Q.ひとは自分の同人誌が売られたい、という理由でヒーローになれるか答えよ 作:ピコッピコ
文才の無さを機能で隠していくスタイル
6 自由にも限度がある
──世の中、良いことばかりとは限らない。
北条は、少し視界を滲ませ
北条は心から、そう思った。
試験終了後、職員室前で出会った可愛らしい少女。仲良くなれたら良いなと思った彼女。
──あの子に忘れられていた。
当たり前だ。
普通に考えて片手で数えられる数分しか話をしなかったというのに、覚えているというのが可笑しな話だろう。
だが、悲しい事なのは事実。
よって冒頭の言葉に繋がる。
北条は沈んだ気持ちの中、今まで話したことの無いようなキラキラとした、俗に言う陽キャとの会話に四苦八苦。
まだ入学式すら済ませていないのになんだか非常に疲れていた。休みたいとすら思う。
だと言うのに、今日は休めそうにない。
「これから、個性把握テストを行う。」
「えぇ!?入学式は!ガイダンスは!?」
「ヒーローになるなら、そんな悠長な時間は無い。」
1-Aの担任、相澤消太先生は、挨拶もそこそこにクラスメイト全員に体育着を着て校庭に出ることを命じ、現在に至る。
因みに登場にはかなり戦慄した。
入学式も無しに突然テストということもあり、クラスメイトの皆は、かなりの大慌て…いや、そうでもないか?とにかく、ざわめいていた。
「雄英は自由な校風が売り文句。そして、それは先生側もまた然り。」
生徒たちを無視して、先生は話を続ける。
「ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50メートル走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座前屈。中学の頃からやってるだろ?個性禁止の体力テスト。……全く合理的じゃない。」
個性禁止の体力テスト、と聞き北条は頭が痛くなった。何せ、いい思い出が無い。
前にも言ったが、北条は
「爆豪、中学の時ソフトボール投げ何メートルだった?」
「67メートル。」
「じゃあ、個性使っても良いから使ってやってみろ。はよ。思いっきりな。」
因みに、60mは凡そビル20階分である。
そして、男子の平均は24mだ。
そんな超高校級の身体能力を持ち合わせた爆豪は、軽いストレッチをすると大きく振りかぶった。
「死ねぇ!!」
BOOOOON!!
目を覆い隠す爆煙が舞い、ボールは驚く程の速度で投げ飛ばされて…否、吹き飛ばされていた。
甘いニトロっぽい香りが鼻を掠めた。
「まずは自分の最大限を知る。それが、ヒーローの素地を形成する合理的手段。」
705.2M
相澤先生が持つ液晶に、いま彼が叩き出した驚異的な記録が表示された。
掛け声が死ねはダメだろ。なんて思いが、奥底に沈められる程の
「なんだこれ!スゲー面白そう!」
「705.2メートルってマジかよ!?」
「個性思いっきり使えるんだ!!流石ヒーロー科!」
個性を使える機会など極稀。だからなのか、皆は珍しく思いっきり使える機会に興奮した。
だが、それはヒーローに成るには不適切だ。
ヒーローというのは命懸けなんて当たり前の、トンデモナイ職業なのだから……こんな風にキャッキャとするのは、危険だという認識が足りてない。
この調子で居るなら、ヒーローに成るのは止めた方が良いだろう。
……いや、北条について言われたら何も言えないが。あれはちょっとタイプが違すぎる。
「─面白そう……か。」
只でさえ鋭い目の相澤先生は、皆の言葉に更に視線を厳しくする。声には少しの怒りを感じられた。
因みに、北条は自身の決め台詞について考えていた為、その雰囲気の豹変について気づかなかった。
「ヒーローになる為の3年間、そんな腹積もりで過ごすつもりか?
───よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう。」
しん、と場が静まり返り、痛ましい程の沈黙が数秒流れ
「はあああああああ!!??」
生徒の悲鳴にも似た怒号が校庭に響いた。
──あ、ありえない。だって、まだ初日なのに。
「生徒の如何は
混乱、動揺に揺れる生徒たちに追い打ちをかけるように先生は言う。
相澤先生は髪を掻き上げ、笑みを浮かべた。
──この学校、やばくね?
今更のことである。