一夏side
俺は千冬姉と無事和解し、千冬姉に今まで自分が経験してきたことを話していた。
「・・・そうか。どうりで逞しくなった訳だ。」
千冬姉に一通り説明し終わると、千冬姉がそう言った。
「いや、それは言いすぎだよ。」
俺は千冬姉の言葉を否定するが。
「謙遜するな。歩き方や筋肉の付き方に無駄が無いし、何より精神的にも成長しているからな。」
千冬姉にそう言われ、俺は渋々そういうことにする。
「一度会ってみたいものだな、今のお前の家族にも。」
そう千冬姉が言うので
「機会があったら紹介するよ。」
俺はこう返した。
「それより・・・、千冬姉は本当に償うんだよね・・・?」
俺は確認の意味も込めて、千冬姉にそう聞いた。
「ああ。必ず償って見せる。」
千冬姉が、覚悟の籠った目でそう返事をした。
「そっか・・・。」
決意は揺らがないようだった。
俺はその事に安堵しつつ・・・。
「ぷっ・・・あはははは!!」
思いっきり噴き出していた。
千冬姉は一瞬ポカンとしていたが、すぐに怒りの籠った目でこちらを見た。
「何故笑う?私の覚悟を笑うのか?」
「いや・・・、違うんだよ千冬姉。その事についてじゃないんだ。」
「では、何故だ?」
俺が笑っている理由それは・・・。
「いや、千冬姉の真っ赤になった目って見たこと無かったからさ、それでつい・・・。」
そう今千冬姉の目は、泣きまくった結果物凄く赤くなっているのだ。
そんな千冬姉がいつもの雰囲気で佇んでいても、笑いしか起きない。
俺が笑っていると、身に危険を感じ素早くその場から退避する。
すると、その場に千冬姉によって何かが高速で振り下ろされる。
それは、出席簿だった。
あれを、食らっていたら確実に大ダメージだった事だろう。
「えっ・・・?千冬姉、照れ隠しにしてはかなり危険すぎるんだけど・・・。」
俺がそう言うと、千冬姉は再び出席簿を構えながら、
「問題ない。今まで死人が出たことは無いし、お前は鍛えているからそれ程のダメージは無いだろう。」
そして俺の頭に爽快な音を上げながら、出席簿が直撃した。
(・・・これ、本当に出席簿かよ・・・。)
それからしばらく、俺は凄まじい痛みに悶え苦しんだのだった。
千冬姉の出席簿を食らった後、俺は寮監室を後にし廊下を歩いていた。
(千冬姉と和解出来て良かった・・・。)
今まで有耶無耶だった心の中の闇が晴れ、俺は清々しかった。
そんな事を思っていると、
「あっ!瀬川君ここにいたんですね。」
山田先生が話しかけてきた。
「何か用ですか?山田先生。」
「はい。瀬川君の寮の部屋が決まったので、今日からそこで過ごしてください。」
そう山田先生に言われる。
「どういうことですか?確か、一週間は自宅通いだと聞いていたんですが・・・。」
俺は疑問に思い、山田先生に聞いてみた。
「実は、政府の方からそうするよう、朝方急に決まったんです。お部屋の番号は1025号室です。同室の子に変なことしちゃダメですよ?」
(そういうことか・・・。荷物はどうしようかな?)
俺が内心そう思っていると、
「因みに、瀬川君の荷物は親御さんが運んでくれたので、もうお部屋には届いていると思いますよ。」
(洋一さん・・・ありがとうございます。)
「分かりました。ありがとうございました。」
そう言って、俺は山田先生と別れ、言われた番号の部屋に向かった。
「ここか・・・。」
俺は1025と書かれた、部屋の前にいた。
(ここは、ノックすべきだな・・・。)
いきなり中に入るというのも失礼だし、誤解を招くような事態にもなりかねない。
俺はドアをノックして
「瀬川だけど、誰か居るかな?」
すると、中から
『一夏か!?』
箒の声が聞こえた。どうやら、箒が同室のようだ。
「ああ。入っても良いか?」
『ま、待っていろ。すぐ着替える。』
箒のその声に従い、俺は部屋の前で待つことにした。
そして、しばらくして
『もういいぞ。一夏。』
その声を聞いて、俺は部屋の中に入る。
部屋の中には、寝巻姿の箒が居た。
俺が空いている方のベッドに腰掛けると、箒がこちらを向いた。
「・・・一夏。千冬さんとは話し合ったのだろう?」
そう聞いてくる箒。その問いに俺は、
「ああ。千冬姉とはなんとか和解出来たよ。」
俺がそう言うと、箒は安堵の表情になった。
「そうか。ということは、織斑の名前に戻るのか?」
「いや・・・。今の俺にはもう家族がいるしな。名前はこのままだよ。」
「それは千冬さんも承諾したのか?」
「ああ、多分納得してくれたと思う。」
「そうか・・・。」
そうして会話が一段落した所で、俺の携帯が鳴り始めた。
発信者は洋一さんだった。
「ちょっと、席外すな。」
「ああ、分かった。」
箒にそう告げ、俺は席を外した。
俺は人気のない所に移動した後、携帯の通話ボタンを押し、耳に当てた。
「もしもし。」
『おう、一夏。元気にしてるか?』
携帯の向こうから洋一さんの声が聞こえた。
「はい。それと、荷物の事ありがとうございました。」
『なあに、いいってことさ。適当にぶち込んだから、足りないものとかあったらすぐに言えよ。』
俺の感謝の言葉を洋一さんは軽く受け流す。
「あの・・・、洋一さん。」
俺は少し暗めの声でそう言った。
『ん?どうした?』
洋一さんも真面目な声でそう聞いてきた。
「実は、今日千冬姉と話したんです。」
『・・・ふーん。それで、答えは出たのか?』
洋一さんのその問いに
「・・・はい。ちゃんと千冬姉と和解出来ました。」
俺はそう答える。すると洋一さんは
『そうか。なら良いんだ。』
さっきとは違う、明るい声でそう言った。
「だから、洋一さんも千冬姉と会ってみてくれませんか?洋一さんの事を紹介したいですし、千冬姉も会いたいと言ってましたから。」
俺は洋一さんにそうお願いしてみると
『ん?そうだな。今のお前の保護者として挨拶しに行かないとな。』
そうOKを貰った。
「そうですか。ありがとうございます。」
そう感謝の言葉を告げる。すると、洋一さんは
『まぁ、近いうちに優花とそっちに行くから、その時は宜しくな。』
こう言った。近いうちにここに来るらしい。
「分かりました。それじゃあ、お休みなさい。」
『おう。またな。』
そうして、通話は途切れた。
(近いうちか・・・。もしかしてクラス代表決定戦を見に来るのかな?)
俺はふとそう思う。だとしたら絶対に負けられない。
(勝って見せる・・・。必ず!)
一週間後に向けて更に闘志を燃やしながら、俺は自分の部屋に戻るのだった。
一夏sideend
洋一side
一夏との電話による会話を終えた後、俺はISの研究施設に来ていた。
因みに、山口親子もこの場にいる。
「これが・・・、そうなのか?」
「ええ、そうです。」
俺の問いに、山口博士がそう答える。
「後は、初期化と最適化だけです。一夏君のデータは前の機体から移植しているので、少し動かせばすぐに一次移行するでしょう。」
「今週までにここまで仕上げるのは、流石にきつかったですよ~。」
山口親子が俺に向かってそう言った。
実際、彼等がそう言ってもおかしくない程に、今目の前にある物の完成度は素晴らしかった。
「見事な出来栄えだ。文句なしだな。」
俺がそう言うと、二人は恐縮そうに頭を下げた後、施設の奥に消えていった。
一人になった俺は目の前にある物に目を向け、
(もうすぐだ・・・、もうすぐ届けてやれる。だから待っていてくれ一夏。)
そんな事を心の中で呟いた後、社長室へ戻る為に、施設を後にした。
洋一sideend
少し物足りなかったですかね。もう少し引き延ばせればよかったのですが・・・。次回はセシリアとの決闘です。