とある科学で世界最強(超不定期)   作:和ん子

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 タイトルが全てを物語っている系


初めてのアンチ&委員長は不良生徒?

 

 

 初めての戦闘訓練、そして学友とファミレスでの反省会をした翌日。

 今日も同じ時間に登校していると正門の前に人混みが。その手にはカメラやマイク、もうわかるだろうがマスゴミが張り込んでいた。それも人数からして複数の局から。

 少し遠目に眺めていると通りかかった生徒達が標的にされ我先にと詰め寄られている。

 インタビューでTVに映るのが嬉しいのだろう、おっかなびっくりだった表情がわかりやすくにやけている。

 その隙に横を通り抜けようとしていた生徒も捕まって……ありゃあ。

 

 「はーい、ちょっといいかな?」

 「オールマイトについて聞かせてもらえませんか!?」

 「オールマイトが先生ってどんな感じですか!?」

 「教師としてのオールマイトはどんな授業をしていますか?」

 

 揉みくちゃにされてる生徒は知り合いだった。

 見てしまったからには仕方ない。ここで見捨てて恨まれるのもなんだからな。

 穏便に済ませようと思ったがそれでは向こうが付け上がるだけだと嫌ほど理解していたので『超電磁砲』を発動してマイクやカメラ、レコーダーなど機材の一切をショートさせる。

 

 「キャアア」

 「うわっ!」

 「何だよこれ!どうすんだよ!」

 

 阿鼻叫喚となったマスゴミといきなり機材が爆発したことに状況が上手く理解できていない彼ら。

 

 「おい、いい加減遅刻するぞ」

 「え、お、おう!」

 「ありがとう篠ノ之君」

 「先行ってるね?」

 

 さて、邪魔者はいなくなった。

 

 「ちょっと君!これどうしてくれるの?弁償しなさいよ!」

 「言いがかりはよしてくれよ。雄英の敷地内ならともかく、外では個性の使用を禁止してるんだぜ?使う訳ないだろ」

 「嘘おっしゃい!とにかく弁償しなさいよ!」

 「……仕方ないな」

 

 頭かも懐から出した様に格納庫を開いてブレザーの下に札束を出す。予想外の大金に目の色が変わるマスゴミに冷めた目を向けながらそれを手渡す為に手を伸ばす。

 だが、直前で手を引っ込めた。

 

 「聞くが、何でも金で解決するヒーローってどう思う?」

 「え?そんなの、ただのクズじゃない」

 「じゃあ俺もそのクズにならない様に金は出さないでおこう」

 札束を量子化して手から消し去る。

 

 「ちょ、ちょっと話が違うじゃない!弁償しないつもり?」

 「でもお金は出せないな。だってクズなんだろう?それに、この写真がばら撒かれても良いのか?」

 

 ホドキの記録映像を現像したもの、つまりリポーターの女が俺から金を受け取ろうとした場面を取ったものだ。勿論彼女の顔もバッチリ映り込み、俺のは見切れている。

 

 「な、いつの間に!?」

 「落ち着けよ、それに誰もそんなの信じやしない」

 「それはどうかな?カメラマンのお前、この女と組んである社長のスキャンダル押さえる計画や上司の弱みに付け込んでキャスターのマドンナと」

 「おまっ!その口を閉じろ糞ガキ!」

 「さて、今の反応で俺の言ったことがほぼ事実とわかるだろう。そうだ。俺の個性は『読心』。とてもじゃないが電子機器を壊せる様な個性じゃないんだ。で、ここにさっきまでの一部始終を録音したボイスレコーダーがある。未成年にカツアゲ、恐喝、さらにお前達の計画もちゃんと、な?大人しくここで引いておけよ」

 

 「糞ヴィランめ!」

 「ククッ。これだからマスゴミは。悪を倒すのがヒーローなら汚職や不正を正すのもヒーローだと思うんだがなぁ。どう思う?他の局のは?」

 

 今の二人組の惨状を目の当たりにして、それでも記者魂を持てるならそいつはもっと他のことに才能を生かしてほしいが、流石にこの場にそんな猛者はいないらしい。

 全員が全員ぶんぶん首を縦に振っていた。従順過ぎて逆に怪しいが、まあ、いいだろう。

 

 「じゃあそこの二人には名誉毀損と恐喝罪で後ほど訴えるとして、機材がなければ仕事ができないだろう皆様にこれをお渡ししましょう。俺が壊した訳ではありませんがこれは誠意なので。……もうこんな事を考えなければ何も起こりませんから」

 

 ニッコリとアルカイックスマイルを貼り付けた顔で全員に端金を渡した。これは忠告だと念入りに刻み込みながらな。

 まあ、札に目に見えないくらいの発信機と盗聴器を付けているし、この事を記事にしたり他に漏らそうものなら『心理掌握』で記憶を消すだけだ。何も問題ない。

 マスコミ達が一人また一人と去っていくのを見届けて、最後に残った三人(・・)に一瞬目を向けて校舎へ向かう。

 

 その男の悔しげな表情を思い出し、モヤモヤしながらももうすぐHRが始まるA組の教室へ急いだ。

 

 

 

 

 教室に入れば二人が駆け足で近寄って来る。

 

 「さっきはありがとう篠ノ之」

 「助かったよー」

 

 異形型の二人、芦戸三奈と葉隠透だ。

 「ああいう手合いの対応は慣れてるから別にいい。それに外で個性を使って反省文書かされるよりマシだろ」

 「アハハ、確かにそーかもね」

 「それでもありがとね。今日はお礼に食堂で何か奢ろうか?」

 「お、気前いいねー透ちゃん」

 「戦闘訓練でも一緒だったし何かと縁があるからね。それに篠ノ之君は私のコスチュームを作ってくれるみたいだし!仲良くなって情報交換しとかないとね!」

 

 打算有りで仲良くなろうと面と向かって言われ、俺は笑い三奈は吃驚して笑みが引き攣っていた。まあ、普通はそうだろう。

 だが、俺にはそれぐらいオープンな方が好ましい。俺が能力で記憶や思考が読めるので裏表のない性格に好感が持てる。

 

 「ああ、忘れてないから安心しろ。だけどもう時間だ。続きは休憩時間にでもしような」

 「わかったよー!」

 「よかったね透ちゃん」

 

 

 

 「席つけ。おはよう諸君。早速HRを始める」

 

 言った通り、あの後すぐ教室に来たイレイザー。

 

 「昨日の戦闘訓練、お疲れ」

 

 時間きっかりに始まったHRより、シンと静まり返った教室に彼の声だけが響く。

 

 「VTRと成績を見せてもらった訳だが……爆豪」

 「ッ!」

 「お前……何やってんだ?」

 

 瞬間、イレイザーの纏っていた雰囲気が不審者然としたものから冷たいものにガラリと変わる。

 それを敏感に感じ取った生徒は皆背筋が凍る思いをしたはずだ。

 

 「お前のやらかした事は、十分除籍に匹敵する愚行だ。即刻ここから出ていけ……と言いたい所だが、オールマイト先生から、今回の件は訓練中止のタイミングを逸した自分のミスだ。という意見もあった事を鑑み、厳重注意に留めておく。だが、次はないぞ。お前の評価は0ではなく(マイナス)だという事を忘れるな」

 

 元々悪人面の彼が睨むと迫力あるな。あの爆豪が黙って頷く。だが、これであの拗らせまくったあの頑固者が改善、大人しくなるとは到底思えないが。

 

 「それと篠ノ之!」

 「はい」

 「周りが何と言おうと、俺が認めてやる。実に合理的で誰よりもヴィランに成りきったのはお前だ、篠ノ之」

 「ありがとうございます」

 「さて……」

 

 言いたいことを言い、漸くいつもの調子に戻ったイレイザーがゆっくりと俺達全員を見渡すと──。

 

 「HRの本題だ。急で悪いが、今日はお前達に……」

 

 教室全体に緊張が走りざわめきが起こる。もしや、臨時のテストが!?とクラスメイトが戦慄してい、

 

 「学級委員長を決めてもらう」

 「「「くそ学校っぽいの来た──!!!」」」

 

 少し前の静寂が嘘のように全員が全員やりたい!と次々に挙手していきアピールする。

 普通なら委員長は担任の小間使いや雑用で面倒な役割で不人気なのだが、ここは違う。

 雄英のヒーロー科としては学生の内にトップヒーローの様に集団を導く経験が鍛えられるからな。それと内申にも影響するから座学が不得手な奴は積極的に挙げていた。

 立候補する者が殺到する中、飯田が一際大きな声を出して注文を集める。

 

 「静粛にしたまえ!『多』を牽引する責任重大な仕事だぞ……! 『やりたい者』がやれるモノではないだろう!!」

 「周囲からの信頼あってこそ務まる聖務! 民主主義に則り、真のリーダーを皆で決めるというのなら……これは投票で決めるべき議案!」

 

 言っていることは至極当然で真っ当な意見だと思う。だがなぁ。

 

 「聳え立ってんじゃねーか!何で発案した!?」

 瀬呂が真っ先にツッコミを入れた。

 

 「同じクラスになって日も浅いのに、信頼もクソもないわ。飯田ちゃん」

 「そんなん皆自分にいれらぁ!」

 「だからこそ、ここで複数票を獲得した者こそが、真に相応しい人間という事にならないか!?」

 

 蛙吹や切島とのやり取り。そしてイレイザーの「時間内に決まれば何でもいい」という発言から、無記名での投票が行われた。

 

 

 結果。

 緑谷出久3票

 八百万百2票

 篠ノ之解4票

 (以下略)

 

 

 いや、誰だよ俺に入れたの。てかそんな人望あったか?『心理掌握』で洗脳した訳でもないのに……。

 

 「それじゃあ男女一人ずつということで篠ノ之と八百万に決まった。投票による結果だろうと文句ないな?」

 八百万と二人教卓に立って意気込みと軽く挨拶してその場は解散となる。

 「なぁ、八百万。誰に投票した?」

 「篠ノ之さんに入れましたわ。貴方の知識と冷静さ、視界の広さは必ず多を牽引する才能だと思いましたの」

 「そうか、俺はそういう八百万に入れたんだが、ま、結果オーライってことで」

 「私に入れて下さったのですか?」

 「ああ。そんなに意外か?」

 「いえ、そうではなく……フフ、ありがとうございます」

 「?変なやつだな。ま、これからよろしく」

 その時の嬉しそうな顔を俺は忘れることはない。

 

 

 午前の授業も終わり、昼休憩。皆待ちに待った昼食の時間を好きに過ごす為食堂へランチラッシュというヒーローの激ウマ料理を食べに行く者、弁当を開く者、誰か友人を誘って場所を移動する者と様々だ。

 

 「篠ノ之さん御一緒しても?」

 「ああ、いいぞ。三奈達も一緒だがいいか?」

 「構いませんわ。お邪魔しますわね」

 「ヤオモモお弁当なんだぁ、って重箱!?」

 「よぉし行こー!」

 

 朝の二人と八百万を連れて教室から出ようとしたら後ろから声をかけられる。

 

 「おーい篠ノ之!俺達これから食堂行くんだけどさ一緒にどうだ?」

 「両手に花どころか囲まれてんじゃねーか!俺も混ぜてください!」

 「俺は別に構わないぞ。いいか?」

 「大丈夫」

 「問題ないよん」

 「篠ノ之さんが良いのでしたら」

 

 という訳で、さらに切島、上鳴、耳郎、瀬呂、尾白、蛙吹、峰田、障子とかなりの大所帯になってしまった。席が空いていればいいが。

 流石にこの人数を許容できる席はなく、一つのテーブルとその隣の片面を占領して何とか皆離れることなく席に着く。俺の隣は先に約束していた葉隠と芦戸の二人、前に八百万が座っている。

 

 

 上鳴  耳郎 | 尾白 

 瀬呂  葉隠 | 峰田 

 八百万 俺← | 

 切島  芦戸 | 

 蛙吹  障子 |

 

 

 こんな感じだな。

 ちなみに奢ってもらっていない。葉隠はああ言っていたがそこまで落ちぶれちゃいないし金も俺の方が持っている。だから気持ちだけ貰い、戦闘服の件は確約して装備をこれからの話し合いで決めていこうということになった。

 

 「なるほどな。朝にそんなことがあったのか」

 「確かに私も話しかけられたわ」

 「俺も」

 「オイラも」

 「その時は気分良かったけど、この話聞くと流石に引くぜ。マスコミって怖ぇ」

 「どうせアンタはインタビューされて有頂天になってたんでしょうが」

 

 「で、だ。神経の電気信号を読み取って任意で発動する光学迷彩がいいと思うが、何かあるか?」

 「うーん、私個性が複合型でカメラのフラッシュ?」

 「フラッシュライトか。一度完成後に問題ないか調整する。他には?」

 「えっとね」

 

 可能な限り葉隠の意見を尊重しつつ、ある一定の技術を超えないよう配慮する。個性社会になり中には物理法則に真っ向から喧嘩を売っている技術もある程この世界の科学技術は高い。

 だが、それでも超能力を前提とする学園都市の最先端技術には一部を除き遠く及ばない。だからこの世界の科学技術を悪戯に進歩させることがないよう気をつける。

 

 昨日、戦闘訓練で見たり雄英が擁するサポート科や技術者の程度に目を通しているからそこは問題ない。ただ少し他より性能が良いだけだ。

 

 「よく考えなくてもさ、推薦されるくらいスゲー万能個性持ってて、同じ推薦生を完封できる作戦を一人で考えて、さらにサポート装備や戦闘服を作れる頭、何よりイケメンって神様にどんだけ愛されてんだよ!?」

 羨っ!と背後から黒いオーラが漂ってくるのを無視している。確かにその通りなんだが、いや、何も言うまい。

 

 「でも峰田ちゃん。そこまでできるのに篠ノ之ちゃんは相当な努力をしたはずよ?」

 「だな。才能もあるだろうがそれだけではこの雄英で通じないだろう。何より現場経験があるプロヒーローが講師をしているからな。相澤先生が認めるくらい篠ノ之には努力と才能があるはずだ」

 

 まともに話したことがない障子にそう評価されていたのは意外だったな。てっきり昨日のでかなり嫌われていると思ったが、真面目でいい奴だな。

 

 「本当に凄いですわ。私も万能と呼べる個性を持っていますからわかりますがそれだけ選択肢が多いと最善を選ぶのに多少なりと時間がかかります。ですが篠ノ之さんには少しの淀みもありませんでした。効率的で轟さんや障子さんの思考を完璧に把握し終始翻弄できたのは正しい選択を選んでいたからですし」

 「へぇ、万能って強えと思ってたが意外と苦労があんだな?」

 「そうだぞ切島。強い個性はそれだけ制御が難しい。八百万のはイメージと正しい知識、俺は演算を正しく行わないと再現できない。だから怪我や妨害で役立たずになることも少なくない。対策は取ってるし常に冷静な判断が必要なんだよ」

 「なんか難しくってよくわかんない!あ、」

 「何だ?三奈」

 「おやおやおやあ?これはこれはA組の皆さんじゃーないか。皆で仲良く談笑しながらお食事かい?余裕だねー?」

 

 芦戸が見ている方を振り返れば金髪で目が腐ってんのかと思う程捻くれた性格の生徒がヘイトを撒き散らしながら立っていた。いきなり煽ってきたが、何だこいつ。

 

 「誰だ?いきなり」

 「誰だって?あーあーB組は眼中にないってことか。優秀なA組は違いますねー?調子乗り過ぎじゃない?いつか足元掬われないようにね」

 「ああ?」

 「よせ上鳴切島。いきなりご挨拶だな物間寧人」

 「!?」

 「知ってるの?」

 

 煽り耐性が低い二人を抑えて件の生徒の名前を呼ぶと全員から視線が集まり、物間も驚愕といった表情でこちらを見る。

 

 「ああ勿論。思い出すのに少し時間はかかるがヒーロー科、普通科、サポート科、経営科、教員の全員の名前と顔、登録している個性の情報は頭に入ってる」

 

 情報は生命線だ。取得方法は違法だが雄英のデータベースにハッキングしその情報を掻き集めたことがある。生徒の名簿も、言わないが他の推薦生や受験生のもある。

 

 「「「いやいやいやいや!」」」

 「つくづく規格外だと思ってたけど、ヤベーな篠ノ之」

 「ふ、ふん。A組にも少しはやる奴がいたみたいだね。だけどそんな僕凄いアピー」

 「別に特別なことはしてないぞ。まあ緑谷みたいにあからさまじゃないが、昨日皆の個性の対策やアイデアを出せたのも事前に知って、直接どのくらいできるか見たからだし。そのアイデアも誰かのオマージュだし、教師ならいつかは課題やトレーニング内容に組み込まれていただろ」

 

 「いや、その知識が凄いんだが……」

 「ていうかそれだと篠ノ之は誰が相手でも対策が取れるってことだよな?それってやばくね?」

 

 物間そっちのけで話が進んで煽ったはいいが相手にされてないのが現実になってしまい、少し震えているのが何とも言えない哀愁漂う物間。

 彼の個性は『コピー』。触れた相手の個性をコピーして五分程度使用可能。また複数の個性をストックできる。

 ただコピーしないと無個性と変わらず、実際に個性を見ないと使えない制約がある。

 個性は十分強いが、その特性から個性の持ち主がいれば事足りることが多いだろう。彼は常に誰かの複製品や代替品というレッテルを貼られていたのが簡単に予想できた。あの卑屈な言動や退廃的な雰囲気もそうだ。

 

 「物間、別にA組が絶対に上って訳じゃない。相性次第じゃ完封できる組み合わせもあるし。先輩によればA組とB組はこれから合同授業が増える。ぶつかる事も多い」

 「何が言いたいんだい?」

 「お前の煽りは別に気にしない。実力が拮抗する奴が近くにいると向上心が刺激されるからな。俺達も今のままで満足する気はさらさらない。今、ここで試してみるか?」

 

 物間の方に片手を差し出す。ただの握手だ。だが物間の個性は誰かに触れる事で真価を発揮する。俺が個性を把握しているのを、知って敢えて手を差し伸べた。

 これは挑発だ。少しだけ仕返しの意も込めているが、俺の個性(能力)をコピーしてみろってな?できたらお前をライバルと認めてやる。

 

 「ふん」

 パシッと手を弾かれる。それに反応する切島達をまた抑えて能力を発動する。

 

 「コラッ……あれ?」

 

 物間の後ろに首へ手刀を落とそうしたサイドポニーのサバサバした女子が立っていたが、その攻撃は寸での所で止められる。

 いつかのヴィランにも使った摩擦係数を弄って彼女の腕の動きを封じた。

 

 「そこまでにしといてくれ拳藤一佳。首トンは知能や意識障害の原因にもなるから。これ以上馬鹿になったら責任取れるのか?やるなら緊急時だけにしとけ」

 「え?もしかしてこれアンタか?……わかった。もうしないから早く解いて」

 

 はじめこそ腕が何かに引っ張られる感じで動かせなかったようだが、俺がやったとわかると抵抗を止める。

 物間が横に離れてから拘束を解いて、自分の腕の確認をしている。

 

 「あー、物間がごめんね。どうせわざと煽るようなこと言ったと思うけど」

 「気にしてないぞ。だから拳藤も気にするな」

 「そっか、ならいいんだ。アンタ名前は?」

 「篠ノ之解だ。これからよろしく」

 「よろしく。って物間どうした?」

 

 拳藤と挨拶をしている隣でさっきまでのが嘘みたいに温和しくなっている物間。その表情は廃退的な雰囲気も合わさり酷く血の気が失せていた。

 その様子だと何の能力も使えなかったと見ていいな。

 

 「あ、おい物間!本当ごめんな!それじゃ」

 

 心配する彼女を置いてそそくさと退散する物間を拳藤が最後に謝罪しながら追いかけて行った。

 物間の急変やら色々あり過ぎて呆然としていた皆も食事を再開していると葉隠がさっきのことを聞いてくる。

 

 「ねえ篠ノ之君。さっきの物間君に何かした?」

 「何もしてないぞ」

 「ふーん、じゃあ何であんな顔してたんだろ?」

 

 「……個性に抵触するから暈して話すが、物間の個性は誰かに触れることで発動するものだ。だから敢えて俺は握手して個性を使わせる機会を与えた」

 「でも、篠ノ之君に何ともないよね?」

 「まあな。だから物間は俺を完全に強者、実力が上だと認識したんだ。少なくとも今のままじゃ逆立ちしたって勝てないってな」

 「また意地の悪いことを」

 「そう言うなって八百万。基本的に俺から喧嘩ふっかけることはしない。売られたら買うけどな」

 

 はぁ、と苦労人がする雰囲気を漂わせながら重箱を突く八百万。彼女に同情しつつも周囲は俺に対してああも言い切れる彼女を賞賛していた。おい。

 

 そんな時だ。

 大音量で食堂にサイレンが鳴り響く。

 

 食べる手や足を止めて思わず固まる周囲を他所に俺は左眼を押さえて『鳥瞰把握』を使い、雄英を俯瞰した位置から見る。

 正門に何かの瓦礫が散乱し、そこから玄関まで朝のマスゴミが押し寄せていた。あいつらまた来たのか。ご苦労なこった。

 だがただのマスゴミにあんなことはできない。できたなら初めからやればいいんだからな。となると──ビンゴ。

 

 『透視』と併用して構内を探り、職員室に黒靄から手をいくつもつけた男が侵入するのを捉えた。

 誰かの席から何かを探している。この距離なら『心理掌握』もできるが気付かれるか。それにあの靄の得体が知れない。

 『念話能力』で……チッイレイザーとプレゼントマイクはマスゴミの相手か。他に誰か……俺が行くか。

 

 「警戒レベル三?何だ?」

 「おいお前ら早く避難しろ!レベル三はヴィランが構内に侵入したんだよ!」

 「「「!?」」」

 

 「ねえ早く逃げよ篠ノ、の?」

 「え?」

 「篠ノ之がいない!?」

 

 

 

 ホドキの量子格納庫で制服から服を一瞬で着替え『心理掌握』で俺の顔を認識できないよう操作。念の為顔を隠せる物を付ける。

 職員室に直接転移する。

 

 「!?」

 「何だお前?教師じゃねーな?」

 「……死柄木弔、黒霧、か。どっちも本名じゃないな」

 「「っ!」」

 

 靄の方は靄を飛ばして俺を攫おうとする。だがそこに俺はいない。

 

 「……お前も『ワープ』か。強個性なのにヴィランと連むか、理解に苦しむな」

 「心を読む個性とワープの個性!?どういうことだ?何で脳無みたいに二つ以」

 「それ以上はいけません死柄木!ここは引きます!」

 「チッ、嗅ぎつけんの早過ぎだろ!……まあいい目的は達成だ。じゃあなクソヒーロー」

 

 俺は何もせず、わざと見逃した。

 ここの教員じゃないし、二人の記憶は漁れたから捕まえる必要もない。それに……いや、違うな。

 俺はヒーローにもヴィランにも加担しない。何時元の世界に戻れるかわからないし少なくともSMGみたいな能力者組織を作るつもりはない。

 好き好んで追われる身になるつもりもないがな。

 

 ま、教師陣には事の経緯を話しておくか。腐ってもヒーロー育成機関。受取業務とか言われてる警察と連携もあるし授業内容が変わる程度か。

 

 「な、何だって──ヴィランと接触したぁ!?」

 「はい」

 さっきの騒動が収まり次第教室で待機を校内放送で指示されたが俺はそのまま職員室で教師を待っていた。

 そして真っ先に来たオールマイト(トゥルーフォーム)に打ち明けたらすぐに職員会議に参加させられた。

 

 ここに担任のイレイザーがいるってことはA組には一年主任のミッドナイトが行ってるのか。

 

 「それで、どんな奴だった?」

 「黒靄と体中に手のアクセをつけた痩身の男です。そして撤退方法から黒靄の個性は『ワープ』」

 「「なっ」」

 「ただでさえ強いワープの個性。対策をしても意味ないな。最悪だ。よりによってヴィラン側に居るなんてな」

 

 ヒーロー科三年の講師スナイプが腕を組み忌々しくそう漏らす。

 

 「何か話したのか?」

 「その前に俺の個性について、知っている人は?」

 

 イレイザー、オールマイト、個性公安委員会、警察はあの時の事件で俺の個性の一部を明かしてある。その万能性も。だから、俺はヒーロー科とは違い監督するヒーローや警察関係者がいる限り個性の使用を許可されている。

 今雄英にいるのは自分一人では許可されていないから自分で使えるように個性許可を取りに来ただけだ。

 

 「「「……」」」

 

 皆、黙って頷く。まあ、そりゃそうだよな。機密なんてあってないようなもの。そう確信していたからこそ一部だけを公開した。

 「まあ、いいよそれに関しては。答える内容に出し惜しみはしない。それは向こうに肩することだからな」

 

 「ヴィランと接触した時、俺の個性を発動して手形の男の記憶を洗った。読めた記憶は『狙いはオールマイト』『チンピラ集めて襲撃』『対オールマイト用兵器』そして、『先生』」

 

 以前、オールマイトの記憶を読み取った時に感じた根源的恐怖。ヴィランの象徴、『オール・フォー・ワン』。

 それが健在で敵の親玉として暗躍している。そいつの個性を把握している。

 

 

 『個性の簒奪・付与』

 

 

 なんて、強力で、自分勝手な……。

 個性黎明期から生きている悪の根源は命を弄び、悪事を働き──それがどうした?命を弄んだ?その結果が俺のこの体だ。悪事を働いた?俺は何人もの人生を壊し、殺している。同じだ。

 個性の簒奪と付与?犯罪者を攫い実験材料として能力を開発した。強度を操り抑止とした。

 倫理なんて当に捨てている。これは思考をトレースして得た擬態。まだ誰にも……いや、あいつら以外にバレたことはないから大丈夫。

 

 「「「……」」」

 「撤退時にカリキュラムと思しき紙を持っていた。標的であるオールマイトの科目を狙う為だな。そして対オールマイト兵器の存在は本人も詳細はよく知らなかったから誰か他の製作者がいるはずだ。そしてヴィラン集団を率いての襲撃。実技で散り散りになった生徒はチンピラが襲い分断させ、人質にでも取れば標的であるオールマイト用の兵器を使い殺す。こんなとこだな」

 

 ガリガリの彼は険しい表情で何も言わない。他の教師や校長も然り。いや、校長は正直フィーリングだが。

 

 「対策としては一授業に複数人のプロが対応、最低でも三人。次に……失礼」

 「いや、良い。続けてくれ」

 「次に複数の連絡手段の確立。予想できる妨害を全て潰すぐらいしないと、通信妨害、救援妨害、etc。そして──」

 

 職員会議と称したヴィラン対策会議は時が流れれば流れる程煮詰まり、現状すぐにできる対策から行うことになった。

 即決断し即実行。向こうに先手を取られている状況で手を拱いてる余裕はない。

 

 当たり前ながらここでの話は他言無用。箝口令が敷かれることになる。あの場で明言しなかったが密偵の存在も警戒に入れておくか。

 悪意があれば警戒できる。いつも通り『超電磁砲』の電磁レーダーと不意打ち対策で『窒素装甲』を発動しておく。何も変わらない。全世界が敵になった時と、何も。

 

 オールマイトが講師をするのはヒーロー基礎学。となると雄英の判断は襲撃のタイミングを図る為敢えてカリキュラムを変えないというものだった。

 

 「……俺個人も、調べてみるか」

 俺なら、カリキュラムの変更を人数を限定して変更して、ヴィラン側に情報が漏れていれば密偵の存在が確定。

 その判定は元々オールマイトの担当する科目だったか変更後も基礎学に合わせて来たか。

 考えたくないが生徒でもなく教員側に密偵がいる場合だ。あの場では少数精鋭で限られた人数が俺を認識した。

 

 顔を見た俺が狙われるのは当然。直接会話した感じからゲーム感覚の抜け切らない幼稚で自分勝手な言動。それだけなら良かったが先生と呼ばれる指導者がいる。

 あの黒靄……個性の所為か記憶が読めなかったが、あの男に従うような振りしてもっと上からお守りをさせられたような……カット。

 

 どう考えたって情報不足。今は足を動かすのみ。

 放課後になり、教室に置いてある鞄や荷物を取りに行く。

 イレイザーによると俺は公欠扱いになるらしい。別に無断欠勤でも何ら問題ないが甘えられるとこは甘えておく。

 ガラッと扉を開くともう誰もいないと思っていたのに、帰っているはずのA組の生徒数人が集まっていた。

 

 「おい!何があった!?大丈夫か?」

 「篠ノ之さん、ご無事でしたか……」

 「飯田から聞いたけどマスコミが侵入したんだろ?堂々とサボってたな!」

 「……?どうした?篠ノ之」

 

 俺を見て周囲を囲み詰め寄ってくる。箝口令もあるしヴィラン戦はまだ早いだろう。

 

 「別に、ただサボってただけだ」

 「ホラ言っただろ〜!おいすぐ相澤先生にバレんだから止めろよ!オイラ達も連帯責任で退学になったらどうすんだよ!この問題児!」

 「お前はセクハラで退学しとけ峰田」

 「篠ノ之さん、本当に、サボタージュを……?」

 

 「──ああ俺の勝手だ」

 

 

 パシンッ──。

 

 

 「最っ低ですわ。ゔっ……」

 

 乾いた音が教室に響き、寸前までふざけていた連中も口を開けず静寂がさっきのビンタの音を強調させる。

 下手人の八百万は、俺を避けて教室から出て行ってしまった。それも嗚咽すら堪えられない程目から涙を流して。

 真面目な彼女の期待を裏切ったことは事実。だが、話すことはできない。虫のいい話だが存外俺も、身内には甘いらしい。

 こいつらのことを気に入っているのも事実。何より俺はイレギュラー。こいつらが生き残れる術は教えてもヴィランに堕とす訳にはいかない。

 

 「お、おい篠ノ之?」

 「悪いな。芦戸、葉隠、耳郎。八百万を追ってくれ」

 「自分で行きなよ」

 「無理だ。俺が言っても逆効果。火に油注いでどうする」

 「……そんな奴だとは思わなかった」

 「篠ノ之君……」

 「……」

 

 女子が教室から出て行き、残った男子から非難と困惑の視線が向けられる。だが、無視する。

 

 「お前らも俺に関わるな」

 「何でだ!理由を言ってくれりゃ俺達も」

 「切島、悪ィが役者不足だ」

 「ぐ、ああそうかよ。行くぞ」

 「「「……」」」

 

 切島、瀬呂、峰田、上鳴、尾白が出て行く。

 これでいい。入学したての卵の殻すら剥けてないあいつらにヴィラン連合は、本物の悪意は早過ぎるんだ。

 

 

 




 
 本日の解説。
 
 勘違いタグ必要かしら?
 いや、すぐに誤解は解くつもりだけどさ
 ヤオモモのビンタは我々の業界でもご褒美です!
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