暗躍のV.V.   作:ヒアデス

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第2話 新皇帝

 ブリタニア皇宮の会議室に流れた写真は衝撃的だった。皇帝の死体の前にゼロが立っているのだ。武器を持っているように見えないがどう見てもゼロによる皇帝暗殺の瞬間だった。

「皇帝陛下に置かれましてはおいたわしいことですが陛下は公務の間を縫って楽しみにされている遺跡の視察中にゼロを名乗るテロリストに殺害された模様です」

 名目上の議長である第一皇子オデュッセウスに代わり第二皇子シュナイゼルが会議室にいる諸衆に報告した。

 皇宮の会議室には皇位継承権を持つ皇族が各エリアの総督を務めている者に至るまで一部を除き集められていた。皇族でないものは護衛として控えているナイトオブワン ビスマルク・ヴァルトシュタインだけである。

 皇帝シャルルへの黙祷が済んだ後。議題はゼロへの制裁と次期皇帝の選出に進む。皇帝の選出に話が進んだとたんにこれまで傍観していた第五皇女カリーヌが口を開く。

「それにしてもこんな時にナナリーはいないのよね。テロやEUへの対応に追われている優秀な総督と違ってお飾りだからヒマでしょうに。いても役に立たないし間違ってもナナリーが皇帝になることなんてないからいいけど」

 悪意を隠さぬカリーヌの物言いに対してシュナイゼルは

「ゼロに扇動された旧中華連邦や連邦から独立した国々はエリア11に攻め込んでくる可能性がある。最前線の植民エリアに総督が不在というのは現地の軍の士気を下げるだろう。ナナリーも納得していることだしね。また期を改めて陛下の墓前に案内しよう」

 そこまで言ってシュナイゼルは更に、

「でもナナリーが役に立たないなんてことは無いよ。彼女に心を許し始めたイレヴンの働きでエリア11は衛星エリアへの昇格が決定している。彼女の皇帝即位だってあり得ない話じゃない。ここにいる皆様が承認して頂ければ」

 第五皇妃マリアンヌとその子供たちは多くの皇族たちから疎まれている。

 それを知っていてありえない話じゃないと言いつつ、コンマ1パーセントに満たない可能性の話をするシュナイゼルに対して、

「ナナリーには無理だよ。足だけなら廷臣が支えれば何とかなるかもしれないけど目が不自由では公務もままならない。総督として働いてる今でも立派過ぎるくらいだよ」

 ナナリーの事を心から心配しているのはオデュッセウスだった。彼は皇位継承第一位の立場に立っているからこそ野心を抱く必要もなく他者を思いやる余裕があったのだ。

「兄上……申し訳ありません過ぎた事を言ってしまいました亅

 オデュッセウスに頭を下げ許しを得たことでシュナイゼルが話題を変える。

「では議題を進めましょう。神聖ブリタニア帝国第99代唯一皇帝陛下の座につかれるお方ですが私から推薦したいお方がいます」

 皆の顔が引き締まる。皇位継承権第一位はオデュッセウスだが宰相に就きEUとの戦を勝利に導くなど功績がめざましく皇帝に最も近いと言われているのが今発言しているシュナイゼルだからだ。

 そのシュナイゼルが出した名前が、

「オデュッセウス兄上、お願いできますか?」

「え……私でいいのかい?」

 思わず聞き返すオデュッセウスにシュナイゼルは当然のようにうなずく。

「皇位継承第一位は兄上です。先程私を叱責し私の過ちを正してくださったように我らを束ねる皇帝にふさわしい能力も備えている。どうか帝位についていただきたい」

 皇帝にふさわしい能力は明らかにお世辞だったが、帝国で実権をふるってるシュナイゼルが言ってる以上、この場で否定できるものはいなかった。

「私は長子だからね。いざというときの心構えはしていたつもりだ。だがシュナイゼル、君は宰相としてブリタニアのために身を粉にして尽くしてきた。それが報われる地位につきたいとは思わないのかい?」

「皇族として当然の義務を果たしてるだけです。それに地位ならば宰相という私などにはもったいないほどのものをいただいている。新たな皇帝陛下に仕えることをお許し願えればそれだけで十分です」

 シュナイゼルの言葉に第一皇女ギネヴィアとカリーヌあたりは感動していたが次期皇帝かそれがかなわずとも大公爵に収まる功績を争っていた皇族たちはいまだシュナイゼルの真意を測りかねていた。

「それだけとは無欲な。……わかった。新皇帝謹んで拝命しよう。だがシュナイゼル、君にはこれからも宰相として私を補佐してもらいたい。もちろん褒美は惜しまないよ」

「イエス・ユア・マジェスティ!」

 胸に手を当て唱和するシュナイゼルに続き皆が立ち上がり「オール ハイル ブリタニア」を唱え忠誠を示した。

 大半の皇族はこの直前までオデュッセウスとシュナイゼルが皇位の譲り合いをし最終的にシュナイゼルが皇帝になるのではと思っていたがこの元第二皇子は宰相として新皇帝を操る気でいるのだと結論し従うことに決めたようだ。

 シュナイゼルやコーネリアを凌ぐ功績をあげられなかった他の皇族たちは皇位を主張するよりシュナイゼルや彼に擁立されるオデュッセウスに媚を売った方が得策だと判断したのである。

 

 

 

 

 

 その後シュナイゼルはカノンを伴い執務室に戻るが、そこで待っていたのは年端もいかぬ少年だった。

 シュナイゼルが入っても、少年は立ち上がりもせず座ったままでいる。子供とはいえ許されぬ無礼だったが何度言っても直さずシュナイゼルも罰するどころか不快なそぶりを見せず対応するので、カノンもにらみつけるだけにとどめた。

「会議見させてもらったよ。てっきり君が皇帝になると思ってたけど」

「皇帝は目立ちすぎるからね。父上のように皇帝につきながらギアスの研究をしていたのでは相応しくないと言われて謀反を起こされることもあり得る。私がそうしようとしていたように」

 平然とクーデター画策を口にするシュナイゼルに対して少年は気にも留めず、

「でもなぜゼロの正体を公表しないんだい? 奴がルルーシュだって教える前から気付いていたみたいだけど?」

「まだ私も彼が仮面を外したところをこの目で見たわけではないからね。今の時代には証拠というものが必要なんですよ――“伯父上”」

 

 この少年はつい最近シュナイゼルのもとに現れた。衛兵の目をかいくぐって執務室に居座る形で。

 V.V.を名乗るこの少年が先帝シャルルの兄で、不老不死を得て少年の姿のまま今の時代まで生きているなどとカノンもシュナイゼルもいまだに信じられるわけがなかった。しかし始めて現れた際捕縛しようとしたカノンから銃をかすめ取り自分の頭を撃ち抜き蘇生し、不死であることは証明して見せた。

 それ以上にシュナイゼルの関心を引いたのは「ギアス」という異能力だった。彼から聞いたゼロの絶対服従のギアスならばエリア11で起きている信頼できる士官の突然の裏切りや親イレブンだった第三皇女ユーフェミアの不可解な虐殺も説明できなくはない。

「それで本当に私にギアスを与えることはできないのかい? 自分にそのような超能力が使えるようになればギアスというものが存在する可能性を考えざるを得ないのだが」

 何度目かのギアス付与の催促をするシュナイゼルだがV.V.は、

「君は他人に優しすぎる。自分の願いを持たぬ者にはギアスは宿らないよ」

 最初はギアスが存在しないためについた言い訳だと思っていたが、この少年の不死の謎は解けずじまい、交渉が成立しないからと言って逃げるわけでもない、金を要求するわけでもない。少年の考えが分からずシュナイゼル殿下もよく付き合ってるものだとカノンは呆れていた。

「かといって臣下に手当たり次第ギアスを与えるわけにはいかないよね。良くて君たち皇族を操るか悪くて革命を起こして国を乗っ取りかねない」

 V.V.の言葉にシュナイゼルは肩をすくめ、

「特にビスマルクは厄介だね。陛下の崩御以来いつ牙をむくか恐々としているよ」

 言葉とは裏腹に怖がる様子は見せずシュナイゼルはV.V.が出す代案を待っていた。V.V.もそれを察して、

「味方がダメなら敵に使わせるしかないね。適当な兵や士官を出してゼロにギアスを使わせればいい。スザクを利用すればゼロがルルーシュだってことも証明できるよ。言っておくけどスザクはすでにギアスをかけられている。ギアスをかけられる役は別の兵の役目さ」

 こうしてギルフォードにわざとギアスをかけさせゼロの正体を暴き捕まえた後でギアスの効力でギルフォードが裏切りギアスの存在を証明する計画が立てられた。

 

 

 

 

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