一夏side
一週間後にオルコットとのクラス代表決定戦を行うことが決まり、
それからの授業は何事もなく、進んでいった。
因みに、授業が終わり今は放課後だ。
「ん~!やっと終わったな。」
背伸びをしながら、俺は今日一日の授業が終わった事に嬉しさを感じていた。
しかし、俺にとってはこれからの事が一番重要だ。
そう・・・、千冬姉との、話し合いがまだ残っている。
向こうから誘ってきたということは、向こうは既に覚悟を決めてきているということだろう。
(千冬姉・・・。俺も覚悟を決めないとな!!)
俺は決意を固め、千冬姉の所に行こうとすると
「一夏!何処に行くつもりだ?」
そう箒に言われ、引き止められた。
「どこって、そりゃあ千冬姉の所に決まってるだろ?」
俺がそう答えると、箒は納得したのか、
「そうか・・・、引き止めて悪かった。」
そう言って立ち去ろうとするが、
「お、おい。何か用事があったんだろ?」
俺のその一言を聞いて、こっちに向き直った。
「ああ、お前は一週間後にオルコットと決闘するのだろう?だったら、私がISについて教えてやろうと思ったんだ。」
なるほどな・・・。心配してくれたのか。でも・・・。
「気持ちは嬉しいよ、箒。でも俺はもう自分で整備は出来る位の知識は持ってるし、操縦もそれなりには出来るようになったから、今教えてもらうことは特に無いんだ。だから、箒の特訓は必要ないんだ。」
俺がそう言うと、箒の顔は悲しみに満ちた表情になった。
(うーん・・・。少し位遅れても大丈夫かな・・・)
「ええっと・・・、30分位なら付き合っても大丈夫なんだけど・・・。」
そう俺が言うと、箒の顔がみるみる喜びに染まっていく。
「そ、それは本当なんだな!?」
「あ、ああ。それ位ならなんとか・・。」
そうすると、箒がいきなり俺の腕を掴んで俺を引き摺っていく。
「お、おい!何処に行くつもりなんだよ!?」
俺がそう聞くと、箒はかなり興奮した様子で
「今から道場に行く!お前の腕前を見てやる!」
こう答えた。
「それって、ISとどう関係が・・・。」
「うるさい!早く行くぞ!!」
そうして俺は、箒に引き摺られ道場に連行されるのだった。
一夏sideend
箒side
私は一夏と手合わせするために、IS学園の道場に来ていた。
一夏と離れてから六年・・・。私は純粋に一夏の実力が気になっていた。
昔は私よりも強かったが・・・、今はどうなのだろうか?
私は自分の道着に着替えた後、防具を着け道場に入る。
そこには、たくさんの観客と、同じく防具をつけ準備運動をしている一夏の姿があった。
「ん?やっと来たか、箒。」
一夏がそう言ってくるので
「ああ、準備が思いのほか手こずってしまった。」
私はそう答える。
「いやぁ~。まさか、俺のサイズに合う防具があったなんてな。」
どうやら、お互い防具をつけての試合は出来そうだった。
「でも、やっぱ防具は邪魔だな。・・・防具無しでもいいか?」
一夏がそんな馬鹿げたことを聞いてくるので、
「駄目に決まっているだろう!!」
そう言って、却下した。
すると一夏は渋々といった表情で、面を着け始めた。
それに私も合わせて、面を着ける。
そして、お互いに準備が終わり、向かい合う。
「時間が無いから、一本勝負で良いか?」
「ああ。問題ない。」
そうして会話をし終わると、お互いに竹刀を構えた。
そして・・・、私から仕掛けた。
「メェェェン!!」
一夏の面に向かって素早く竹刀を振りおろすが、一夏はそれをいとも簡単に受け、反撃してくる。
「ハァァァァ!!」
一夏の面が飛んでくるが、その程度の動きは簡単に見切れた。
私はその面を受け、手首を素早く返し一夏の胴に向けて竹刀を振るおうとしたが・・・。
一夏の竹刀は、私の竹刀に当たることなく、空中で軌道を変えてがら空きになった
喉元に突き刺さった。
「ツキィィィィィ!!」
・・・勝負は、一夏の一本勝ちだった。
喉に竹刀の衝撃が加わったことにより、私は激しく咳き込みながらその場に倒れた。
「おい!!大丈夫か!?」
一夏が駆け寄ってくるが。
「・・・ああ。大丈夫だ。」
と返事を返した。
「ごめんな。俺、剣術ばっかりで剣道は久々だったから、手加減できなかった。」
一夏がそう言ってくるので、
「いや・・・、むしろお前の成長を見ることが出来て私は嬉しいぞ。篠ノ乃流ではないようだったが・・・。」
私は、一夏の成長を喜ぶと同時に、同門では無くなってしまった事に、悲しみを感じていた。
「そっか・・・。立てるか?」
一夏がそう言って私に手を差し出してくるが。
「そういえば、千冬さんの所へは行くのではなかったか?だったら、急いだ方がいいぞ。」
私はそう言って、一夏に千冬さんの所に行くよう促す。
「・・・悪いな。じゃあ、行ってくるな。」
そうだけ言って、一夏は道場から出て行った。
私は、一夏の事を全て聞いた訳ではないし、一夏と千冬さんの間に何があったのかまでは知らない。
だが、確実に二人は歩み寄ろうとしている・・・、私にはそう思えた。
またあの時の二人に戻ってほしい・・・、それが今の私の願いだ。
(一夏・・・。頑張れ。)
そんな事を思いながら、私は道場の天井を見つめていた。
箒sideend
一夏side
俺は、箒との手合わせを終えた後、千冬姉のいる寮監室に来ていた。
職員室には行ったが、千冬姉は既に寮監室に行った後だった。
(ふぅ・・・。行くか!)
そして、俺はドアをノックした。
「瀬川です。織斑先生はいらっしゃいますか?」
すると中から、
『瀬川か。入れ。』
千冬姉の声が聞こえてきた。そしてその言葉に従い、ドアを開け中に入る。
「失礼します。」
中には、朝も見たスーツ姿の千冬姉が居た。
「さて、お前を呼んだ理由だが・・・。」
話を切り出し始める千冬姉。
「お前は・・・本当に一夏なのか?」
そう聞かれ、俺の心臓が一気に跳ね上がるのを感じながらも、俺は返事をする。
「ああ・・・。そうだよ、千冬姉。」
俺がそう言うと、千冬姉の顔が見る見るうちに変わっていった。
「一夏・・・、そうか・・・。良かった・・・。」
そして、そう呟くと。千冬姉はいきなりこんな事を話し始めた
「一夏。私は、あの日お前が誘拐されたと知らされていなかった・・・。その結果、私はお前を見捨て、世界大会二連覇の名誉を手に入れた。だが、そんなものなど私はどうでも良かった・・・。家族を失ってまで得た栄光なんて・・・一体何の価値がある?それからというもの、私は失意のどん底にまで落ちて行った・・・。そんな時だったんだ、お前の事が世界初の男性操縦者として記事に載っていたのは。その時、私は嬉しく思うと同時に・・・怖かった・・・。拒絶される事が、何より私の事を恨んでいたらと思うと・・・、怖くてたまらなかった。」
ここまでの話を聞いて思ったことは
(怖い・・・か。分からなくもないな。)
それだけだった。しかし、次の瞬間千冬姉が言った事に俺は一気に感情が高ぶるのを感じた。
「そもそも、私があの事件に関わらなければ・・・、いや、束を止められてさえいれば、こんな事にもならなかったんだ・・・。全て私の責任だ・・・。」
事件・・・。あの事件の事だろう。
「・・・白騎士事件。」
俺がそう言うと、千冬姉の顔に影が差し始める。
「そうだ・・・。かつて、私は『白騎士』と呼ばれたISを駆り、結果として・・・多くの人間を死なせてしまい、こんなふざけた世の中にしてしまった・・・。その時の私は、ただミサイルを撃ち落とすことだけに意識を集中させ、死人が出ることも構わずただ戦い続けた・・・。私は真実を知った時、激しく後悔し、そして真実から逃げてきた・・・。その結果がこの様だ。」
千冬姉の告白・・・。それは、過去の過ちに対する深い後悔と責任の籠ったものだった。
それ程に千冬姉は深く後悔していたのだ。こんな世界にしてしまったことを。
なにより、そのせいで死なせてしまった人々への罪悪感が彼女を苦しめてきたのだ。
そして、千冬姉は意を決した様にこう続けた。
「私は、多くの罪を背負い。そして、逃げてきた・・・。お前からも私は逃げようとしてしまった・・・。だが、もう私は迷わない!そしてもう逃げないと決めたんだ!・・・最早償えるとも、許してもらえるとも思ってはいない。私の事は幾らでも恨んでくれて構わない。お前を見捨ててしまったことも『知らされなかった』などという他人に責任を押し付けるような真似もしない!だから、せめて謝らせてくれ・・・、一夏。」
そう言うと、千冬姉は俺に向かって深々と頭を下げてこう言った。
「こんな情けない姉で済まなかった・・・。」
(千冬姉・・・。)
ここまでの話で語られた千冬姉の心意と覚悟は本物だった。
千冬姉は本気で、償おうと過去に立ち向かうと決めたのだ。
(何が情けない姉だよ・・・、十分立派じゃないか。)
「・・・俺には、もう家族って呼べる人達がいる。だから、もう織斑の名前には戻れない。」
俺は千冬姉にそう告げる。
「そうか・・・・。」
千冬姉は悲しそうな顔をしてこちらを見ていた。
しかし、俺の話はまだ終わっていない。
「だけど、千冬姉とは・・・以前のままって訳にはいかないけど、また一緒に笑い合っていたいんだ・・・。」
そして、一呼吸開けてから
「・・・許すよ。千冬姉の事。」
「・・・!!一夏!」
そう言うと、千冬姉は涙を流しながら俺に抱きついてきた。
俺は千冬姉を抱きとめると
「千冬姉の罪・・・、償い終わるまで俺も一緒に背負うよ。だから、これからは俺も頼ってほしい。」
そう呟いた。すると千冬姉は
「・・・・・ありがとう。」
とだけ言った。
「今までごめん。そして・・・。」
『ただいま』
その一言を言うためにどれほどの時間が掛かっただろう。
俺の目からはいつの間にか涙が溢れ、そして俺はそのまま大泣きした。
まるで、今までの溜め込んできた想いを吐き出すように・・・。
こうして、俺と千冬姉は再び絆を取り戻した。
一夏sideend
今回は一夏と千冬が和解し、絆を取り戻しました。これからの千冬は自分が犯してきた罪を償うために、自分が変えてしまったこの世界の風潮を改善すべく行動していきます。