コードギアスRTA(8762:14:02):キセキ の 明日   作:黒兎可

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逆行したので、最短最速で世界の趨勢に決着をつけたいルルーシュ。


STAGE01RE;

 

 

 

 

 

 

 嗚呼、俺は…………、世界を壊し、世界を、作る――――――。

 ――――――だから。

 

「………………ん?」

 

 ゼロレクイエム完遂。

 その死の間際、走馬燈が俺の脳裏を巡っていた。

 それは、目を閉じる前の俺の夢の残滓。

 辿ってきた血の軌跡。

 それを受け入れ、討たれる覚悟を捨てて、ひとたび俺は眠った。

 

 ――――だから、これはおかしい。

 

 なぜ俺の眼前に、ブリタニアの、クロヴィスの親衛隊が倒れている。

 何故、俺の目の前でC.C.が眉間から血を流し死んでいる。

 何故、俺はアッシュフォードの学生服を着用している。

 何故、俺たちはこのシンジュクゲットーに居る。

 

「白昼夢か? 嫌…………」

 

 直前、俺は間違いなく眼前の親衛隊らに「死ね」と命じた。

 それに寸分たがわず、奴らはレールガンで自身を撃ち抜いた。

 漂う血の匂いも間違いなく生のそれ。

 記憶にあるそれではない、今流れている鉄の匂い。

 周囲を見渡せば、もはや見慣れたような廃墟の建造物。

 四方から未だ銃声が聞こえるのが、状況が状況であるということの証左か。

 

「状況を整理しよう」

 

 現状、思いつく仮説は複数ある。

 それを確認するために、まず俺は右手の平を見た。何も描かれていない。浮かんでいない。

 次にボタンを外し首元を確認する。

 

「成程、そういうことか…………」

 

 そこには、見慣れた文様。ギアスのそれを示すものと同じ、鳥の羽ばたきのような文様があった。

 親父が死んだとき――――俺がヤツを否定した時、ヤツが持っていたコードと接触していた俺の体の箇所。

 

「これがあるということは、コードが俺に継承されている? 嫌、コードとギアスは両立しえないはずだ。それが両立していることも不可解だし、俺自身が今現在、まるで過去にでも戻ったかのような状況にあるということが既に理解不能だ」

 

 いや、可能性があるとすれば――――。

 

「俺がかつて『Cの世界』で、集合無意識にギアスをかけたから? C.C.のようなコードを持っていた存在が正しく機能するためには、Cの世界は不可欠のはず。そこの法則が乱れている? 乱れたから俺がCの世界によって復活できず、わざわざここまで転移させられた? …………いや、仮説はいくらでも立てられる。検証は後回しだ。その前に――――」

 

 俺は、未だ復活する気配のないC.C.を抱き起す。髪をかきわければ、額にはコードの文様。

 どうやらこちらに影響が出ているということはないだろう。しばらくすれば復活するだろう。既に出血も治まっているようだ。

 

「このまま放置しておいても問題はないが…………」

 

 その一言で片づけられないだけの感情が俺の中にあり、またそれ以外での打算も俺の中にあった。現状の俺の体や能力について、相談できる相手は欲しいか。

 否、それもまた言い訳か。…………まぁ良い、このまま待っていれば――――。

 

 C.C.を抱き起したままの俺の前に、サザーランドが到着する。何故親衛隊が、と困惑する声はヴィレッタのものか。嗚呼、確かここでギアスの不発を経験して、使用方法について考察を重ねたか。

 俺に、何があったか答えろとナイトメア越しに聞いてくるヴィレッタ。あの時と同様にすれば良いかという発想も沸くが、いや…………。

 いや考えるべきは。ここでの俺の応対一つで、シャーリーの今後の生き死にに対して影響が出る。とするなら、俺の情報を極力残さないか、あるいは――――――――。

 

「――――良かった、軍人さんですか! 助けてください! 彼女が撃たれたんです!」

『何?』

 

 二、三言葉を重ね、相手の注意を惹く。我ながら迫真の演技とは言えないが、第一目標は俺が保護を求めたということを意識させることだ。

 

「――――、しっかりしてくれ、頼むから…………っ」

『………………処置可能かどうか、状態を見る。少し待っていろ――――』

 

 かかった。いや、俺のC.C.を心配する演技がそれだけ真に迫っていたということか。あるいは案外、ヴィレッタも情が深い性分だったということか。このあたりは後者の確率が高いかもしれない。扇と関係がややこしくなっていたことを踏まえるに、簡単に割り切れるものではないだろう。

 だが、計画通りだ。

 降りてきたヴィレッタを前に、俺はギアスをかける。複数の行動を相手にインプットする際に使用していた「お願いを聞いてもらえませんか」といった類のもの。

 数秒もせずにヴィレッタは「何だ?」とその場で直立不動になる。

 こちらに接近してこないこと、声音が違うことからして、ギアスにはかかっているな。

 そして、俺のギアスにかかった際の挙動自体に差異が見られないということは、おおよそ今まで通りの使い方で使用することが出来ると。

 まぁ、内容については2つお願いすることになる。

 

「そのナイトメアを俺によこせ」

「そして俺たちがこの場からいなくなった時点で、記憶をこう書き換えろ。『お前がナイトメアから降りた時点でテロリストからの襲撃にあい、足を負傷、ナイトメアを奪われた』と」

 

 これでヴィレッタ・ヌゥが俺を不審に思う可能性が低くなる。嫌、純血派には後で接触するだろうことを考えれば、その布石になる。これを利用しよう。

 わかった、と頷いた彼女から起動キーを受け取り、俺はその場に落ちていたレールガンでヴィレッタの足を撃ち抜いた。

 そうだな。ついでに通信機も壊しておこう。

 ヴィレッタが倒れたことを確認してから、俺はC.C.を引きずりナイトメアのコックピットへ――――。

 

 ――――よし、イレギュラーもなく俺はこの場を脱する。

 

「後の問題は…………、ん? 額の傷も塞がったか」

 

 運ぶ際、腕と足がバラバラになると面倒なので再度拘束しておいたC.C.だが、後ろから抱きかかえるような体勢になっている。右手で少し額のあたりをなぞれば、既に手の感触はさらさらの額のまま。血流の跡が残るのみだが、これは後で方法を考えよう。

 

「さて、状況を整理しよう――――――――」

 

 あの時に何があったかと、俺は記憶をたどる。

 シンジュクゲットーに対してクロヴィスが襲撃を仕掛けた原因は、C.C.の入ったカプセルを扇グループに奪取されたこと。それを隠蔽しC.C.の回収させるためにこの事変を起こした。このあたりはジェレミアがV.V.から聞いていた話をふまえれば、おおよそ間違いないだろう。

 それに対し、俺はクロヴィスを暗殺することを最終目的としてこの戦場を終結させた。

 結果何が残ったか…………、スザクがクロヴィス暗殺の容疑者とされたことと、扇グループが存続できたこと。シンジュクゲットーに生き残りが出来たこと。のちにゼロとして活動するための足掛かり。

 

「結論を言えば、基本的な戦略目標に変化はない。扇グループを指揮してクロヴィスの軍と『遊ぶ』のは必要だろう。その際にランスロットが出てくれば、スザクの生存もほぼ確定できる。具体的に言えば、クロヴィスの軍と扇グループをぶつけた方が、最終的な被害者が少なくなるという面もなくはないが…………? ハッ、今更人命優先? 笑えて来るな我ながら」

 

 まぁ今後の行動方針については、後で考える必要があるが…………。

 

「扇グループをこのまま落とすのも惜しい。いいだろう、また踊ってやるさ――――」

 

 問題はクロヴィスをどう処遇するかということだが…………。

 いつかのように通信機からカレンの番号に連絡をかけ、今回は先行してこう名乗った。

 

『誰? どうしてこの番号を知って――――』

「私は――――ゼロ。勝ちたければ、私の指示に従え!」

 

 俺の飛ばした激に、予想通りカレンは気合を入れなおした。

 

 

 

 

 

   ※

 

 

 

 

 

 ルルーシュと遭遇し、庇い、ギアスを与え――――廃墟も同然の何処かで目を覚ますかと思っていた私を出迎えたのは、寝心地の良いベッドとチーズの匂いだった。

 

「…………?」

 

 ちょっと待て、何だ意味がわからない。

 知らない天井はブリタニアでも一般的な装飾様式だが、どう見ても病院などのそれではない。

 不信に思って体を起こすと。

 

「――――嗚呼、起きたか。起きたらまずそこのメモを読んでくれ」

 

 そんなことを言いながら、ルルーシュがピザを食べていた。

 …………意味が分からない。いや、まず目覚めたときに最初に対面するのがルルーシュというのも意味が分からないし、何故私は今こんな風にルルーシュと対面している。これではまるで、あのまま倒れた私をルルーシュが回収してきたみたいじゃないか。

 言われるがまま、私はルルーシュの指さした机の方に足を延ばし(ちなみに拘束服は脱がされてレオタード状の下着一枚にされていた、ヘンタイめ)、置かれていたメモを手に取った。

 

 

 

 ”――――俺の母、マリアンヌから意識のやりとりが来ても、しばらくは無視しろ――――”

 

 

 

「――――っ、ルルーシュ、お前、」

「まずはそれを守ってもらわなくては話にならないからな、C.C.」

「何故私の名前を…………、ヴァトレーか?」

「違うが、少し長い話になる。…………嗚呼、食べるか? さすがに腹が減ってるだろう」

 

 そんなことを言いながら対面のルルーシュは、自分の食べているピザを指さす。机の上に置かれたホールは三分の一ほどがルルーシュの胃袋に収まっているのだろうか。いや、それはどうでも良いが…………。

 

「冷めるぞ」

「…………もらおう」

 

 何でこの男、こんなに冷静なんだ?

 いやそれ以前に、何故わざわざピザを用意している。

 まるでこれでは、私のことを事前に知っていたようじゃないか。

 逆ならばまだしも、何故私がコイツにこんな対応をされているのか。

 釈然としないが、ハラペーニョを食べると、ルルーシュは何が楽しいのか、少しだけ笑った。ただし、鼻で笑った。

 

「お前、何だ? 何故私のことを知っている」

「知っていて当たり前だ。C.C.、これに見覚えはないか?」

「? ――――――――っ、それは、」

 

 ルルーシュの首元に浮かび上がっていた文様を見て、私は思わず額をさする。

 

「嗚呼、安心しろ。いや逆に安心できないか? お前のコードを奪った訳じゃない。これはおそらくV.V.のコードだ。いや、だったと言うべきか」

「…………勿体つけるんな。私が与えたギアスは、とうていコードを継承できる状態になっているはずはない。何があった。それ以前に、お前は…………」

 

 続く言葉は、ルルーシュが語った私の本名の前にかき消された。

 呆然とする私に、ルルーシュは淡々と語った。自身の身に起こったことと、自身が辿ってきた戦歴と、経歴と、傷を。

 

「…………」

「今の話を聞いた上で、お前に確認したいことがある。この状況、どう考えても説明がつかない。明らかにギアスやコードに関係したことだろうが……」

「…………しいて考えられるとすれば。お前が『神』を殺したからだろう」

「何?」

「Cの世界のルールが乱れた。そしてお前がギアスを使用できる点から見て、その継承は不完全な形で行われたんだろう。おそらくお前のその、絶対遵守のギアスも変質しているはずだ。決して今まで通りに使えるとは考えない方が良い」

「わかった。礼を言っておこう」

「…………なあ、一つ聞いてよいか?」

「何だ?」

「『お前と一緒だった』私は、最終的にシャルル達を裏切った。それは理解できたんだが…………、理由がいまいち理解できなくてな」

「理由? お前が言っていたんじゃないか。奴らは結局、自分たちのことが一番大事で――――」

「いやそこじゃない。もっと言うと、私が記憶喪失になったあたりの下りだ。お前、何か隠してるな?」

「隠してはいない。省略はしたが――――」

 

 そして、ルルーシュはかなり決定的な情報を私に話した。

 

「お前のギアス、願いは『愛されること』のはずだ」

「…………確かにそうだったが」

「お前の『記憶の世界』で、いつしか愛を忘れてしまったと言われた。無条件に愛されるがゆえに、シスターに依存していったとも」

「そう、だったが…………、その、そんなことまで話すような間柄だったのか? お前と私は」

「共犯者、だそうだからな」

 

 皮肉気に笑うルルーシュの言葉とその顔の裏に、その一言だけでも言い表しがたい感情の波を感じた。

 だからこそ、シャルルからコードを奪われる直前に言ったのだと――――最期くらい笑って死ね、必ず俺が笑わせてやると。

 

「人として当たり前に、寄り添って、相手と関係を構築して、そしていつか死にたい。俺はそう解釈した。だから――――」

「ルルーシュ、お前……」

「――――、ん、何だ?」

「それ、ほとんどプロポーズみたいなものだぞ?」

「はぁっ!?」

 

 まさかこの童貞ぼーや、そのあたりに気付いていなかったのか?

 いや、おそらくその私も一言では言い表せないような複雑怪奇な感情がルルーシュにあったのだろうが。

 だから言葉を額面通りに受け取るのは早計だが…………、慌てふためくルルーシュはそれはそれで面白みがある。嗚呼、たぶんその私も、この男のそういう様を見るのは嫌いじゃなかったんだろうと、思わず苦笑いが漏れた。

 

「まあ、おおむね納得はいった。そーか、そーか、そんなに愛されていたんじゃぁ仕方ないなぁ」

「黙れ魔女ッ! そういうのじゃない、俺は、俺たちは……っ」

「はいはい、判ってるよ。だが、そういうことなら私もお前の側につくのに吝かじゃないが……」

「曖昧では困る。情報を知った今、お前が俺の側につかなくては、すべてが破綻する」

「だったら最初から言わなければ良かったじゃないか。それくらい出来ただろう? 坊や」

「――――撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ」

 

 だから、と。ルルーシュは腕を組み、私を見つめる。

 

「俺にはお前が必要だ。だから、お前を信じることにした」

「――――――――そういう賭けということか。成程な」

 

 しかし全く。この私、C.C.ともあろうものが、まさかマリアンヌとシャルルの息子に懸想することになろうとはな……。いや、その一言で片づけられるようなものではないだろうが、はたから聞く分では、そこに大差はないな。

 しかし何だこの、意識してということもない天然でヒトを口説き落とそうとするようなこの態度は。伊達にシャルルの子ではないということか。

 

「いいだろう。結ぼう、その約束。――――今度こそ、笑わせてくれることを期待する」

「嗚呼。…………ありがとう」

 

 にこりと笑いもしないその様が、やけに手慣れた風であるのが笑えて来る。おそらく私とコイツとは、それだけの時間共に戦い、会話し、同じ時を過ごしてきたということだろう。

 

「それで、お前はどうするんだ?」

「決まっているさ」

 

 ルルーシュは立ち上がり、空になったピザの箱を片付けながら言葉を続ける。

 

「俺自身はもう、本来ならこの世界に関わるつもりはなかった。だが、親父と母上との目的と行動や、シュナイゼルなど含めて放置しておくのは、後々のことを考えれば得策ではない。火種は小さくしておく必要があるだろう」

「ナナリーのためか?」

「いや? 俺が守りたい全てのためにだ」

「煙に巻くな、ルルーシュ。一度未来を知っているからと言って、お前は万能じゃない」

「当たり前だろう。だが違うな、間違っているぞ、C.C.」

「何?」

「俺が知っているのは未来のことじゃない。情報だよ。俺が、俺たちが、世界のパワーバランスに決着を付け、対話というフィールドまでもっていくために培ったすべての戦歴が、情報だ。人物も、起こりうる事件のパターンも、どういった思考や思惑でそれらが為されるかという想定も」

「じゃあ、それをつかってどうするんだ」

 

 ルルーシュは、それはそれは凄惨な笑みを浮かべた。

 

 

 

「最短最速で世界の趨勢に決着をつけ、奇跡の明日を迎える」

 

 

 

 

 その振る舞い方は、思っていた以上には頼りがいがありそうで、思わず私は笑ってしまった。

 

 

 

 



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