更衣室で着替えを済ませた俺とシャルルはグランドに来ていた。
「本日から格闘、および射撃を含む実戦訓練を開始する。」
「「「「はい!」」」」
千冬姉が仕切っていき、1組、2組の生徒が返事をする。
その様子はまさに軍隊での訓練のようだった。
「今日は戦闘を実演してもらおう。・・・凰!オルコット!」
「えっ!?私!?」
「私ですか・・・。」
急な名指しで2人は前に出る。
しかし2人のモチベーションは低かった。
「そうだ、専用機持ちはすぐに始められるからな。」
「はぁ・・・。」
「そうですけど・・・。」
どうやら見世物のようにされるのが嫌らしい。
そんな2人に千冬姉が近づき、耳打ちで何やら話しかけていた。
すると、2人の目つきが変わった。
「やはりここはイギリス代表候補生であるセシリア・オルコットの出番ですわね!」
「まぁ、実力の違いを見せるいい機会よね!!専用機持ちの!!」
さっきの態度とは一転、やる気に満ちている。
(流石千冬姉だ、伊達に教師はやってないみたいだな。)
俺は内心で千冬姉に感心する。
「それで、相手はどちらに?私は鈴さんとの勝負でも構いませんが。」
「ふふん。こっちの台詞。返り討ちよ。」
二人とも既に準備が出来ているようで、対戦相手を探していた。
「慌てるなバカども。対戦相手は・・・。」
「ああああーっ!ど、どいてください~!」
千冬姉の声と共に落下音が聞こえて全員が上空を見ると
ラファール・リヴァイヴを纏った山田先生が落下してきた。
このまま落ちてくれば俺が巻き込まれるのは確実なコースだった。
このまま巻き込まれるのは御免なので、俺は素早く白百合を展開して
その場で落ちてきた山田先生を抱きかかえて受け止めた。
「大丈夫ですか?山田先生。」
「あ、はい。ありがとうございます瀬川君。」
山田先生のお礼を聞き、俺は山田先生を降ろす。
そして俺は殺気を感じ、白百合のハイパーセンサーで背後を確認する。
そこにはスターライトmarkⅢをこちらに構えているセシリアと
双天牙月を展開した鈴がいた。
しかも、セシリアは(目の笑っていない)満面の笑みであり、
鈴はあからさまに怒りの感情剥き出しである。
このままだと俺が攻撃される事は確実だろう。
そして、セシリアからレーザーが飛び出して来たのを確認して、
身体を僅かにずらしてレーザーを回避する。
「一夏----!!」
そして、鈴は双天牙月を連結して、ブーメランのように俺に投げてきた。
放たれた双天牙月を撃ち落とすべく、
俺は身を翻しながらショットライフルⅡを呼び出し、
照準を定め引き金を引こうとしたが、その瞬間に別の方向から
銃声が響き双天牙月を撃ち落としていた。
構えていたライフルを下ろし、銃声の聞こえた方向に目を向ける。
そこにいたのは山田先生だった。
「大丈夫ですか?瀬川君。」
山田先生からそう言われる。
「はい、大丈夫です。ありがとうございます。」
俺はお礼を返す。
俺に攻撃をしてきたセシリアと鈴はこの事に呆然としていた。
すると千冬姉がその場に割って入る。
「山田先生はああ見えて元代表候補生だ。今のような射撃は造作もない。」
千冬姉からそんな言葉が飛び出す。
(成程な、それならさっきの見事な射撃も頷けるな。)
千冬姉の言葉を聞き、内心で山田先生の実力の高さに感心していた。
「そ、そんなこと無いですよ。結局、代表候補生止まりでしたし。」
千冬姉の言葉にそう返す山田先生。
(いや、代表候補生でも十分すごいと思うんだけど・・・。)
内心でそう思ってしまう。
「さて小娘ども、いつまで惚けている。さっさと始めるぞ。」
千冬姉のその一声で場の空気が変わる。
「え?あの2対1で・・・?」
「いや、流石にそれは・・・。」
空に滞空する山田先生を見て二人は渋っていた。
流石に2対1で、しかも相手は量産機なのに、自分達は専用機だ。
普通ならば、そのハンデはやり過ぎと言えるだろう。
「安心しろ、今のお前らならすぐに負ける。」
しかし千冬姉はあっさりと二人を挑発する。
「「なっ!?」」
その言葉を聞いた二人は流石に頭に来てしまったようで、二人とも空へと飛び立ってしまった。
(二人とも完全に千冬姉に乗せられてるな・・・。)
千冬姉の言葉に乗せられてしまう二人に少し不安を覚える。
「では、始め!」
千冬姉の声を合図に鈴は双天牙月を、セシリアはスターライトmarkⅢを構える。
対して山田先生はマシンガンを呼び出し、構えた。
「手加減はしませんわ!」
「実力見せてあげる!」
「い、行きます!」
鈴が突撃して2対1の模擬戦が開始された。
「さて、今の間に・・・デュノア、山田先生が使っているISの解説をしてみせろ。」
千冬姉はシャルルにそう振った。
「あっ、はい。フランス、デュノア社製第二世代型ISラファール・リヴァイヴ。苦手とする距離を持たない汎用型のISで第二世代最後発のため高い整備性と安定した性能から七ヵ国でライセンス生産、十二ヵ国で制式採用され専用機として様々なカスタム機があります。一番の特徴は操縦者を選ばない操縦の簡易性と武装による全距離対応可能になる面で複数機でチームを組む場合に選ばれることが多い機体となっています。」
スラスラとシャルルが説明を始める。
淀みなく話すその姿に周りは小さい歓声を上げた。
俺はシャルルの説明を聞きながら、模擬戦を見ていた。
(二人とも連携が取れてないな、鈴は衝撃砲を撃ち過ぎだ。)
模擬戦を見て最初に思ったのはそれだった。
(セシリアは射線を予測されまくりだな。あ、そこも読まれてるぞ。)
セシリアに関してはそう思った。
だが、ビットを出した状態でも射撃は出来るようになったようで、
ビットの攻撃で逃げ道を封じつつ、ライフルで攻撃していた。
どうやら俺のアドバイスが役に立ってくれたようだ。
これは素直に嬉しい。
尤も、射線を読まれているせいで全く当たっていないところを見ると
まだまだ未熟と言うしかない。
「よし、それでいい・・・もう決着がつく。」
千冬の声と共にグレネードランチャーの直撃を受けた鈴とセシリアが錐もみ回転して轟音をあげて墜落した。
「うぅ・・・まさかこの私が・・・。」
「ア、アンタねぇ、何面白い様に予測されてんのよ!!」
「鈴さんこそ、衝撃砲をバカスカ撃ち過ぎですわ!!」
地面に衝突した二人はお互い機体を待機状態に戻した後も罵り合っていた。
(俺から言わせてもらえれば、五十歩百歩なんだけどな。)
内心でそう思いつつ、二人に近づく。
「まあまあ、二人とも。落ち着けって。」
「「一夏(さん)!?セシリア(鈴さん)の肩を持つの(ですか)!?」」
二人の声がハモる。
「別にそんなつもりは無いさ。ただ二人に一つだけ言いたい事が有ってな。」
「「何(ですの)?一夏(さん)。」」
また声がハモった、出来ればそれを実戦で発揮してほしいと思う。
「連携はちゃんと取るように・・・な?」
「「うん(はい)・・・。」」
俺からの指摘にまた声をハモらせながらそう返事をした。
二人ともこういう場面だと息が合うのだろうか?
「これで諸君らにも教員の実力は判っただろう。以後は敬意を持って接する様に。」
「「「「はいっ!!」」」」
「ではこれから実習に入るが、まずは各専用機持ちを班長としたグループに分かれて貰う。瀬川、デュノア、凰、オルコット、ボーデヴィッヒの五名は各生徒の補助をする様に。」
生徒達はそれを聞いた瞬間、シャルルと俺に突撃した。
「デュノア君って、代表候補生なんだよね!?操作技術見せて!!」
「瀬川君!手取り足取り教えて!!」
「えっ、ちょっ、ちょっと待ってっ!」
「お、おい。まずは順番に並んでくれ。」
女子達の大部分は俺とシャルルの方にやってきた。
だが、どちらかと言えばシャルルの方が僅かに多かった。
まあ、仕方ないだろう。人間新しい物には目が無いからな。
「はぁ・・・この馬鹿共が。全員出席番号順に各班へ入れ!!遅れた者はグラウンド10週させるぞ!!」
その言葉を聞いて全員が先程と同様に軍隊のようにピッタリ並んだ。
まあ、千冬姉の説教&ペナルティーは受けたくはないよな・・・。
「最初からそうしろ、全く・・・ではまず各班のリーダーは訓練機を取りに来い。今日は歩行と起動を中心に行う。」
千冬姉の一声で実習が始まる。
俺も班長なので、訓練機を取りに行く。
訓練機はラファール・リヴァイヴと打鉄の二種類があり、
長い期間使い込んでいたラファールを選ぼうかと思ったが、
今回は初めての実習という事で敢えて打鉄を選択した。
理由は、打鉄の方が安定性が高いからだ。
(そういえば、俺のラファールは一体どうなったんだろうな?)
訓練機のラファールを見ると、内心でふとそう思ってしまう。
今まで色々あったせいでその存在を忘れていたが、
長い間俺の相棒だった機体なのだ、
やっぱり気になって仕方なかった。
(やっぱり、コアは白百合のコアに使われたんだろうな。)
色々考えたが、そう結論付け思考を打ち切った。
そして、周りを見てみると既に実習を始めている班もあり、
その班に分かれている女子達は専用機持ち達の説明に
興味津々といった感じで聞き入っていた。
・・・もっとも一か所だけ暗い雰囲気ではあったが。
(ボーデヴィッヒ・・・。)
俺は打鉄を運びながら、その暗い雰囲気の流れる一角に目を向ける。
すると、いち早く俺の視線に気付いたボーデヴィッヒに睨まれてしまった。
俺はすぐさま視線をずらし、早急にその場を離れた。
「じゃあ、始めるぞ。出席番号順だから始めは・・・相川だな。」
「はいはーい!相川清香です!!ハンドボール部所属。趣味はスポーツ観戦とジョギングです。よろしくお願いします!!」
相川が手を上げて俺に近づいてきた。
見た感じでいかにもスポーツ系って感じがするな。
「あぁ、よろしくな。」
俺は相川の自己紹介に軽く返事をして、打鉄を地面に下ろした。
「さてと、まずは歩くイメージなんだけど、基本的には普段通りに歩く感じで大丈夫だ。それじゃ、取り敢えず歩いてみて乗っている時の感覚に慣れることから始めよう。」
そして大きな問題もなく、初めての実習は無事終了したのであった。
今回は実習風景を書きました。更新するのが遅かったのにこんな出来の作品に仕上がってしまいました・・・。切実に文才が欲しいです・・・。次回は出来るだけ早く更新できるようにしたいです。