「やっぱり遠隔操作じゃ手に余るか」
墜落していくジークフリートを眺めながらコントローラーを放り投げV.V.はひとりごちた。
黒の騎士団の一部隊に加えて脱走して兵器を奪ってこちらを攻撃してきてもおかしくない豪胆さを持つコーネリアが本拠地にいる状況でジークフリート1機では荷が重すぎた。遠距離から操作する仕様に変えたのは正解のようだ。劇の終わりのような寂しさを覚えながら黄昏の扉へ向かおうとした時、向こうから扉が開いてくる。
「兄さん。ルルーシュに刺客を送ったのは本当ですか?」
現れたのは嚮団の最大の後ろ盾であるブリタニア皇帝にして最愛の弟シャルル・ジ・ブリタニアだった。
「ああ、そしたらこの有様さ。でもこれであいつがゼロだって確信できた。エリア11の軍に連絡して――」
「兄さんはまた嘘をついた」
V.V.の言葉をシャルルはさえぎる。だが怒ってはおらず労をねぎらうかのように手を伸ばしてきた。
蜃気楼の中からルルーシュは次の攻撃を警戒していた。先ほどまで戦ったジークフリートの動きはコクピットからこちらの動きを見て反応したものではない。遠距離からラジコンを操っているかのような戦い方だった。
「これ以上待っても奴に逃亡の時間を与えるだけか」
C.C.はけじめをつけると言ってルルーシュのそばを離れたままだった。V.V.相手にはC.C.がいてくれた方が心強いが慎重になり過ぎればV.V.を逃し皇帝にゼロの正体を報告されるだろう。ここは動くべきだ! そう思い攻撃前に割り出したV.V.の居室に移動する。
シャルルは兄に怒ってなどいなかった。胸の内にあるのは深い失望だった。幼い頃、誰もが自分たちに嘘をつかない、自分たちも嘘をつかないで済む世界を作ろう。そう誓ったただ一人の肉親にして、最高の同志に自分は二度も騙されかけたのだ。これからはマリアンヌとともに自分がラグナレクの接続を完遂する。そう決意し、裏切り者の細腕に手を伸ばす。そしてコードを不死を奪う。だからV.V.の行動にシャルルは目を瞠った。
V.V.はシャルルの手を取らずに後ろに跳躍し、距離を取ったのだ。
「兄さんなぜ?」
シャルルの問いに答えず全速力で壁際に向かうV.V.。シャルルは懐にある銃を取り出しV.V.に狙いを定め撃つ。撃っても死なない不死者だ。だが撃たれれば逃げ足を止め苦悶にもだえるだろう。頭を撃ってもいいが、念のため足を撃った。だがV.V.は激痛に耐えながら壁ののくぼみに手を入れ隠していたマシンガンをシャルルに浴びせた。
右腕を撃たれたシャルルは銃を取り落とし拾うことはできなかった。一歩でも動いたら蜂の巣だろう。決定的な敗北だった。
「弟とはいえマリアンヌに骨抜きにされたヤツを僕が信用し続けてるとでも思ったかい?」
勝利の余韻を味わいながらシャルルと最後の会話を楽しもうと声をかけるV.V.。彼は敗北と激痛に顔をゆがめる弟にさらに続ける。
「それに騙されたからって騙そうとするあたり僕のことは言えないよ。前にも言ったけど君はまだまだ子供だね」
「マリアンヌの仇め。なぜ信頼できる同志を兄さんは?」
シャルルの問いに今度はV.V.も答えた。
「君をたぶらかそうとしたからだ。計画をとりやめて親子仲良く暮らそうなんてそそのかされたんじゃないかい。……まあ彼女にそういわれて気持ちが揺れるのはわかるけどさ」
最後の言葉は独り言のようだった。もし自分がマリアンヌにそう言われたら、V.V.はシャルルに目を向け
「ラグナレクの接続は僕が成そう。それにそんな老いぼれた君がコードを継げばその苦しみはC.C.や僕の比じゃない。老いて不便な体を抱えながら永遠に生きる羽目になるんだ。ここで楽にしてやるのが兄の務めだね」
「どうやってラグナレクを成す? 私がいなければブリタニアを動かすことはできんぞ」
最期に兄を意図を探るシャルルにV.V.はせせら笑いながら
「問題ないよ。ギアスに興味を持ってる奴がいるんだ。あいつを利用すれば君の血族に乗っ取られた国なんて思いのままさ」
そう言い終わった直後にマシンガンを構える。
「ルルーシュ、結局お前やナナリーに謝れずじまいだったな。マリアンヌに会えなかったこととそれが心残りだ」
「Cの世界でまた会おう。弟よ」
V.V.がかける最後の言葉と銃声が重なる。
蜃気楼でV.V.の居室にたどり着いたルルーシュが目にしたものは目を疑うものだった。
V.V.は影も形もなくルルーシュの眼前にあるのは実の父親にして宿敵シャルル・ジ・ブリタニアの仰向けに横たわった死体だった。
「この男が何でこんなところで? ……」
皇帝からはいろいろ聞きだした後で復讐するつもりだった。マリアンヌの死の原因、日本を占領した本当の理由はギアスに関連したもので占領した国々に点在する遺跡を使って何かを企んでいたのではないかなどまだ判明してない事はいくつかある。
やはり嚮団を襲撃したのは早計だったのだろうか。今回の襲撃で黒の騎士団の中にもゼロに不信を抱くものが出てくるだろう。
疑問と後悔にさいなやまれる中C.C.が到着した。
「シャルル……そうか。そうなってしまったか」
何かを悟ったC.C.にルルーシュは
「V.V.はどこだ? 奴に聞きださなければならないことは山ほどある。おそらく母さんを殺した犯人も――」
まくしたてるルルーシュに対してC.C.は冷静に
「V.V.はあきらめろ。黄昏の扉を使って移動された。その上この扉は二度と使えないように封印されている」
それでもまだ方法があるはずだと言い募るルルーシュに向かってC.C.は提言する。
「それより早く撤収しろ。もう手遅れだろうがV.V.にはめられたかもしれん」