Q.ひとは自分の同人誌が売られたい、という理由でヒーローになれるか答えよ 作:ピコッピコ
お待たせしました
歓声が響く。
熱気に包まれた会場は独特の空気を持って挑戦者たちを襲う。
熱さにまみれて折れてしまいそうな、倒れてしまいそうな程の圧。
しかし、フィールドにて二人の少女は二本の足で、威風堂々と対峙していた。
まるで、二人の覚悟を示すかのように
開始の合図が鳴る。
一人の少女が……北条なぎさが、芦戸三奈に向かって走った。
それ見た芦戸三奈が個性を、人に害がない程度の酸を、北条をフィールドの外に押し出すために、地面に思う存分ぶちまけた。
酸の地面に北条が倒れ込む。
……それだけなら良かった。
異変は速急に現れる。
北条は芦戸三奈に立ち向かおうとガバリ、と上半身を上げた時、芦戸三奈が悲鳴を上げた。
北条は芦戸三奈の視線の先、自身の上半身を見やる。
……服が、無かった。
ある筈の体操着は、芦戸三奈の酸で溶け、下着が全面に露出する。
会場の目が集中する。
会場中の目が、北条を欲に──
「北条!北条!」
北条の意識が外に向く。
「マジでどうした?本気のマジでヤバかったよ?」
芦戸三奈が、ひどく心配そうな顔で、北条の顔を覗いていた。
北条は戦く。
この楽屋には誰も来るとは思っていなかったのだ。
だから、日課のエッチな目で見られる妄想を繰り広げていた。
そう、さっきのは北条の妄想である。
そして、目の前にいるのは、さっきの妄想の餌食になったご本人
「あ…三奈ちゃん…」
北条は、超絶気まずかった
「ご、ごめんね、全然気づかなくて。私……別のところ行ってるから」
「……もしかしてなんだけど」
北条に被せ気味に、芦戸三奈が言う
「いつもこうなってる…?」
──妄想してるのばれた!?
北条の頭はパニックになっていた。
北条がやりたいのは清楚系である。
エッチな妄想…とはバレてなくとも、妄想でグヘヘとヨダレ垂らして峰田実みたいなことになっているのは、マセた系…というか変態系になってしまう。
それも良い、とは思っているが方向性が全く違う。
つまり、激ヤバ
「………………いつものことだから」
「!!それって」
北条は目を逸らし、片腕を垂らし、もう片方で掴む。
流し目がちで、顔は出来るだけ暗く、色っぽく
「三奈ちゃん」
なんか良い感じの理由あるけど触れないでのポーズである
「…秘密に、して」
芦戸三奈は
そして、真剣な表情で、頷く。
「…わかった。でも!ヤバくなったら何時でも言っていいから!…頼っても、良いからね!」
「…ふふ、ありがとう。」
「ウチら仲間なんだからさ!絶対だかんね!」
芦戸三奈が小指を差し出す。
北条が小指を絡ませる
「ゆーびきーりげんまんうーそついたら…」
「はりせんぼんのーます!」
「「ゆびきった!」」
指を離して、二人が目を合わせた。
「ふふ」
「あっはは」
なぜか同時に笑ってしまった
──指からめるのって…なんかエッチだ
最悪
芦戸三奈は、北条なぎさを気にかけていた
あのUSJでの一件
芦戸三奈が見たのは、先生でも叶わなかったヴィランに果敢に立ち向かう姿
そして、体がボロボロになりながらも身を呈して、みんなを守ろうとする姿
そして、死んだように眠る姿であった。
芦戸三奈にとっての北条は、「ヒーローっぽい」
自己犠牲も勇敢さも持っている、と判断したからこそだった。
体育祭の目玉、トーナメント戦が始まろうという時
芦戸三奈は北条が居ないことに気づいた。
──始まるの気づいてないのかな?
チョロチョロ探して、最後に辿り着いたのがあの楽屋
扉を開いて、最初に目に映ったのは、椅子に座った北条であった。
「あ!北条居た!……………北条?」
芦戸三奈は異変に気づく。
駆け出し、肩を揺らす。
「北条!北条、」
爛々と光り輝いていたその目に、光はない。
全身を脱力させ、北条は椅子に深く座っていた。
芦戸三奈は焦る。
クラスメイトのこんな姿は、あまりにも恐ろしかった。
「北条!北条!」
「………」
北条の目が動いて、芦戸三奈を反射した。
──あ、アタシこんな顔すんだ
北条の瞳に写る自身の姿に、どこか冷静にそう思う。
数秒ばかりの沈黙。
ぼんやりとした瞳が、急激にいつもの様に輝く。
そこには芦戸三奈は反射せず、致命的な焦りが浮かんでいた。
「あ……三奈ちゃん…」
どこか抜けた声の北条を、芦戸三奈は初めて見た。
芦戸三奈にとっての北条は、気を抜くことは無い、引き締まった人だった。
いつも胸を張り、前を向き、おおらかに笑う。
それにどこかオールマイトを思い出していたのだ。
「……もしかしてなんだけど」
無意識にそう言っていた。
──まさか、これ、個性の副作用なんじゃ
少し前まで行われていた騎馬戦、そこで北条は個性を使って見たことない技を使っていた
本当に目立たない、威力も脅威度も低い技
──あれが原因なんじゃ
芦戸三奈は思い至る。
元々あるならUSJで使っている、なら、あれは新しい技。
それの後遺症なのではないか、と
「………………いつものことだから」
「!!」
──まさか…新技じゃなくて、個性を使ったから!?
「それって」
危なすぎるでしょ
そう続けようとして、芦戸三奈は止めざるをえなかった。
「三奈ちゃん」
北条が余りにも物悲しげで、そして必死な眼差しをしていたから
──言われても、分かってても、止められないんだ
「…わかった。」
そう言うしかなかった。
それが、ヒーローを目指す芦戸三奈としての優しさ
そして、ヒーローを目指す北条への敬意だった。
「でも!ヤバくなったら何時でも言っていいから!…頼っても、良いからね!」
「…ふふ、ありがとう。」
「ウチら友達だし仲間なんだからさ!絶対だかんね!」
芦戸三奈は小指を差し出す
何故かは芦戸三奈にも分からない。
自身への決意だったり、北条への警告だったり、何となくだったり
ただ確かなのは、北条は芦戸三奈の指を絡めたという事実だけ
「ゆーびきーりげんまんうーそついたら…」
「はりせんぼんのーます!」
静かな部室に響く
「「ゆびきった!」」
顔を見合せた。
「ふふ」
「あっはは」
北条の表情に、芦戸三奈は、なぜだか安心感を持ってしまった。
新年1発目なんで初投稿です
騎馬戦いりますか?
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五目ごはん