまった。霊夢が常々言ってくる無鉄砲とはこの事なのだろう。直そうとはしているがこればっかりはどうしようもない。

「お前は私の正体に迫りうる存在。ならば……」

「何を言って……」

 背筋が凍る程の邪悪な気配。嫌な予感がして咄嗟にミニ八卦炉を……既に構えていた。

「!?」

 ミニ八卦炉を構えようとしていたら、既に構えていた。としか言えない異常な現象だった。昨夜の「時空を操る程度の能力」に似ていたが、少し……いや、全然違った。

「私の正体に迫りうる情報を少しでも持つ者は……」

「魔理沙さん! 逃げてください! 早く!」

 耳元で囁き声がした直後に成華の床を殴る音と焦り叫ぶ声が響いた。成華が殴った床からは、木が生きているかの様に蠢きながら出現し、囁き声の方向に猛スピードで生えていく。枝の伸びる先に居れば確実に体を貫く勢いに見えた。

 だが、残像がはっきりと見える程のスピードで、2・3メートルの距離を一息の間もなく詰める程のスピードは無かった筈。

 しかし枝は壁にグサリと突き刺さっていた。

 肌がチリチリと焼ける程感じた背後の巨大な殺意はそれと同時に消えていた。

「まさか……これは運命からの贈り物だったな」

 と、波の様に押し寄せる殺意を秘めた静かな声が前方から響き渡る。

 その中に驚きも伺えた。それが何かはうかがい知れないが。

「逃げて!」

 成華の叫びも聞こえるも体が震えてばかりで動こうとしない。動けない。

「早く!」

 すると木が型に流し込まれたコンクリートが固まる様に石へと変化し、更に人の手へと変貌と遂げ襟首を掴んで背後に投げ飛ばされ、

「箒を取る暇はありません! 魔理沙さん、箒なしで飛べますか?」

「あ、あたりまえだぜ。さっきより飛ばすから舌噛むなよ」

 と一応忠告して成華の手を掴み、後ろへと飛んだ。しばらく箒無しなんてやってなくて慣れないが、そんな悠長なことを言っている暇はない。やる事は一緒だが、成華を箒の後ろに乗せて飛んだようにゆっくり加速する訳にはいかない。一息の内にトップスピードで戻る。

 チルノに関しては先に成華がリグル達に合流するようにチルノに言っていたらしい。

 そのチルノ一行に

「全力で逃げろ! 理由は後だ!」

 と言い、チルノ一行も逃げさせた。

 何故か整備された道を過ぎ、ジャックが居る筈の道にも直ぐに到着し叫んだ。

「居るかは分からんがジャック! この井戸から全力で逃げろ! 理由は後だ!」

「私も異常な魔力を感知した。逃げる準備はもう出来ている!」

 と相変わらず虚空から声がする

「上出来だ!」

 とすぐそこの井戸から脱出する。

「おいジャック出たか?」

 と言うと

「ああ、出たよ」

 と、咄嗟に井戸を閉じ、更に強度は霊夢に劣るが結界を張った。井戸を出るとチルノ一行も居た。成華はチルノ一行に

「霊夢さんを呼んでください! これが異変かも知れません!」

 と言うとリグルが

「それなら既に足の早い虫達に行ってもらってる。僕達も向かう所だよ」

 と3人は飛び去って行った。

 

 

 

「魔理沙さん。ああは言いましたがこれは異変ですか?」

 と成華が言ってきた。その答えは考えるまでもなく

「ああ、いづれそうなるとしても今のところ"異変を起こしかねない危険な存在"としか言えないぜ」

 

 

 穏やかな博麗神社。霊夢は縁側でくつろいでいた。いつもなら魔理沙が来ている時間帯だ。仕事でもあるのかしら。

 ……別に待ってなんていないけど。

「魔理沙、珍しく今日は来ないけど、これまた珍しくアイツに依頼かしら。

 今日は成華について話したかったのだけれど。

 ……まあ、こんな日もあって良いわよね」

 と、寝転がったその時。なんの前触れも無く、異質で、少し前に身に覚えのあり、だが少し違った奇妙な感覚を覚えた。この前の紅霧異変の時に居たあのメイドの『時空を操る程度の能力』に多少似ていない気もしないでは無いが、明らかに違う感覚であり、だけどどこか似通っている様な気もしなくはない。恐らくこの幻想郷でも気がついた人は少なくない筈。

「何かしら……この感じ……

 それにこの気配。あのメイドとか成華に似てる気がするわね……

 だけどこの気分を逆撫でするようなこの感じ……あの2人の気配じゃないものね」

 霊夢は雲がかかってきた空を寝ながら眺めていた。

「異変の気配……かしらね」




ここまで読んでくださってありがとうございます!!
次回もお楽しみに!!!
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